01月2週
【推移】

5日(月):
日経新聞元旦の見出しは「変えるのはあなた」。業界的には個々人が変わらなければ市場が変わらないからよりたくさんの参加者を求む」という解釈。市場的には「慣習に囚われない」市場展開、つまり「新たなアノマリーが登場する」という解釈。 「変えるのはあなた」は「買えるのはあなた」でも構わないのだろう。珍しく解釈に悩む日経元旦の見出し。12月は17450円で終了し月足陰線。
(前月比基準11月末17540円、月足陽線基準17590円)。しかも25日移動平均(17515円)を下回った。感覚的には前年末比1159円の上昇で3年連続上昇だったが、近視眼的には安値終わり。良かったのか悪かったのが微妙。大発会前場の全体相場は日経平均が一時200円安。昨年の1月の下落の記憶が残っているのだろうか。
日経平均株価は42円安の17409円と3日続落。東証1部の売買代金は1兆9064億円と5日連続で2兆円割れ。一方日経ジャスダック平均は4日続伸、東証マザース指数は反発。個別では池上通信、三井住友建設が上昇、一正蒲鉾、OCHIが下落。

6日(火):
昨年同様マイナスからのスタート。年末年始で気分がリセットする訳ではないのだろうが日経平均株価は25日移動平均=人気線(17515円)を割り込んだ水準。200日線=景気線は15555円、75日線=需給線は16600円水準。景気動向や需給にまだ問題はないものの投資心理は冷えこんだ状態なのでしょう。勝手にとはいえ、単なる罫線にもそれなりの意味を持たせれば多少は相場解読の役に立つもの。NYダウは300ドル超の下落での戻り。昨年は12月12日の315ドル安、10月9日の334ドル安、7月31日の317ドル安、2月3日の326ドル安、1月24日の318ドル安など300ドル超の下落は5回だったから早々の300ドル超安。市場では「2014年だって大発会から2日連続での下落スタート。現先ともに2年連続下落スタートならばITバブルスタートの1988〜99年と一緒」という解釈も聞かれる。大発会からの大幅続落。昨年末からは4日続落で日経平均は1032円の下落幅。下落率は5.77%。前日の下落幅は昨年2月4日(610円安)以来の大きさ。原油安やギリシャのユーロ離脱懸念などがあるものの理由は定まらない。先物の売り手口にはニューエッジやGS、アムロなど。商品系ファ東証1部売買代金は6日ぶりに2兆円超え。売り物もあったが買い物もあった。そして空売り比率は37.8%と過去最高水準。背景は「短期筋が新規のショートポジションを構築」との解釈。
日経平均のPERは15.40倍。EPSは1096円でほぼ変化ナシ。PBRは1.36倍。25日線(17495円)からの乖離はマイナス3.5%。ショボかったのは日銀のETF買い。市場の期待は買い入れ額の374億円からの増額。しかし結果は341億円への減額。これは多少期待はずれだったかも知れないが、買い入れたことに変わりはない。痩せ我慢的な期待感は「GPIF、3共済などの買い余力は合わせて6兆円」との試算。昨年の信託銀行(現物・先物合計で約2.7兆円)の2倍を超す規模となる。
日経平均株価は525円安の16883円と大幅続落。ショットモリ、日本化学が上昇、マーベラス、スクリーンが下落。値上がり69銘柄、値下がり1771銘柄。

7日(水):
注目されるのは世界の国債利回りの低下。日本の10年国債利回りは0.285%と過去最低を更新。ドイツ10年債利回りも0.442%と過去最低を更新。フランス、オランダ、オーストリア、ベルギー、フィンランドの国債利回りも過去最低を更新。スペイン10年債が1.58%、イタリア10年債は1.80%。ギリシャのユーロ離脱懸念の近くでこの利回りというのが解せないところ。
すべてはECBの早期QE実施への予測のなせるワザなのだろうがどうもつじつまが合わない。米10年国債利回りも一時1.887%まで低下。壮大な債券バブルのフィナーレと考えれば良いのだろうか。皆が強気になると下げる株式同様でなかった債券市場の瓦解の可能性。怖いもの見たさのターゲットでもある。不吉な予測は債券畑のビル・グロース氏。「今年は多くの資産で値下がりが起きる。記録的な低金利でも経済成長は十分に回復しないだろう。世界景気は実質ゼロ金利が続いても失速気味。リスク資産に替わる投資先がだんだんと求められるようになる。1年が終了する際、多くの資産クラスはリターンの前に『ー』がつく。よき時代は終わった。米国債や高格付けの社債、低債務で魅力的配当の株式のイス取りゲームになる」。とはいえ脳裏に刻んでおきたいのは日経朝刊の春秋の一節。「英語にこんな格言がある。もっと遠くまで跳びたいのなら、チョッと後ろに下がると良い」。
日経平均株価は2円高の16885円と小幅反発。1995年以来20年ぶりとなる年初3日続落を回避した。ただTOPIXは5日続落。ソニー、トヨタが上昇、良品計画、ビックカメラが下落。東証1部の売買代金は2兆1434億円。

8日(木):
NY株上昇の背景。
(1)週末に雇用統計を控えたADP雇用レポート。民間部門雇用者数は24.1万人増加で市場予想の22.6万人を上回った。11月分は20.8万人増→22.6万人増に上方修正。原油価格急落で石油関連企業の人員削減が懸念されたが逆に増加での着地だった。加えれば11月の米原油輸出量は日量50万1766バレル。これは比較可能な統計が存在する1920年以来最大。前回、輸出量が過去最大となったのは1957年だった。
(2)ロンドンでのメルケル独首相のコメント。「ギリシャは過去数年、欧州諸国と合意した財政再建に注力してきている。今後もこの流れが継続すると見込んでいる。首相として政府としてギリシャがユーロ圏にとどまる政策を追い求めてきた。ギリシャは自らの責任を果たす一方、われわれは結束を示すとの理念で取り組んできた。これを成功裏に終わらせることができると疑いなく信じている」。要はギリシャのユーロ圏離脱の可能性について否定的なコメント。結局、原油もギリシャも脇役で、主役の米経済の安定が確認できれば何処吹く風。それなのに懲りない面々は本筋を外れた右往左往の動きに終始しているということ。市場には残念ながら学習効果というのは希薄なのだろう。その市場は材料に事欠けば、フランスのテロなどを持ち出してくるのかも知れない。
数学では相似と言う概念がある。罫線の相似という点では、窓を空けて下げた12月16日の陰線17日の陽線。当時日経平均のヒゲの安値は16672円。
今回の窓を空けて下げた6日の陰線と7日の陽線。日経平均のヒゲの安値は昨日寄付きの16808円。
多少下値は切上げた格好。日経マーケット面では「REIT熱、世界で弾み」の見出し。世界の株式市場の急落を尻目に主要国のREIT指数は上昇を継続。東証REIT指数も最高値圏で推移している。面白いのは業界関係者のコメント。「投資指標で『割高』にもかかわらず買われ続けている」。この背景は、指標など実はあまり関係なく買う素人機関投資家の存在だろう。ある地銀の運用担当者のコメント。
「REITは買い増すつもり。割高でも他に買うものもない。四半期の運用目標を達成するには国債では望めない。3%台の分配金のREITは安心。日銀が買っているので上司にも説明しやすい」。このコメントは、時間軸をずらせば、バブル絶頂期の財テク担当の財務担当とそっくり。 しかも、J−REITの一番の買い手は投信会社。不動産をREITにして、その上投信に組み込むという奇妙な構図でもある。結局行き着くところまでいかなければ済まない習性は今も昔も一緒なのだろう。6日の「不動産投信10兆円市場」という日経1面の記事。これも彼らの稟議書に添えられるに違いない。
12月26日日経の「REIT指数2000超えも」の記事も同様だろう。もうひとつはETF。昨年のETF売買取引はほぼ30兆円。前年比6割増加し過去最高を更新した。特にレバレッジ投信が資金を集めているという解釈。特にREIT型ETFや海外ETFのパフォーマンスは良好。市場というのは形を帰れば中身が一緒でも欲しがる人が登場する。
オプションに裸で投資する投資家は少ないが仕組み債にすると群がってくる。不思議な傾向である。いずれにしても比較安心感を醸し出したこれらの商品は今年も人気を集めるに違いない。結局は市場の隆盛にはつながるのだろう。まずはREITとETFが「メェ〜」と鳴くというところ。
日経平均株価は281円高の17167円と続伸。ECBの量的緩和期待が背景との解釈。日経ジャスダック平均は8年7ヶ月ぶりの高値水準。タカタ、太陽誘電が上昇、マニー、アークスが下落。

9日(金):
日経では企業業績に関して「最高」が目立つ。「川重、7年ぶり営業益最高」。
「キューピー最高益に」。「マルエツ営業益2.7倍に」。「乃村工藝社、営業利益49%増」。
「松屋、純利益40%増」。「ベクトル営業益40%増」。日経平均採用銘柄のEPSはまだ1099円。パナソニックもキャノンも国内生産回帰の方向。「意外とこれが隠れたアベノミクスかも」と言う声も聞かれる。
日経平均株価は30円高の17197円と小幅続伸。ただ前場は17342円まで上昇、後場は一時17129円まで下落しマイナス展開の場面もあった。1月SQ値は17341円で12月のメジャーSQ値17281円を上回ったが終値では下回った格好というめまぐるしい展開。NTTドコモ、乃村工藝社が上昇、池上通信、タカタが下落。

(2) 欧米動向
年初恒例のバイロン・ウィーン氏のびっくり大予想2015年版。今年で30回目。

(1)米連邦準備理事会(FRB)が夏前に利上げ
  その後利上げの誤りが露呈
(2)サイバーテロ
  金融機関の5日間の取引停止の可能性
(3)米株の上昇持続
  S&P500指数は年間15%上昇
(4)欧州中央銀行(ECB)による緩和強化
  QEがあっても欧州経済はリセッションに。特にドイツ株は弱い。
(5)日本株は横ばい
  景気後退は年末まで継続。日経平均株価の円ベースは横ばい、ドルベースは下落。
(6)中国経済の成長鈍る
  7%成長も覚束なくなる
(7)イラン動かす原油安
  核開発停止の合意の可能性→世界株式市場は短期的に上昇の可能性
(8)ロシアはプーチン大統領辞任
  北海ブレントは40ドルに下落。ロシアウクライナ平和協定締結。原油は70ドルへ上昇。
(9)高利回り債は買いの好機
  ハイイールド債は高いパフォーマンスに。
(10)動き出す共和党
  キーストンのパイプラインは認可の方向、大統領候補はジェブ・ブッシュ氏に。
(11)水不足が環境問題の主役に
  米国西部・インド・中国で深刻化。
(12)Eコマースが苦境に
  既存企業者からの風当たりが強まる
(13)ブラジルが復調
  再度人気を取り戻す
(14)ヒラリー氏が出馬見送り
  確率50%。

興味深い指摘はGSの「センチメント・インディケータ」。
これは過去12カ月の機関投資家と投機筋のネットポジションを示す指標。
数値が高いほど強気の投資家が多いことを示すが、昨年末に最大値の100をつけた。

この指数が90を超えた場合。
6週間の間にS&P総合500は高い確率で下落するという。
13年末にも100をつけており、年明け後のS&P500は2月上旬にかけて6%近く下落。
この記憶はコンピュータには入っているのだろう。

NY市場では「1月最初の5営業日の法則」。
「1月最初の5営業日の騰落が年間の騰落と一致するアノマリー」。
過去41年間のうり35回が該当。
確率85.4%。
2000年からの15年間では10回が該当し確率70%。
これと確率100%の大統領選挙前年株高のアノマリーとの攻防戦。
国内では「2年連続大発会下落のアノマリー」。
前回2年連続での下落は98年〜99年。
2年連続の下落となった99年大発会の日経平均は13232円。
ITバブルの前哨戦として大納会に18934円の高値まで頑張った。
「年末までは待てない」と言う声も聞かれるが・・・。

(3)アジア・新興国動向
中国の経済成長は7%台から6%台に低下するという指摘も聞かれる。
一方で中国市場の株高トレンドは変わらない。
この相克の結論はまだでないのだろうが、悪材料は見えないフリは継続基調。

【展望】
スケジュールを見てみると・・・
9日(金)オプションSQ、景気動向指数、米雇用統計
週末:ソニーが中国でプレステ4発売
12日(月)成人の日で休場、北米自動車ショー
13日(火)景気ウォッチャー調査、国際収支、OLCでアナ雪のイベント開始、米10年国債入札
14日(水)12月マネーストック、米小売売上高、輸入物価
15日(木)機械受注、日銀支店長会議、さくらレポート、芥川賞直木賞選考会、NY連銀製造業景気指数、生産者物価
16日(金)米オプションSQ、ミシガン大学消費者信頼感、消費者物価、鉱工業生産

実は、日経元旦朝刊の真骨頂は特集の「ターゲット2020」だったのではなかろうか。

「のびる」:ASEANをパートナーに
「かせぐ」:千里眼に勝るは着眼、企業も家計も待ったなし。
「むかえる」:訪日客2000万人へ地方競演。
「ささえる」:73歳、所得税納めます。
「まもる」」巧みに塞ぐ海の空白。
重要なのはたぶん「かせぐ」。
三菱電機の2020プロジェクトはインフラ整備を宝の山としている。
キーワードは「稼ぐ、稼げ、稼ごう」。
そしてユニチャームの「G20計画」。
「世界中に大きな『池』がある。
結びのコメントは「2019年末。
それは『あの日』から丸30年後に巡る。
日経平均株価が38915円の史上最高値をつけた1989年の大納会。
・・・5年後の再チャレンジはあるだろうか。
千里眼は必要ない。
確実な道は自ら未来をつくること。
かせぐ力に照準を合わせれば、数字はおのずと付いてくるはずだ。

日経3日朝刊の恒例アンケート「経営者が占う2015年」。
滅多に当たらないことで有名でもある。
日経平均株価予想は最高値で22000円。
「晴れた日には38915円が見える」というレポートを出している大和。
その社長としては当然の22000円なのだろう。
最安値は16000円。
数名が年前半にあるという見通し。
しかし大半の最高値は21000円となっている。
日経の見出しは「年後半2万円台」。
これがコンセンサスならばさらにポジなサプライズが欲しいところ。
個別ではトップがトヨタ、2位が信越、3位が日立。
面白くも何ともない。
少数意見はエムスリー、豊田織機、ヤマト、ユーグレナ、OLC、
オリンパ、富士電機。
こちらの方が興味深いし、ユーグレナが異色な印象。
東レが5位に入ったのも興味深い。

日本証券新聞元旦付けの特集は「個人投資家300人アンケート」。
2015年の株価は「上がる」が92%、「下がる」が8%。
圧倒的ブルマインド。
そして有望個別銘柄のトップはここでもトヨタ。
トヨタのウリカイに個人投資家さんが終始するとは思えない。
それでも、「私には関係ないけど世間様はトヨタ」ということだろうか。
これで本当にトヨタが活躍したらそれはそれでスゴイ。
2位は岩谷産業。
3位がマツダとソフトバンク。
5位が東レと野村。
7位が東芝。
8位がユーグレナと住友化学。

市場関係者の指摘。
「今までの年足の戻り高値は07年大発会の寄り値の1万7322円だった。
ところが、14年の大納会は1万7450円で引けた。
90年以降、戻り高値を更新して終えた年はなかった。
(ザラバのヒゲでは07年の18300円だが)
今回はバブル崩壊後初のこと。
ただ1万9000円台は抵抗ライン。
93年、95年、96年、97年、2000年も抵抗ラインとなった。
しかしここを抜き2万円を超えてくると軽くなる」。
これを踏まえれば・・・。
大きな滔々たる流れの中での小さな材料に拘泥すると見間違える気がする。
単なる錯覚ではなかろう。

フツーの常識で物事を考えるという習慣が市場には薄れている。
例えば原油の下落が産油国を揺るがし景気後退につながるという声。
これが疑わしい。
原油が上がって日本の国民生活が苦しくなり産油国が潤う方が良いとは考えられない。
あるいは、ギリシャがユーロを離脱したとても、日本の経済が大きく揺らぐとは信じにくい。
所詮、市場はアメリカ中心に回っているとすれば、余計な事は些事。
その姿勢が重要なのだが、いつも付和雷同して騒ぐのが困ったところ。

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