08月3週
【推移】

17日(月):
興味深かったのは土曜日経朝刊の「原油安、債券・株式に影」。日本企業の多くの最高益は背景の一つが「原油安」だったのに世界マネーはこの影響でネガティブ。
エネルギー関連企業の採算悪化が懸念され社債や株価の下落が顕著になっている。米国ではエネルギー関連の社債の一角は投げ売り状態で額面から6〜8割下落した社債もあるという。「エネルギー関連企業はシェール革命や金融緩和の波に乗って過去数年に大量の債券を発行してきた。残高は2000億ドル(25兆円)を超える。一部の企業が債務不履行に陥る可能性もでてきた」。軍事バブル→ITバブル→住宅バブルに次ぐシェールバブル。
いつかまたきたバブル崩壊をバブルで肩代わりする道が繰り返されようとしているのかも知れない。加えれば低格付け債券も同様の状態。このシェールバブルとジャンクボンドバブルの清算がついたときにまたアメリカ株は復活するのだろう。
この視点が抜けると、ギリシャだ、中国だと右往左往が続くことになるのだろう枝葉を追うと本筋が見えなくなることが多い。小さな記事だが気になるのは日曜日経の「電力小売り米社と新会社、イーレックス、家庭向け」の記事。NASDAQ上場の電力小売りスパークスエナジー(キサス州)と合弁会社を10月に日本で設立。家庭向け電力小売りを始めるという。2016年4月の電力小売り自由化をにらんでスパークスのノウハウを活用。家庭向け電力小売りの競争力を高めるのが狙い。アチコチの材料があるが、「エネルギー」というのは今後も大きなテーマの一つである。
4〜6月GDPは前期比マイナス0.4%、年率換算マイナス1.6%。予想はマイナス2%程度だったから予想ほど悪くはなかった。設備投資は前期比マイナス0.1%。公共投資は同プラス2.6%。内需寄与度はマイナス0.1%、外需寄与度はマイナス0.3%で着地。
日経平均株価は100円高の20620円と反発。東京海上、大和ハが上昇。イオンディ、神戸物産が下落。

18日(火):
株が「上がる」ということと「上がり続ける」ということの違い。罫線を見れば一目瞭然とは言われるものの、それは結果論。初動の上げが継続するのか、線香花火的に刹那的なものなのか。同じストップ高でも、散発的なものと何度もストップ高する銘柄との違いは初動ではなかなか計り知れない。右側を隠して、その後を予測するというような訓練をしたとしてもおそらく読み取れないだろう。上がり続ける銘柄はおそらく驚きを持って市場に迎えられた銘柄が多い。いわゆるサプライズ。誰もが想像しなかったストップ高で市場も気が付き改めて好材料を評価。ところが、なぶり尽くされた材料の蒸し返しのような好材料は瞬間的に反応するものにそこで出尽くし。株価が下げれば「出尽くし」という簡単な言葉で片付けられてしまうが出尽くしと継続の境目は意外と曖昧模糊なもの。この味の違いが分かるようになれば相場巧者への第一歩なのだろう。名人は「「価格と価値の差を見極める」ことは高値でも安値でも大切なこと。「漁師は潮を見る」と言われるが、相場の潮はなかなか経験則だけでは身に着かない。
記録というのは数え始めると途絶えるもの。4月7日から続いていた東証1部の売買代金2兆円超の記録は昨日89日で途絶えた。高校野球とお盆の季節は商い薄というのが経験則。今年は高校野球とお盆の間も2兆円台をキープ。327円安とか202円高とか結構なボラティリティで、夏枯れどころか12日の商いは3兆373億円、13日も2兆8890億円と結構な大商い。
中国の人民元切り下げという背景もあったが、なかなか活況だった。お盆が明けた月曜日は1兆9480億円。あと500億円強足らずの2兆円割れ。成長の前のすくみなのか、秋相場への序章なのか、あるいはこのまま低迷していくのか判断は難しいところ。「押してもだめなら引いてみな」の一端であるならば、上昇過程の一里塚と考えても良さそうだが・・・。頑張った夏相場。そして郵政上場の秋相場への変わり目。潮の流れがそちらへ行く一歩手前だとすれば商い薄も転換点の一コマと考えたいところ。8月月足陽線基準は20548円。先週末のSQ値は今年高値の20540円。そしてSQ値に対しては初日金曜負け、翌日月曜勝ちで1勝1敗、幻のSQ値脱却。先月も「6勝1敗の●○○○○○」だったからそうなってほしいもの。因みに月足陽線になれば「3月高→8月安」のアノマリーから脱却できる。もろもろ重なる20540円が潮目なのかも知れない。
日経平均株価は65円安の20554円と反落。商船三井、昭和電線が上昇、明治HD、ドンキホーテが下落。

19日(水):
経済産業省が少し動きだした。産業構造審議会の下に新たに「新産業構造部会」を設け、「新産業構造ビジョン」をまとめる。中身はAI(人工知能)、ビッグデータ、IoTなどのメリットデメリット。おそらく少し先の市場のテーマとなるもの満載。半年もすればまた騒ぎだすのかも知れない。
もうひとつの兆しは首都圏マンション販売動向。7月は4785戸で前年同月比13.3%増と7カ月ぶりの増加。月間契約率は前月比5%増の83.7%でほぼ完売状態。平均販売価格は5953万円で23年5ヶ月ぶりの高水準。インバウンド購入を含め、相続対策購入も相まってマネーが戻ってきた印象。ビジネスチャンスが拡大したのは金融機関も一緒。銀行の住宅ローンの新規貸出額は前年同期比10%増の3兆691億円。昨年4月の消費増税の影響は一巡。特に地銀、ネット銀行の増加が目立っているのが特徴。因みに銀行御貸し出しの4割を占めるのが住宅ローン。
その6月末の残高は116兆3838億円で過去最高。三菱東京UFJ銀行は2010年に廃止したテラーの制服を復活。さらに大成建設の時価総額は昨日一時1兆円を超えた。991年6月以来24年ぶり。10年国債利回りは0.37%、1年債の入札はマイナス0.247%で過去最低の落札利回り。発行体の政府は金利を受け取りながら借金ができることになるという不思議な構図。借り手が儲かる世界は異常に映る。信用買い残は555億円増加し3兆4028億円。いろいろ並べるとチョットバブルの兆しに見えてくる。それでもPERは16倍台、株式益回りは5.68%。上海の6%下落などそよ風くらいに思いたいところだが・・・。
日経平均株価は331円安の20222円と大幅続落で7月29日以来の水準まで下落。関電、東ガス、トランコムが上昇。ホンダ、ソニーが下落。

20日(木):
日経1面では「国債前倒し発行最大に」の見出し。2015年度に使うために2014年度に発行した国債は28.8兆円。前年比24%で過去最高となった。2012年度比率では2.5倍。解釈は「日銀の異次元緩和に伴う低金利が続くうちに資金を調達し利払い費に充当」。なんか政府と日銀の「出来レース」としての異例の金融緩和のように思えるのは気のせいだろうか。誰も懐が痛まない形ではある。しかし何十年も低金利を押しつけられた貯蓄者の本来もらえたはずの金利は莫大な金額。煎じつめれば、もらえた筈の金利を犠牲にして国家財政を救っている。あるいはもらえた筈の金利を犠牲にして不良債権を処理した。このカラクリに誰も文句を言わないからやり放題でもあろうか。そこに「巨鯨」の郵政も加わってくる。NISAはこのために出来たといっても良いのだろう。郵政、ゆうちょ、かんぽ3社合計の株主数は100万人に達するであろうとの皮算用。連結総資産は300兆円。全国24000の郵便局はセブンイレブンの17700よりも多い。ゆうちょ178兆円の貯金、かんぽ44兆円の契約額で個人金融資産の1割。初回の売り出しは1.5兆円との観測。配当性向50%以上は飴となるのだろうか。
日経平均株価は189円安の20033円と3日続落。 TOPIXは24ポイント安の1623ポイント。TOPIXの下落率は1.49%と日経平均の0.94%上回った。新高値銘柄数が新安値銘柄数を下回り、7月9日以来6週間ぶりの「逆転」。ソフトバンク、ファーストリテ、地所、三井不が上昇。日揮、住友鉱が下落。

21日(金):
アチコチと下落材料を探すもののつじつまは合わなくなってきた。ギリシャは時間の引き延ばしに成功。中国株安を理由にしてみたものの昨日の上海は反発して理由にならず。米利上げについてもFOMC議事要旨での世界の経済情勢に対する懸念が示された。FRBが9月に利上げを実施する可能性をめぐり疑念拡大という理解不能な解釈も聞かれる。
利上げ懸念が利上げ後退懸念へと後退。逆に言えば利上げがコンセンサスとなりサプライズなしになったということだろう。イエレン氏の思う壺になってきたのかも知れないが市場的には悪材料発掘の解釈に困った状態。だったらバレル40ドル台にまで下落した原油価格動向の方が理由になる。6年ぶりに5000ドル割れとなった銅価格だって同様。背景は「中国経済の減速懸念」。鉱山ストライキや火災などで生産が進んでいないのに価格は下落。ファンド至上主義の商品相場の影響が株式市場に及んだと考えた方がよさそうな気配だ。もっとも国内ではどうせ陰謀論的な外資系CTA(商品投資顧問)の先物売り崩し論が出るのだろう。
日経の表現は「一連の売りはどの証券会社を経由したのか。オランダ系のABNアムロというのがトレーダーたちの一致した見方。アムロは、世界の名だたる先物投資家を顧客として網羅しているという。日経先物の売買シェアはダントツのトップだ」。アムロが主体ではなく委託のCTAの商いという正しい見解。これがアムロが主体みたいな解釈が横行するから陰謀論が飛び交うことになる。だれが主体かを見間違うと、相場そのものも見間違う。所詮証券会社は注文が通過するだけの存在。アムロだニューエッジだと虚像を巨像化するのは少し愚かしい。ともあれ商品価格の下落で損失拡大の商品先物業者が赤子の手をねじるように株式市場で暴れている。その見方の方が良さそう。
アジア株の下落などを背景に日経平均株価は597円安の19435円と急落し5日続落。5月8日以来3か月半ぶりの19500円割れ。星光PMC、サンセイランディックが上昇。トヨタ、コマツが下落。値下がり銘柄数は1854銘柄。日経平均採用銘柄は北越紀州紙を除く224銘柄が下落。東証1部の売買代金は3兆1914億円。

(2) 欧米動向
17日にメリルリンチ日本証券は日本株の長期見通しを引き上げた。
2015年のTOPIXの目業水準は1720→1780ポイント。
理由
(1)4〜6月期の気魚決算が予想を上回った。
(2)保守的な為替レートを考えると15年末まで業績見通しの上方修正は続こう。
(3)業績改善で増配の可能性大。
そう考えれば外事の一喜一憂はいらないのかもしれない。

一方で、ゴールドマンの年末時点のS&P500の見通しは2015〜2100ポイント。
今後も横ばいを予想している。
理由
(1)もともとバリュエーションが高い。
(2)取るに足らない業績の伸び。
(3)米株投信・米格ETFなどからの資金流出。
(4)緩慢な経済成長。
日本の優位性がもっと論じられても良いのだろう。
因みに円安効果は多少継続。
輸出は数量ベースでは減少しているが、金額ベースでは10か月連続。

需給面でも空売り比率の大きさが目立っている。
空売りは本来買い戻し要因。
30%台は買い戻し期待が続いていると解釈したいところ。
むしろ空売り比率は低下して欲しくないと考えてもいいのかも知れない。

面白いのはアメリカ同様に株価の動きの鈍いアングロサクソン国家イギリスの動き。
昨日7年ぶりにシェールガス探査免許を発行した。
国内開発最大手やフランスのエネルギー大手などに27のシェールガス・在来種の新たな探査区域を認めた。
滞っていたのは環境面の懸念。
フランスやドイツなど多くの欧州諸国はシェールガスの水圧破砕法(フラッキング)使用を禁止。
一方英キャメロン首相はシェールガス開発に前向き。
エネルギー輸入への依存を減らし、新たな税収源を得る一助としたい方向だという。
イギリスは水圧破砕法に関する申請手続きを円滑に進めるため、計画ガイドラインを先週変更。
シェールで苦しむアメリカを横目に、満を持しての復活シェール。
ルールを変えてまで行うのだから勝算はあるのだろう。
教訓としては環境問題は政治と経済の問題ということだろうか。
この老獪な英国の動きは注視してみたいところ。

(3)アジア・新興国動向
中国の化学工場の爆発は政権基盤の不安定化へとつながろうか。年金での株式購入策などの導入が奏功するかどうかという局面。

【展望】
スケジュールを見てみると・・・。

24日(月)シカゴ連銀全米活動指数
25日(火)米新築住宅販売、CB消費者信頼感、独IFO景況感
26日(水)企業向けサービス価格、耐久財受注
27日(木)米4〜6月GDP改定値、ジャクソンホール会議(〜29日)
28日(金)消費者物価、失業率、家計調査、米個人所得、英GDP

結局、第1四半期決算を通過してみれば通期8%の経常増益。
ただ第1四半期だけでは28%の純利益増益。
第1四半期としての最高益は402社。
通期でもこの調子でいくならば第2四半期での上方修正に期待というところだろう。
キーワードは「円安・原油安・訪日客」。
押し寄せるマネーは産業だけでなく市場も一緒になってくるに違いない。
明るかったのは郵政3社の上場が9月10日に承認され11月4日(水)の予定となったこと。
純資産は10兆円超だが時価総額は7〜8兆円ということは多少は儲かりそうな設定になるのだろう。
NTT以来の大型上場だけに失敗は許されない。
ということは11月まで相場は堅調見通し。
セルインメイがなかっただけに秋の下落も気配は少ないとみたいところ。

土曜日経では「マネー萎縮、株安連鎖」の見出し。正念場となろうか。

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