07月5週
【推移】

27日(月):
外国人投資家の国債購入が膨らんでいるとの報道。国債投資家別売買高によると買越額は1〜6月期累計で半期として初めて100兆円を超えたという。1〜6月期累計買越額は102兆3025億円で前期比3.3%増、前年同期比では5.5%増。背景は欧州や米国の国債に比べて価格変動が小幅にとどまることへの安心感。
一方で海外投資家も中国離れ。海外投資家が香港取引所経由で売買できる上海株の7月売越額は約6600億円と過去最大。海外のファンドマネージャーも日本と似たようなもので債券信仰がまだ主力と見られる。ならばエクイティにチャンスとも考えたいもの。
一方でJTBは訪日客の消費動向を調査。
昨年の訪日外国人の消費額は約2兆円だからおろそかにはできない。興味深いのは「ソーシャルバイヤー」の増加。SNSで顧客を募集し、日本で購入した食品や化粧品を中国で転売するビジネスが増加しているという。口紅100本、ウォッシュレット5個、電気炊飯器10個、800万円の高級バック。これらの消費が自家用でなく商売用であるならばあの買い方は納得できる。そのうち国内でも爆買い代行業が流行するに違いない。であるならば、物流セクターにも商機に違いない。
日経平均株価は194円安の20350円と続落。明治海運、コクヨが上昇。トヨタ、鉄が下落。

28日(火):
面白い指摘。「プラスとなったセクターは水産・農林、電気・ガス、食料品、その他金融、パルプ・紙、情報・通信、建設、空運、倉庫・運輸、小売、サービスの11業種。このうち、水産・農林と電気・ガスは前場の全面安の時点からプラスだった。それ以外の9業種は全体の動きが変わった後場にプラスに転じており、モメンタムが好転すれば買われやすいセクターと言えるだろう」と冷静な分析。
日経平均株価は21円安の20328円と3日続落。ヤクルト、スタンレーが上昇。エコナック、重工が下落。

29日(水):
ギリシャが見えなくなってクローズアップされてきたのが上海。所詮国内市場であり、直接的対外影響度はそう大きくはないがそれでも気にする。隣の芝生が奇麗に見えるわけではなくただ気になるだけ。それでも市場は反応するから厄介といえば厄介。
「中国株安で市場動揺、ドル12年ぶり高値」との見出し。逆にいえば新興国・資源国通貨は安値ということになる。インドネシアルピアが17年ぶり、南アフリカランドが13年ぶり、ブラジルレアルが12年ぶり。それぞれ安値水準となった。インドネシアの18年前はアジア通貨危機の直後。それほど酷い状態ではんなかろう。中国経済の減速からの資源需要減退が要因とはいえ、資金は流出、自国通貨は安値水準。自国通貨安を喜ぶ風潮はこの国だけのことかもしれない。本来は強い自国通貨というのが当たり前の本筋。売られる通貨は長期的には弱い国への一里塚でもある。ここはあまり理解されない。
加えて「中国不安、米市場に波及」の見出し。昨年末比で一昨日のNYダウは2%の下落。日経平均の16%、ドイツDAXの12%と比べると明らかに劣後している。
3段論法は「さえない米企業業績←エネルギー価格の下落でエネルギーセクターは年初来13%安。←原油価格の下落は中国景気の減速に伴う需要減が理由」。
しかし、それよりもシェール革命の幻想に酔った宴の後始末のような気がする。2008年のリーマンショックの原因はサブプライムローンだった。これも無尽蔵に貸し出した無理な融資のなれ果て。今回もシェール幻想のけじめなのだろう。しかしそうは言いたくないから「中国景気の減速」が表面の理由として駆り出された格好。敵は万里の頂上ではなくスズカケの樹の下にいることが多いもの。ここを見間違えてはいけないだろう。
電気を自動車をそしてエネルギーもバイオも先駆的に発明し世界に拡大してきたアメリカ。ココはトラの尾のようなもので、アンタッタッチャブルな世界。抵抗勢力は排除するというのがたぶん政治経済的大命題でもあろうか。
因みに中国の10年後のGDP成長率は現在の7%程度から4%台に低下するという。高度成長期の日本も2ケタ成長からほぼゼロ成長に落ち込んだ。しかし株価は1960年代の高度成長期の数十倍。時価総額は1955年が1兆円程度、1960年が5兆円。1980年代は90兆円程度。そして今が600兆円。経済成長率の低下が必ずしも株式市場の低迷になる訳でもなかろう。成長率は低くなっても経済の絶対額は間違いなく増加していく筈。
日経平均株価は25円安の20302円と4日続落。マツキヨ、クラリオンが上昇。ファナック、東京エレが下落。

30日(木):
前日はファナックと東京エレクロトンの日経平均押し下げ効果が130円程度。ファナック10.7%、東エレ11.4%、アドバンテスト7.8%安。だからTOPIXもJPX400も上昇したが日経平均だけが下落の展開。変な指数を基準とするから相場実態と指数展開がチグハグになる。
ファーストリテ・ソフトバンク・ファナックに左右される日経平均。そしてアップル・IBM・GSなどに左右されるNYダウ。指数なんて所詮虚像なのにそこに拘泥する輩がいるのは先物があるから。構成要素のおかしな指数でも先物があえるとそれなりの位置を占めて改善がない。この愚かさには気づいても残念ながら修正はないのだろう。
先週の裁定買い残は増加した。といってもわずか251億円で合計は2兆7279億円。ほとんど変わっていないという方が正しいだろう。日経での引用されたコメントは「先物主導で相場が反発する局面で現物株に裁定買いが入った」。
誤差脱漏レベルの増加の背景が裁定買いとは思えない。しかし増えたことだけをとらえればそうなのだろうか。少し疑問の世界。
松井証券信用評価損益率速報で売り方はマイナス13.249%。買い方はマイナス5.175%。Quick調査の信用評価損率(7/24現在)はマイナス6.21%。カラ売り比率は34.1%。日経平均株価の25日線は20391円で0.43%のマイナスかい離。75日線は20189円で0.57%のプラスかい離。200日線は18543円で9.49%のプラスかい離。
一目均衡の雲の上限は20462円、下限は20124円。7月月足陽線基準20329円をあと2日でキープして欲しいところ。
日経平均株価は219円高の20522円と5日ぶりに反発。東証1部の売買代金は3兆1786億円と拡大。ゼオン、任天堂が上昇。ジンズメイト、コロプラが下落。

31日(金):
機関投資家の多くはスクリーニングで銘柄を選択する。しかしそのスクリーニングの境目の上下の銘柄の差は一体どこにあるのだろうか。機械的な線引きの上位20銘柄目と21銘柄目の違いはどこにあるのだろう。明確な理由はおそらく出ては来ないだろう。企業は線引きを意識して経営されている訳ではない。それでも、「この数字では市場が納得しない」などという摩訶不思議な言葉が飛び交う世界。市場が納得しなければ不合理な決算がまかり通るのだろうか。市場至上主義の弊害の部分とも言えよう。そもそもここで意味する市場とは一体何なのだろう。
株価?株主?アナリスト?ファンドマネージャー?
短期的収益だけを求める部分に迎合して短期に収束すると「あと3日で120億円」などとなる。
株主はステークホールダーと呼ばれるようになって一段上の存在となった。「余剰金を配当に。手元資金で自社株買いを。株主優待を手厚く」。そして「製品開発のスピード化」までが求められる。ゆっくり経営が良いとは言わないが、長期的視点というのはどこにあろうか。3日で2割と半年で2倍。あるいは1週間で3割よりも3年で5倍。今日プラスよりも5年で10倍。国民金融資産の健全な育成にとってどちらが望ましいのだろう。たぶん理論的には長期での大化けなのだろうが、心情的には目先の利幅。ここに迎合すると、企業も目先の動きにならざるを得なくなる。労多くして益少なしを目指すのか大器晩成を目指すのか。この違いはスクリーニング主義と現場主義の違いとなろうか。
日経平均株価は62円高の20585円と続伸。GMO、クオールが上昇。ニチレイ、三和HDが下落。

(2) 欧米動向

市場ではヘッジファンドの運用悪化が言われている。
FT紙による500本のヘッジファンドの調査。
あるファンドは年初来リターンがマイナス27%。
あるいはマイナス10%などが続々。
最悪はマイナス17%だったという。
背景はギリシャ危機、中国株安など。
うまく立ち回るような誤解と錯覚が充満しているが、ヘッジファンドだってそんなもの。
もっともらしいシナリオや理知的な数字を持ち出して巨像化してはいる。
が、実は虚像かもしれない。
恐れる必要はなかろう。
所詮、運と僥倖に依存しているに過ぎないのだろう。


(3)アジア・新興国動向

悪意を持ってカラ売をした人は逮捕する。
これほど滑稽な表現はなかった。
そもそも善意のカラ売りがあるのかどうか。
なりふり構わない中国当局の姿勢には脱帽する。
国家が市場を統制できるという誤解と錯覚が成就するとは思えないのだが・・・。
IMFは中国当局に「これ以上の介入は行わないように」と警告したともいう。
それでも悪質な売買についてはその手掛かりを求めて調査しているとも言う。
日本でこのような事態になったら市場は完全に信頼感を失うだろう。
市場は麻薬でも拳銃でもない。
資産の健全な育成と産業資金の長期安定資金の供給がその存在理由。
これを打ち消すような政策はそっぽを向かれるに違いない。
因みに中国の信用取引の融資残高は6月18日の44兆円から7月16日には27兆円まで減少。
4割ほど減ったことになる。
同国の信用取引は2010年3月に導入された。
レバレッジ率は2倍だから意外とおとなしい。
しかし問題は「場外配資」。
オンラインの融資会社などが5〜10倍のレバで小額投資家に提供している。
メールアドレスだけで口座開設ができるというからそれこそ街金以上に簡便。
正確な融資金額はピーク時には40兆円くらいあったともいう。
融資会社の端末などからの類推では6月末に8兆円だったという声もある。
もうひとつは「傘型信託」。
理財商品の一部だがこれが暴発すると結構危険な印象。
この解消と再勝負。
そのはざまで株価は翻弄されているのかも知れない。

【展望】
スケジュールを見てみると・・・。
3日(月)新車販売、米ISM製造業、個人所得
4日(火)マネタリーベース、米製造業受注
5日(水)米ADP雇用統計、ISM非製造業景況感
6日(木)日銀金融政策決定会合(〜7日)
7日(金)黒田日銀総裁会見、米雇用統計、消費者信用残高

来週から8月。
3日新甫で荒れるのかどうか。
過去25年間は10勝25敗で9位。

日経ヴェリタスの3大リスク「最悪」シナリオ分析。
近い将来起こりうる「最悪シナリオ」点検。

(1)イスラム国がイラク・サウジの石油施設攻撃
原油高騰、世界景気脅かす。サウジ情勢が悪化すれば、投資家のリスク回避の姿勢を強めるのは確実。
投資マネーは安全資産に向かいドル高進行、新興国通貨は軒並み売られる。
このシナリオの実現する可能性は「10%弱」との見方。

(2)親ロ派再び攻勢、ロシアは債務問題で圧力
ロシアが年末に満期迎える30億ドル(約3700億円)のウクライナ国債の前倒し償還要求。、
デフォルト(債務不履行)に発展。
債務危機は巨額の財政赤字に苦しむスペインやイタリアに飛び火し国債利回りが一気に上昇。
日米の株式市場も急落。
このシナリオの実現する可能性は「20%以下」との見方。

(3)南シナ海で中国・フィリピンが軍事衝突。
中国の海洋進出はアジア太平洋で対中抑止を狙う米国への挑戦。
いまのところ中国と東南アジア各国との本格的な戦争を懸念する向きは少ない。
仮に中国と米国の二大国の衝突が起きれば、世界の市場はリスク回避姿勢一色になり、
株式などのリスク資産が大きく売られ、「有事のドル買いや円買いが一気に進む」とみられる。
米中衝突するもう一つのリスクが台湾を巡って浮上。来年1月の台湾総統選挙。
総統就任後に独立をちらつかせれば米中が台湾海峡挟んでにらみ合う事態も想定され、
「日本の株価は1割下落。衝突すればリーマン・ショック級の事態も起こり得る」との見方もある。

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