《マーケットストラテジーメモ》02月02週

【推移】

5日(月):
オーメンでもあるまいに四捨五入すればNYダウは666ドル安の週末。2008年12月以来約9年ぶりの下落幅となった。下落率としても約1年8カ月ぶりの大きさでトランプ政権発足以来の大幅安。週足でもNYダウとS&P500は2016年1月以来。NASDQは2016年2月以来の大幅な下げを記録した。
1月の米雇用統計は非農業部門の就業者数が前月比20万人増。市場予想の18万人増を上回って着地。1時間当たり賃金の平均は0.3%(9セント)上昇し26.74ドル。2009年6月以来の大幅な伸びとなった。
FRBが年内の利上げペースを加速させる可能性があることが意識され米10年債利回りは2.8450%。2014年1月以来の高水準。「株式よりも債券への投資妙味が高まった」との解釈だ。

しかし益回りの5%台と比較して本当に有利かどうかは定かではない。「全株式のPERが22倍台で株式の割高感が目立ってきた」という声もある。これも本当?という気がしないでもない。気になるのは3市場の売買高の低調さ。20日平均が73億株だが53億株というのは売り浴びせという訳ではなかろう。買い控えによる下落とも解釈できなくはない。むしろ月初の雇用統計通過というイベントドリブンと考えるべきなのかも知れない。

週間ベースでNYダウは4.1%安、NASDAQは3.5%安、S&P500は3.9%安。それぞれ5週ぶりの反落。先週の日経平均週間では約357円の下落となり、週足では4週連続陰線。週間ベースで日経平均株価は1.5%安、TOPIXは0.8%安でともに2週続落。
東証マザーズ指数は2.0%安、2週ぶり反落。日経ジャスダック平均は0.7%、11週ぶり反落。東証2部指数は0.0%安、6週ぶりの反落。泣きっ面に蜂みたいなのがファーストリテの1月月次。国内の既存店売上高は前年同月比2.4%減。「全般的に冬物商品の在庫が少なかったことが響いた」との解釈。客数は5.0%減、客単価は2.6%上昇での着地となった。
ソニーは今18年3月期業績見通しを増額修正。営業利益見通し7126億円(前期比2.7倍)は市場予想の6676億円を上回った。空売り比率は43.3%で7日連続の40%越え。昨年8月の11日連続以来だ。細かいことを気にすればNYは大幅安の割には出来高が増加していない。通常70億株台のところが53億株。
セリング・クライマックスではないという思考もあろうが、どうも不自然だ。スキュー指数は126.4とさほど上昇していない。本来ならば昨年9月の145とか10月の150程度はあってもおかしくはない。

NY下落の要因とされるのは金利上昇懸念。確かに3%を伺う域となった。しかし悪い金利上昇ではなく、景気が良いからこその上昇。雇用統計の悪化を気にした頃と比べれば明らかにストラテジーが違ってきたということでもある。そして9月安値期日まであと4週間。上場企業の業績は悪くない。約7割の企業で純利益が前年同期比増加。18年3月期通期は2年連続で最高益更新する見通しだ。

そしてGPIF。運用する公的年金の収益額が2017年10〜12月期で6.0549億円に増加。運用利回りは3.92%。6四半期連続の黒字となった。運用資産額は昨年12月末で162兆6723億円。4〜12月期の収益額は15兆6219億円。年度で最高益となった14年度の15兆2922億円を超えた。どう見ても景気も業績も悪くない。それでも下がるのだから株は魑魅魍魎が支配する世界でもある。
トランプショック(2016年11月9日)の919円安以来の下落幅。下落率は2.55%でNYダウ平均の下落率2.54%とほぼ一緒。「待っていたような下落で崩落相場がスタートすることはない」と市場関係者。「金利上昇への警戒がくすぶるが、株安が続けば、米国には利上げペースを落とすという選択肢がある。ここから値幅を伴った下げが続いた場合には、3月の利上げが見送られるとの見方が強まりやすい」という見方もある。

マザーズ指数や東証2部指数も25日線を割り込んだ。でも日経ジャスダック平均は25日線を割り込まなかった。結果論的には「買い方信用評価損率のプラスと東証時価総額がGDPの1.5倍」というのはやはり越えられなかった。
日経平均株価は592円安の22682円と大幅に続落。下落幅は2016年11月9日の919円安以来、約1年3カ月ぶりの大きさとなった。一時下落幅が600円を超える場面があった。後場は下げ渋る場面もあったが、225先物にまとまった売り物が五月雨的に散見され日経VIは20%台まで上昇した。TOPIXも40ポイント安と続落。 東証1部の売買代金は3兆5671億円。
東証1部の値下がり銘柄数は1930と全体の93%。値上がりは118銘柄。ソニー、ホンダ、宇部興、アイスタイル、GSIクレオスが上昇。ファーストリテ、ファナック、ソフトバンクの3銘柄で日経平均を120円近く押し下 げた。フジクラ、日コークス、プリマが下落。

6日(火):
週明けのNYダウは前週末比1175ドル安の24345ドルと急落し3日続落。昨年12月8日以来ほぼ2カ月ぶりの安値となった。リーマンショック渦中の2008年9月29日の776ドル安を上回り下落幅は史上最大。指数構成30銘柄が連日ですべて下落。10年国債利回りが一時2.88%と上昇。「企業の資金調達コスト増加と個人消費縮小への警戒感が拡大。「長期金利の上昇基調をきっかけにした投資家心理の悪化が継続。相対的に運用リスクの高い資産である米株式の持ち高を手じまう売りもの優勢」との解釈。「売りが売りを呼んだ」と言う声も聞こえる。一時0.43ドル安まで戻した場面もあったが午後に下落を拡大。わずか10分で1000ドル下落したという。NYダウは24000ドルを割り込む場面もあり下落幅は一時1597ドルまで拡大した。取引時間中の過去最大の下落幅は2015年8月24日の1089ドル安(終値では588ドル安)だった。

2010年5月6日のフラッシュ・クラッシュの急落の際は998ドル安(終値では347ドル安)だった。NASDAQ総合株価指数も大幅に3日続落。273ポイント安の6967ポイントと昨年12月29日以来ほぼ1カ月ぶりの安値水準。S&P500は全11業種が下落。
VIX指数は37%台まで上昇。FRBパウエル新議長の多難な船出という声もある。もっともかつてのブラックマンデーはグリーンスパン新議長の船出2週間後というのも歴史。NYダウが約20%下落した翌朝、FRBは「 流動性を提供する準備ができている」という短い声明を発表。NYダウは4%反発した。ウォール・ストリート・ ジャーナルは「ブラックマンデーの5週間後に新しい議長は試験に合格した」と評価したのも歴史だった。夜中に起きたことはNYダウの史上最大の下落。

シカゴ225先物も大証日中比1245円安の21405円まで下落した。25日線(23537円)からのかい離はマイナス9%レベルだ。200日線(20938円)も覗ける水準だ。罫線が崩れると罫線は役に立たなくなりがちでもある。ただ、株価の基本の業績は悪くない。

日経平均採用銘柄のPERは14.47倍でEPSは1567円まで増加してきた。21938円がPER14倍割れ水準だから既にPERは13.65倍だ。空売り比率は昨日44.5%と昨年の限界値45.2%まであと少し。「声も出ず、息を飲む感覚ですね」と市場関係者。「踊らない、騒がない、諦めない」というのがこういう時の鉄則。

日経平均は20回目の4ケタ安。「上昇には連動できないことも多いのに、下落にはしっかり連動する」という形だった。「一時は歴代第3位の下落幅(1603円安)まで崩落。200日移動平均線に一時突っかけたものの結局は引けにかけて下げ渋った日経平均。
前日比6割増の5.6兆円(13年5月以来の水準)まで膨れ上がった東証一部売買代金。値上がりが5銘柄しかなかった東証マザーズ(東証1部は35銘柄)。めったに見られない出来事があれこれ起こった」という声。「安値からは切り返し。トヨタが上方修正を発表。そろそろリバウンドは期待できる局面」というのも引け後の声。現実は大きく崩れた罫線というところ。3日で1800円の下落。1月23日高値からの下落率が10.5%(NYダウは8,5%)。取り戻すには結構時間も必要だろう。

日経平均株価は1071円安の21610円と大幅に3日続落。下落幅は2016年6月24日のブレグジット下落以来の大きさ。日経VIは35.54まで上昇。リスク回避の警戒感が拡大した。東証一部の売買代金は5兆6483億円。東証一部の値下がり銘柄数は2027で全体の98%。値上がりは35銘柄。全面安の中で上昇したのはマルハニチロ,三菱自など。

7日(水):
NY株式市場は連日の値動きの荒い展開。NYダウの日中値幅は1168ドル以上となり 結局は567ドル高と大幅に反発した。2日で1840ドル下げた割には物足りない印象だ。昨日の一辺倒のウリから転じたことで「ここ数日間は市場で大きな変動がみられたが、経済のファンダメンタルズは非常に強固。これは米国だけでなく世界経済全体に言える」という見方も出てきた。「アルゴリズム高速取引でボラティリティーが増加。インフレ要因だけで相場が動いているとは考えにくい」という声もある。警戒感は強いものの、多少の落ち着きを取り戻してきたとくことだろう。
VIX(恐怖)指数は29.98まで低下した。スキュー指数は129.61。下落の端緒となったのは金利上昇だったが、10年国債利回りは一時2.6%台まで低下。2.755%で終了しており2.8%台からは低下したから変な推移。「株価の変動に伴う安全資産としての米国債選好」という面白い解釈だ。
ドルは伸び悩み、ドル円は109円台。昨年12月の貿易統計は赤字が拡大。金額ベースで9年ぶりの高水準となったが影響は限定的だった。スーパーボウルでNFCのイーグルスが勝ったことなど忘却の彼方ではある。

2月2日現在の信用買い残は1383億円増加し3兆4304億円。2015年8月の3兆5870億円以来2年5ヶ月ぶりの高水準。信用売残は9363億円。「待ちに待って、我慢に我慢を重ねた投資家が買うと相場が転換する。この経験則は、今回も当てはまった」という皮肉な声も聞こえてきた。日経平均は引け際に500円ほど戻した。
しかし安値水準で終わっていれば25日線からのかい離離はマイナス10%。目先底打ちレベルには到達していた。結局はマイナス8%レベルだがそれでも第二次限界水準ではある。あるいはみずほ売買高は4億株。反転レベルの5億株に今一歩だった。空売り比率は42.6%と前日の44.5%から好転。45.2%の昨年ピークにこれももう一歩だった。

騰落レシオは84.69%。70%割れの反発水準まではこれもあと一歩。日経VIは31.02%と急上昇。日経平均採用銘柄のPERは13.81倍。株価の下落とEPSが1564.83円(前日1567.52円)まで上昇したことが背景だ。

因みに東証1部単純平均は2773円。2016年6月安値は2423円。その後の高値は1月23日の3059円。636円の上昇は26%の上昇率。しかしこの間日経平均は63%上昇していたのが歴史だった。しかし今回の下落率は両方共ほぼ10%と同じレベルだから痛みは大きい。月曜NYの666ドル安(665.75ドル)。オーメンという声も聞こえた。S&P500が666ポイントで底打ちしたという事実もあるが、多少はこだわる数字だった。
端緒は米国債利回りの上昇。過去1945年以降米国債利回りが上昇した局面は21回。S&P500はそのうち18回上昇。下落は3回のみというのが歴史。「金利上昇は米企業のPER上昇を妨害」。「円高は日本企業の予想利益を低下させる」。小賢しい意見も聞かれるが、日本株の予想益回りは昨日6.38%(前日6.08%)まで上昇した。

気になったのは火曜日経朝刊の「1月資金供給量年率4.1%減。黒田日銀で初の減少」。マネーストックが減少するのは2012年11月以来。背景は国債買い入れ量の減少。当然、日銀の政策変更のサインと読む向きもあろう。
しかし重要なのはマネーサプライの減少は株安に結びついてきた歴史。2006年に減少に転じた時はパリバショック、リーマンショックに向かった。これは結構イヤな報道だった。

日経平均はNY高を受けて390円高でスタート。前場743円高まで買われた前引けは660円高。昼休みに失速。後場は下落は幅を拡大し大引け直前には16円高まで上昇幅を縮小。あわやマイナス続落かとの吐息の直後に35円高。今年初の水曜高となったが、高値からの下落幅は708円。体感的には下落だった。

日経平均VIも30.97(前日31.02)と高水準のままだった。3空は開けなかったが陰線4本。「終わりの始まり」と「調整の一環」の同居の渦中というところだろうか。値上がりトップがGウィンで値下がりトップがデサント。平昌五輪を控えてのご愛嬌だったのかも知れない。日経平均株価は35円高の21645円と反発。
前場は一時700円超上昇した場面もあったが昼休み時間中に株価指数先物が上げ幅を縮小。アジア市場の軟調とGLOBEXで米国株価指数先物が軟調に推移していることも重なり後場も上昇幅の縮小を継続した。

東証1部の売買代金は4兆5260億円。東証1部の値上がり銘柄数は1165と全体の56%。日中値幅(高値と安値の差)は726円となり、6日の1198円に続いて荒い値動きだった。値下がり銘柄数は821と全体の39%。ソフトバンクG、トヨタ、信越、花王、第一三共、ドコモ、SUMCOが上昇。JT、ファナック、デンソー、ファース トリテ、NTTデータ、リコーが下落。

8日(木):
NYダウは24892ドル→25293ドルと400ドル近く上昇。その後終値は24893ドルと前日比19ドル安。ボラタイルに動き結局は元の黙阿弥となっての小幅反落。VIX(恐怖指数)は27.73まで低下した。逆にスキュー指数は136.90まで上昇したのは気にかかる。
ニューヨーク連銀のダドリー総裁のコメント。「株価変動や仮想通貨に投資する金融商品について市場安定へのリスクという点から監視する必要がある。1987年のブラックマンデー当時はポートフォリオ・インシュアランスと呼ばれる商品が負の連鎖を惹起。世界的な株安につながった。株式市場が過去数日間、やや上下に振れている。ボラティリティーが上がることで投資家は株式を売るのかという問題がある。もしそれが本当であれば、それは将来においても株価の振れ要因となり得る」。金融機関に対する規制強化は、本来ネガ要因となろうか。

一方で共和・民主両党の指導部は上院で今後2年間の予算方針を巡り超党派で合意。国防費や一部政府支出の上限引き上げのほか、インフラ整備やオピオイド(鎮痛剤)乱用問題への対応向け資金の提供などが盛り込まれている。2カ年にわたる3000億ドル規模の予算方針。ホワイトハウスは、合意に伴い債務上限が2019年3月にかけて引き上げられると発表した。もしも株の急落局面でなかったら8日に期限に向けて議会がここまで努力したかどうかは微妙。「絶妙のタイミングの急落だった」という声も聞こえる。

トランプ米大統領は「経済が好調なのに株安になるのは大間違い。昔は好材料が伝われば株価は上げた。今では好材料が伝わると株価は下げる。大間違いだ。経済に関してこれだけ良いニュースがあるのに」とコメント。結構役者である印象だ。

債券価格は下落し利回りは上昇。10年国債利回りは2.830%。「FRBの債券買い入れ縮小に伴い、財務省が今年、国債発行を大幅に増やす方向。これも国債への不安要素。FRBの動きや供給増に伴い利回りの上昇はあり得る」という見方だ。ドルは主要通貨バスケットに対し3カ月強ぶりの大幅高。背景は「ECB理事会メンバーが米国のドル安操作に言及」したからとの観測もある。ナスダック取引所は本社をマンハッタンのダウンタウンからタイムズ・スクエアに移転すると発表。「ブランド力が高まり、顧客には比類ない体験を提供できる」というのが移転の意義。
現在の5倍の面積になるという。あとで振り返った時の転換点になるのかも知れない。

2月2日時点の裁定買い残は4741億円減少し2兆3594億円。減少は4週連続。タイムラグを想定すると、自戒発表時には結構カラカラの邪魔にならない水準だろう。裁定売り残は203億円増加の5238億円。
空売り比率は40.9%(前日42.6%)と低下。心の支えは日経平均採用銘柄のEPSの増加。1592円74銭(前日1567円52銭)まで増加してPERは13.59倍だ。

「溶けゆく境界もう戻れない」という日経元旦朝刊トップ見出しが結構染みてきた印象。4〜12月期決算集計状況。第3四半期売上高9.5%増、同経常利益20.6%増、同純利益34.7%増。通期売上高7.4%増、同経常利益15.2%増、同純利益23.6%増。245円上昇して一応下げ止まった木曜の日経平均。200円の動きでも「わずか」という表現になるのだからボラの上昇感は大きかった。

日経平均VIも28.07(前日30.97)まで低下。東証1部の売買代金が3兆5400億円(前日4兆5200億円)まで低下。「売り圧力の一巡」という声も聞こえた。日足は5日ぶりに陽線になった。26週線(21836円〉を上回ったことで罫線の悪化に歯止めはかかった格好。52週線は20703円だ。
しかし東証1部の新安値銘柄43に対し、新高値銘柄21と逆転状況継続。病はまだ治っていないという感じだ。

日経平均株価は245円高の21890円と続伸。「割安感が強まった好業績銘柄に対し、国内機関投資家や個人が押し目買いに動い」との観測。後場中頃までは株価指数先物に売りが重なり、日経平均は上げ幅を4円程度まで縮める場面があった。

日経平均の日中値幅は327円。前日の726円からは縮小した格好。米株価指数先物が上昇したことで投資家心理がやや改善。日経平均の上昇幅は一時300円を超える場面もあった。もっとも外部環境には不透明感があり、大引けにかけて上昇幅を縮小させた。
東証1部の売買代金は3兆5495億円。東証1部の値上がり銘柄数は1485、値下がりは509銘柄。ファナック、東エレク、資生堂、コマツが上昇。
明治HDが5日続落。SMC、ソニー、スルガ銀が下落。

9日(金):
NY株式は再度の大幅下落。NYダウは100ドル超。NASDAQが200ポイント超。S&P500が100ポイント超の下落となった。NYダウは史上最高値(26.616.71)から10.4%。NASDAQは同(7505.77)から9.7%の下落、S&P500は同(2872.87)から10.2%の下落。引けにかけて下落幅を拡大する傾向にあるのが特徴。8日終値段階でS&P500は3.8%、NYダウは4.2%の下落となった。「10%以上の下落は調整局面入り」との声も聞こえる。S&P500種の調整局面入りが前回確認されたのは2016年1月。原油安を巡る懸念を背景に13.3%下落していた。昨日は市場関係者が節目とみていた6日の日中安値(2593)を割り込み年初来では約3.5%安。
株式は1月第1週から第3週にかけて大幅上昇。投資家は過度の楽観ムードにあった。流動性が問題視されていた市場は外部のあらゆるショックに影響を受けやすい状態。そのショックが金利上昇だった」とは後講釈だ。単純に言えば「国債増発による金利上昇懸念」ということになる。もっとも「10%の株価調整は長年経験してこなかった」は歴然たる現実。減税と歳出拡大で米国債務は拡大。インフラ投資等で経済成長は上向きGDPは増加。同時にFRBが金利を引き上げていく可能性は大きい。そして世界各国中銀は金融緩和という刺激策が引き潮ムード。「債券が市場に供給されれば、これらの供給すべてを吸収するに十分な需要はないのではないかとの懸念は大きい」との解釈だ。

国債利回りは上昇。10年債は一時2.88%に迫った。「債券と株式に循環的な相互作用が見られる。金利が上昇すると株安。株安になると金利が低下。金利の上昇がどの時点で経済成長の鈍化に波及するのか見極めようとしている」との見方。切迫感のないコメントだ。株式・債券市場が再び荒れ模様となるドルは上げ幅を縮小する展開。「ドルの失速は弱気相場に入っているという見方の傍証」という声もある。
VIX(恐怖)指数は33.46まで上昇。VXV(3ヶ月先の変動率)は28.13だ。スキュー指数が130.92まで下がっているのはすこしだけ明るい材料。

1月第5週の海外投資家は4週連続で売り越し。売越額は3525億円。前週は3560億円の売り越し。個人投資家は2週連続の買い越し。買越額は2733億円。2017年3月第4週の3266億円買い越し以来の高水準。信託銀行は3週連続で買い越し。買越額は1787億円。先物では、海外投資家は2週連続で売り越し。売越額は7950億円。2015年12月第2週の1兆1068億円の売り越し以来の大きさだった。現物株と合わせた売越額は1兆1476億円。証券会社の自己売買部門2週連続の買い越し。買越額は6718億円。

Quick調査の2月2日時点の信用評価損率は▲4.77%と3週ぶりに悪化していた。空売り比率は45.7%(前日40.9%)。昨年4月6日と9月5日の45.2%を上抜けてきた。株価上昇で空売り比率の上昇は良くない傾向だ。2016年6月9日のバッケンレコード47.0%も間近。11日連続で40%を上回ったのは昨年8月以来の記録だ。

日経平均採用銘柄のPERは13.50倍。EPSは増加し1621.55円(前日1592.74円)。昨年大納会の1511.61円からは約100円の増加で本来は心の拠り所となる数字だ。21080円でPER13倍を割れることになる。推定SQ値は21190円11銭。12月SQ値は22590円、1月SQ値は23723円だった。先週末終値は23274円、今週の週足陽線基準は22682円。5日の安値21078円を割るかどうかが課題。記憶に残る週となる。日経平均株価は508円安の21382円と3日ぶりの反落。昨年10月18日以来4カ月ぶりの水準。主力株中心にほぼ全面安の展開。3連休控えでの様子見モードもあり、押し目買い姿勢も見られた。

日経平均株価は週間で1891円下落。下落率は8.1%。2016年以来の下落率。下落幅はリーマンショック以来。東証一部の売買代金は4兆17億円。東証一部の値上がり銘柄数は244。値下がりは1796銘柄。テルモ、資生堂、ソフトバンクが上昇。コマツ、国際帝石。JXTGが下落。

(2) 欧米動向
長い時間軸で見た相場。

NYダウはトランプ当選以降1年余りで42%上昇。
「株価水準はバブルではないが急上昇はちょっとスピード違反」との声。
因みに・・・。
NYダウは過去120年で年率6%上昇。
過去40年間で26倍、年率9%の上昇。
1ケタと2ケタではケタが違う。
一方日経平均株価。
1950年のボトム(1950年1月31日の92.6円)。
1989年のピーク(1989年12月末の38915円)までの40年で約400倍。
平成の30年間では株価は下落(1989年1月末31581円→現在)。


「今回の下げは不思議なことばかりである」と市場関係者。
NYダウ平均の2月1日終値→2日〜5日ザラバ安値の下落幅は2407.90ドル。
日経平均の2月2日終値→5日〜6日ザラバ安値の下落幅は2407.11円。
母数が似たような水準だから、下げ幅が似てくるのはわかるが、日経平均の方が先に下げている。
火曜のNYダウのザラバ安値は前日比マイナス567.01ドル。
これがプラス567.02ドルまで切り返して終わっている。
567から567へ。
偶然なのだろうが、567の並び数字。
加えれば・・・。
昨日の日経平均終値は「21645.37円」。
並び替えれば「1234567」。
何の因果もなかろうとは思うが、洒落た読みもあるものだ。

「ドル安、債券安(金利上昇)、株安」。
いつか来た道ではある。
過去のケースが3回紹介されていた。
(1)70年台後半
物価上昇と景気悪化が同時進行する「スタグフレーション」の進行。
株価は長期低迷。
「アメリカ株は死んだ」とさえ言われた。
(2)87年=ブラック・マンデー
貿易と財政の「双子の赤字」の塗炭の苦しみ。
製造業の競争力低下が課題だった。
ドルは歴史的低水準だったので下値がなくインフレ不安は小さかった。
GDP成長率は4%と底堅く一時的株価下落で通過。
(94年)
IT革命の勃興期。
新たな担い手が経済を支えた。
ダウの下落率は4%程度。
ただ金利上昇→新興国から米国へのマネー還流→最終的にはメキシコ通貨危機に。

金利について「新債券王のガンドラッグ氏」のコメント。
「米長期金利が2.63%を超えて上昇すると上昇が加速。
株価を押し下げ始める」。
この2.63%は2016年12月5日のトランプラリー時の最高利回り2.639%だ。
これを上抜けて2.8%台になったからこそのサプライズ。
次は3%が基準になるのだろうか。


(3)アジア・新興国動向

先週の世界の株式相場は主要25の株価指数のうち全指数が下落。
上位1位インドネシア週間騰落率▲1.86%、2位タイ▲2.24%、 3位マレーシア▲2.71%
4位インド▲3.03% 。
下位25位中国▲9.60%、24位香港▲9.49%、23位ベトナム▲9.15%、
22位日本▲8.13%、15位米国▲5.21%。

【展望】

スケジュールを見てみると・・・

9日(金):マネーストック、第三次産業活動指数、オプションSQ、中国消費者生産者物価、韓国平昌五輪開幕
12日(月):建国記念の日の振替休日で休場、米予算教書
13日(火):国内企業物価指数、台湾休場(〜20日)
14日(水):10〜12月GDP、首都圏マンション販売、米消費者物価、小売売上高      
15日(木):機械受注、米生産者物価、鉱工業生産、NY連銀製造業景況感、フィラデルフィア連銀製造業景況感、中国休場(〜21日)、韓国休場(〜16日)
16日(金):米住宅着工件数、ミシガン大学消費者信頼感、北朝鮮金正日総書記生誕76周年

所詮東京市場は「炭鉱のカナリア」なのだろうか。
税制、経済、あるいはバブル崩壊処理など常にモデルケースを担ってきたのが日本。
仮想通貨のコインチェックの問題だってそんなケースの印象だ。
株式市場も成熟した後のトレンドを模索させられているのかも知れない。
日本株の位置づけは「世界の景気敏感株」。
かつては「米国の利上げ先送り観測=景気減速懸念)は毒ガスだった。
炭鉱のカナリアの日本株が最もダメージを受けた」。
「だから・・・。
世界景気の先行きに懸念が生じると真っ先にとにかく売られる」というのは過去の解釈。
今は「五里霧中の未曾有の域での未体験ゾーンの開拓」みたいなものだろう。
今度は好材料と悪材料の解釈の違いという点でのカナリア。
「上場基調の悪材料は買い」というのが鉄則。
だが、好材料がウッテ返しで悪材料になっているのが気にかかる。
そもそもカナリアは美しい声で鳴くもの。
歌を忘れたカナリアに成り下がっては行けないだろう。
日経平均株価が2万円を回復した昨年6月以降、先行き警戒感が高まるのは3回目。
「焦点となる米長期金利の上昇は好調な景気を裏付けるのか。
転機を示唆するのか」というのが証券マスコミの論調。
「3度目の正直」なのだろうか。
あるいは「2度あることは3度ある」なのだろうか。
「2度あるころとは3度ある」は偶然の産物。
「3度目の正直」は必然という考え方もある。
ベイズの定理(事象Aが起きた後での事象Bの起きる確率)では・・・。
「2度あることは3度ある」は75%の確率で起こる。
逆に「3度目の正直」は25%の確率だ。

(兜町カタリスト 櫻井英明)


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