《マーケットストラテジーメモ》11月3週

【推移】

5日(月):
週末のNY株式市場は下落。NYダウは一時300ドル近い下落となった。背景は中国経済の鈍化と原油価格の1%近い下落との解釈。「原油が市場を揺らしている。原油価格がさらに下げれば、世界経済の成長が鈍化する新たなサインだ」という声も聞こえる。中国国家統計局が発表した10月の生産者物価指数(PPI)上昇率は前年比3.3%。9月の3.6%から悪化。改めて貿易摩擦懸念が浮き彫りになった格好だ。インフレ懸念が再燃した。

10年国債利回りは3.19%台。12月の利上げ確率は76%。イタリアによるEUへの予算案提出、アメリカのベテランズデーなどを控えて様子見モード。日中値幅は大きかったが終値ベースはほぼ全週末比変わらずの展開。

日経平均株価は19円高の22269円と小幅反発。上海株の6日ぶりの反発、ドル円の114円台を好感して買い物優勢の展開。ただ上値は重かった。ダイキン、エーザイが上昇。TDK、日揮が下落。


6日(火):
NYダウは10月24日以来となる600ドル超の下落幅となった。NASDAQは300ポイント超の下落で3日続落。原因と目されたのは3日続落のアップル。
同社に顔認証センサーを供給するルメンタム・ホールディングスが「大口顧客から出荷を大幅に減らすよう要請を受けた」として10〜12月期の業績見通しを下方修正。大口顧客はアップルと想定され「iPhoneXSなど新モデルの販売不振が警戒された」との解釈だ。アップルは5%強の下落。マイクロソフト、アマゾン、アルファベット(グーグル)など主要ハイテク銘柄も下落。

マレーシアの政府系ファンドによる巨額の資金流用に前CEOが関与した疑いからゴールドマンは7%超の下落。アップルとゴールドマンの2銘柄でNYダウを185ドル押し下げた格好だ。

日経平均は寄り付き384円安。9時21分に一時785円安で21500円割れの安値を付けて一進一退。日経平均、TOPIXとも前日回復した25日線を再び割り込んだ。日経平均株価は459円安の21810円と大幅反落。NYの下落を受けて800円近く下落した場面もあったが後場にやや戻した。ただ日足のクジラ幕は継続。ソフトバンク、資生堂が上昇。ファナック、ファーストリテが下落。

7日(水):
NY株式市場はNYダウとS&P500が小幅続落、NASDAQはごく小幅に反発。前日大きく下落したハイテクセクターは買い戻しの動きでしっかり。国家経済会議(NEC)のカドロー委員長が「政府が通商問題を巡り中国と協議を再開した」とコメントしたことも好感。ただインドネシアでの墜落事故をめぐりボーイングが下落した。

WTI原油先物はバレル55ドル台まで急落。下落率7.1%は3年ぶりの水準だった。過去最長の12日連続安で昨年11月以来の安値。相変わらずエネルギーセクターが重荷となった。11月9日時点の信用買残は132億円減の2兆9905億円。5週ぶりの減少。信用売残は396億円増の7549億円。7週ぶりの増加だった。

日経HVは25.4、日経VIは22.35。日経平均採用銘柄のPERは12.32倍。10月29日の12.33倍を下回った。7〜9月期のGDP速報値は、実質成長率が年率換算は、1.2%減で着地。内需、外需ともに減少し2四半期ぶりのマイナス。

日経平均は35円高の21846円と小幅に反発。中国景気の減速懸念で一時下落に転じた場面もあったが大引けにかけて持ち直した。TOPIXは4日ぶりの反発。ソフトバンク、東エレが上昇。大塚、ファーストリテが下落。

8日(木):
NY株式市場は下落。NYダウは4日、S&P500は5日続落。「来年から民主党が下院の過半数を握ることで規制が強化される可能性がある」との懸念から金融セクターが足を引っ張った。
またアップルは依然下落しており5日続落。過去最高値からの下落率は20%を越え調整相場入りとの声もある。カリフォルニアの山火事で過失の可能性が指摘されたP&Gは20%超の下落となった。

裁定買い残は770億円増の1兆1569億円。裁定売り残は505億円減の4512億円。
日経平均株価は42円安の21803円と反落。NY株安を受けて一時200円以上下落した場面もあったが売り叩く展開とはならなかった。不動産、電力、陸運などのセクターが下支えした格好。資生堂、リクルートが上昇。ソフトバンク、ファナックが下落。

9日(金):
NY株式市場は反発。NYダウは一時292ドル(1.2%)安の場面から切り返した。好材料は英フィナンシャル・タイムズの報道。「ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表が米中通商協議を進められる中、米政府は中国製品に対する新たな関税措置の導入を保留している」と明らかにしたという。
事の真偽はともかく「市場は明るいニュースに反応しやすくなっている」という解釈だ。アップルは5日ぶりに反発しハイテクセクターの下落は落ち着いた格好。

日経平均株価は123円安の21680円と続落。約2週間ぶりの安値水準となった。エヌビディアなどの慎重な収益見通しを背景に、半導体関連株セクターが軟調。同社株に出資するソフトバンクが大幅安となり指数を押し下げた。米株式先物の軟調も警戒感につながった見方だ。ファーストリテ、中外薬が上昇。任天堂、ダイキンが下落。


(2) 欧米動向

興味深いのは「米シェール頭打ち」という予測。
IEAの世界エネルギー見通しでは、原油供給不足のリスクが指摘された。
特にアメリカのシェールオイルの増産は2020年台で頭打ち。
シェール油田で資源枯渇が進むという。
「需要を賄うバトンを徐々にOPECに譲り渡す」という見通しだ。
OPEC加盟国の原油生産シェアは17年43%、25年40%、40年45%。
「中東の影響力は低下しない」。
このシナリオとトランプ政権の方向は結構面白く映る。

「45日前通告ルールによる12月決算のヘッジファンド等の解約日は通過」という見方もある。
その45日前ルール。
もともと信頼性にはかける観測。
月末の「ドレッシング観測」みたいなもので本当にあるのかないのは不明。
そもそも換金の必要性はいつ生じるかはわからないもの。
オプションの権利行使のアメリカンタイプとヨーロピアンタイプみたいなものだ。
因みにアメリカンタイプは権利行使日(満期日)までいつでも権利行使できる型。
ヨーロピアンタイプは権利行使日(満期日)のみ権利行使できる型。
バミューダタイプは1週間に1回とか月に1回権利行使できる型だ。
そもそも「45日ルール」は慣例でもある。
もっとも今年のヘッジファンドの運用は悪い。
10月のグローバルヘッジファンド指数は月間下落率が3.1%。
2011年8月以来のマイナスだ。
2011年は年間マイナス8.9%。
7年ぶりの悪い運用となっている。
「成績の悪いファンドは解約される」というのが通説。
だったら今年の秋は解約の嵐だったに違いない。
原油価格の下落はオイルマネーの動きもネガにしたとも推測できようか。


(3)アジア・新興国動向

先週の世界の株式相場は主要25の株価指数のうち10指数が上昇。

上位1位ブラジル週間騰落率3.36%、2位中国3.09%、3位インドネシア2.35%、
4位香港2.27%、5位フィリピン1.64%。
下位25位メキシコ▲4.39%、24位オーストラリア▲3.13%、
23位ポーランド▲2.99%、22位日本▲2.56%、20位米国▲2.22%。

【展望】

スケジュールを見てみると・・・。

16日(金):米鉱工業生産、対米証券投資
19日(月):貿易統計、米NAHB住宅指数、メキシコ休場
20日(火):住宅着工件数、マレーシア、インドネシア、ブラジル
21日(水):全産業活動指数、訪日外客数、米耐久財受注、CB景気先行指数、中古住宅販売、インド休場、欧州委員会はイタリアへの制裁を財務相理事会に勧告の可能性
22日(木):消費者物価指数、米感謝祭、NY休場
23日(金):勤労感謝の日で休場、米ブラックフライデー、25年万博の開催国決定

【11月】

17日(土)水星逆行開始
21日(水)変化日、株高の日
22日(木)米サンクスギビングイデーで休場、株高の日
23日(金)勤労感謝の日で休場、米ブラックフライデーで半日立会い、
25日(日)海王星順行開始
26日(月)「11月3連休明けは株高」の特異日、米サイバーマンデー、
27日(火)変化日
28日(水〉株高の日
30日(金)G20首脳会議(〜1日、ブエノスアイレス)

11月の3連休明けの日経平均株価は1998年以降では1回を除いて上昇していたというアノマリー。
連休前には制度信用取引の期日が集中しやすく、連休明けに上値の需給が軽くなりやすいことが背景。
連休が無事明ければ安心感が出やすいという側面もあろう。
11月の最終営業日を含む週の日経平均は2000年以降では2015年以外は上昇している。
9月期末の株主配当が11月末前後に支払われるための背景と目されている。
株式市場にとって鬼門と言える10〜11月を乗りきれば、師走相場に安心して入っていけるという見方だ。

全体の99.9%が通過した4〜9月期決算集計状況。
4〜9月期売上高は7.4%増、経常利益は12.2%増、純利益は19.6%増。
3月通期売上高は3.6%増、経常利益は6.2%増、純利益は1.2%増。
第1四半期通過時点では・・・
4〜6月期売上高は7.9%増、経常利益は16.5%増、純利益は27.9%増。
3月通期売上高は3.1%増、経常利益は2.1%増、純利益は▲0.3%増。
前期決算発表時点では・・・。
2018年3月期売上高は8.0%増、経常利益は17.%増、純利益は34.7%増。
3月通期売上高は2.7%増、経常利益は1.0%増、純利益は▲2.1%増。
進歩は見える。

(兜町カタリスト 櫻井英明)


株式投資は全て自己責任でお願いします。このサイトの情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。当サイトの掲載事項において損失をされた場合も当方は一切の責任を負いかねます。

下記のブラウザでご利用いただけます。
Android
Chrome、ファミリーブラウザ for docomo、あんしんフィルター for docomo
iOS
Safari、あんしんフィルター for docomo
※ブラウザのバージョンによってご利用できない場合がございます。