10月5週
【推移】

26日(月):
週末金曜は大幅高。これで金曜は5連勝となった。単なるアノマリーに過ぎないとはいえ数え始めると気になる。月曜火曜の下落アノマリーも今週は消えて欲しいもの。ドラギマジックに加えて中国の追加金融緩和。抜き去る時には一気に駆け上がるのは相場と駅伝の鉄則。そんな感じになっての19000円台。控えているのがFOMCと日銀金融政策決定会合。世界のお付き合いを考えればどちらもノーサプライズでは許されない情勢とはなってきた。先週の日経平均株価は週間では約533円上昇。
週足・月足ともに陽線。25日線からは4.3%のプラスかい離。騰落レシオは128%台でやや過熱感も出て来たが相場のスピードの方が早い印象。空売り比率は33.9%まで低下。
松井証券信用評価損益率速報で売り方はマイナス10.090%。買い方マイナス8.612%と再逆転。因みに先週の世界の株価を見てみると上昇トップはドイツの6.8%。昨年末比では10.1%の上昇。次がフランスの4.7%で昨年末比は15.2%の上昇。3位ギリシャの15.2%で同マイナス13.8%。4位が日本のプラス4.7%で同15.2%上昇。NYダウは2.5%の上昇で8位だが年初来はマイナス1%。やはり今年も秋のストボフォーラムが底打ち反転タイミングだったことになる。5月高値のNYは3分の2戻り。8月高値の日経平均も自分では主体的に動けないものの後追いの動きに入るのだろう。
もっとも魔物潜む10月だが昨年は月足陽線、13年は陰線だったが12年11年と陽線。リーマンショック以降8年9年10年と陰線だったことに記憶が強すぎるということだろうか。
日経平均株価は121円高の18948円と続伸。ソニー、日立が上昇。アサヒ、郵船が下落。

27日(火):
日経平均株価は月曜に半値戻し。株価は反騰基調というものの中くらい。気分も中くらい。とはいえ713円下落した9月29日火曜日ザラバ安値16901円の日の無常観から考えれば立派に戻ってきた。あそこが分岐点・反発タイミングというのは結果論でしかない。株価というのは下げると底なし沼のように沈みそうに思えるもの。残念ながら今年初めて「これはヒョッとすると・・・」なんて思ったところが底打ち反転だった。しかも翌日から6連騰で約800円高。日々飽きずに市場を観察していても所詮そんなもの。無表情無感動の機械のように冷静でいることは必要なのだろうが、滅多に行えないもの。上がってくれば熱くなり、下がってくれば慄いて。
冷めたピザの砂をかむような市場ではある意味、情熱のほとばしった相場感覚を持ちたいものだが、実際は無機質で冷徹な相場観に軍配が上がるのだろう。体感温度の急激な上昇下落こそ敵の思う壺。その敵があちらこちらにいるから厄介なもの。
覚えておきたいのは10月15日から「上昇→上昇→下落」という日経平均のリズム。この順番でいくと火曜は下げの日。5連勝の金曜日と比べると火曜日はいつも分が悪い。
日経平均株価は170円安の18777円と反落。セブンアイ、高島屋が上昇。岩崎電、JXが下落。

28日(水):
場況というのは時として奇妙さを提供してくれるもの。10月23日時点の信用買い残が1035億円減少し3兆820億円。「この週の日経平均株価は533円(2.9%)上昇し、8月31日以来の水準を回復した」。逆張り行動の個人が株の上昇で利益確定売りが出たのだろうという観測は理解できる。
面白いのは引用されたコメント。「郵政株の抽選に応募する個人が購入資金を確保するために売りを出した」。信用買い残の減少の話題の中での売りは当然信用買いの手じまいを想像させる。しかし信用の枠を空けたところで、郵政の公募を信用で買えるわけではない。信用取引の益金を確保して郵政に応募するということあるかも知れない。あるいは信用担保を売却して現金を捻出するために建て玉を売却することもあろう。しかし信用買い残の減少が「郵政応募資金確保」というのは相当無理筋なシナリオ。
話題と市場をこじつけようとするからこういうコメントにすがってしまうのだろうか。単に「上ったから売った」の方がよほどスッキリする。
日経平均株価は125円高の18903円と反発。ファナック、信越化学が上昇。日立建機、キャノンが下落。

29日(木):
日経「私の履歴書」。JR東海の葛西会長の言葉は「国鉄改革で背負った過去債務は制御不能のリスクであった。その克服は『捨て身の積極経営』と『デフレ・ゼロ金利の天裕」が織りなした奇跡だった」。捨て身の積極経営は自画自賛としてもデフレ・ゼロ金利こそが追い風だったというのである。これは国鉄だけの話ではなかろう。90年代につぶれそうになった金融機関にとっても天裕。不動産会社やゼネコンにとっても天裕だった。だからこそ25年にもわたり低金利を維持しデフレに甘んじてきた。この国鉄民営化の歴史的証言こそがデフレの背景を見事に表現している。
因みに郵政上場直前にJR改革組の履歴書が掲載されたのも意味があることなのだろう。因みに葛西氏は安部さんを結構頻繁にあっているブレインでもある。遡れば25日にも「二つの天裕が重なって90年秋には新幹線鉄道保有機構の解体が決まった。一つはバブル経済のブームで本州3社の業績が思いのほか好調に推移。誰もが10年以内には無理だと思っていた上場基準を3社ともクリアする見通しとなったこと。・・・30年間機能し続ける前提で設計された特殊法人がわずか3年半で解体と決まった。
奇跡的に欠陥制度は消滅したが、過重な債務はそのまま残された」。
そして27日は「品川駅完成と全列車270キロ運転を踏まえた白紙ダイヤ改正が行われた。・・・品川駅の建設費は用地も含めて1000億円弱。全工費を2年で回収した勘定だった」。28日は「名古屋のJRセントラルタワーの着工が94年に伸びたことも思わぬ幸運をもたらした。建築費がバブル崩壊で下落。2000年の全面開業までの6年間に金利が大幅に低下した。この結果総事業費は3300億円の予定より40%近く少ない2000億円で済んだ。
オフィス・百貨店・ホテルの単年度黒字は5〜10年かかると想定していたが開業初年から黒字になった」。こういった低金利・デフレ恩恵論は滅多に聞かれない。それは潤った人たちは自慢げに「デフレのおかげで、低金利のおかげで」とは言えないからだろう。これは為替も一緒で「円高のおかげ」や「円安のおかげ」はほとんど聞かれない。
「円高のせいで」や「円安のせいで」と言う怨嗟の声はしばしば聞かれるのと対照的である。いずれにしても低金利・デフレは国鉄民営化を救った。そしてその後の背策は同社を成長させた。郵政もそうなるという幻想にはきわめて都合のよい歴史の表現であったということ。しかし幻想ではなく、その実現の可能性こそが今の相場の中核であると考えたいところ。そして政府機関も金融機関もゼネコンもデベロッパーももはや救済される対象ではなくなった。個人の預貯金金利を全国的に犠牲にしての生き残りだった25年。この必要性と呪縛がなくなったのだから、近々金利は上昇すると読んだ方が良いのだろう。
中国もこの日本の25年前の動きをしていると読めないこともない。7%成長から低下しそうな経済、そして債務を圧縮するための追加金融緩和。昨年11月に5.6%だった貸出金利は今年10月24日に4.35%まで低下した。これが続けば中国経済の救済と復活もアリと読めはしないだろうか。
日経平均株価は32円高の18935円と続伸。オークマ、山パンが上昇。スタンレー、DeNAが下落。

30日(金):
週末・月末。9月安→10月安のアノマリーは崩れた。次は10月高→来年2月高のアノマリーに期待。気になるのは前日37%だった空売り比率が41%になったことくらいだろうか。前日1239円だった日経平均採用銘柄のEPSは1245円まで復調した。
9月の完全失業率は3.4%で8月と同水準。有効求人倍率は1.24倍で、8月の1.23倍から上昇。1992年1月以来の高水準となった。市場予測と一致しておりサプライズはないが、悪くない数字。これでも「何らかの追加緩和策(次の一手)があるべきだ」という声があるから市場と言うのは強欲である。
「何らか」とか「次の一手」を具体的に示せないところが市場の限界でもあるのだろう。そして業績相場への移行をアメリカに次いで行おうとしているのに、金融相場にいたがる市場。変化を望んで変化を嫌がる姿勢は変わらない。ココが変われば市場の見通しも良くなるのだろう。結局日銀金融政策決定会合での追加金融緩和はなしで現状維持。一時株価は下落したものの補正予算3兆規模との観測報道を受け上昇幅拡大。
日経平均株価は147円高の19083円と3日続伸。鹿島、三菱地所が上昇。三井物産、ボルテージが下落。

(2) 欧米動向
今週イタリア郵政公社の株式の38%が売り出された。
初値は売り出し価格よりも3%上だったという。
イタリア郵政は郵便と貯金と保険を分離していないところは日本と異なる。
しかしあのイタリアが売り出し価格の3%上だったなら日本はもっと上の筈と考えたい。
というか、イタリアでさえ成功したとも言える。
思い起こされるのはスペインの電話会社テレフォニカの民営化。
あるいはアメリカのATTの株価の上昇。
NTT上場前にやたらと動いていたことが甦る。

ものごとはタイミングとはいえ、好材料に好材料は重なるもの。
まずはホワイトハウスと与野党が財政問題で合意。
財政赤字は向こう10年間で800億ドル近く減る見通しだという。
歳入が増えるのにどうして?と不思議だが医療・年金・社会保障支出が減るのが理由だという。
軍事費が拡大する中で財政赤字が減るマジックはおそらく医療費削減。
しわ寄せは一般庶民なのだろうが、国家的には楽になるという構図。
まあ財政破たんの可能性が減るだけ良しだろうか。
FOMCは事実上のゼロ金利据え置きで通過。
低金利継続好感での株高となった。
面白いのは12月利上げの可能性は否定されておらずむしろ可能性は高まったのに、それでも株高。
ドルは急伸して米国債利回りは大幅上昇となった。
結局市場は利上げを待っているということになる。
一方でECBはインフレ率が再び上昇するまでバランスシートの拡大継続で低金利維持の方向。
これは日本も同じスタンスだから一歩進んだアメリカ。
まだ追いかけられない日欧の構図となる。
おまけは中国に対するIMFの見通し、
中国の7〜9月成長率が6.9%だったことから「通年では7%近くになり、IMF見通しの6.8%を上回る可能性」。
そして「中国経済のハードランディングは想定していない」。
あちらもこちらもばら色満載チックな印象。
故事熟語でいえば、今までは「弱り目に祟り目、傷口に塩を塗る、泣きっ面に蜂」。
これからはおそらく個の反対なのだろうが、「泣きっ面に蜂」の反意語はなかなか見つからない。
単に「瘤の上の腫れ物」の状態としか言いようがないのだろうか。

米第3四半期のGDP速報値は年率換算で前期比1.5%増。
市場予想は1.6%増だった。
市場関係者は「FRBが景気を否定的に見る必要がないほど、良好な内容だった」。
これで金利先物が織り込む12月利上げの確率は50%まで上昇。
FOMC声明公表前の30%から急上昇した。
しかも24日までの週の新規失業保険週間申請件数は1000件増の26万件。
節目とされる30万件を34週連続で下回り労働市場は健全な状態で推移。
これを受ければ雇用統計は強い数字で米経済は復調気配。
12月の利上げアリでその後の株高シナリオアリ。
一足早く金融相場から業績相場へ移行する素地は整ってきた印象となる。

(3)アジア・新興国動向
ようやく来たかというのが米海軍の南シナ海での哨戒活動。
中国との完全友好の動きを英国が示し人民元のSDRも支持したのが21日。
優柔なオバマ氏もあそこまでの蜜月を見せられては動かざるを得なかったのだろう。
安部首相は遠くカザフスタンの地から「国際法に則った行動と理解」と支持の動き。
英中VS日米の構図が色濃くなってきた。
新聞論調は「米中の対立の新たな段階」。
軍事パワーからすればまだまだ米国に軍配があがる。
ただ今回は中国も面子があるだろうからにらみあいは継続観測。
穿って考えれば・・・。
90年代の軍事バブル→ITバブル→2000年代の不動産バブル→2010年代の資源バブル。
これがアメリカ経済繁栄の背景。
資源バブルの象徴であるシェールバブル崩壊の受け皿が、再び軍事バブルを想定しているのだろうか。
一方では揉めると思っていた債務上限引き上げ問題は共和党のベイナー下院議長が大筋合意。
2017年3月まで引き上げ歳出額も増加の方向。
国防費の強制削減の緩和などで800億ドル増加させるという。
アメリカの財政はまた傷むのだろうが、どうも動きは軍需バブリーな時代を迎えそうな雰囲気となってきた。
別々の記事を読み合わせえるとこういうシナリオになる。
結論は目先株高で良いのだろう。
それも軽薄短小ではなく重厚長大産業で。
因みに渦中の南シナ海南沙諸島は1945年の敗戦までは日本の占領地。
人ごとではないということもある。
今更東インド会社やジャーディン・マジソン商会の世界の話でもなかろうが・・・。

北京では「5中全会」が閉幕した。
中国共産党は「向こう5年間は中高速の経済成長を目指す」というのが結論。
マスコミは「2人の子供を持つことを認め数十年に及んだ一人っ子政策を廃止する」ばかりを報道。
たしかに大きな政策転換だし、育児関連などは潤うだろう。
それよりも労働年齢人口が減少していることが課題。
今後今後5年間で経済成長に占める消費の割合を大幅に高めるという方針も出された。
経済政策の的を絞った調整を拡大。
国民1人あたりの所得を2020年までに2010年比で倍増させるという。
日本の60年代の所得倍増計画を彷彿とさせるが、模倣の好きな国だけになるほどの感。

【展望】
スケジュールを見てみると・・・
30日(金)日銀金融政策決定会合、日銀展望レポート、失業率、消費者物価指数、米個人所得、シカゴ購買部協会景気指数
週末:中国製造業PMI、トルコ総選挙、米冬時間入り
2日(月)米ISM製造業PMI、建設支出
3日(火)文化の日で休場、米製造業受注、新車販売
4日(水)マネタリーベース、郵政上場、米ADP雇用レポート、ISM非製造業PMI
5日(木)日銀政策決定会合(10月6.7日)議事要旨
6日(金)景気動向指数、米雇用統計、消費者信用残高

11月過去25年は15勝10敗で2位。

2日(月)ポイントの日
4日(水)ECB理事会
11日(水)ベテランズデーでNY為替休場
12日(木)新月
13日(金)SQ
18日(水)ECB理事会
19日(木)ポイントの日
20日(金)海王星順行開始
25日(水)ポイントの日
26日(木)満月、サンクスギビングデーでNY休場
27日(金)ブラックフライデーでNY半日立ち会い
30日(月)サイバーマンデー

イスラムのヒジュラ暦では10月14日が正月。
昨年までその後10日は6連勝だった。
今年の10月14日。
日経平均17891円→10月27日18777円。
NYダウ16924ドル→10月27日17581ドル。
これで7連勝となった。
新年度はムラッサムというがまさにムラッサムアノマリー成立だった。
毎年買い戻し中心という解釈だがどうなのだろうか。
もうひとつのアノマリーは「セルインメイ」。
正式には「Sell in May, and go away. don’t come back until St Leger day.」
5月に売って、相場から離れる。
セント・レジャー・デー(9月の第2土曜日)まで戻ってくるなという格言。
言いかえると「WORST SIX MONTHS」と「BEST SIX MONTHS」。
2000年以降で見てみると5月1日→10月31日(ワーストの方)は9勝7敗。
11月1日→4月30日(ベストの方)は12勝3敗。
冬に株を持つシナリオの方は正しそうだが夏に債券を持つシナリオは微妙なところ。
そして10月最終週の昨年の値動き。
月曜プラス火曜マイナス水曜プラス木曜プラス金曜プラス。
水曜まではプラス・マイナス・プラスでその通りの動き。
木曜もプラスの可能性大なので昨年並みなら明日もプラスと読みたいところ。
しかし10月15日以降の2進1退のリズムでいくと今日はプラスで明日はマイナスの流れ。
10月30日金曜は前年の流れが勝るのか、ここ数日のリズムが勝るのか。
日銀金融政策決定会合次第だが、強かった鉱工業生産で現状維持となる事を市場は一番嫌がるのだろう。

因みに特異日を見てみると・・・。

10月4日(投資の日)は上げの特異日
10月16日は上げの特異日
11月4日は上げの特異日

(兜町カタリスト 櫻井英明)

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