[8095]アステナホールディングス
[03月18日更新]

アステナホールディングスは調整一巡、24年11月期は上振れ余地

 アステナホールディングス<8095>(東証プライム)はヘルスケア・ファインケミカル企業集団として、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。24年11月期は不透明感を考慮して小幅営業増益予想としている。また半期別に見ると下期偏重の計画である。ただし23年11月期第1四半期をボトムとして営業利益が回復基調であることを勘案すれば、通期会社予想に上振れ余地がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は反発力の鈍い形だが調整一巡感を強めている。高配当利回りや1倍割れの低PBRも評価して出直りを期待したい。
 
■ヘルスケア・ファインケミカル企業集団
 
 旧イワキが21年6月1日付で持株会社体制に移行して商号をアステナホールディングスに変更した。アステナは「明日(未来)+サステナブル(持続可能)」の造語である。ヘルスケア・ファインケミカル企業集団として、製造分野が利益柱となり、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。
 
 セグメント区分(24年11月期より一部変更)は、ファインケミカル事業(医薬品のCMC研究開発・製造受託、医薬品原料の製造販売など)、HBC・食品事業(食品原料・機能性食品原料の製造販売、化粧品原料の販売、化粧品の通信販売など)、医薬事業(医薬品・医療機器の製造販売など)、化学品事業(表面処理薬品・表面処理設備の製造販売など)、その他事業(地方創生関連のソーシャルインパクト事業など)としている。医薬事業に含めていた岩城製薬佐倉工場をファインケミカル事業へ変更した。またHBC・食品事業に含まれている一般医薬品卸売事業は戦略的に順次撤退・縮小している。
 
 23年11月期の新セグメント区分ベースの売上高構成比はファインケミカル事業38%、HBC・食品事業27%、医薬事業18%、化学品事業17%、その他事業0%、営業利益構成比はファインケミカル事業14%、HBC・食品事業29%、医薬事業51%、化学品事業7%、その他事業▲9%、調整額9%だった。
 
■ファインケミカル事業
 
 ファインケミカル事業は、20年3月に子会社化した医薬品CMC研究開発・製造受託のスペラファーマ、スペラファーマの子会社として20年7月に設立したスペラネクサス、スペラファーマが21年4月に子会社化したペプチド合成技術のJitsubo、および岩城製薬佐倉工場(岩城製薬が保有していた株式を23年12月にスペラファーマへ譲渡してセグメント再編)が、CMC/CDMO事業と調達プラットフォーム事業を2本柱として、医薬品原薬のCMC研究開発から製造受託・販売まで一貫体制を構築している。またスペラファーマは創薬ベンチャーのジェイファーマに出資している。
 
 23年6月にはJitsuboが、世界有数のヘルスケア子業であるNovo Nordiskと、Novo Nordiskの糖尿病・肥満・非アルコール性脂肪肝炎・慢性腎臓病・アテローム動脈硬化性心血管疾患・心不全の分野(ジェネリック医薬品除く)のペプチド合成において、Jitsuboのペプチド合成の特許技術であるMolecular Hiving法の独占的使用および製造ライセンス契約締結を発表した。本契約に基づき、JitsuboはNovo Nordiskから、開発フィー、年間独占権料、および製品の臨床段階、商品化段階の進捗に合わせたマイルストーンフィーを受領する。
 
 3月1日には、湘南ヘルスイノベーションパーク(湘南アイパーク)に拠点を置く創薬支援企業5社(スペラファーマ、AXcelead Drug Discovery Partners、十全化学、東レリサーチセンター、メディフォード)による「湘南創薬コンソーシアム」発足を発表した。創薬エコシステムを活性化する枠組みの構築を目指す。
 
■HBC・食品事業
 
 HBC・食品事業はイワキ、化粧品通販のアプロス、20年12月に子会社化した健康食品・化粧品販売のマルマンH&B、22年12月に子会社化した海外製化粧品輸入販売のアインズラボを中心に展開している。22年11月には不採算が続いていたイワキの一般医薬品卸売分野から撤退すると発表した。
 
 23年6月にはイワキが、加工食品・機能性食品の原料検索システム「i−Platto(アイプラット)」の提供を開始した。なお「i−Platto」は、イワキが資本参加しているICS−netが運営する「シェアシマ」とも連携している。
 
■医薬事業
 
 医薬事業は皮膚科領域に特化したニッチトップ・ジェネリックメーカーの岩城製薬が展開している。20年1月には医療用後発医薬品・一般用医薬品開発の前田薬品工業に出資、21年1月には岩城製薬が新しいコンセプトの抗ウイルス薬開発に取り組んでいるキノファーマと業務提携、21年4月にはインタープロテインとCOVID―19治療薬の共同研究契約を締結した。22年4月には岩城製薬がヤンセンファーマから「ニゾラールローション2%」の日本における製造販売承認を承継・販売移管した。岩城製薬にとって初の長期収載品の扱いとなる。
 
 22年7月には、スキンケアブランド「ナビジョン/ナビジョンDR」について、資生堂ジャパンが保有していたブランドホルダー機能を岩城製薬に移管することで合意した。ブランド価値向上に向けて役割分担を見直し、資生堂ジャパンが行ってきた研究開発・商品開発機能およびマーケティング機能を岩城製薬が担い、資生堂ジャパンは現行品の製造を担う。22年8月には、岩城製薬がキノファーマと尋常性疣贅を適応症とした共同開発・商業化契約を締結し、22年10月にはキノファーマの第三者割当増資を引き受けて資本出資した。
 
 23年4月には、岩城製薬がキノファーマと共同開発した製剤を用いて、ヒトパピローマウイルス感染症である尋常性疣贅を適応症として第2相臨床試験(キノファーマが実施)を開始した。23年7月には岩城製薬が帝人ファーマから「ボンアルファ」の日本における製造販売承認を承継した。
 
■化学品事業
 
 化学品事業(表面処理薬品・表面処理設備の製造販売など)はメルテックス、東京化工機、および海外子会社等を中心に展開している。ハイエンド表面処理薬品に特化し、半導体/電子部品領域で高い市場シェアを誇っている。
 
■SDGsとソーシャルインパクト事業
 
 持株会社体制への移行とともに本社機能の一部を石川県珠洲市に移転し、石川県珠洲市が地方創生に向けた人材育成事業の一環として行っている能登SDGsラボと協業し、ソーシャルインパクト事業としてSDGsの達成と社会変革の実現を目的とする新規事業を推進している。
 
 21年7月には、奥能登地域のSDGS達成支援を目的とするファンド「奥能登SDGs投資事業有限責任組合(のとSDGsファンド)」に出資した。21年11月には能登地域のSDGs達成の支援を目的として、能登地域の自治体3市(七尾市、輪島市、珠洲市)・2町(穴水町、能都町)、および国立大学法人金沢大学、奥能登信用金庫、のと共栄信用金庫、北國フィナンシャルホールディングス、BPキャピタルとSDGs推進に係る連携と協力に関する協定を締結した。21年12月には子会社のイワキ総合研究所の商号をアステナミネルヴァに変更し、事業内容を地方創生関連事業に変更した。
 
 23年1月にはアステナミネルヴァが、のとSDGsファンドの投資先である有機米デザイン(東京都小金井市)の「アイガモロボ」(田んぼの雑草を抑制する自動ロボット)を使用した有機米事業を開始すると発表した。またアステナミネルヴァが、森林資源を生かした自立・分散型の脱炭素社会の実現に向けて、石川県珠洲市で森林事業を開始すると発表した。
 
 さらに23年1月には、スタートアップ企業を支援するベンチャーファンド「TUAT1号投資事業有限責任組合」への出資を発表した。同ファンドの主たる投資先は農学分野(特に脱炭素に資する循環型畜産業、スマート農業、持続可能な食料生産)の研究成果を活用したスタートアップ企業を想定しており、アステナミネルヴァとのシナジーを見込んでいる。
 
 23年3月には、経済産業省と日本健康会議が実施する健康経営優良法人認定制度において、持株会社が「健康経営優良法人2023(大規模法人部門)」に認定、グループ会社のアプロス、スペラファーマ、東海メルテックス、東京化工機、メルテックスが「健康経営優良法人2023(中規模法人部門)」に認定された。さらに、スポーツ庁が主催する「第2回Sport in Lifeアワード」にて優秀賞(企業部門)を受賞した。同社の「歩くふるさと納税」の取り組みが評価された。
 
■中期経営計画
 
 2030年に向けたグループ中長期ビジョン「Astena 2030 “Diversify for Tomorrow”」(21年1月公表)では、定量的ターゲットとして30年11月期の売上高1300億円以上、ROE13%以上を掲げている。セグメント別の30年11月期目標値は、ファインケミカル事業が売上高400億円で営業利益率9%、HBC・食品事業が売上高450億円で営業利益率3%、医薬事業が売上高228億円で営業利益率13%、化学品事業が売上高130億円で営業利益率10%としている。
 
 そして24年11月期からの中期経営計画(ローリング形式)では、26年11月期の目標値として売上高640億円、営業利益30億円、ROE7.4%を掲げている。
 
 基本戦略には3つのサステナビリティ戦略として、プラットフォーム戦略(CMC=医療用医薬品研究開発の国内トップレベルでの受託、ヘルスケア調達プラットフォーム=医薬品・化粧品・機能性食品製造会社の全ニーズをカバー、創薬インキュベーション=CMC提供を通じて新薬開発の成功確率を高める、CDMO=注射剤・外皮用剤・治験薬の受託製造)、ニッチトップ戦略(外皮用剤ジェネリック医薬品=国内塗り薬ジェネリック医薬品市場NO.1、ハイエンド表面処理薬品=エレクトロニクスに特化した表面処理薬品)、ソーシャルインパクト戦略(シニア・アクティベイト=化粧品・機能性食品の提供を通じてシニア総アクティブ化推進)を掲げている。
 
 ファインケミカル事業は、CMC・CDMO事業および調達プラットフォーム事業を2本柱として、原材料調達からCMC研究、原薬商用生産までの医薬品開発・製造の幅広いサービスを提供する。
 
 HBC・食品事業は、原料ビジネスのDX化による顧客の開発・調達プロセスの課題解決プラットフォームの提供、独自性を高めた商品・サービスの提供による市場価値増大を推進する。またダイレクトマーケティング領域への投資を実行して、領域特化型ネットワークを構築する。
 
 医薬事業は、皮膚科領域をベースとして外皮用剤品目数および生産キャパシティでトップ、グローバル要求水準に対応して高活性注射剤CDMOのトップを目指す。また外皮用剤、注射剤導入、新薬共同開発、M&A・アライアンスで事業基盤強化・拡大を目指す。
 
 化学品事業は、エレクトロニクス実装市場のトレンドを捉えたニッチトップ商品の継続的開発、ハイエンドパッケージ基板での地位確立、チップ部品用途の台湾・中国大手での採用、半導体パワー・センサー系薬品の差別化を推進する。またグローバル企業との共同開発も推進して成長を目指す。
 
 その他事業(ソーシャルインパクト事業)では既存事業との親和性、将来に亘る成長性、グループ全体への波及効果なども勘案して、SDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進することを目標とする。なお1月26日には、公益財団法人岩城留学生奨学会に対し、本財団の社会貢献活動を継続的かつ安定的に支援する目的で、第三者割当による自己株式の処分(67.4万株)を行うと発表した。
 
■24年11月期小幅営業増益予想、さらに上振れ余地
 
 24年11月期の連結業績予想は、売上高が23年11月期比7.7%増の560億円、営業利益が2.0%増の11億50百万円、経常利益が15.7%減の11億50百万円、そして親会社株主帰属当期純利益が40.7%増の6億90百万円としている。配当予想は23年11月期と同額の18円(第2四半期末9円、期末9円)としている。予想配当性向は103.0%となる。
 
 不透明感を考慮して小幅営業増益予想としている。なお半期別に見ると上期の売上高273億円、営業利益35百万円、経常利益35百万円、純利益1億30百万円の損失に対して、下期は売上高287億円、営業利益11億15百万円、経常利益11億15百万円、純利益8億20百万円で、下期偏重の計画としている。ただし23年11月期第1四半期をボトムとして営業利益が回復基調であることを勘案すれば、通期会社予想に上振れ余地がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。
 
■株主優待制度は一部変更
 
 株主優待制度については、公平性および適正化の観点から利益配分に対するバランスを考慮し、23年7月13日付で一部変更(詳細は会社HP参照)を発表した。従来は毎年11月末時点で100株(1単元)以上を継続して1年以上保有する株主を対象に保有株数および保有期間に応じて自社商品等を贈呈していたが、変更後は毎年11月末時点で500株(5単元)以上を継続して1年以上保有する株主を対象に保有株数および保有期間に応じて自社商品等を贈呈する。23年11月末対象より実施した。
 
■株価は調整一巡
 
 株価は反発力の鈍い形だが調整一巡感を強めている。高配当利回りや1倍割れの低PBRも評価して出直りを期待したい。3月15日の終値は478円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS17円47銭で算出)は約27倍、今期予想配当利回り(会社予想の18円で算出)は約3.8%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS719円53銭で算出)は約0.7倍、時価総額は約195億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media−IR
 
[02月27日更新]

アステナホールディングスは反発の動き、24年11月期小幅営業増益予想、さらに上振れ余地

 アステナホールディングス<8095>(東証プライム)はヘルスケア・ファインケミカル企業集団として、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。24年11月期は不透明感を考慮して小幅営業増益予想としている。なお半期別に見ると下期偏重の計画である。23年11月期第1四半期をボトムとして営業利益が回復基調であることを勘案すれば、通期会社予想に上振れ余地がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は調整一巡して反発の動きを強めている。高配当利回りや1倍割れの低PBRも評価材料であり、戻りを試す展開を期待したい。

■ヘルスケア・ファインケミカル企業集団

 旧イワキが21年6月1日付で持株会社体制に移行して商号をアステナホールディングスに変更した。アステナは「明日(未来)+サステナブル(持続可能)」の造語である。ヘルスケア・ファインケミカル企業集団として、製造分野が利益柱となり、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。

 なお23年11月27日に代表取締役の異動(社長交代)を発表した。現代表取締役の岩城慶太郎氏が取締役となり、持株会社アステナホールディングスと事業会社スペラファーマおよび岩城製薬佐倉工場の代表取締役を兼務している状況を解消し、いわゆる経営と執行の分離を行うとともに、岩城慶太郎氏がファインケミカル事業の成長を加速させる。さらに、創業家以外の出身で現副社長の瀬戸口智氏が代表取締役社長に就任することでコーポレートガバナンスを強化する。異動は第84回定時株主総会における取締役選任を条件として24年2月28日付を予定している。

 セグメント区分(24年11月期より一部変更)は、ファインケミカル事業(医薬品のCMC研究開発・製造受託、医薬品原料の製造販売など)、HBC・食品事業(食品原料・機能性食品原料の製造販売、化粧品原料の販売、化粧品の通信販売など)、医薬事業(医薬品・医療機器の製造販売など)、化学品事業(表面処理薬品・表面処理設備の製造販売など)、その他事業(地方創生関連のソーシャルインパクト事業など)としている。医薬事業に含めていた岩城製薬佐倉工場をファインケミカル事業へ変更した。またHBC・食品事業に含まれている一般医薬品卸売事業は戦略的に順次撤退・縮小している。

 23年11月期の新セグメント区分ベースの売上高構成比はファインケミカル事業38%、HBC・食品事業27%、医薬事業18%、化学品事業17%、その他事業0%、営業利益構成比はファインケミカル事業14%、HBC・食品事業29%、医薬事業51%、化学品事業7%、その他事業▲9%、調整額9%だった。

■ファインケミカル事業

 ファインケミカル事業は、20年3月に子会社化した医薬品CMC研究開発・製造受託のスペラファーマ、スペラファーマの子会社として20年7月に設立したスペラネクサス、スペラファーマが21年4月に子会社化したペプチド合成技術のJitsubo、および岩城製薬佐倉工場(岩城製薬が保有していた株式を23年12月にスペラファーマへ譲渡してセグメント再編)が、CMC/CDMO事業と調達プラットフォーム事業を2本柱として、医薬品原薬のCMC研究開発から製造受託・販売まで一貫体制を構築している。またスペラファーマは創薬ベンチャーのジェイファーマに出資している。

 23年5月には、創薬エコシステムを活性化する枠組みの構築を目指し、スペラファーマを含む6社が、ヘルスケアイノベーションが生まれる湘南アイパークで「湘南創薬コンソーシアム」発足に向けた協議を開始した。

 23年6月にはJitsuboが、世界有数のヘルスケア子業であるNovo Nordiskと、Novo Nordiskの糖尿病・肥満・非アルコール性脂肪肝炎・慢性腎臓病・アテローム動脈硬化性心血管疾患・心不全の分野(ジェネリック医薬品除く)のペプチド合成において、Jitsuboのペプチド合成の特許技術であるMolecular Hiving法の独占的使用および製造ライセンス契約締結を発表した。本契約に基づき、JitsuboはNovo Nordiskから、開発フィー、年間独占権料、および製品の臨床段階、商品化段階の進捗に合わせたマイルストーンフィーを受領する。

■HBC・食品事業

 HBC・食品事業はイワキ、化粧品通販のアプロス、20年12月に子会社化した健康食品・化粧品販売のマルマンH&B、22年12月に子会社化した海外製化粧品輸入販売のアインズラボを中心に展開している。22年11月には不採算が続いていたイワキの一般医薬品卸売分野から撤退すると発表した。

 23年6月にはイワキが、加工食品・機能性食品の原料検索システム「i−Platto(アイプラット)」の提供を開始した。なお「i−Platto」は、イワキが資本参加しているICS−netが運営する「シェアシマ」とも連携している。

■医薬事業

 医薬事業は皮膚科領域に特化したニッチトップ・ジェネリックメーカーの岩城製薬が展開している。20年1月には医療用後発医薬品・一般用医薬品開発の前田薬品工業に出資、21年1月には岩城製薬が新しいコンセプトの抗ウイルス薬開発に取り組んでいるキノファーマと業務提携、21年4月にはインタープロテインとCOVID―19治療薬の共同研究契約を締結した。22年4月には岩城製薬がヤンセンファーマから「ニゾラールローション2%」の日本における製造販売承認を承継・販売移管した。岩城製薬にとって初の長期収載品の扱いとなる。

 22年7月には、スキンケアブランド「ナビジョン/ナビジョンDR」について、資生堂ジャパンが保有していたブランドホルダー機能を岩城製薬に移管することで合意した。ブランド価値向上に向けて役割分担を見直し、資生堂ジャパンが行ってきた研究開発・商品開発機能およびマーケティング機能を岩城製薬が担い、資生堂ジャパンは現行品の製造を担う。22年8月には、岩城製薬がキノファーマと尋常性疣贅を適応症とした共同開発・商業化契約を締結し、22年10月にはキノファーマの第三者割当増資を引き受けて資本出資した。

 23年4月には、岩城製薬がキノファーマと共同開発した製剤を用いて、ヒトパピローマウイルス感染症である尋常性疣贅を適応症として第2相臨床試験(キノファーマが実施)を開始した。23年7月には岩城製薬が帝人ファーマから「ボンアルファ」の日本における製造販売承認を承継した。

■化学品事業

 化学品事業(表面処理薬品・表面処理設備の製造販売など)はメルテックス、東京化工機、および海外子会社等を中心に展開している。ハイエンド表面処理薬品に特化し、半導体/電子部品領域で高い市場シェアを誇っている。

■SDGsとソーシャルインパクト事業

 持株会社体制への移行とともに本社機能の一部を石川県珠洲市に移転し、石川県珠洲市が地方創生に向けた人材育成事業の一環として行っている能登SDGsラボと協業し、ソーシャルインパクト事業としてSDGsの達成と社会変革の実現を目的とする新規事業を推進している。

 21年7月には、奥能登地域のSDGS達成支援を目的とするファンド「奥能登SDGs投資事業有限責任組合(のとSDGsファンド)」に出資した。21年11月には能登地域のSDGs達成の支援を目的として、能登地域の自治体3市(七尾市、輪島市、珠洲市)・2町(穴水町、能都町)、および国立大学法人金沢大学、奥能登信用金庫、のと共栄信用金庫、北國フィナンシャルホールディングス、BPキャピタルとSDGs推進に係る連携と協力に関する協定を締結した。21年12月には子会社のイワキ総合研究所の商号をアステナミネルヴァに変更し、事業内容を地方創生関連事業に変更した。

 23年1月にはアステナミネルヴァが、のとSDGsファンドの投資先である有機米デザイン(東京都小金井市)の「アイガモロボ」(田んぼの雑草を抑制する自動ロボット)を使用した有機米事業を開始すると発表した。またアステナミネルヴァが、森林資源を生かした自立・分散型の脱炭素社会の実現に向けて、石川県珠洲市で森林事業を開始すると発表した。

 さらに23年1月には、スタートアップ企業を支援するベンチャーファンド「TUAT1号投資事業有限責任組合」への出資を発表した。同ファンドの主たる投資先は農学分野(特に脱炭素に資する循環型畜産業、スマート農業、持続可能な食料生産)の研究成果を活用したスタートアップ企業を想定しており、アステナミネルヴァとのシナジーを見込んでいる。

 23年3月には、経済産業省と日本健康会議が実施する健康経営優良法人認定制度において、持株会社が「健康経営優良法人2023(大規模法人部門)」に認定、グループ会社のアプロス、スペラファーマ、東海メルテックス、東京化工機、メルテックスが「健康経営優良法人2023(中規模法人部門)」に認定された。さらに、スポーツ庁が主催する「第2回Sport in Lifeアワード」にて優秀賞(企業部門)を受賞した。同社の「歩くふるさと納税」の取り組みが評価された。

■中期経営計画

 2030年に向けたグループ中長期ビジョン「Astena 2030 “Diversify for Tomorrow”」(21年1月公表)では、定量的ターゲットとして30年11月期の売上高1300億円以上、ROE13%以上を掲げている。セグメント別の30年11月期目標値は、ファインケミカル事業が売上高400億円で営業利益率9%、HBC・食品事業が売上高450億円で営業利益率3%、医薬事業が売上高228億円で営業利益率13%、化学品事業が売上高130億円で営業利益率10%としている。

 そして24年11月期からの中期経営計画(ローリング形式)では、26年11月期の目標値として売上高640億円、営業利益30億円、ROE7.4%を掲げている。

 基本戦略には3つのサステナビリティ戦略として、プラットフォーム戦略(CMC=医療用医薬品研究開発の国内トップレベルでの受託、ヘルスケア調達プラットフォーム=医薬品・化粧品・機能性食品製造会社の全ニーズをカバー、創薬インキュベーション=CMC提供を通じて新薬開発の成功確率を高める、CDMO=注射剤・外皮用剤・治験薬の受託製造)、ニッチトップ戦略(外皮用剤ジェネリック医薬品=国内塗り薬ジェネリック医薬品市場NO.1、ハイエンド表面処理薬品=エレクトロニクスに特化した表面処理薬品)、ソーシャルインパクト戦略(シニア・アクティベイト=化粧品・機能性食品の提供を通じてシニア総アクティブ化推進)を掲げている。

 ファインケミカル事業は、CMC・CDMO事業および調達プラットフォーム事業を2本柱として、原材料調達からCMC研究、原薬商用生産までの医薬品開発・製造の幅広いサービスを提供する。

 HBC・食品事業は、原料ビジネスのDX化による顧客の開発・調達プロセスの課題解決プラットフォームの提供、独自性を高めた商品・サービスの提供による市場価値増大を推進する。またダイレクトマーケティング領域への投資を実行して、領域特化型ネットワークを構築する。

 医薬事業は、皮膚科領域をベースとして外皮用剤品目数および生産キャパシティでトップ、グローバル要求水準に対応して高活性注射剤CDMOのトップを目指す。また外皮用剤、注射剤導入、新薬共同開発、M&A・アライアンスで事業基盤強化・拡大を目指す。

 化学品事業は、エレクトロニクス実装市場のトレンドを捉えたニッチトップ商品の継続的開発、ハイエンドパッケージ基板での地位確立、チップ部品用途の台湾・中国大手での採用、半導体パワー・センサー系薬品の差別化を推進する。またグローバル企業との共同開発も推進して成長を目指す。

 その他事業(ソーシャルインパクト事業)では既存事業との親和性、将来に亘る成長性、グループ全体への波及効果なども勘案して、SDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進することを目標とする。なお1月26日には、公益財団法人岩城留学生奨学会に対し、本財団の社会貢献活動を継続的かつ安定的に支援する目的で、第三者割当による自己株式の処分(67.4万株)を行うと発表した。

■24年11月期小幅営業増益予想、さらに上振れ余地

 24年11月期の連結業績予想は、売上高が23年11月期比7.7%増の560億円、営業利益が2.0%増の11億50百万円、経常利益が15.7%減の11億50百万円、そして親会社株主帰属当期純利益が40.7%増の6億90百万円としている。配当予想は23年11月期と同額の18円(第2四半期末9円、期末9円)としている。予想配当性向は103.0%となる。

 不透明感を考慮して小幅営業増益予想としている。なお半期別に見ると上期の売上高273億円、営業利益35百万円、経常利益35百万円、純利益1億30百万円の損失に対して、下期は売上高287億円、営業利益11億15百万円、経常利益11億15百万円、純利益8億20百万円で、下期偏重の計画としている。23年11月期第1四半期をボトムとして営業利益が回復基調であることを勘案すれば、通期会社予想に上振れ余地がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株主優待制度は一部変更

 株主優待制度については、公平性および適正化の観点から利益配分に対するバランスを考慮し、23年7月13日付で一部変更(詳細は会社HP参照)を発表した。従来は毎年11月末時点で100株(1単元)以上を継続して1年以上保有する株主を対象に保有株数および保有期間に応じて自社商品等を贈呈していたが、変更後は毎年11月末時点で500株(5単元)以上を継続して1年以上保有する株主を対象に保有株数および保有期間に応じて自社商品等を贈呈する。23年11月末対象より実施した。

■株価は反発の動き

 株価は調整一巡して反発の動きを強めている。高配当利回りや1倍割れの低PBRも評価材料であり、戻りを試す展開を期待したい。2月26日の終値は479円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS17円47銭で算出)は約27倍、今期予想配当利回り(会社予想の18円で算出)は約3.8%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS719円53銭で算出)は約0.7倍、そして時価総額は約196億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media−IR
[01月29日更新]

アステナホールディングスは下値切り上げ、24年11月期も上振れ余地

 アステナホールディングス<8095>(東証プライム)はヘルスケア・ファインケミカル企業集団として、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。23年11月期は計画超の大幅増益で着地した。医薬事業における一部製剤の価格改定、HBC・食品事業における自社企画化粧品の伸長などが寄与した。24年11月期は不透明感を考慮して小幅営業増益予想としている。なお半期別に見ると下期偏重の計画である。23年11月期第1四半期をボトムとして営業利益が回復基調であることを勘案すれば、通期会社予想に上振れ余地がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は調整一巡して徐々に下値を切り上げている。高配当利回りや1倍割れの低PBRも評価材料であり、出直りを期待したい。

■ヘルスケア・ファインケミカル企業集団

 旧イワキが21年6月1日付で持株会社体制に移行して商号をアステナホールディングスに変更した。アステナは「明日(未来)+サステナブル(持続可能)」の造語である。ヘルスケア・ファインケミカル企業集団として、製造分野が利益柱となり、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。

 なお23年11月27日に代表取締役の異動(社長交代)を発表した。現代表取締役の岩城慶太郎氏が取締役となり、持株会社アステナホールディングスと事業会社スペラファーマおよび岩城製薬佐倉工場の代表取締役を兼務している状況を解消し、いわゆる経営と執行の分離を行うとともに、岩城慶太郎氏がファインケミカル事業の成長を加速させる。さらに、創業家以外の出身で現副社長の瀬戸口智氏が代表取締役社長に就任することでコーポレートガバナンスを強化する。異動は第84回定時株主総会における取締役選任を条件として24年2月28日付を予定している。

 セグメント区分(24年11月期より一部変更)は、ファインケミカル事業(医薬品のCMC研究開発・製造受託、医薬品原料の製造販売など)、HBC・食品事業(食品原料・機能性食品原料の製造販売、化粧品原料の販売、化粧品の通信販売など)、医薬事業(医薬品・医療機器の製造販売など)、化学品事業(表面処理薬品・表面処理設備の製造販売など)、その他事業(地方創生関連のソーシャルインパクト事業など)としている。医薬事業に含めていた岩城製薬佐倉工場をファインケミカル事業へ変更した。またHBC・食品事業に含まれている一般医薬品卸売事業は戦略的に順次撤退・縮小している。

 23年11月期の新セグメント区分ベースの売上高構成比はファインケミカル事業38%、HBC・食品事業27%、医薬事業18%、化学品事業17%、その他事業0%、営業利益構成比はファインケミカル事業14%、HBC・食品事業29%、医薬事業51%、化学品事業7%、その他事業▲9%、調整額9%だった。

■ファインケミカル事業

 ファインケミカル事業は、20年3月に子会社化した医薬品CMC研究開発・製造受託のスペラファーマ、スペラファーマの子会社として20年7月に設立したスペラネクサス、スペラファーマが21年4月に子会社化したペプチド合成技術のJitsubo、および岩城製薬佐倉工場(岩城製薬が保有していた株式を23年12月にスペラファーマへ譲渡してセグメント再編)が、CMC/CDMO事業と調達プラットフォーム事業を2本柱として、医薬品原薬のCMC研究開発から製造受託・販売まで一貫体制を構築している。またスペラファーマは創薬ベンチャーのジェイファーマに出資している。

 23年5月には、創薬エコシステムを活性化する枠組みの構築を目指し、スペラファーマを含む6社が、ヘルスケアイノベーションが生まれる湘南アイパークで「湘南創薬コンソーシアム」発足に向けた協議を開始した。

 23年6月にはJitsuboが、世界有数のヘルスケア子業であるNovo Nordiskと、Novo Nordiskの糖尿病・肥満・非アルコール性脂肪肝炎・慢性腎臓病・アテローム動脈硬化性心血管疾患・心不全の分野(ジェネリック医薬品除く)のペプチド合成において、Jitsuboのペプチド合成の特許技術であるMolecular Hiving法の独占的使用および製造ライセンス契約締結を発表した。本契約に基づき、JitsuboはNovo Nordiskから、開発フィー、年間独占権料、および製品の臨床段階、商品化段階の進捗に合わせたマイルストーンフィーを受領する。

■HBC・食品事業

 HBC・食品事業はイワキ、化粧品通販のアプロス、20年12月に子会社化した健康食品・化粧品販売のマルマンH&B、22年12月に子会社化した海外製化粧品輸入販売のアインズラボを中心に展開している。22年11月には不採算が続いていたイワキの一般医薬品卸売分野から撤退すると発表した。

 23年6月にはイワキが、加工食品・機能性食品の原料検索システム「i−Platto(アイプラット)」の提供を開始した。なお「i−Platto」は、イワキが資本参加しているICS−netが運営する「シェアシマ」とも連携している。

■医薬事業

 医薬事業は皮膚科領域に特化したニッチトップ・ジェネリックメーカーの岩城製薬が展開している。20年1月には医療用後発医薬品・一般用医薬品開発の前田薬品工業に出資、21年1月には岩城製薬が新しいコンセプトの抗ウイルス薬開発に取り組んでいるキノファーマと業務提携、21年4月にはインタープロテインとCOVID―19治療薬の共同研究契約を締結した。22年4月には岩城製薬がヤンセンファーマから「ニゾラールローション2%」の日本における製造販売承認を承継・販売移管した。岩城製薬にとって初の長期収載品の扱いとなる。

 22年7月には、スキンケアブランド「ナビジョン/ナビジョンDR」について、資生堂ジャパンが保有していたブランドホルダー機能を岩城製薬に移管することで合意した。ブランド価値向上に向けて役割分担を見直し、資生堂ジャパンが行ってきた研究開発・商品開発機能およびマーケティング機能を岩城製薬が担い、資生堂ジャパンは現行品の製造を担う。22年8月には、岩城製薬がキノファーマと尋常性疣贅を適応症とした共同開発・商業化契約を締結し、22年10月にはキノファーマの第三者割当増資を引き受けて資本出資した。

 23年4月には、岩城製薬がキノファーマと共同開発した製剤を用いて、ヒトパピローマウイルス感染症である尋常性疣贅を適応症として第2相臨床試験(キノファーマが実施)を開始した。23年7月には岩城製薬が帝人ファーマから「ボンアルファ」の日本における製造販売承認を承継した。

■化学品事業

 化学品事業(表面処理薬品・表面処理設備の製造販売など)はメルテックス、東京化工機、および海外子会社等を中心に展開している。ハイエンド表面処理薬品に特化し、半導体/電子部品領域で高い市場シェアを誇っている。

■SDGsとソーシャルインパクト事業

 持株会社体制への移行とともに本社機能の一部を石川県珠洲市に移転し、石川県珠洲市が地方創生に向けた人材育成事業の一環として行っている能登SDGsラボと協業し、ソーシャルインパクト事業としてSDGsの達成と社会変革の実現を目的とする新規事業を推進している。

 21年7月には、奥能登地域のSDGS達成支援を目的とするファンド「奥能登SDGs投資事業有限責任組合(のとSDGsファンド)」に出資した。21年11月には能登地域のSDGs達成の支援を目的として、能登地域の自治体3市(七尾市、輪島市、珠洲市)・2町(穴水町、能都町)、および国立大学法人金沢大学、奥能登信用金庫、のと共栄信用金庫、北國フィナンシャルホールディングス、BPキャピタルとSDGs推進に係る連携と協力に関する協定を締結した。21年12月には子会社のイワキ総合研究所の商号をアステナミネルヴァに変更し、事業内容を地方創生関連事業に変更した。

 23年1月にはアステナミネルヴァが、のとSDGsファンドの投資先である有機米デザイン(東京都小金井市)の「アイガモロボ」(田んぼの雑草を抑制する自動ロボット)を使用した有機米事業を開始すると発表した。またアステナミネルヴァが、森林資源を生かした自立・分散型の脱炭素社会の実現に向けて、石川県珠洲市で森林事業を開始すると発表した。

 さらに23年1月には、スタートアップ企業を支援するベンチャーファンド「TUAT1号投資事業有限責任組合」への出資を発表した。同ファンドの主たる投資先は農学分野(特に脱炭素に資する循環型畜産業、スマート農業、持続可能な食料生産)の研究成果を活用したスタートアップ企業を想定しており、アステナミネルヴァとのシナジーを見込んでいる。

 23年3月には、経済産業省と日本健康会議が実施する健康経営優良法人認定制度において、持株会社が「健康経営優良法人2023(大規模法人部門)」に認定、グループ会社のアプロス、スペラファーマ、東海メルテックス、東京化工機、メルテックスが「健康経営優良法人2023(中規模法人部門)」に認定された。さらに、スポーツ庁が主催する「第2回Sport in Lifeアワード」にて優秀賞(企業部門)を受賞した。同社の「歩くふるさと納税」の取り組みが評価された。

■中期経営計画

 2030年に向けたグループ中長期ビジョン「Astena 2030 “Diversify for Tomorrow”」(21年1月公表)では、定量的ターゲットとして30年11月期の売上高1300億円以上、ROE13%以上を掲げている。セグメント別の30年11月期目標値は、ファインケミカル事業が売上高400億円で営業利益率9%、HBC・食品事業が売上高450億円で営業利益率3%、医薬事業が売上高228億円で営業利益率13%、化学品事業が売上高130億円で営業利益率10%としている。そして24年11月期からの中期経営計画(ローリング形式)では26年11月期の目標値として売上高640億円、営業利益30億円、ROE7.4%を掲げている。

 基本戦略には3つのサステナビリティ戦略として、プラットフォーム戦略(CMC=医療用医薬品研究開発の国内トップレベルでの受託、ヘルスケア調達プラットフォーム=医薬品・化粧品・機能性食品製造会社の全ニーズをカバー、創薬インキュベーション=CMC提供を通じて新薬開発の成功確率を高める、CDMO=注射剤・外皮用剤・治験薬の受託製造)、ニッチトップ戦略(外皮用剤ジェネリック医薬品=国内塗り薬ジェネリック医薬品市場NO.1、ハイエンド表面処理薬品=エレクトロニクスに特化した表面処理薬品)、ソーシャルインパクト戦略(シニア・アクティベイト=化粧品・機能性食品の提供を通じてシニア総アクティブ化推進)を掲げている。

 ファインケミカル事業は、CMC・CDMO事業および調達プラットフォーム事業を2本柱として、原材料調達からCMC研究、原薬商用生産までの医薬品開発・製造の幅広いサービスを提供する。

 HBC・食品事業は、原料ビジネスのDX化による顧客の開発・調達プロセスの課題解決プラットフォームの提供、独自性を高めた商品・サービスの提供による市場価値増大を推進する。またダイレクトマーケティング領域への投資を実行して、領域特化型ネットワークを構築する。

 医薬事業は、皮膚科領域をベースとして外皮用剤品目数および生産キャパシティでトップ、グローバル要求水準に対応して高活性注射剤CDMOのトップを目指す。また外皮用剤、注射剤導入、新薬共同開発、M&A・アライアンスで事業基盤強化・拡大を目指す。

 化学品事業は、エレクトロニクス実装市場のトレンドを捉えたニッチトップ商品の継続的開発、ハイエンドパッケージ基板での地位確立、チップ部品用途の台湾・中国大手での採用、半導体パワー・センサー系薬品の差別化を推進する。またグローバル企業との共同開発も推進して成長を目指す。

 その他事業(ソーシャルインパクト事業)では既存事業との親和性、将来に亘る成長性、グループ全体への波及効果なども勘案して、SDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進することを目標とする。なお1月26日には、公益財団法人岩城留学生奨学会に対し、本財団の社会貢献活動を継続的かつ安定的に支援する目的で、第三者割当による自己株式の処分(67.4万株)を行うと発表した。

■23年11月期は計画超の大幅増益、24年11月期は小幅営業増益予想

 23年11月期連結業績は売上高が22年11月期比4.7%増の519億84百万円、営業利益が37.6%増の11億27百万円、経常利益が53.7%増の13億63百万円、親会社株主帰属当期純利益が100.6%増の11億62百万円だった。配当は22年11月期と同額の18円(第2四半期末9円、期末9円)とした。配当性向は61.1%となる。

 計画超の大幅増益で着地した。医薬事業における一部製剤の価格改定、既存製造受託品の伸長、HBC・食品事業における自社企画化粧品や健康食品の伸長などが寄与した。純利益については法人税等の減少も寄与した。なお特別利益では固定資産売却益が95百万円増加、投資有価証券売却益が2億10百万円減少、特別損失では投資有価証券評価損が80百万円減少、減損損失が3億82百万円増加した。

 ファインケミカル事業は、売上高(外部顧客への売上高)が9.7%増の160億55百万円で、営業利益(全社費用等調整前)が35.6%減の1億59百万円だった。スペラネクサスは医薬品原料販売が新薬メーカー向け中間体販売などにより好調だったが、スペラファーマの医薬品CDMO分野の利益率向上が遅れた。

 HBC・食品事業は売上高が0.6%増の140億59百万円、営業利益が2.3倍の3億24百万円だった。マルマンH&Bにおける自社企画化粧品・健康食品の販売が好調だった。

 医薬事業は売上高が12.8%増の132億59百万円、営業利益が46.1%増の5億73百万円だった。岩城製薬が22年12月に新製品として販売開始した抗真菌薬であるリコナゾール軟膏・クリームが好調に推移し、同業他社の一部製品販売中止に伴う代替需要としてゲンタマイシン軟膏やピコスルファートナトリウム内用液などが伸長した。7月1日付で帝人ファーマより承継したボンアルファ・ボンアルファイも好調だった。岩城製薬佐倉工場では既存製造受託品の販売が計画を上回り、一部製剤の価格改定も寄与した。なお岩城製薬佐倉工場では高活性注射液棟の改修が完了し、23年11月から稼働開始した。

 化学品事業は、売上高が7.4%減の85億93百万円で、営業利益が74百万円(22年11月期は1億56百万円の損失)だった。表面処理薬品の需要が低迷したが、コスト上昇分の価格転嫁や販管費の見直しなどを推進した。その他事業(人材事業、ふるさと納税事業、投資事業などの新規事業)は、売上高が16百万円(同2百万円)で、営業利益が1億03百万円の損失(同42百万円の損失)だった。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高が127億85百万円で営業利益が92百万円の損失、第2四半期は売上高が140億72百万円で営業利益が3億円、第3四半期は売上高が138億17百万円で営業利益が4億77百万円、第4四半期は売上高が113億10百万円で営業利益が4億42百万円だった。営業利益は第1四半期をボトムとして回復基調である。

 24年11月期の連結業績予想は、売上高が23年11月期比7.7%増の560億円、営業利益が2.0%増の11億50百万円、経常利益が15.7%減の11億50百万円、そして親会社株主帰属当期純利益が40.7%増の6億90百万円としている。配当予想は23年11月期と同額の18円(第2四半期末9円、期末9円)としている。予想配当性向は103.0%となる。

 不透明感を考慮して小幅営業増益予想としている。なお半期別に見ると上期の売上高273億円、営業利益35百万円、経常利益35百万円、純利益1億30百万円の損失に対して、下期は売上高287億円、営業利益11億15百万円、経常利益11億15百万円、純利益8億20百万円で、下期偏重の計画である。23年11月期第1四半期をボトムとして営業利益が回復基調であることを勘案すれば、通期会社予想に上振れ余地がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株主優待制度は一部変更

 株主優待制度については、公平性および適正化の観点から利益配分に対するバランスを考慮し、23年7月13日付で一部変更(詳細は会社HP参照)を発表した。従来は毎年11月末時点で100株(1単元)以上を継続して1年以上保有する株主を対象に保有株数および保有期間に応じて自社商品等を贈呈していたが、変更後は毎年11月末時点で500株(5単元)以上を継続して1年以上保有する株主を対象に保有株数および保有期間に応じて自社商品等を贈呈する。23年11月末対象より実施した。

■株価は下値切り上げ

 株価は23年11月の昨年来高値圏から反落して水準を切り下げる形だったが、調整一巡して徐々に下値を切り上げている。高配当利回りや1倍割れの低PBRも評価材料であり、出直りを期待したい。1月26日の終値は481円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS17円47銭で算出)は約28倍、今期予想配当利回り(会社予想の18円で算出)は約3.7%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS719円53銭で算出)は約0.7倍、そして時価総額は約197億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media−IR)
[12月20日更新]

アステナホールディングスは調整一巡、24年11月期収益回復基調

 アステナホールディングス<8095>(東証プライム)はヘルスケア・ファインケミカル企業集団として、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。23年11月期は原材料価格などの不透明感を考慮して減益予想としている。ただし第1四半期がボトムとなったことに加えて、第3四半期累計の高進捗率なども勘案すれば、通期会社予想に上振れ余地がありそうだ。さらに24年11月期は積極的な事業展開で収益回復基調だろう。株価は11月の年初来高値圏から反落して水準を切り下げる形となったが、調整一巡感を強めている。高配当利回りや1倍割れの低PBRも評価材料であり、出直りを期待したい。

■ヘルスケア・ファインケミカル企業集団

 旧イワキが21年6月1日付で持株会社体制に移行して商号をアステナホールディングスに変更した。アステナは「明日(未来)+サステナブル(持続可能)」の造語である。ヘルスケア・ファインケミカル企業集団として、製造分野が利益柱となり、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。

 セグメント区分はファインケミカル事業(医薬品のCMC研究開発・製造受託、医薬品原料の製造販売など)、HBC・食品事業(化粧品原料の販売、食品原料・機能性食品の製造販売、一般用医薬品の卸売、化粧品の通信販売など)、医薬事業(医薬品・医療機器の製造販売など)、化学品事業(表面処理薬品の製造販売、プリント基板製造プラントの製造販売など)、その他(地方創生関連事業など)としている。なお新規事業として有機米事業および森林事業を開始する。

 22年11月期(収益認識会計基準適用)のセグメント別売上高(外部顧客への売上高)の構成比はファインケミカル事業が29%、HBC・食品事業が28%、医薬事業が24%、化学品事業が19%、その他が0%だった。営業利益の構成比はファインケミカル事業が30%、HBC・食品事業が17%、医薬事業が48%、化学品事業が▲19%、その他が▲5%、そして調整額が29%だった。

 なお11月27日に事業セグメント区分の変更を発表した。医薬事業で岩城製薬の100%子会社である岩城製薬佐倉工場の株式をファインケミカル事業のスペラファーマに譲渡(23年12月1日付)し、24年11月期より岩城製薬佐倉工場を医薬事業からファインケミカル事業に再編する。

 また11月27日に代表取締役の異動(社長交代)を発表した。現代表取締役の岩城慶太郎氏が取締役となり、持株会社アステナホールディングスと事業会社スペラファーマおよび岩城製薬佐倉工場の代表取締役を兼務している状況を解消し、いわゆる経営と執行の分離を行うとともに、岩城慶太郎氏がファインケミカル事業の成長を加速させる。さらに、創業家以外の出身で現副社長の瀬戸口聡氏が代表取締役社長に就任することでコーポレートガバナンスを強化する。異動は第84回定時株主総会における取締役選任を条件として、24年2月28日付を予定している。

 さらに、4つの戦略的ビジネスモデル(調達プラットフォーム事業、インキュベーション事業、注射剤CDMO事業、塗り薬CDM事業)を構築し、収益基盤拡大を推進している。

■ファインケミカル事業

 ファインケミカル事業は、20年3月に子会社化した医薬品CMC研究開発・製造受託のスペラファーマ、スペラファーマの子会社として20年7月に設立したスペラネクサス、スペラファーマが21年4月に子会社化したペプチド合成技術のJitsuboを中心に展開し、医薬品原薬のCMC研究開発から製造受託・販売まで一貫体制を構築している。また20年6月にはスペラファーマが創薬ベンチャーのジェイファーマに出資した。

 21年3月には岩城製薬が、オンコリスバイオファーマ<4588>の新型コロナウイルス感染症治療薬OBP―2011の臨床試験開始に必要な治験薬原薬の製造法開発とGMP製造を受託(スペラネクサスに承継)することで基本合意し、21年7月にはスペラファーマがオンコリスバイオファーマからOBP―2011の治験薬製剤のGMP製造を受託することで基本合意した。

 22年2月にはスペラファーマがインタープロテインと、アンメット・メディカル・ニーズの高い様々な疾患に対する新規低分子およびペプチド医薬品の研究開発、製造ならびに商業化を目的とした包括的協業に関する覚書を締結した。22年11月にはジェイファーマが実施する第三者割当による新株予約権を引き受けた。

 23年5月には、創薬エコシステムを活性化する枠組みの構築を目指し、スペラファーマを含む6社が、ヘルスケアイノベーションが生まれる湘南アイパークで「湘南創薬コンソーシアム」発足に向けた協議を開始した。

 23年6月にはJitsuboが、世界有数のヘルスケア子業であるNovo Nordiskと、Novo Nordiskの糖尿病・肥満・非アルコール性脂肪肝炎・慢性腎臓病・アテローム動脈硬化性心血管疾患・心不全の分野(ジェネリック医薬品除く)のペプチド合成において、Jitsuboのペプチド合成の特許技術であるMolecular Hiving法の独占的使用および製造ライセンス契約締結を発表した。本契約に基づき、JitsuboはNovo Nordiskから、開発フィー、年間独占権料、および製品の臨床段階、商品化段階の進捗に合わせたマイルストーンフィーを受領する。

 23年12月には、岩城製薬の100%子会社である岩城製薬佐倉工場の株式をファインケミカル事業のスペラファーマに譲渡し、24年11月期より岩城製薬佐倉工場を医薬事業からファインケミカル事業に再編した。

■HBC・食品事業

 HBC・食品事業はイワキ、化粧品通販のアプロス、20年12月に子会社化した健康食品・化粧品販売のマルマンH&B、22年12月に子会社化した海外製化粧品輸入販売のアインズラボを中心に展開している。

 21年7月にはイワキがスカイネットから薬事サポート事業、自社開発事業および輸入製販事業を譲り受け、21年9月にはイワキが住建情報センターのヘルスケア事業を譲り受けた。22年1月にはイワキが食品原料調達WEBプラットフォーム「シェアシマ」を運営するICS―netに資本参加した。22年11月には、不採算が続いていたイワキの一般医薬品を中心とする卸売分野から撤退すると発表した。

 23年6月にはイワキが、加工食品・機能性食品の原料検索システム「i−Platto(アイプラット)」の提供を開始した。なお「i−Platto」は、イワキが資本参加しているICS−netが運営する「シェアシマ」とも連携している。

■医薬事業

 医薬事業は皮膚科領域に特化したニッチトップ・ジェネリックメーカーの岩城製薬が展開(20年7月に鳥居薬品佐倉工場を継承した岩城製薬佐倉工場は24年11月期よりファインケミカル事業へ再編)している。20年1月には医療用後発医薬品・一般用医薬品開発の前田薬品工業に出資、21年1月には岩城製薬が新しいコンセプトの抗ウイルス薬開発に取り組んでいるキノファーマと業務提携、21年4月にはインタープロテインとCOVID―19治療薬の共同研究契約を締結した。22年4月には岩城製薬がヤンセンファーマから「ニゾラールローション2%」の日本における製造販売承認を承継・販売移管した。岩城製薬にとって初の長期収載品の扱いとなる。

 22年7月には、スキンケアブランド「ナビジョン/ナビジョンDR」について、資生堂ジャパンが保有していたブランドホルダー機能を岩城製薬に移管することで合意した。ブランド価値向上に向けて役割分担を見直し、資生堂ジャパンが行ってきた研究開発・商品開発機能およびマーケティング機能を岩城製薬が担い、資生堂ジャパンは現行品の製造を担う。22年8月には、岩城製薬がキノファーマと尋常性疣贅を適応症とした共同開発・商業化契約を締結し、22年10月にはキノファーマの第三者割当増資を引き受けて資本出資した。

 23年4月には、岩城製薬がキノファーマと共同開発した製剤を用いて、ヒトパピローマウイルス感染症である尋常性疣贅を適応症として第2相臨床試験(キノファーマが実施)を開始した。23年7月には岩城製薬が帝人ファーマから「ボンアルファ」の日本における製造販売承認を承継した。

■化学品事業

 化学品事業(表面処理薬品部門、表面処理設備部門)はメルテックス、東京化工機、および海外子会社等を中心に展開している。ハイエンド表面処理薬品に特化し、半導体/電子部品領域で高い市場シェアを誇っている。

■SDGsへの取り組み推進

 持株会社体制への移行に伴い、グループ全体のBCP(事業継続計画)対策および従業員の働き方・生き方の選択肢多様化を目的として、21年6月に本社機能の一部を石川県珠洲市に移転した。さらに、石川県珠洲市が地方創生に向けた人材育成事業の一環として行っている能登SDGsラボと協業し、30年までにSDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進する。

 新規事業戦略はSDGs推進に向けて、化粧品原料・製品(グループ会社Jitsuboのペプチド合成法Molecular Hivingによる高品質で環境に優しく、コスト優位性のある化粧品原料・製品)事業、地方創生に繋がるハイブリッド型ふるさと納税プラットフォーム事業、健康食品原料事業(国産の安心・安全な健康食品原料・製品の第6次産業化を目的として、石川県珠洲市で健康食品の原料となる植物等の栽培を行う事業)などを推進している。

 21年7月には、奥能登地域のSDGS達成支援を目的とするファンド「奥能登SDGs投資事業有限責任組合(のとSDGsファンド)」に出資した。特定子会社となる。21年8月には、グループの業務サポートやファシリティーサービスを提供するアステナハートフル(21年6月設立)が、障害者の雇用の促進等に関する法律に基づく特例子会社の認定を取得した。

 21年11月には能登地域のSDGs達成の支援を目的として、能登地域の自治体3市(七尾市、輪島市、珠洲市)・2町(穴水町、能都町)、および国立大学法人金沢大学、奥能登信用金庫、のと共栄信用金庫、北國フィナンシャルホールディングス、BPキャピタルと、SDGs推進に係る連携と協力に関する協定を締結した。21年12月には子会社のイワキ総合研究所の商号をアステナミネルヴァに変更した。新規事業推進室を移設し、事業内容も地方創生に関連する事業に変更した。22年7月にはアステナミネルヴァが、パープルテクノスの子会社で石川県の地域ポータルメディアを展開するイシカワズカンの株式の一部を取得した。

 23年1月にはアステナミネルヴァが、のとSDGsファンドの投資先である有機米デザイン(東京都小金井市)の「アイガモロボ」(田んぼの雑草を抑制する自動ロボット)を使用した有機米事業を開始すると発表した。またアステナミネルヴァが、森林資源を生かした自立・分散型の脱炭素社会の実現に向けて、石川県珠洲市で森林事業を開始すると発表した。

 さらに23年1月には、スタートアップ企業を支援するベンチャーファンド「TUAT1号投資事業有限責任組合」への出資を発表した。同ファンドの主たる投資先は農学分野(特に脱炭素に資する循環型畜産業、スマート農業、持続可能な食料生産)の研究成果を活用したスタートアップ企業を想定しており、アステナミネルヴァとのシナジーを見込んでいる。

 23年3月には、経済産業省と日本健康会議が実施する健康経営優良法人認定制度において、持株会社が「健康経営優良法人2023(大規模法人部門)」に認定、グループ会社のアプロス、スペラファーマ、東海メルテックス、東京化工機、メルテックスが「健康経営優良法人2023(中規模法人部門)」に認定された。さらに、スポーツ庁が主催する「第2回Sport in Lifeアワード」にて優秀賞(企業部門)を受賞した。同社の「歩くふるさと納税」の取り組みが評価された。

■2030年に向けた中長期ビジョンとローリング形式の中期経営計画

 2030年に向けたグループ中長期ビジョン「Astena 2030 “Diversify for Tomorrow”」(21年1月公表)では、定量的ターゲットとして30年11月期の売上高1300億円以上、ROE13%以上を掲げている。セグメント別の30年11月期目標値は、ファインケミカル事業が売上高400億円で営業利益率9%、HBC・食品事業が売上高450億円で営業利益率3%、医薬事業が売上高228億円で営業利益率13%、化学品事業が売上高130億円で営業利益率10%としている。

 基本戦略としては、プラットフォーム戦略(CMC=医療用医薬品研究開発の国内トップレベルでの受託、ヘルスケア調達プラットフォーム=医薬品・化粧品・機能性食品製造会社の全ニーズをカバー、創薬インキュベーション=CMC提供を通じて新薬開発の成功確率を高める、CDMO=注射剤・外皮用剤・治験薬の受託製造)、ニッチトップ戦略(外皮用剤ジェネリック医薬品=国内塗り薬ジェネリック医薬品市場NO.1、ハイエンド表面処理薬品=エレクトロニクスに特化した表面処理薬品)、ソーシャルインパクト戦略(シニア・アクティベイト=化粧品・機能性食品の提供を通じてシニア総アクティブ化推進)を掲げている。

 ファインケミカル事業は、CMC・CDMO事業および調達プラットフォーム事業を2本柱として、原材料調達からCMC研究、原薬商用生産までの医薬品開発・製造の幅広いサービスを提供する。

 HBC・食品事業は、原料ビジネスのDX化による顧客の開発・調達プロセスの課題解決プラットフォームの提供、独自性を高めた商品・サービスの提供による市場価値増大を推進する。またダイレクトマーケティング領域への投資を実行して、領域特化型ネットワークを構築する。

 医薬事業は、皮膚科領域をベースとして外皮用剤品目数および生産キャパシティでトップ、グローバル要求水準に対応して高活性注射剤CDMOのトップを目指す。また外皮用剤、注射剤導入、新薬共同開発、M&A・アライアンスで事業基盤強化・拡大を目指す。

 化学品事業は、エレクトロニクス実装市場のトレンドを捉えたニッチトップ商品の継続的開発、ハイエンドパッケージ基板での地位確立、チップ部品用途の台湾・中国大手での採用、半導体パワー・センサー系薬品の差別化を推進する。またグローバル企業との共同開発も推進して成長を目指す。

 その他では既存事業との親和性、将来に亘る成長性、グループ全体への波及効果なども勘案して、SDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進することを目標とする。

 23年11月期からの中期経営計画(ローリング形式)では、25年11月期の目標値として売上高593億円、営業利益22億円、ROE5.6%を掲げている。セグメント別目標は、ファインケミカル事業の売上高180.9億円(22年11月期146.3億円)で営業利益10.5億円(同2.4億円)、HBC・食品事業の売上高141.4億円(同139.7億円)で営業利益3.1億円(同1.4億円)、医薬事業の売上高153.2億円(同117.5億円)で営業利益1.1億円(同3.9億円)、化学品事業の売上高114.0億円(同92.7億円)で営業利益5.9億円(同1.5億円の赤字)としている。

■23年11月期減益予想だが24年11月期は収益回復基調

 23年11月期の連結業績予想は売上高が22年11月期比3.8%増の515億円、営業利益が12.2%減の7億20百万円、経常利益が53.8%減の4億10百万円、親会社株主帰属当期純利益が98.3%減の10百万円としている。配当予想は22年11月期と同額の18円(第2四半期末9円、期末9円)としている。

 第3四半期累計は売上高が前年同期比10.1%増の406億74百万円、営業利益が60.8%増の6億85百万円、経常利益が52.9%増の7億90百万円、親会社株主帰属四半期純利益が65.4%減の2億09百万円だった。

 純利益は前期計上の固定資産売却益(6億60百万円)の剥落により減益だが、医薬品原料や機能性食品原料の好調などで全体として2桁増収、大幅営業・経常増益だった。なお営業外費用では持分法投資損失が37百万円減少、特別損失では投資有価証券評価損2億19百万円を計上した。

 ファインケミカル事業は、売上高(外部顧客への売上高)が6.8%増の118億47百万円で、営業利益(全社費用等調整前)が62.6%減の63百万円だった。スペラネクサスにおける医薬品原料販売が新薬メーカー向け新規案件も寄与して好調だったが、医薬品CDMO分野の経営改善遅れが影響した。

 HBC・食品事業は、売上高が21.1%増の126億51百万円で、営業利益が1億91百万円(前年同期は91百万円の損失)だった。大幅増収効果で黒字転換した。化粧品通販部門が定期会員数減少で低調だったが、食品原料部門における機能性食品の需要増加や新規受注獲得、ファルマネット部門におけるインバウンド需要回復などが牽引した。

 医薬事業は、売上高が10.2%増の98億45百万円で、営業利益が25.6%増の4億88百万円だった。医療用医薬品部門では22年12月に新製品として販売開始した抗真菌薬であるリコナゾール軟膏・クリームが好調だったことに加えて、同業他社の一部製品の販売中止に伴う代替需要としてゲンタマイシン軟膏やピコスルファートナトリウム内用液などが伸長した。また、7月1日付で帝人ファーマより承継したボンアルファ・ボンアルファイも寄与した。なお岩城製薬佐倉工場では、高活性注射液棟の改修を行っており、23年秋の稼働に向けて準備を進めている。なお、医療用医薬品の薬価制度では原価上昇分を即時に価格転嫁し得ないため、収益性が低下したとしている。

 化学品事業は、売上高が2.1%減の63億23百万円で、営業利益が48百万円の損失(同1億30百万円の損失)だった。売上面は微細配線形成用薬品や受動部品向けめっき薬品の販売が低調だったが、利益面はコスト上昇分の価格転嫁や販管費の見直しなどにより赤字縮小した。

 その他事業(人材事業、ふるさと納税事業などの新規事業)は、売上高が6百万円で営業利益が77百万円の損失(同28百万円の損失)だった。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高が127億85百万円で営業利益が92百万円の損失、第2四半期は売上高が140億72百万円で営業利益が3億円、第3四半期は売上高が138億17百万円で営業利益が4億77百万円だった。営業利益は第1四半期をボトムとして回復基調である。

 通期連結業績予想は据え置いている。原材料価格などの不透明感を考慮して減益予想としている。ただし第3四半期累計の進捗率は売上高79%、営業利益95%、経常利益193%と高水準だった。第1四半期がボトムとなったことに加えて、第3四半期累計の高進捗率なども勘案すれば、通期会社予想に上振れ余地がありそうだ。さらに24年11月期は積極的な事業展開で収益回復基調だろう。

■株主優待制度を一部変更

 株主優待制度については、公平性および適正化の観点から利益配分に対するバランスを考慮し、23年7月13日付で一部変更(詳細は会社HP参照)を発表した。従来は毎年11月末時点で100株(1単元)以上を継続して1年以上保有する株主を対象に保有株数および保有期間に応じて自社商品等を贈呈していたが、変更後は毎年11月末時点で500株(5単元)以上を継続して1年以上保有する株主を対象に保有株数および保有期間に応じて自社商品等を贈呈する。23年11月末対象より実施した。

■株価は調整一巡

 株価は11月の年初来高値圏から反落して水準を切り下げる形となったが、調整一巡感を強めている。高配当利回りや1倍割れの低PBRも評価材料であり、出直りを期待したい。12月19日の終値は467円、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS25銭で算出)は約1868倍、前期推定配当利回り(会社予想の18円で算出)は約3.9%、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS685円24銭で算出)は約0.7倍、そして時価総額は約191億円である。情報提供:日本インタビュ新聞社=Media−IR
[11月27日更新]

アステナホールディングスは上値試す、23年11月期減益予想だが上振れの可能性

アステナホールディングス<8095>(東証プライム)はヘルスケア・ファインケミカル企業集団として、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。23年11月期は原材料価格などの不透明感を考慮して減益予想としているが、第1四半期がボトムとなったことに加えて、第3四半期累計の高進捗率なども勘案すれば、通期会社予想は上振れの可能性が高く、積極的な事業展開で収益回復基調だろう。株価は年初来高値圏から一旦反落したが、調整一巡して反発の動きを強めている。ボックスレンジから上放れて基調転換した形であり、高配当利回りや1倍割れの低PBRも評価して上値を試す展開を期待したい。
 
■ヘルスケア・ファインケミカル企業集団
 
 旧イワキが21年6月1日付で持株会社体制に移行して商号をアステナホールディングスに変更した。アステナは「明日(未来)+サステナブル(持続可能)」の造語である。ヘルスケア・ファインケミカル企業集団として、製造分野が利益柱となり、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。
 
 セグメント区分はファインケミカル事業(医薬品のCMC研究開発・製造受託、医薬品原料の製造販売など)、HBC・食品事業(化粧品原料の販売、食品原料・機能性食品の製造販売、一般用医薬品の卸売、化粧品の通信販売など)、医薬事業(医薬品・医療機器の製造販売など)、化学品事業(表面処理薬品の製造販売、プリント基板製造プラントの製造販売など)、その他(地方創生関連事業など)としている。なお新規事業として有機米事業および森林事業を開始する。
 
 22年11月期(収益認識会計基準適用)のセグメント別売上高(外部顧客への売上高)の構成比はファインケミカル事業が29%、HBC・食品事業が28%、医薬事業が24%、化学品事業が19%、その他が0%だった。営業利益の構成比はファインケミカル事業が30%、HBC・食品事業が17%、医薬事業が48%、化学品事業が▲19%、その他が▲5%、そして調整額が29%だった。
 
 さらに、4つの戦略的ビジネスモデル(調達プラットフォーム事業、インキュベーション事業、注射剤CDMO事業、塗り薬CDM事業)を構築し、収益基盤拡大を推進している。
 
■ファインケミカル事業
 
 ファインケミカル事業は、20年3月に子会社化した医薬品CMC研究開発・製造受託のスペラファーマ、スペラファーマの子会社として20年7月に設立したスペラネクサス、スペラファーマが21年4月に子会社化したペプチド合成技術のJitsuboを中心に展開し、医薬品原薬のCMC研究開発から製造受託・販売まで一貫体制を構築している。また20年6月にはスペラファーマが創薬ベンチャーのジェイファーマに出資した。
 
 21年3月には岩城製薬が、オンコリスバイオファーマ<4588>の新型コロナウイルス感染症治療薬OBP―2011の臨床試験開始に必要な治験薬原薬の製造法開発とGMP製造を受託(スペラネクサスに承継)することで基本合意し、21年7月にはスペラファーマがオンコリスバイオファーマからOBP―2011の治験薬製剤のGMP製造を受託することで基本合意した。
 
 22年2月にはスペラファーマがインタープロテインと、アンメット・メディカル・ニーズの高い様々な疾患に対する新規低分子およびペプチド医薬品の研究開発、製造ならびに商業化を目的とした包括的協業に関する覚書を締結した。22年11月にはジェイファーマが実施する第三者割当による新株予約権を引き受けた。
 
 23年5月には、創薬エコシステムを活性化する枠組みの構築を目指し、スペラファーマを含む6社が、ヘルスケアイノベーションが生まれる湘南アイパークで「湘南創薬コンソーシアム」発足に向けた協議を開始した。
 
 23年6月にはJitsuboが、世界有数のヘルスケア子業であるNovo Nordiskと、Novo Nordiskの糖尿病・肥満・非アルコール性脂肪肝炎・慢性腎臓病・アテローム動脈硬化性心血管疾患・心不全の分野(ジェネリック医薬品除く)のペプチド合成において、Jitsuboのペプチド合成の特許技術であるMolecular Hiving法の独占的使用および製造ライセンス契約締結を発表した。本契約に基づき、JitsuboはNovo Nordiskから、開発フィー、年間独占権料、および製品の臨床段階、商品化段階の進捗に合わせたマイルストーンフィーを受領する。
 
■HBC・食品事業
 
 HBC・食品事業はイワキ、化粧品通販のアプロス、20年12月に子会社化した健康食品・化粧品販売のマルマンH&B、22年12月に子会社化した海外製化粧品輸入販売のアインズラボを中心に展開している。
 
 21年7月にはイワキがスカイネットから薬事サポート事業、自社開発事業および輸入製販事業を譲り受け、21年9月にはイワキが住建情報センターのヘルスケア事業を譲り受けた。22年1月にはイワキが食品原料調達WEBプラットフォーム「シェアシマ」を運営するICS―netに資本参加した。22年11月には、不採算が続いていたイワキの一般医薬品を中心とする卸売分野から撤退すると発表した。
 
 23年6月にはイワキが、加工食品・機能性食品の原料検索システム「i−Platto(アイプラット)」の提供を開始した。なお「i−Platto」は、イワキが資本参加しているICS−netが運営する「シェアシマ」とも連携している。
 
■医薬事業
 
 医薬事業は、皮膚科領域に特化したニッチトップ・ジェネリックメーカーの岩城製薬と、20年7月に鳥居薬品佐倉工場を継承した岩城製薬佐倉工場を中心に展開している。20年1月には医療用後発医薬品・一般用医薬品開発の前田薬品工業に出資、21年1月には岩城製薬が新しいコンセプトの抗ウイルス薬開発に取り組んでいるキノファーマと業務提携、21年4月にはインタープロテインとCOVID―19治療薬の共同研究契約を締結した。22年4月には岩城製薬がヤンセンファーマから「ニゾラールローション2%」の日本における製造販売承認を承継・販売移管した。岩城製薬にとって初の長期収載品の扱いとなる。
 
 22年7月には、スキンケアブランド「ナビジョン/ナビジョンDR」について、資生堂ジャパンが保有していたブランドホルダー機能を岩城製薬に移管することで合意した。ブランド価値向上に向けて役割分担を見直し、資生堂ジャパンが行ってきた研究開発・商品開発機能およびマーケティング機能を岩城製薬が担い、資生堂ジャパンは現行品の製造を担う。22年8月には、岩城製薬がキノファーマと尋常性疣贅を適応症とした共同開発・商業化契約を締結し、22年10月にはキノファーマの第三者割当増資を引き受けて資本出資した。
 
 23年4月には、岩城製薬がキノファーマと共同開発した製剤を用いて、ヒトパピローマウイルス感染症である尋常性疣贅を適応症として第2相臨床試験(キノファーマが実施)を開始した。23年7月には岩城製薬が帝人ファーマから「ボンアルファ」の日本における製造販売承認を承継した。
 
■化学品事業
 
 化学品事業(表面処理薬品部門、表面処理設備部門)はメルテックス、東京化工機、および海外子会社等を中心に展開している。ハイエンド表面処理薬品に特化し、半導体/電子部品領域で高い市場シェアを誇っている。
 
■SDGsへの取り組み推進
 
 持株会社体制への移行に伴い、グループ全体のBCP(事業継続計画)対策および従業員の働き方・生き方の選択肢多様化を目的として、21年6月に本社機能の一部を石川県珠洲市に移転した。さらに、石川県珠洲市が地方創生に向けた人材育成事業の一環として行っている能登SDGsラボと協業し、30年までにSDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進する。
 
 新規事業戦略はSDGs推進に向けて、化粧品原料・製品(グループ会社Jitsuboのペプチド合成法Molecular Hivingによる高品質で環境に優しく、コスト優位性のある化粧品原料・製品)事業、地方創生に繋がるハイブリッド型ふるさと納税プラットフォーム事業、健康食品原料事業(国産の安心・安全な健康食品原料・製品の第6次産業化を目的として、石川県珠洲市で健康食品の原料となる植物等の栽培を行う事業)などを推進している。
 
 21年7月には、奥能登地域のSDGS達成支援を目的とするファンド「奥能登SDGs投資事業有限責任組合(のとSDGsファンド)」に出資した。特定子会社となる。21年8月には、グループの業務サポートやファシリティーサービスを提供するアステナハートフル(21年6月設立)が、障害者の雇用の促進等に関する法律に基づく特例子会社の認定を取得した。
 
 21年11月には能登地域のSDGs達成の支援を目的として、能登地域の自治体3市(七尾市、輪島市、珠洲市)・2町(穴水町、能都町)、および国立大学法人金沢大学、奥能登信用金庫、のと共栄信用金庫、北國フィナンシャルホールディングス、BPキャピタルと、SDGs推進に係る連携と協力に関する協定を締結した。21年12月には子会社のイワキ総合研究所の商号をアステナミネルヴァに変更した。新規事業推進室を移設し、事業内容も地方創生に関連する事業に変更した。22年7月にはアステナミネルヴァが、パープルテクノスの子会社で石川県の地域ポータルメディアを展開するイシカワズカンの株式の一部を取得した。
 
 23年1月にはアステナミネルヴァが、のとSDGsファンドの投資先である有機米デザイン(東京都小金井市)の「アイガモロボ」(田んぼの雑草を抑制する自動ロボット)を使用した有機米事業を開始すると発表した。またアステナミネルヴァが、森林資源を生かした自立・分散型の脱炭素社会の実現に向けて、石川県珠洲市で森林事業を開始すると発表した。
 
 さらに23年1月には、スタートアップ企業を支援するベンチャーファンド「TUAT1号投資事業有限責任組合」への出資を発表した。同ファンドの主たる投資先は農学分野(特に脱炭素に資する循環型畜産業、スマート農業、持続可能な食料生産)の研究成果を活用したスタートアップ企業を想定しており、アステナミネルヴァとのシナジーを見込んでいる。
 
 23年3月には、経済産業省と日本健康会議が実施する健康経営優良法人認定制度において、持株会社が「健康経営優良法人2023(大規模法人部門)」に認定、グループ会社のアプロス、スペラファーマ、東海メルテックス、東京化工機、メルテックスが「健康経営優良法人2023(中規模法人部門)」に認定された。さらに、スポーツ庁が主催する「第2回Sport in Lifeアワード」にて優秀賞(企業部門)を受賞した。同社の「歩くふるさと納税」の取り組みが評価された。
 
■2030年に向けた中長期ビジョンとローリング形式の中期経営計画
 
 2030年に向けたグループ中長期ビジョン「Astena 2030 “Diversify for Tomorrow”」(21年1月公表)では、定量的ターゲットとして30年11月期の売上高1300億円以上、ROE13%以上を掲げている。セグメント別の30年11月期目標値は、ファインケミカル事業が売上高400億円で営業利益率9%、HBC・食品事業が売上高450億円で営業利益率3%、医薬事業が売上高228億円で営業利益率13%、化学品事業が売上高130億円で営業利益率10%としている。
 
 基本戦略としては、プラットフォーム戦略(CMC=医療用医薬品研究開発の国内トップレベルでの受託、ヘルスケア調達プラットフォーム=医薬品・化粧品・機能性食品製造会社の全ニーズをカバー、創薬インキュベーション=CMC提供を通じて新薬開発の成功確率を高める、CDMO=注射剤・外皮用剤・治験薬の受託製造)、ニッチトップ戦略(外皮用剤ジェネリック医薬品=国内塗り薬ジェネリック医薬品市場NO.1、ハイエンド表面処理薬品=エレクトロニクスに特化した表面処理薬品)、ソーシャルインパクト戦略(シニア・アクティベイト=化粧品・機能性食品の提供を通じてシニア総アクティブ化推進)を掲げている。
 
 ファインケミカル事業は、CMC・CDMO事業および調達プラットフォーム事業を2本柱として、原材料調達からCMC研究、原薬商用生産までの医薬品開発・製造の幅広いサービスを提供する。
 
 HBC・食品事業は、原料ビジネスのDX化による顧客の開発・調達プロセスの課題解決プラットフォームの提供、独自性を高めた商品・サービスの提供による市場価値増大を推進する。またダイレクトマーケティング領域への投資を実行して、領域特化型ネットワークを構築する。
 
 医薬事業は、皮膚科領域をベースとして外皮用剤品目数および生産キャパシティでトップ、グローバル要求水準に対応して高活性注射剤CDMOのトップを目指す。また外皮用剤、注射剤導入、新薬共同開発、M&A・アライアンスで事業基盤強化・拡大を目指す。
 
 化学品事業は、エレクトロニクス実装市場のトレンドを捉えたニッチトップ商品の継続的開発、ハイエンドパッケージ基板での地位確立、チップ部品用途の台湾・中国大手での採用、半導体パワー・センサー系薬品の差別化を推進する。またグローバル企業との共同開発も推進して成長を目指す。
 
 その他では既存事業との親和性、将来に亘る成長性、グループ全体への波及効果なども勘案して、SDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進することを目標とする。
 
 23年11月期からの中期経営計画(ローリング形式)では、25年11月期の目標値として売上高593億円、営業利益22億円、ROE5.6%を掲げている。セグメント別目標は、ファインケミカル事業の売上高180.9億円(22年11月期146.3億円)で営業利益10.5億円(同2.4億円)、HBC・食品事業の売上高141.4億円(同139.7億円)で営業利益3.1億円(同1.4億円)、医薬事業の売上高153.2億円(同117.5億円)で営業利益1.1億円(同3.9億円)、化学品事業の売上高114.0億円(同92.7億円)で営業利益5.9億円(同1.5億円の赤字)としている。
 
■23年11月期減益予想だが上振れの可能性
 
 23年11月期の連結業績予想は売上高が22年11月期比3.8%増の515億円、営業利益が12.2%減の7億20百万円、経常利益が53.8%減の4億10百万円、親会社株主帰属当期純利益が98.3%減の10百万円としている。配当予想は22年11月期と同額の18円(第2四半期末9円、期末9円)としている。
 
 第3四半期累計は売上高が前年同期比10.1%増の406億74百万円、営業利益が60.8%増の6億85百万円、経常利益が52.9%増の7億90百万円、親会社株主帰属四半期純利益が65.4%減の2億09百万円だった。
 
 純利益は前期計上の固定資産売却益(6億60百万円)の剥落により減益だが、医薬品原料や機能性食品原料の好調などで全体として2桁増収、大幅営業・経常増益だった。なお営業外費用では持分法投資損失が37百万円減少、特別損失では投資有価証券評価損2億19百万円を計上した。
 
 ファインケミカル事業は、売上高(外部顧客への売上高)が6.8%増の118億47百万円で、営業利益(全社費用等調整前)が62.6%減の63百万円だった。スペラネクサスにおける医薬品原料販売が新薬メーカー向け新規案件も寄与して好調だったが、医薬品CDMO分野の経営改善遅れが影響した。
 
 HBC・食品事業は、売上高が21.1%増の126億51百万円で、営業利益が1億91百万円(前年同期は91百万円の損失)だった。大幅増収効果で黒字転換した。化粧品通販部門が定期会員数減少で低調だったが、食品原料部門における機能性食品の需要増加や新規受注獲得、ファルマネット部門におけるインバウンド需要回復などが牽引した。
 
 医薬事業は、売上高が10.2%増の98億45百万円で、営業利益が25.6%増の4億88百万円だった。医療用医薬品部門では22年12月に新製品として販売開始した抗真菌薬であるリコナゾール軟膏・クリームが好調だったことに加えて、同業他社の一部製品の販売中止に伴う代替需要としてゲンタマイシン軟膏やピコスルファートナトリウム内用液などが伸長した。また、7月1日付で帝人ファーマより承継したボンアルファ・ボンアルファイも寄与した。なお岩城製薬佐倉工場では、高活性注射液棟の改修を行っており、23年秋の稼働に向けて準備を進めている。なお、医療用医薬品の薬価制度では原価上昇分を即時に価格転嫁し得ないため、収益性が低下したとしている。
 
 化学品事業は、売上高が2.1%減の63億23百万円で、営業利益が48百万円の損失(同1億30百万円の損失)だった。売上面は微細配線形成用薬品や受動部品向けめっき薬品の販売が低調だったが、利益面はコスト上昇分の価格転嫁や販管費の見直しなどにより赤字縮小した。
 
 その他事業(人材事業、ふるさと納税事業などの新規事業)は、売上高が6百万円で営業利益が77百万円の損失(同28百万円の損失)だった。
 
 四半期別に見ると、第1四半期は売上高が127億85百万円で営業利益が92百万円の損失、第2四半期は売上高が140億72百万円で営業利益が3億円、第3四半期は売上高が138億17百万円で営業利益が4億77百万円だった。営業利益は第1四半期をボトムとして回復基調である。
 
 通期連結業績予想は据え置いている。原材料価格などの不透明感を考慮して減益予想としている。ただし第3四半期累計の進捗率は売上高79%、営業利益95%、経常利益193%と高水準だった。第1四半期がボトムとなったことに加えて、第3四半期累計の高進捗率なども勘案すれば、通期会社予想は上振れの可能性が高く、積極的な事業展開で収益回復基調だろう。
 
■株主優待制度を一部変更
 
 株主優待制度については、公平性および適正化の観点から利益配分に対するバランスを考慮し、23年7月13日付で一部変更(詳細は会社HP参照)を発表した。従来は毎年11月末時点で100株(1単元)以上を継続して1年以上保有する株主を対象に保有株数および保有期間に応じて自社商品等を贈呈していたが、変更後は毎年11月末時点で500株(5単元)以上を継続して1年以上保有する株主を対象に保有株数および保有期間に応じて自社商品等を贈呈する。23年11月末対象より実施する。
 
■株価は上値試す
 
 株価は年初来高値圏から一旦反落したが、調整一巡して反発の動きを強めている。ボックスレンジから上放れて基調転換した形であり、高配当利回りや1倍割れの低PBRも評価して上値を試す展開を期待したい。11月24日の終値は514円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS25銭で算出)は約2056倍、今期予想配当利回り(会社予想の18円で算出)は約3.5%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS685円24銭で算出)は約0.8倍、そして時価総額は約210億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media−IR
 
[10月24日更新]

日本エム・ディ・エムは売られ過ぎ感、24年3月期増益予想

 日本エム・ディ・エム<7600>(東証プライム)は人工関節製品など整形外科分野を主力とする医療機器メーカーである。米国子会社オーソデベロップメント(ODEV)社製品を主力として、商社機能と開発主導型メーカー機能を融合した独自のビジネスモデルを展開している。24年3月期は日本および米国における症例数の増加などで増収増益予想としている。積極的な事業展開により円安のマイナス影響を吸収して収益改善基調を期待したい。株価は地合い悪化も影響して安値圏だが、売られ過ぎ感を強めている。1倍割れの低PBRも評価材料であり、売り一巡して出直りを期待したい。なお10月30日に24年3月期第2四半期決算発表を予定している。

■整形外科分野の医療機器メーカー、米国子会社製品が主力

 人工関節製品、骨接合材料、脊椎固定器具など整形外科分野を主力とする医療機器メーカーである。米国子会社オーソデベロップメント(ODEV)社製品を主力として、商社機能と開発主導型メーカー機能を融合した独自のビジネスモデルを展開している。海外展開として、米国では販売体制強化と人工関節分野新製品導入による2桁成長を目指し、中国では合弁会社設立による米国ODEV社製品の輸入販売拡大と中国現地生産品の製造・販売開始を目指している。

 23年3月期のセグメント別(調整前)業績は、日本国内の売上高が1.9%増の123億56百万円で営業利益が33.2%減の12億31百万円、米国の売上高が17.6%増の127億82百万円で営業利益が22.8%減の6億47百万円だった。地域別・品目別売上高(売上控除前)は、日本の人工関節が0.4%増の47億38百万円、骨接合材料が5.0%増の43億22百万円、脊椎固定器具が1.9%増の31億85百万円、その他(人工骨など)が20.9%減の3億54百万円、そして米国の人工関節が26.5%増の89億10百万円、脊椎固定器具が54.8%増の40百万円だった。自社製品比率は80.6%で1,4ポイント上昇した。

 収益面の特性として、医療機器償還価格の影響や為替変動の影響を受けるほか、整形外科医療機器の販売は下期が繁忙期となる傾向があるため、業績も下期の構成比が高い特性があるとしている。

 なお22年1月に筆頭株主が異動した。日本特殊陶業が保有する株式を三井化学に譲渡(手続として売り出しによる譲渡)し、三井化学が筆頭株主となった。日本特殊陶業との資本業務提携を解消し、新たに三井化学と資本業務提携した。

■新製品の開発・調達拡大

 新製品としては、米国ODEV社との日米共同開発による適応症例拡大に向けたインプラント開発や、新素材インプラントや手術支援システムなど外部調達によるビジネス拡大を推進している。

 21年3月には米国ODEV社が中国WASTONと、中国現地生産品の製造・販売を目的とした合弁会社を設立した。21年5月には米国ODEV社が米国THINK社と共同で、米国ODEV社の人工関節製品を用いた人工関節全置換手術を、THINK社の手術支援ロボットシステムを用いて行うことができるようにした。

 22年7月には、米国ODEV社製造の人工股関節新製品「Promontoryヒップシステム」の日本における薬事承認を取得、米国ODEV社製造の脊椎ケージ「Vusion Ti3D ARCケージ」の日本における薬事承認を取得した。

 22年12月には米国ODEV社が、Materialise社(ベルギー)製の患者適合型人口膝関節手術用器械BKS Total PSIを共同開発し、米国医療施設向けに供給開始した。

 23年3月には米国ODEV社が、人工関節置換手術に使用するNaviswiss社製の人工股関節置換手術用ナビゲーションシステムNaviswiss Hip および人口膝関節置換手術用ナビゲーションシステムNaviswiss Kneeを米国医療施設向けに導入すると発表した。Naviswiss Hipは24年3月期第1四半期に導入予定、Naviswiss Kneeは24年3月期後半に導入予定である。

 23年9月には、インフィックスおよび細胞応用技術研究所との販売提携契約締結を発表した。膝関節早期治療製品PRP−FD(Plate Rich Plasma Freeze Dry)の医療施設向け販売を23年11月(予定)に開始し、再生医療分野(膝関節)に参入する。

■サステナビリティの取り組み強化

 サステナビリティの取り組みも強化している。22年3月にはTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への賛同を表明するとともに、同提言に賛同する企業や金融機関からなるTCFDコンソーシアムに参画した。22年6月には国際連合が提唱する「国連グローバル・コンパクト(UNGC)」に署名し、参加企業として登録された。併せて、UNGCに署名している日本企業などで構成される「グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン」に加入した。

 22年12月には、国際的な環境評価の情報開示システムを運用するCDPから、環境問題によるリスクや影響を管理している企業として、スコアレベル「B−」評価として認定されたと発表している。

 なお23年7月には、FTSE Russellにより構築された日本株ESG指数「FTSE Blossom Japan Sector Relative Index」の構成銘柄に初めて選出された。

■24年3月期増益予想

 24年3月期の連結業績予想は売上高が23年3月期比9.3%増の233億円、営業利益が23.5%増の25億円、経常利益が17.4%増の24億円、親会社株主帰属当期純利益が5.4%増の15億円としている。想定為替レートは1USドル=135円(23年3月期実績は1USドル=134.95円)としている。配当予想は23年3月期比1円増配の14円(期末一括)としている。連続増配予想で予想配当性向は24.5%となる。

 重点施策として、日本市場では人工関節・脊椎固定器具分野の新製品の全国展開、大腿骨頚部転子部骨折治療分野の症例獲得、営業体制強化による顧客基盤の強化、人工股関節販売強化・手術支援システム継続運用、三井化学との共同開発、米国市場ではUHKAS(ODEV社主催)による顧客基盤の強化、West地区の営業体制強化、新製品の全国展開による販売強化、手術支援システム運用による人工関節販売強化、製造原価低減などを推進する。

 地域別・品目別売上高(売上控除前)の計画は、日本国内が7.8%増の135億80百万円(人工関節が11.0%増の52億60百万円、骨接合材料が4.1%増の45億円、脊椎固定器具が8.6%増の34億60百万円、その他(人工骨など)が1.5%増の3億60百万円、そして米国が11.7%増の100億円(人工関節が12.2%増の100億円)としている。自社製品比率は81.8%で1.2ポイント上昇の見込みとしている。

 第1四半期(4〜6月)は、売上高が前年同期比7.5%増の54億02百万円、営業利益が30.5%減の3億46百万円、経常利益が30.2%減の3億37百万円、親会社株主帰属四半期純利益が47.3%減の1億77百万円だった。

 売上面は獲得症例数が伸長して増収と順調だったが、利益面は為替の円安影響、国内における償還価格引き下げの影響、国内体制強化に伴う人件費の増加、米国売上増加に伴う支払手数料(コミッション・ロイヤリティ)の増加、研究開発費の増加、米国子会社ODEVにおいて隔年で主催している顧客向けセミナー開催などによる販促費の増加、円安に伴う米国での費用(円換算後)の増加などで減益だった。

 セグメント別(調整前)に見ると、日本国内は売上高が4.1%増の30億55百万円で営業利益が7.5%減の2億36百万円、米国は売上高が7.9%増の31億82百万円で営業利益が73.5%減の54百万円だった。なお米国の外部顧客向け売上高は、米ドルベースで4.8%増の16百万円米ドル、円換算後で12.1%増の23億47百万円だった。為替の換算レートは前年同期が1米ドル=129.50円、当期が1米ドル=138.11円だった。

 医療機器類の品目別・地域別売上高(円換算後)は、人工関節は日本が3.2%増の11億70百万円、米国が12.1%増の23億38百万円、骨接合材料(日本)はが8.1%増の10億38百万円、脊椎固定器具(日本と米国の合計)は0.7%減の8億21百万円だった。なお自社製品比率は前年同期と同じ80.1%だった。

 通期の連結業績予想は据え置いている。第1四半期は減益だったが、積極的な事業展開により円安のマイナス影響を吸収して収益改善基調を期待したい。

■株価は売られ過ぎ感

 株価は地合い悪化も影響して安値圏だが、売られ過ぎ感を強めている。1倍割れの低PBRも評価材料であり、売り一巡して出直りを期待したい。10月23日の終値は706円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS57円03銭で算出)は約12倍、今期予想配当利回り(会社予想の14円で算出)は約2.0%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS880円64銭で算出)は約0.8倍、そして時価総額は約187億円である。情報提供:日本インタビュ新聞社=Media−IR
[10月16日更新]

アステナホールディングスは23年11月期3Q累計大幅営業・経常増益、通期上振れの可能性

 アステナホールディングス<8095>(東証プライム)は10月13日の取引時間終了後に23年11月期第3四半期累計連結業績を発表した。純利益は前期計上の固定資産売却益の剥落により減益だが、医薬品原料や機能性食品原料の好調などで全体として2桁増収、大幅営業・経常増益だった。通期は原材料価格などの不透明感を考慮して減益予想としているが。第1四半期がボトムとなったことに加えて、第3四半期累計の高進捗率なども勘案すれば、通期会社予想は上振れの可能性が高く、積極的な事業展開で収益回復基調だろう。株価は地合い悪化の影響で9月の年初来高値圏から反落したが、モミ合いから上放れて基調転換した形だ。目先的な売りが一巡し、第3四半期累計業績を評価して上値を試す展開を期待したい。

■23年11月期3Q累計大幅営業・経常増益、通期上振れの可能性

 23年11月期第3四半期累計(22年12月〜23年8月)の連結業績は、売上高が前年同期比10.1%増の406億74百万円、営業利益が60.8%増の6億85百万円、経常利益が52.9%増の7億90百万円、親会社株主帰属四半期純利益が65.4%減の2億09百万円だった。

 純利益は前期計上の固定資産売却益(6億60百万円)の剥落により減益だが、医薬品原料や機能性食品原料の好調などで全体として2桁増収、大幅営業・経常増益だった。なお営業外費用では持分法投資損失が37百万円減少、特別損失では投資有価証券評価損2億19百万円を計上した。

 ファインケミカル事業は、売上高(外部顧客への売上高)が6.8%増の118億47百万円で、営業利益(全社費用等調整前)が62.6%減の63百万円だった。スペラネクサスにおける医薬品原料販売が新薬メーカー向け新規案件も寄与して好調だったが、医薬品CDMO分野の経営改善遅れが影響した。

 HBC・食品事業は、売上高が21.1%増の126億51百万円で、営業利益が1億91百万円(前年同期は91百万円の損失)だった。大幅増収効果で黒字転換した。化粧品通販部門が定期会員数減少で低調だったが、食品原料部門における機能性食品の需要増加や新規受注獲得、ファルマネット部門におけるインバウンド需要回復などが牽引した。

 医薬事業は、売上高が10.2%増の98億45百万円で、営業利益が25.6%増の4億88百万円だった。医療用医薬品部門では22年12月に新製品として販売開始した抗真菌薬であるリコナゾール軟膏・クリームが好調だったことに加えて、同業他社の一部製品の販売中止に伴う代替需要としてゲンタマイシン軟膏やピコスルファートナトリウム内用液などが伸長した。また、7月1日付で帝人ファーマより承継したボンアルファ・ボンアルファイも想定を上回った。コスト増と価格転嫁遅れで収益性が低下した。なお岩城製薬佐倉工場では、高活性注射液棟の改修を行っており、23年秋の稼働に向けて準備を進めている。なお、医療用医薬品の薬価制度では原価上昇分を即時に価格転嫁し得ないため、収益性が低下したとしている。

 化学品事業は、売上高が2.1%減の63億23百万円で、営業利益が48百万円の損失(同1億30百万円の損失)だった。コスト上昇分の価格転嫁や販管費の見直しなどを推進したが、微細配線形成用薬品や受動部品向けめっき薬品の販売が低調だった。

 その他事業(人材事業、ふるさと納税事業などの新規事業)は、売上高が6百万円で営業利益が77百万円の損失(同28百万円の損失)だった。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高が127億85百万円で営業利益が92百万円の損失、第2四半期は売上高が140億72百万円で営業利益が3億円、第3四半期は売上高が138億17百万円で営業利益が4億77百万円だった。営業利益は第1四半期をボトムとして回復基調である。

 通期連結業績予想は据え置いて、売上高が22年11月期比3.8%増の515億円、営業利益が12.2%減の7億20百万円、経常利益が53.8%減の4億10百万円、親会社株主帰属当期純利益が98.3%減の10百万円としている。配当予想は22年11月期と同額の18円(第2四半期末9円、期末9円)としている。

 原材料価格などの不透明感を考慮して減益予想としている。ただし第3四半期累計の進捗率は売上高79%、営業利益95%、経常利益193%である。第1四半期がボトムとなったことに加えて、第3四半期累計の高進捗率なども勘案すれば、通期会社予想は上振れの可能性が高く、積極的な事業展開で収益回復基調だろう。

■株価は上値試す

 株価は地合い悪化の影響で9月の年初来高値圏から反落したが、モミ合いから上放れて基調転換した形だ。目先的な売りが一巡し、第3四半期累計業績を評価して上値を試す展開を期待したい。10月13日の終値は473円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS25銭で算出)は約1892倍、今期予想配当利回り(会社予想の18円で算出)は約3.8%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS685円24銭で算出)は約0.7倍、そして時価総額は約193億円である。 (情報提供:日本インタビュ新聞社=Media−IR
[10月06日更新]

アステナホールディングスは上値試す、23年11月期減益予想だが下期回復基調

 アステナホールディングス<8095>(東証プライム)はヘルスケア・ファインケミカル企業集団として、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。23年11月期は原材料価格などの不透明感を考慮して減益予想としている。ただし四半期別に見ると第1四半期がボトムとなった可能性があり、積極的な事業展開で下期の収益回復基調を期待したい。株価は地合い悪化の影響で9月の年初来高値圏から反落したが、ボックスレンジから上放れの形となっている。高配当利回りや1倍割れの低PBRも評価材料であり、目先的な売り一巡して上値を試す展開を期待したい。

■ヘルスケア・ファインケミカル企業集団

 旧イワキが21年6月1日付で持株会社体制に移行して商号をアステナホールディングスに変更した。アステナは「明日(未来)+サステナブル(持続可能)」の造語である。ヘルスケア・ファインケミカル企業集団として、製造分野が利益柱となり、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。

 セグメント区分はファインケミカル事業(医薬品のCMC研究開発・製造受託、医薬品原料の製造販売など)、HBC・食品事業(化粧品原料の販売、食品原料・機能性食品の製造販売、一般用医薬品の卸売、化粧品の通信販売など)、医薬事業(医薬品・医療機器の製造販売など)、化学品事業(表面処理薬品の製造販売、プリント基板製造プラントの製造販売など)、その他(地方創生関連事業など)としている。なお新規事業として有機米事業および森林事業を開始する。

 22年11月期(収益認識会計基準適用)のセグメント別売上高(外部顧客への売上高)の構成比はファインケミカル事業が29%、HBC・食品事業が28%、医薬事業が24%、化学品事業が19%、その他が0%だった。営業利益の構成比はファインケミカル事業が30%、HBC・食品事業が17%、医薬事業が48%、化学品事業が▲19%、その他が▲5%、そして調整額が29%だった。

 さらに、4つの戦略的ビジネスモデル(調達プラットフォーム事業、インキュベーション事業、注射剤CDMO事業、塗り薬CDM事業)を構築し、収益基盤拡大を推進している。

■ファインケミカル事業

 ファインケミカル事業は、20年3月に子会社化した医薬品CMC研究開発・製造受託のスペラファーマ、スペラファーマの子会社として20年7月に設立したスペラネクサス、スペラファーマが21年4月に子会社化したペプチド合成技術のJitsuboを中心に展開し、医薬品原薬のCMC研究開発から製造受託・販売まで一貫体制を構築している。また20年6月にはスペラファーマが創薬ベンチャーのジェイファーマに出資した。

 21年3月には岩城製薬が、オンコリスバイオファーマ<4588>の新型コロナウイルス感染症治療薬OBP―2011の臨床試験開始に必要な治験薬原薬の製造法開発とGMP製造を受託(スペラネクサスに承継)することで基本合意し、21年7月にはスペラファーマがオンコリスバイオファーマからOBP―2011の治験薬製剤のGMP製造を受託することで基本合意した。

 22年2月にはスペラファーマがインタープロテインと、アンメット・メディカル・ニーズの高い様々な疾患に対する新規低分子およびペプチド医薬品の研究開発、製造ならびに商業化を目的とした包括的協業に関する覚書を締結した。22年11月にはジェイファーマが実施する第三者割当による新株予約権を引き受けた。

 23年5月には、創薬エコシステムを活性化する枠組みの構築を目指し、スペラファーマを含む6社が、ヘルスケアイノベーションが生まれる湘南アイパークで「湘南創薬コンソーシアム」発足に向けた協議を開始した。

 23年6月にはJitsuboが、世界有数のヘルスケア子業であるNovo Nordiskと、Novo Nordiskの糖尿病・肥満・非アルコール性脂肪肝炎・慢性腎臓病・アテローム動脈硬化性心血管疾患・心不全の分野(ジェネリック医薬品除く)のペプチド合成において、Jitsuboのペプチド合成の特許技術であるMolecular Hiving法の独占的使用および製造ライセンス契約締結を発表した。本契約に基づき、JitsuboはNovo Nordiskから、開発フィー、年間独占権料、および製品の臨床段階、商品化段階の進捗に合わせたマイルストーンフィーを受領する。

■HBC・食品事業

 HBC・食品事業はイワキ、化粧品通販のアプロス、20年12月に子会社化した健康食品・化粧品販売のマルマンH&B、22年12月に子会社化した海外製化粧品輸入販売のアインズラボを中心に展開している。

 21年7月にはイワキがスカイネットから薬事サポート事業、自社開発事業および輸入製販事業を譲り受け、21年9月にはイワキが住建情報センターのヘルスケア事業を譲り受けた。22年1月にはイワキが食品原料調達WEBプラットフォーム「シェアシマ」を運営するICS―netに資本参加した。22年11月には、不採算が続いていたイワキの一般医薬品を中心とする卸売分野から撤退すると発表した。

 23年6月にはイワキが、加工食品・機能性食品の原料検索システム「i−Platto(アイプラット)」の提供を開始した。なお「i−Platto」は、イワキが資本参加しているICS−netが運営する「シェアシマ」とも連携している。

■医薬事業

 医薬事業は、皮膚科領域に特化したニッチトップ・ジェネリックメーカーの岩城製薬と、20年7月に鳥居薬品佐倉工場を継承した岩城製薬佐倉工場を中心に展開している。20年1月には医療用後発医薬品・一般用医薬品開発の前田薬品工業に出資、21年1月には岩城製薬が新しいコンセプトの抗ウイルス薬開発に取り組んでいるキノファーマと業務提携、21年4月にはインタープロテインとCOVID―19治療薬の共同研究契約を締結した。22年4月には岩城製薬がヤンセンファーマから「ニゾラールローション2%」の日本における製造販売承認を承継・販売移管した。岩城製薬にとって初の長期収載品の扱いとなる。

 22年7月には、スキンケアブランド「ナビジョン/ナビジョンDR」について、資生堂ジャパンが保有していたブランドホルダー機能を岩城製薬に移管することで合意した。ブランド価値向上に向けて役割分担を見直し、資生堂ジャパンが行ってきた研究開発・商品開発機能およびマーケティング機能を岩城製薬が担い、資生堂ジャパンは現行品の製造を担う。22年8月には、岩城製薬がキノファーマと尋常性疣贅を適応症とした共同開発・商業化契約を締結し、22年10月にはキノファーマの第三者割当増資を引き受けて資本出資した。

 23年4月には、岩城製薬がキノファーマと共同開発した製剤を用いて、ヒトパピローマウイルス感染症である尋常性疣贅を適応症として第2相臨床試験(キノファーマが実施)を開始した。23年7月には岩城製薬が帝人ファーマから「ボンアルファ」の日本における製造販売承認を承継した。

■化学品事業

 化学品事業(表面処理薬品部門、表面処理設備部門)はメルテックス、東京化工機、および海外子会社等を中心に展開している。ハイエンド表面処理薬品に特化し、半導体/電子部品領域で高い市場シェアを誇っている。

■SDGsへの取り組み推進

 持株会社体制への移行に伴い、グループ全体のBCP(事業継続計画)対策および従業員の働き方・生き方の選択肢多様化を目的として、21年6月に本社機能の一部を石川県珠洲市に移転した。さらに、石川県珠洲市が地方創生に向けた人材育成事業の一環として行っている能登SDGsラボと協業し、30年までにSDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進する。

 新規事業戦略はSDGs推進に向けて、化粧品原料・製品(グループ会社Jitsuboのペプチド合成法Molecular Hivingによる高品質で環境に優しく、コスト優位性のある化粧品原料・製品)事業、地方創生に繋がるハイブリッド型ふるさと納税プラットフォーム事業、健康食品原料事業(国産の安心・安全な健康食品原料・製品の第6次産業化を目的として、石川県珠洲市で健康食品の原料となる植物等の栽培を行う事業)などを推進している。

 21年7月には、奥能登地域のSDGS達成支援を目的とするファンド「奥能登SDGs投資事業有限責任組合(のとSDGsファンド)」に出資した。特定子会社となる。21年8月には、グループの業務サポートやファシリティーサービスを提供するアステナハートフル(21年6月設立)が、障害者の雇用の促進等に関する法律に基づく特例子会社の認定を取得した。

 21年11月には能登地域のSDGs達成の支援を目的として、能登地域の自治体3市(七尾市、輪島市、珠洲市)・2町(穴水町、能都町)、および国立大学法人金沢大学、奥能登信用金庫、のと共栄信用金庫、北國フィナンシャルホールディングス、BPキャピタルと、SDGs推進に係る連携と協力に関する協定を締結した。21年12月には子会社のイワキ総合研究所の商号をアステナミネルヴァに変更した。新規事業推進室を移設し、事業内容も地方創生に関連する事業に変更した。22年7月にはアステナミネルヴァが、パープルテクノスの子会社で石川県の地域ポータルメディアを展開するイシカワズカンの株式の一部を取得した。

 23年1月にはアステナミネルヴァが、のとSDGsファンドの投資先である有機米デザイン(東京都小金井市)の「アイガモロボ」(田んぼの雑草を抑制する自動ロボット)を使用した有機米事業を開始すると発表した。またアステナミネルヴァが、森林資源を生かした自立・分散型の脱炭素社会の実現に向けて、石川県珠洲市で森林事業を開始すると発表した。

 さらに23年1月には、スタートアップ企業を支援するベンチャーファンド「TUAT1号投資事業有限責任組合」への出資を発表した。同ファンドの主たる投資先は農学分野(特に脱炭素に資する循環型畜産業、スマート農業、持続可能な食料生産)の研究成果を活用したスタートアップ企業を想定しており、アステナミネルヴァとのシナジーを見込んでいる。

 23年3月には、経済産業省と日本健康会議が実施する健康経営優良法人認定制度において、持株会社が「健康経営優良法人2023(大規模法人部門)」に認定、グループ会社のアプロス、スペラファーマ、東海メルテックス、東京化工機、メルテックスが「健康経営優良法人2023(中規模法人部門)」に認定された。さらに、スポーツ庁が主催する「第2回Sport in Lifeアワード」にて優秀賞(企業部門)を受賞した。同社の「歩くふるさと納税」の取り組みが評価された。

■2030年に向けた中長期ビジョンとローリング形式の中期経営計画

 2030年に向けたグループ中長期ビジョン「Astena 2030 “Diversify for Tomorrow”」(21年1月公表)では、定量的ターゲットとして30年11月期の売上高1300億円以上、ROE13%以上を掲げている。セグメント別の30年11月期目標値は、ファインケミカル事業が売上高400億円で営業利益率9%、HBC・食品事業が売上高450億円で営業利益率3%、医薬事業が売上高228億円で営業利益率13%、化学品事業が売上高130億円で営業利益率10%としている。

 基本戦略としては、プラットフォーム戦略(CMC=医療用医薬品研究開発の国内トップレベルでの受託、ヘルスケア調達プラットフォーム=医薬品・化粧品・機能性食品製造会社の全ニーズをカバー、創薬インキュベーション=CMC提供を通じて新薬開発の成功確率を高める、CDMO=注射剤・外皮用剤・治験薬の受託製造)、ニッチトップ戦略(外皮用剤ジェネリック医薬品=国内塗り薬ジェネリック医薬品市場NO.1、ハイエンド表面処理薬品=エレクトロニクスに特化した表面処理薬品)、ソーシャルインパクト戦略(シニア・アクティベイト=化粧品・機能性食品の提供を通じてシニア総アクティブ化推進)を掲げている。

 ファインケミカル事業は、CMC・CDMO事業および調達プラットフォーム事業を2本柱として、原材料調達からCMC研究、原薬商用生産までの医薬品開発・製造の幅広いサービスを提供する。

 HBC・食品事業は、原料ビジネスのDX化による顧客の開発・調達プロセスの課題解決プラットフォームの提供、独自性を高めた商品・サービスの提供による市場価値増大を推進する。またダイレクトマーケティング領域への投資を実行して、領域特化型ネットワークを構築する。

 医薬事業は、皮膚科領域をベースとして外皮用剤品目数および生産キャパシティでトップ、グローバル要求水準に対応して高活性注射剤CDMOのトップを目指す。また外皮用剤、注射剤導入、新薬共同開発、M&A・アライアンスで事業基盤強化・拡大を目指す。

 化学品事業は、エレクトロニクス実装市場のトレンドを捉えたニッチトップ商品の継続的開発、ハイエンドパッケージ基板での地位確立、チップ部品用途の台湾・中国大手での採用、半導体パワー・センサー系薬品の差別化を推進する。またグローバル企業との共同開発も推進して成長を目指す。

 その他では既存事業との親和性、将来に亘る成長性、グループ全体への波及効果なども勘案して、SDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進することを目標とする。

 23年11月期からの中期経営計画(ローリング形式)では、25年11月期の目標値として売上高593億円、営業利益22億円、ROE5.6%を掲げている。セグメント別目標は、ファインケミカル事業の売上高180.9億円(22年11月期146.3億円)で営業利益10.5億円(同2.4億円)、HBC・食品事業の売上高141.4億円(同139.7億円)で営業利益3.1億円(同1.4億円)、医薬事業の売上高153.2億円(同117.5億円)で営業利益1.1億円(同3.9億円)、化学品事業の売上高114.0億円(同92.7億円)で営業利益5.9億円(同1.5億円の赤字)としている。

■23年11月期減益予想だが下期回復基調

 23年11月期の連結業績予想は売上高が22年11月期比3.8%増の515億円、営業利益が12.2%減の7億20百万円、経常利益が53.8%減の4億10百万円、親会社株主帰属当期純利益が98.3%減の10百万円としている。配当予想は22年11月期と同額の18円(第2四半期末9円、期末9円)としている。

 第2四半期累計は、売上高が前年同期比7.7%増の268億57百万円、営業利益が71.1%減の2億08百万円、経常利益が66.0%減の2億83百万円、親会社株主帰属四半期純利益が2億27百万円の損失(前年同期は9億32百万円の利益)だった。医薬品原料や健康食品原料の好調などで増収だが、原材料・エネルギーコスト上昇や人件費増加などの影響で減益だった。親会社株主帰属四半期純利益は赤字だった。特別利益で前年同期計上の固定資産売却益6億63百万円が剥落し、特別損失に投資有価証券評価損2億16百万円を計上した。

 ファインケミカル事業は売上高(外部顧客への売上高)が3.7%減の72億54百万円で、営業利益(全社費用等調整前)が83百万円の損失(同4億73百万円の利益)だった。医薬品原料分野は好調だったが、医薬品CDMO分野の経営改善遅れが影響した。

 HBC・食品事業は売上高が22.4%増の88億12百万円で、営業利益が78百万円(同65百万円の損失)だった。大幅増収効果で黒字転換した。化粧品通販部門が低調だったが、食品原料部門における新規受注獲得、化粧品原料部門やファルマネット部門における需要回復が寄与した。マルマンH&Bの自社企画健康食品や輸入化粧品の販売も好調だった。

 医薬事業は売上高が8.5%増の63億83百万円で、営業利益が7.7%減の3億25百万円だった。医療用医薬品部門では22年12月に新製品として販売開始した抗真菌薬であるリコナゾール軟膏・クリームが好調だったが、コスト増と価格転嫁遅れで収益性が低下した。なお岩城製薬佐倉工場では、高活性注射液棟の改修を行っており、23年秋の稼働に向けて準備を進めている。

 化学品事業は売上高が2.0%増の44億03百万円で、営業利益が81百万円の損失(同38百万円の損失)だった。微細配線形成用薬品や受動部品向けめっき薬品の販売が低調だったが、コスト上昇分の価格転嫁や販管費の見直しなどを推進した。

 その他事業(人材事業、ふるさと納税事業などの新規事業)は、売上高が3百万円で営業利益が48百万円の損失(同18百万円の損失)だった。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高が127億85百万円で営業利益が92百万円の損失、第2四半期は売上高が140億72百万円で営業利益が3億円だった。第2四半期は第1四半期比で大幅増収・営業増益となった。

 通期連結業績予想は据え置いている。原材料価格などの不透明感を考慮して減益予想としている。なお新規事業として有機米事業および森林事業を開始する。また3月29日に固定資産譲渡(23年11月30日引渡予定、譲渡益の金額は未定)を発表している。23年11月期に特別利益が計上される見込みだが、詳細は譲渡価格および譲渡益が確定した後に公表するとしている。

 第2四半期累計の進捗率は売上高が52.1%、営業利益が28.9%、経常利益が69.0%だった。営業利益の進捗率が低水準だが、四半期別に見ると第2四半期は第1四半期比で営業増益だったため、第1四半期がボトムとなった可能性がありそうだ。積極的な事業展開で下期の収益回復基調を期待したい。

■株主優待制度を一部変更

 株主優待制度については、公平性および適正化の観点から利益配分に対するバランスを考慮し、23年7月13日付で一部変更(詳細は会社HP参照)を発表した。従来は毎年11月末時点で100株(1単元)以上を継続して1年以上保有する株主を対象に保有株数および保有期間に応じて自社商品等を贈呈していたが、変更後は毎年11月末時点で500株(5単元)以上を継続して1年以上保有する株主を対象に保有株数および保有期間に応じて自社商品等を贈呈する。23年11月末対象より実施する。

■株価は上値試す

 株価は地合い悪化の影響で9月の年初来高値圏から反落したが、ボックスレンジから上放れた形となっている。高配当利回りや1倍割れの低PBRも評価材料であり、目先的な売り一巡して上値を試す展開を期待したい。10月5日の終値は473円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS25銭で算出)は約1892倍、今期予想配当利回り(会社予想の18円で算出)は約3.8%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS685円24銭で算出)は約0.7倍、そして時価総額は約193億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media−IR
[09月19日更新]

アステナホールディングスはボックス上放れ、23年11月期減益予想だが下期回復基調

 アステナホールディングス<8095>(東証プライム)はヘルスケア・ファインケミカル企業集団として、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。23年11月期は原材料価格などの不透明感を考慮して減益予想としている。ただし四半期別に見ると、第2四半期は第1四半期比で営業増益だったため、第1四半期がボトムとなった可能性がありそうだ。積極的な事業展開で下期の収益回復基調を期待したい。株価はやや小動きだが、徐々に水準を切り上げてボックスレンジから上放れの形となった。高配当利回りや1倍割れの低PBRも評価材料であり、上値を試す展開を期待したい。

■ヘルスケア・ファインケミカル企業集団

 旧イワキが21年6月1日付で持株会社体制に移行して商号をアステナホールディングスに変更した。アステナは「明日(未来)+サステナブル(持続可能)」の造語である。ヘルスケア・ファインケミカル企業集団として、製造分野が利益柱となり、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。

 セグメント区分はファインケミカル事業(医薬品のCMC研究開発・製造受託、医薬品原料の製造販売など)、HBC・食品事業(化粧品原料の販売、食品原料・機能性食品の製造販売、一般用医薬品の卸売、化粧品の通信販売など)、医薬事業(医薬品・医療機器の製造販売など)、化学品事業(表面処理薬品の製造販売、プリント基板製造プラントの製造販売など)、その他(地方創生関連事業など)としている。なお新規事業として有機米事業および森林事業を開始する。

 22年11月期(収益認識会計基準適用)のセグメント別売上高(外部顧客への売上高)の構成比はファインケミカル事業が29%、HBC・食品事業が28%、医薬事業が24%、化学品事業が19%、その他が0%だった。営業利益の構成比はファインケミカル事業が30%、HBC・食品事業が17%、医薬事業が48%、化学品事業が▲19%、その他が▲5%、そして調整額が29%だった。

 さらに、4つの戦略的ビジネスモデル(調達プラットフォーム事業、インキュベーション事業、注射剤CDMO事業、塗り薬CDM事業)を構築し、収益基盤拡大を推進している。

■ファインケミカル事業

 ファインケミカル事業は、20年3月に子会社化した医薬品CMC研究開発・製造受託のスペラファーマ、スペラファーマの子会社として20年7月に設立したスペラネクサス、スペラファーマが21年4月に子会社化したペプチド合成技術のJitsuboを中心に展開し、医薬品原薬のCMC研究開発から製造受託・販売まで一貫体制を構築している。また20年6月にはスペラファーマが創薬ベンチャーのジェイファーマに出資した。

 21年3月には岩城製薬が、オンコリスバイオファーマ<4588>の新型コロナウイルス感染症治療薬OBP―2011の臨床試験開始に必要な治験薬原薬の製造法開発とGMP製造を受託(スペラネクサスに承継)することで基本合意し、21年7月にはスペラファーマがオンコリスバイオファーマからOBP―2011の治験薬製剤のGMP製造を受託することで基本合意した。

 22年2月にはスペラファーマがインタープロテインと、アンメット・メディカル・ニーズの高い様々な疾患に対する新規低分子およびペプチド医薬品の研究開発、製造ならびに商業化を目的とした包括的協業に関する覚書を締結した。22年11月にはジェイファーマが実施する第三者割当による新株予約権を引き受けた。

 23年5月には、創薬エコシステムを活性化する枠組みの構築を目指し、スペラファーマを含む6社が、ヘルスケアイノベーションが生まれる湘南アイパークで「湘南創薬コンソーシアム」発足に向けた協議を開始した。

 23年6月にはJitsuboが、世界有数のヘルスケア子業であるNovo Nordiskと、Novo Nordiskの糖尿病・肥満・非アルコール性脂肪肝炎・慢性腎臓病・アテローム動脈硬化性心血管疾患・心不全の分野(ジェネリック医薬品除く)のペプチド合成において、Jitsuboのペプチド合成の特許技術であるMolecular Hiving法の独占的使用および製造ライセンス契約締結を発表した。本契約に基づき、JitsuboはNovo Nordiskから、開発フィー、年間独占権料、および製品の臨床段階、商品化段階の進捗に合わせたマイルストーンフィーを受領する。

■HBC・食品事業

 HBC・食品事業はイワキ、化粧品通販のアプロス、20年12月に子会社化した健康食品・化粧品販売のマルマンH&B、22年12月に子会社化した海外製化粧品輸入販売のアインズラボを中心に展開している。

 21年7月にはイワキがスカイネットから薬事サポート事業、自社開発事業および輸入製販事業を譲り受け、21年9月にはイワキが住建情報センターのヘルスケア事業を譲り受けた。22年1月にはイワキが食品原料調達WEBプラットフォーム「シェアシマ」を運営するICS―netに資本参加した。22年11月には、不採算が続いていたイワキの一般医薬品を中心とする卸売分野から撤退すると発表した。23年11月期以降の連結業績に与える影響は軽微の見込みとしている。

 23年6月にはイワキが、加工食品・機能性食品の原料検索システム「i−Platto(アイプラット)」の提供を開始した。なお「i−Platto」は、イワキが資本参加しているICS−netが運営する「シェアシマ」とも連携している。

■医薬事業

 医薬事業は、皮膚科領域に特化したニッチトップ・ジェネリックメーカーの岩城製薬と、20年7月に鳥居薬品佐倉工場を継承した岩城製薬佐倉工場を中心に展開している。20年1月には医療用後発医薬品・一般用医薬品開発の前田薬品工業に出資、21年1月には岩城製薬が新しいコンセプトの抗ウイルス薬開発に取り組んでいるキノファーマと業務提携、21年4月にはインタープロテインとCOVID―19治療薬の共同研究契約を締結した。22年4月には岩城製薬がヤンセンファーマから「ニゾラールローション2%」の日本における製造販売承認を承継・販売移管した。岩城製薬にとって初の長期収載品の扱いとなる。

 22年7月には、スキンケアブランド「ナビジョン/ナビジョンDR」について、資生堂ジャパンが保有していたブランドホルダー機能を岩城製薬に移管することで合意した。ブランド価値向上に向けて役割分担を見直し、資生堂ジャパンが行ってきた研究開発・商品開発機能およびマーケティング機能を岩城製薬が担い、資生堂ジャパンは現行品の製造を担う。22年8月には、岩城製薬がキノファーマと尋常性疣贅を適応症とした共同開発・商業化契約を締結し、22年10月にはキノファーマの第三者割当増資を引き受けて資本出資した。

 23年4月には、岩城製薬が帝人ファーマから「ボンアルファ」の日本における製造販売承認を承継(23年7月1日より)すると発表した。さらに岩城製薬がキノファーマと共同開発した製剤を用いて、ヒトパピローマウイルス感染症である尋常性疣贅を適応症として第2相臨床試験(キノファーマが実施)を開始すると発表した。

■化学品事業

 化学品事業(表面処理薬品部門、表面処理設備部門)はメルテックス、東京化工機、および海外子会社等を中心に展開している。ハイエンド表面処理薬品に特化し、半導体/電子部品領域で高い市場シェアを誇っている。

■SDGsへの取り組み推進

 持株会社体制への移行に伴い、グループ全体のBCP(事業継続計画)対策および従業員の働き方・生き方の選択肢多様化を目的として、21年6月に本社機能の一部を石川県珠洲市に移転した。さらに、石川県珠洲市が地方創生に向けた人材育成事業の一環として行っている能登SDGsラボと協業し、30年までにSDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進する。

 新規事業戦略はSDGs推進に向けて、化粧品原料・製品(グループ会社Jitsuboのペプチド合成法Molecular Hivingによる高品質で環境に優しく、コスト優位性のある化粧品原料・製品)事業、地方創生に繋がるハイブリッド型ふるさと納税プラットフォーム事業、健康食品原料事業(国産の安心・安全な健康食品原料・製品の第6次産業化を目的として、石川県珠洲市で健康食品の原料となる植物等の栽培を行う事業)などを推進している。

 21年7月には、奥能登地域のSDGS達成支援を目的とするファンド「奥能登SDGs投資事業有限責任組合(のとSDGsファンド)」に出資した。特定子会社となる。21年8月には、グループの業務サポートやファシリティーサービスを提供するアステナハートフル(21年6月設立)が、障害者の雇用の促進等に関する法律に基づく特例子会社の認定を取得した。

 21年11月には能登地域のSDGs達成の支援を目的として、能登地域の自治体3市(七尾市、輪島市、珠洲市)・2町(穴水町、能都町)、および国立大学法人金沢大学、奥能登信用金庫、のと共栄信用金庫、北國フィナンシャルホールディングス、BPキャピタルと、SDGs推進に係る連携と協力に関する協定を締結した。21年12月には子会社のイワキ総合研究所の商号をアステナミネルヴァに変更した。新規事業推進室を移設し、事業内容も地方創生に関連する事業に変更した。22年7月にはアステナミネルヴァが、パープルテクノスの子会社で石川県の地域ポータルメディアを展開するイシカワズカンの株式の一部を取得した。

 23年1月にはアステナミネルヴァが、のとSDGsファンドの投資先である有機米デザイン(東京都小金井市)の「アイガモロボ」(田んぼの雑草を抑制する自動ロボット)を使用した有機米事業を開始すると発表した。またアステナミネルヴァが、森林資源を生かした自立・分散型の脱炭素社会の実現に向けて、石川県珠洲市で森林事業を開始すると発表した。

 さらに23年1月には、スタートアップ企業を支援するベンチャーファンド「TUAT1号投資事業有限責任組合」への出資を発表した。同ファンドの主たる投資先は農学分野(特に脱炭素に資する循環型畜産業、スマート農業、持続可能な食料生産)の研究成果を活用したスタートアップ企業を想定しており、アステナミネルヴァとのシナジーを見込んでいる。

 23年3月には、経済産業省と日本健康会議が実施する健康経営優良法人認定制度において、持株会社が「健康経営優良法人2023(大規模法人部門)」に認定、グループ会社のアプロス、スペラファーマ、東海メルテックス、東京化工機、メルテックスが「健康経営優良法人2023(中規模法人部門)」に認定された。さらに、スポーツ庁が主催する「第2回Sport in Lifeアワード」にて優秀賞(企業部門)を受賞した。同社の「歩くふるさと納税」の取り組みが評価された。

■2030年に向けた中長期ビジョンとローリング形式の中期経営計画

 2030年に向けたグループ中長期ビジョン「Astena 2030 “Diversify for Tomorrow”」(21年1月公表)では、定量的ターゲットとして30年11月期の売上高1300億円以上、ROE13%以上を掲げている。セグメント別の30年11月期目標値は、ファインケミカル事業が売上高400億円で営業利益率9%、HBC・食品事業が売上高450億円で営業利益率3%、医薬事業が売上高228億円で営業利益率13%、化学品事業が売上高130億円で営業利益率10%としている。

 基本戦略としては、プラットフォーム戦略(CMC=医療用医薬品研究開発の国内トップレベルでの受託、ヘルスケア調達プラットフォーム=医薬品・化粧品・機能性食品製造会社の全ニーズをカバー、創薬インキュベーション=CMC提供を通じて新薬開発の成功確率を高める、CDMO=注射剤・外皮用剤・治験薬の受託製造)、ニッチトップ戦略(外皮用剤ジェネリック医薬品=国内塗り薬ジェネリック医薬品市場NO.1、ハイエンド表面処理薬品=エレクトロニクスに特化した表面処理薬品)、ソーシャルインパクト戦略(シニア・アクティベイト=化粧品・機能性食品の提供を通じてシニア総アクティブ化推進)を掲げている。

 ファインケミカル事業は、CMC・CDMO事業および調達プラットフォーム事業を2本柱として、原材料調達からCMC研究、原薬商用生産までの医薬品開発・製造の幅広いサービスを提供する。

 HBC・食品事業は、原料ビジネスのDX化による顧客の開発・調達プロセスの課題解決プラットフォームの提供、独自性を高めた商品・サービスの提供による市場価値増大を推進する。またダイレクトマーケティング領域への投資を実行して、領域特化型ネットワークを構築する。

 医薬事業は、皮膚科領域をベースとして外皮用剤品目数および生産キャパシティでトップ、グローバル要求水準に対応して高活性注射剤CDMOのトップを目指す。また外皮用剤、注射剤導入、新薬共同開発、M&A・アライアンスで事業基盤強化・拡大を目指す。

 化学品事業は、エレクトロニクス実装市場のトレンドを捉えたニッチトップ商品の継続的開発、ハイエンドパッケージ基板での地位確立、チップ部品用途の台湾・中国大手での採用、半導体パワー・センサー系薬品の差別化を推進する。またグローバル企業との共同開発も推進して成長を目指す。

 その他では既存事業との親和性、将来に亘る成長性、グループ全体への波及効果なども勘案して、SDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進することを目標とする。

 23年11月期からの中期経営計画(ローリング形式)では、25年11月期の目標値として売上高593億円、営業利益22億円、ROE5.6%を掲げている。セグメント別目標は、ファインケミカル事業の売上高180.9億円(22年11月期146.3億円)で営業利益10.5億円(同2.4億円)、HBC・食品事業の売上高141.4億円(同139.7億円)で営業利益3.1億円(同1.4億円)、医薬事業の売上高153.2億円(同117.5億円)で営業利益1.1億円(同3.9億円)、化学品事業の売上高114.0億円(同92.7億円)で営業利益5.9億円(同1.5億円の赤字)としている。

■23年11月期減益予想だが下期回復基調

 23年11月期の連結業績予想は売上高が22年11月期比3.8%増の515億円、営業利益が12.2%減の7億20百万円、経常利益が53.8%減の4億10百万円、親会社株主帰属当期純利益が98.3%減の10百万円としている。配当予想は22年11月期と同額の18円(第2四半期末9円、期末9円)としている。

 第2四半期累計は、売上高が前年同期比7.7%増の268億57百万円、営業利益が71.1%減の2億08百万円、経常利益が66.0%減の2億83百万円、親会社株主帰属四半期純利益が2億27百万円の損失(前年同期は9億32百万円の利益)だった。医薬品原料や健康食品原料の好調などで増収だが、原材料・エネルギーコスト上昇や人件費増加などの影響で減益だった。親会社株主帰属四半期純利益は赤字だった。特別利益で前年同期計上の固定資産売却益6億63百万円が剥落し、特別損失に投資有価証券評価損2億16百万円を計上した。

 ファインケミカル事業は売上高(外部顧客への売上高)が3.7%減の72億54百万円で、営業利益(全社費用等調整前)が83百万円の損失(同4億73百万円の利益)だった。医薬品原料分野は好調だったが、医薬品CDMO分野の経営改善遅れが影響した。

 HBC・食品事業は売上高が22.4%増の88億12百万円で、営業利益が78百万円(同65百万円の損失)だった。大幅増収効果で黒字転換した。化粧品通販部門が低調だったが、食品原料部門における新規受注獲得、化粧品原料部門やファルマネット部門における需要回復が寄与した。マルマンH&Bの自社企画健康食品や輸入化粧品の販売も好調だった。

 医薬事業は売上高が8.5%増の63億83百万円で、営業利益が7.7%減の3億25百万円だった。医療用医薬品部門では22年12月に新製品として販売開始した抗真菌薬であるリコナゾール軟膏・クリームが好調だったが、コスト増と価格転嫁遅れで収益性が低下した。なお岩城製薬佐倉工場では、高活性注射液棟の改修を行っており、23年秋の稼働に向けて準備を進めている。

 化学品事業は売上高が2.0%増の44億03百万円で、営業利益が81百万円の損失(同38百万円の損失)だった。微細配線形成用薬品や受動部品向けめっき薬品の販売が低調だったが、コスト上昇分の価格転嫁や販管費の見直しなどを推進した。

 その他事業(人材事業、ふるさと納税事業などの新規事業)は、売上高が3百万円で営業利益が48百万円の損失(同18百万円の損失)だった。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高が127億85百万円で営業利益が92百万円の損失、第2四半期は売上高が140億72百万円で営業利益が3億円だった。第2四半期は第1四半期比で大幅増収・営業増益となった。

 通期連結業績予想は据え置いている。原材料価格などの不透明感を考慮して減益予想としている。なお新規事業として有機米事業および森林事業を開始する。また3月29日に固定資産譲渡(23年11月30日引渡予定、譲渡益の金額は未定)を発表している。23年11月期に特別利益が計上される見込みだが、詳細は譲渡価格および譲渡益が確定した後に公表するとしている。

 第2四半期累計の進捗率は売上高が52.1%、営業利益が28.9%、経常利益が69.0%だった。営業利益の進捗率が低水準だが、四半期別に見ると第2四半期は第1四半期比で営業増益だったため、第1四半期がボトムとなった可能性がありそうだ。積極的な事業展開で下期の収益回復基調を期待したい。

■株主優待制度を一部変更

 株主優待制度については、公平性および適正化の観点から利益配分に対するバランスを考慮し、23年7月13日付で一部変更(詳細は会社HP参照)を発表した。従来は毎年11月末時点で100株(1単元)以上を継続して1年以上保有する株主を対象に保有株数および保有期間に応じて自社商品等を贈呈していたが、変更後は毎年11月末時点で500株(5単元)以上を継続して1年以上保有する株主を対象に保有株数および保有期間に応じて自社商品等を贈呈する。23年11月末対象より実施する。

■株価はボックス上放れ

 株価はやや小動きだが、徐々に水準を切り上げてボックスレンジから上放れの形となった。高配当利回りや1倍割れの低PBRも評価材料であり、上値を試す展開を期待したい。9月15日の終値は473円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS25銭で算出)は約1892倍、今期予想配当利回り(会社予想の18円で算出)は約3.8%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS685円24銭で算出)は約0.7倍、そして時価総額は約193億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media−IR
[08月29日更新]

アステナホールディングスは下値切り上げ、23年11月期減益予想だが1Qがボトムの可能性

 アステナホールディングス<8095>(東証プライム)はヘルスケア・ファインケミカル企業集団として、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。23年11月期は原材料価格などの不透明感を考慮して減益予想としている。ただし四半期別に見ると、第2四半期は第1四半期比で営業増益だったため、第1四半期がボトムとなった可能性がありそうだ。積極的な事業展開で下期の収益回復基調を期待したい。株価は小幅レンジでモミ合う形だが、7月の直近安値圏から徐々に下値を切り上げている。高配当利回りや1倍割れの低PBRも評価材料であり、モミ合いから上放れの展開を期待したい。

■ヘルスケア・ファインケミカル企業集団

 旧イワキが21年6月1日付で持株会社体制に移行して商号をアステナホールディングスに変更した。アステナは「明日(未来)+サステナブル(持続可能)」の造語である。ヘルスケア・ファインケミカル企業集団として、製造分野が利益柱となり、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。

 セグメント区分はファインケミカル事業(医薬品のCMC研究開発・製造受託、医薬品原料の製造販売など)、HBC・食品事業(化粧品原料の販売、食品原料・機能性食品の製造販売、一般用医薬品の卸売、化粧品の通信販売など)、医薬事業(医薬品・医療機器の製造販売など)、化学品事業(表面処理薬品の製造販売、プリント基板製造プラントの製造販売など)、その他(地方創生関連事業など)としている。なお新規事業として有機米事業および森林事業を開始する。

 22年11月期(収益認識会計基準適用)のセグメント別売上高(外部顧客への売上高)の構成比はファインケミカル事業が29%、HBC・食品事業が28%、医薬事業が24%、化学品事業が19%、その他が0%だった。営業利益の構成比はファインケミカル事業が30%、HBC・食品事業が17%、医薬事業が48%、化学品事業が▲19%、その他が▲5%、そして調整額が29%だった。

 さらに、4つの戦略的ビジネスモデル(調達プラットフォーム事業、インキュベーション事業、注射剤CDMO事業、塗り薬CDM事業)を構築し、収益基盤拡大を推進している。

■ファインケミカル事業

 ファインケミカル事業は、20年3月に子会社化した医薬品CMC研究開発・製造受託のスペラファーマ、スペラファーマの子会社として20年7月に設立したスペラネクサス、スペラファーマが21年4月に子会社化したペプチド合成技術のJitsuboを中心に展開し、医薬品原薬のCMC研究開発から製造受託・販売まで一貫体制を構築している。また20年6月にはスペラファーマが創薬ベンチャーのジェイファーマに出資した。

 21年3月には岩城製薬が、オンコリスバイオファーマ<4588>の新型コロナウイルス感染症治療薬OBP―2011の臨床試験開始に必要な治験薬原薬の製造法開発とGMP製造を受託(スペラネクサスに承継)することで基本合意し、21年7月にはスペラファーマがオンコリスバイオファーマからOBP―2011の治験薬製剤のGMP製造を受託することで基本合意した。

 22年2月にはスペラファーマがインタープロテインと、アンメット・メディカル・ニーズの高い様々な疾患に対する新規低分子およびペプチド医薬品の研究開発、製造ならびに商業化を目的とした包括的協業に関する覚書を締結した。22年11月にはジェイファーマが実施する第三者割当による新株予約権を引き受けた。

 23年5月には、創薬エコシステムを活性化する枠組みの構築を目指し、スペラファーマを含む6社が、ヘルスケアイノベーションが生まれる湘南アイパークで「湘南創薬コンソーシアム」発足に向けた協議を開始した。

 23年6月にはJitsuboが、世界有数のヘルスケア子業であるNovo Nordiskと、Novo Nordiskの糖尿病・肥満・非アルコール性脂肪肝炎・慢性腎臓病・アテローム動脈硬化性心血管疾患・心不全の分野(ジェネリック医薬品除く)のペプチド合成において、Jitsuboのペプチド合成の特許技術であるMolecular Hiving法の独占的使用および製造ライセンス契約締結を発表した。本契約に基づき、JitsuboはNovo Nordiskから、開発フィー、年間独占権料、および製品の臨床段階、商品化段階の進捗に合わせたマイルストーンフィーを受領する。

■HBC・食品事業

 HBC・食品事業はイワキ、化粧品通販のアプロス、20年12月に子会社化した健康食品・化粧品販売のマルマンH&B、22年12月に子会社化した海外製化粧品輸入販売のアインズラボを中心に展開している。

 21年7月にはイワキがスカイネットから薬事サポート事業、自社開発事業および輸入製販事業を譲り受け、21年9月にはイワキが住建情報センターのヘルスケア事業を譲り受けた。22年1月にはイワキが食品原料調達WEBプラットフォーム「シェアシマ」を運営するICS―netに資本参加した。22年11月には、不採算が続いていたイワキの一般医薬品を中心とする卸売分野から撤退すると発表した。23年11月期以降の連結業績に与える影響は軽微の見込みとしている。

 23年6月にはイワキが、加工食品・機能性食品の原料検索システム「i−Platto(アイプラット)」の提供を開始した。なお「i−Platto」は、イワキが資本参加しているICS−netが運営する「シェアシマ」とも連携している。

■医薬事業

 医薬事業は、皮膚科領域に特化したニッチトップ・ジェネリックメーカーの岩城製薬と、20年7月に鳥居薬品佐倉工場を継承した岩城製薬佐倉工場を中心に展開している。20年1月には医療用後発医薬品・一般用医薬品開発の前田薬品工業に出資、21年1月には岩城製薬が新しいコンセプトの抗ウイルス薬開発に取り組んでいるキノファーマと業務提携、21年4月にはインタープロテインとCOVID―19治療薬の共同研究契約を締結した。22年4月には岩城製薬がヤンセンファーマから「ニゾラールローション2%」の日本における製造販売承認を承継・販売移管した。岩城製薬にとって初の長期収載品の扱いとなる。

 22年7月には、スキンケアブランド「ナビジョン/ナビジョンDR」について、資生堂ジャパンが保有していたブランドホルダー機能を岩城製薬に移管することで合意した。ブランド価値向上に向けて役割分担を見直し、資生堂ジャパンが行ってきた研究開発・商品開発機能およびマーケティング機能を岩城製薬が担い、資生堂ジャパンは現行品の製造を担う。22年8月には、岩城製薬がキノファーマと尋常性疣贅を適応症とした共同開発・商業化契約を締結し、22年10月にはキノファーマの第三者割当増資を引き受けて資本出資した。

 23年4月には、岩城製薬が帝人ファーマから「ボンアルファ」の日本における製造販売承認を承継(23年7月1日より)すると発表した。さらに岩城製薬がキノファーマと共同開発した製剤を用いて、ヒトパピローマウイルス感染症である尋常性疣贅を適応症として第2相臨床試験(キノファーマが実施)を開始すると発表した。

■化学品事業

 化学品事業(表面処理薬品部門、表面処理設備部門)はメルテックス、東京化工機、および海外子会社等を中心に展開している。ハイエンド表面処理薬品に特化し、半導体/電子部品領域で高い市場シェアを誇っている。

■SDGsへの取り組み推進

 持株会社体制への移行に伴い、グループ全体のBCP(事業継続計画)対策および従業員の働き方・生き方の選択肢多様化を目的として、21年6月に本社機能の一部を石川県珠洲市に移転した。さらに、石川県珠洲市が地方創生に向けた人材育成事業の一環として行っている能登SDGsラボと協業し、30年までにSDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進する。

 新規事業戦略はSDGs推進に向けて、化粧品原料・製品(グループ会社Jitsuboのペプチド合成法Molecular Hivingによる高品質で環境に優しく、コスト優位性のある化粧品原料・製品)事業、地方創生に繋がるハイブリッド型ふるさと納税プラットフォーム事業、健康食品原料事業(国産の安心・安全な健康食品原料・製品の第6次産業化を目的として、石川県珠洲市で健康食品の原料となる植物等の栽培を行う事業)などを推進している。

 21年7月には、奥能登地域のSDGS達成支援を目的とするファンド「奥能登SDGs投資事業有限責任組合(のとSDGsファンド)」に出資した。特定子会社となる。21年8月には、グループの業務サポートやファシリティーサービスを提供するアステナハートフル(21年6月設立)が、障害者の雇用の促進等に関する法律に基づく特例子会社の認定を取得した。

 21年11月には能登地域のSDGs達成の支援を目的として、能登地域の自治体3市(七尾市、輪島市、珠洲市)・2町(穴水町、能都町)、および国立大学法人金沢大学、奥能登信用金庫、のと共栄信用金庫、北國フィナンシャルホールディングス、BPキャピタルと、SDGs推進に係る連携と協力に関する協定を締結した。21年12月には子会社のイワキ総合研究所の商号をアステナミネルヴァに変更した。新規事業推進室を移設し、事業内容も地方創生に関連する事業に変更した。22年7月にはアステナミネルヴァが、パープルテクノスの子会社で石川県の地域ポータルメディアを展開するイシカワズカンの株式の一部を取得した。

 23年1月にはアステナミネルヴァが、のとSDGsファンドの投資先である有機米デザイン(東京都小金井市)の「アイガモロボ」(田んぼの雑草を抑制する自動ロボット)を使用した有機米事業を開始すると発表した。またアステナミネルヴァが、森林資源を生かした自立・分散型の脱炭素社会の実現に向けて、石川県珠洲市で森林事業を開始すると発表した。

 さらに23年1月には、スタートアップ企業を支援するベンチャーファンド「TUAT1号投資事業有限責任組合」への出資を発表した。同ファンドの主たる投資先は農学分野(特に脱炭素に資する循環型畜産業、スマート農業、持続可能な食料生産)の研究成果を活用したスタートアップ企業を想定しており、アステナミネルヴァとのシナジーを見込んでいる。

 23年3月には、経済産業省と日本健康会議が実施する健康経営優良法人認定制度において、持株会社が「健康経営優良法人2023(大規模法人部門)」に認定、グループ会社のアプロス、スペラファーマ、東海メルテックス、東京化工機、メルテックスが「健康経営優良法人2023(中規模法人部門)」に認定された。さらに、スポーツ庁が主催する「第2回Sport in Lifeアワード」にて優秀賞(企業部門)を受賞した。同社の「歩くふるさと納税」の取り組みが評価された。

■2030年に向けた中長期ビジョンとローリング形式の中期経営計画

 2030年に向けたグループ中長期ビジョン「Astena 2030 “Diversify for Tomorrow”」(21年1月公表)では、定量的ターゲットとして30年11月期の売上高1300億円以上、ROE13%以上を掲げている。セグメント別の30年11月期目標値は、ファインケミカル事業が売上高400億円で営業利益率9%、HBC・食品事業が売上高450億円で営業利益率3%、医薬事業が売上高228億円で営業利益率13%、化学品事業が売上高130億円で営業利益率10%としている。

 基本戦略としては、プラットフォーム戦略(CMC=医療用医薬品研究開発の国内トップレベルでの受託、ヘルスケア調達プラットフォーム=医薬品・化粧品・機能性食品製造会社の全ニーズをカバー、創薬インキュベーション=CMC提供を通じて新薬開発の成功確率を高める、CDMO=注射剤・外皮用剤・治験薬の受託製造)、ニッチトップ戦略(外皮用剤ジェネリック医薬品=国内塗り薬ジェネリック医薬品市場NO.1、ハイエンド表面処理薬品=エレクトロニクスに特化した表面処理薬品)、ソーシャルインパクト戦略(シニア・アクティベイト=化粧品・機能性食品の提供を通じてシニア総アクティブ化推進)を掲げている。

 ファインケミカル事業は、CMC・CDMO事業および調達プラットフォーム事業を2本柱として、原材料調達からCMC研究、原薬商用生産までの医薬品開発・製造の幅広いサービスを提供する。

 HBC・食品事業は、原料ビジネスのDX化による顧客の開発・調達プロセスの課題解決プラットフォームの提供、独自性を高めた商品・サービスの提供による市場価値増大を推進する。またダイレクトマーケティング領域への投資を実行して、領域特化型ネットワークを構築する。

 医薬事業は、皮膚科領域をベースとして外皮用剤品目数および生産キャパシティでトップ、グローバル要求水準に対応して高活性注射剤CDMOのトップを目指す。また外皮用剤、注射剤導入、新薬共同開発、M&A・アライアンスで事業基盤強化・拡大を目指す。

 化学品事業は、エレクトロニクス実装市場のトレンドを捉えたニッチトップ商品の継続的開発、ハイエンドパッケージ基板での地位確立、チップ部品用途の台湾・中国大手での採用、半導体パワー・センサー系薬品の差別化を推進する。またグローバル企業との共同開発も推進して成長を目指す。

 その他では既存事業との親和性、将来に亘る成長性、グループ全体への波及効果なども勘案して、SDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進することを目標とする。

 23年11月期からの中期経営計画(ローリング形式)では、25年11月期の目標値として売上高593億円、営業利益22億円、ROE5.6%を掲げている。セグメント別目標は、ファインケミカル事業の売上高180.9億円(22年11月期146.3億円)で営業利益10.5億円(同2.4億円)、HBC・食品事業の売上高141.4億円(同139.7億円)で営業利益3.1億円(同1.4億円)、医薬事業の売上高153.2億円(同117.5億円)で営業利益1.1億円(同3.9億円)、化学品事業の売上高114.0億円(同92.7億円)で営業利益5.9億円(同1.5億円の赤字)としている。

■23年11月期減益予想だが1Qがボトムの可能性

 23年11月期の連結業績予想は売上高が22年11月期比3.8%増の515億円、営業利益が12.2%減の7億20百万円、経常利益が53.8%減の4億10百万円、親会社株主帰属当期純利益が98.3%減の10百万円としている。配当予想は22年11月期と同額の18円(第2四半期末9円、期末9円)としている。

 第2四半期累計は、売上高が前年同期比7.7%増の268億57百万円、営業利益が71.1%減の2億08百万円、経常利益が66.0%減の2億83百万円、親会社株主帰属四半期純利益が2億27百万円の損失(前年同期は9億32百万円の利益)だった。医薬品原料や健康食品原料の好調などで増収だが、原材料・エネルギーコスト上昇や人件費増加などの影響で減益だった。親会社株主帰属四半期純利益は赤字だった。特別利益で前年同期計上の固定資産売却益6億63百万円が剥落し、特別損失に投資有価証券評価損2億16百万円を計上した。

 ファインケミカル事業は売上高(外部顧客への売上高)が3.7%減の72億54百万円で、営業利益(全社費用等調整前)が83百万円の損失(同4億73百万円の利益)だった。医薬品原料分野は好調だったが、医薬品CDMO分野の経営改善遅れが影響した。

 HBC・食品事業は売上高が22.4%増の88億12百万円で、営業利益が78百万円(同65百万円の損失)だった。大幅増収効果で黒字転換した。化粧品通販部門が低調だったが、食品原料部門における新規受注獲得、化粧品原料部門やファルマネット部門における需要回復が寄与した。マルマンH&Bの自社企画健康食品や輸入化粧品の販売も好調だった。

 医薬事業は売上高が8.5%増の63億83百万円で、営業利益が7.7%減の3億25百万円だった。医療用医薬品部門では22年12月に新製品として販売開始した抗真菌薬であるリコナゾール軟膏・クリームが好調だったが、コスト増と価格転嫁遅れで収益性が低下した。なお岩城製薬佐倉工場では、高活性注射液棟の改修を行っており、23年秋の稼働に向けて準備を進めている。

 化学品事業は売上高が2.0%増の44億03百万円で、営業利益が81百万円の損失(同38百万円の損失)だった。微細配線形成用薬品や受動部品向けめっき薬品の販売が低調だったが、コスト上昇分の価格転嫁や販管費の見直しなどを推進した。

 その他事業(人材事業、ふるさと納税事業などの新規事業)は、売上高が3百万円で営業利益が48百万円の損失(同18百万円の損失)だった。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高が127億85百万円で営業利益が92百万円の損失、第2四半期は売上高が140億72百万円で営業利益が3億円だった。第2四半期は第1四半期比で大幅増収・営業増益となった。

 通期連結業績予想は据え置いている。原材料価格などの不透明感を考慮して減益予想としている。なお新規事業として有機米事業および森林事業を開始する。また3月29日に固定資産譲渡(23年11月30日引渡予定、譲渡益の金額は未定)を発表している。23年11月期に特別利益が計上される見込みだが、詳細は譲渡価格および譲渡益が確定した後に公表するとしている。

 第2四半期累計の進捗率は売上高が52.1%、営業利益が28.9%、経常利益が69.0%だった。営業利益の進捗率が低水準だが、四半期別に見ると第2四半期は第1四半期比で営業増益だったため、第1四半期がボトムとなった可能性がありそうだ。積極的な事業展開で下期の収益回復基調を期待したい。

■株主優待制度を一部変更

 株主優待制度については、公平性および適正化の観点から利益配分に対するバランスを考慮し、23年7月13日付で一部変更(詳細は会社HP参照)を発表した。従来は毎年11月末時点で100株(1単元)以上を継続して1年以上保有する株主を対象に保有株数および保有期間に応じて自社商品等を贈呈していたが、変更後は毎年11月末時点で500株(5単元)以上を継続して1年以上保有する株主を対象に保有株数および保有期間に応じて自社商品等を贈呈する。23年11月末対象より実施する。

■株価は下値切り上げ

 株価は小幅レンジでモミ合う形だが、7月の直近安値圏から徐々に下値を切り上げている。高配当利回りや1倍割れの低PBRも評価材料であり、モミ合いから上放れの展開を期待したい。8月28日の終値は454円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS25銭で算出)は約1816倍、今期予想配当利回り(会社予想の18円で算出)は約4.0%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS685円24銭で算出)は約0.7倍、そして時価総額は約186億円である。 (情報提供:日本インタビュ新聞社=Media−IR
[06月28日更新]

アステナホールディングスはモミ合い上放れ、23年11月期減益予想だが中期成長期待

 アステナホールディングス<8095>(東証プライム)はヘルスケア・ファインケミカル企業集団として、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。成長戦略として、3つのサステナビリティ戦略(プラットフォーム戦略、ニッチトップ戦略、ソーシャルインパクト戦略)を推進している。23年11月期は原材料価格などの不透明感を考慮して減益予想としているが、中期経営計画(ローリング方式)では25年11月期の目標値を大幅増収増益の計画としている。積極的な事業展開で中期成長を期待したい。株価は安値圏だが、徐々に下値を切り上げてモミ合い上放れの動きを強めている。高配当利回りや1倍割れPBRも評価して戻りを試す展開を期待したい。

■ヘルスケア・ファインケミカル企業集団

 旧イワキが21年6月1日付で持株会社体制に移行して商号をアステナホールディングスに変更した。アステナは「明日(未来)+サステナブル(持続可能)」の造語である。ヘルスケア・ファインケミカル企業集団として、製造分野が利益柱となり、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。

 セグメント区分はファインケミカル事業(医薬品のCMC研究開発・製造受託、医薬品原料の製造販売など)、HBC・食品事業(化粧品原料の販売、食品原料・機能性食品の製造販売、一般用医薬品の卸売、化粧品の通信販売など)、医薬事業(医薬品・医療機器の製造販売など)、化学品事業(表面処理薬品の製造販売、プリント基板製造プラントの製造販売など)、その他(地方創生関連事業など)としている。なお新規事業として有機米事業および森林事業を開始する。

 22年11月期(収益認識会計基準適用)のセグメント別売上高(外部顧客への売上高)の構成比はファインケミカル事業が29%、HBC・食品事業が28%、医薬事業が24%、化学品事業が19%、その他が0%だった。営業利益の構成比はファインケミカル事業が30%、HBC・食品事業が17%、医薬事業が48%、化学品事業が▲19%、その他が▲5%、そして調整額が29%だった。

 さらに、4つの戦略的ビジネスモデル(調達プラットフォーム事業、インキュベーション事業、注射剤CDMO事業、塗り薬CDM事業)を構築し、収益基盤拡大を推進している。

■ファインケミカル事業

 ファインケミカル事業は、20年3月に子会社化した医薬品CMC研究開発・製造受託のスペラファーマと、スペラファーマの子会社として20年7月に設立したスペラネクサスを中心に展開している。さらに岩城製薬のファインケミカル事業をスペラネクサスに承継し、医薬品原薬のCMC研究開発から製造受託・販売まで一貫体制を構築した。20年6月にはスペラファーマが創薬ベンチャーのジェイファーマに出資した。21年4月にはスペラファーマがペプチド合成技術を保有するJitsuboを子会社化した。

 21年3月には岩城製薬が、オンコリスバイオファーマ<4588>の新型コロナウイルス感染症治療薬OBP―2011の臨床試験開始に必要な治験薬原薬の製造法開発とGMP製造を受託(スペラネクサスに承継)することで基本合意し、21年7月にはスペラファーマがオンコロスバイオファーマからOBP―2011の治験薬製剤のGMP製造を受託することで基本合意した。

 22年2月にはスペラファーマがインタープロテインと、アンメット・メディカル・ニーズの高い様々な疾患に対する新規低分子およびペプチド医薬品の研究開発、製造ならびに商業化を目的とした包括的協業に関する覚書を締結した。22年11月にはジェイファーマが実施する第三者割当による新株予約権を引き受けた。

 23年5月には、創薬エコシステムを活性化する枠組みの構築を目指し、スペラファーマを含む6社が、ヘルスケアイノベーションが生まれる湘南アイパークで「湘南創薬コンソーシアム」発足に向けた協議を開始した。

 6月15日にはJitsuboが、世界有数のヘルスケア子業であるNovo Nordiskと、Novo Nordiskの糖尿病・肥満・非アルコール性脂肪肝炎・慢性腎臓病・アテローム動脈硬化性心血管疾患・心不全の分野(ジェネリック医薬品除く)のペプチド合成において、Jitsuboのペプチド合成の特許技術であるMolecular Hiving法の独占的使用および製造ライセンス契約締結を発表した。本契約に基づき、JitsuboはNovo Nordiskから、開発フィー、年間独占権料、および製品の臨床段階、商品化段階の進捗に合わせたマイルストーンフィーを受領する。

■HBC・食品事業

 HBC・食品事業はイワキ(イワキ分割準備会社が21年6月商号変更)とアプロスを中心に展開している。20年12月には健康食品・化粧品販売のマルマンH&Bを子会社化、21年7月にはイワキがスカイネットから薬事サポート事業、自社開発事業および輸入製販事業を譲り受け、21年9月にはイワキが住建情報センターのヘルスケア事業を譲り受けた。22年1月にはイワキが食品原料調達WEBプラットフォーム「シェアシマ」を運営するICS―netに資本参加した。

 22年11月には、不採算が続いていたイワキの一般医薬品を中心とする卸売分野から撤退すると発表した。23年11月期以降の連結業績に与える影響は軽微の見込みとしている。また22年12月にはイワキが、海外製化粧品輸入販売などを展開するアインズラボの全株式を取得して完全子会社化した。

 6月20日にはイワキが、加工食品・機能性食品の原料検索システム「i−Platto(アイプラット)」の提供開始を発表した。なお「i−Platto」は、イワキが資本参加しているICS−netが運営する「シェアシマ」とも連携している。

■医薬事業

 医薬事業は岩城製薬と20年7月に鳥居薬品佐倉工場を継承した岩城製薬佐倉工場を中心に展開している。20年1月には医療用後発医薬品・一般用医薬品開発の前田薬品工業に出資、21年1月には岩城製薬が新しいコンセプトの抗ウイルス薬開発に取り組んでいるキノファーマと業務提携、21年4月にはインタープロテインとCOVID―19治療薬の共同研究契約を締結した。22年4月には岩城製薬がヤンセンファーマから「ニゾラールローション2%」の日本における製造販売承認を承継・販売移管した。岩城製薬にとって初の長期収載品の扱いとなる。

 22年7月には、スキンケアブランド「ナビジョン/ナビジョンDR」について、資生堂ジャパンが保有していたブランドホルダー機能を岩城製薬に移管することで合意した。ブランド価値向上に向けて役割分担を見直し、資生堂ジャパンが行ってきた研究開発・商品開発機能およびマーケティング機能を岩城製薬が担い、資生堂ジャパンは現行品の製造を担う。22年8月には、岩城製薬がキノファーマと尋常性疣贅を適応症とした共同開発・商業化契約を締結し、22年10月にはキノファーマの第三者割当増資を引き受けて資本出資した。

 23年4月には、岩城製薬が帝人ファーマから「ボンアルファ」の日本における製造販売承認を承継(23年7月1日より)すると発表した。さらに岩城製薬がキノファーマと共同開発した製剤を用いて、ヒトパピローマウイルス感染症である尋常性疣贅を適応症として第2相臨床試験(キノファーマが実施)を開始すると発表した。

■化学品事業

 化学品事業はメルテックス、東京化工機、および海外子会社等を中心に展開している。

■SDGsへの取り組み推進

 持株会社体制への移行に伴い、グループ全体のBCP(事業継続計画)対策および従業員の働き方・生き方の選択肢多様化を目的として、21年6月に本社機能の一部を石川県珠洲市に移転した。さらに、石川県珠洲市が地方創生に向けた人材育成事業の一環として行っている能登SDGsラボと協業し、30年までにSDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進する。

 21年6月には新規事業のインキュベーションを担う専任部署として新規事業推進室を設置した。SDGs推進に向けて、化粧品原料・製品(グループ会社Jitsuboのペプチド合成法Molecular Hivingによる高品質で環境に優しく、コスト優位性のある化粧品原料・製品)事業、地方創生に繋がるハイブリッド型ふるさと納税プラットフォーム事業、健康食品原料事業(国産の安心・安全な健康食品原料・製品の第6次産業化を目的として、石川県珠洲市で健康食品の原料となる植物等の栽培を行う事業)などを推進する。

 21年7月には、奥能登地域のSDGS達成支援を目的とするファンド「奥能登SDGs投資事業有限責任組合(のとSDGsファンド)」に出資した。特定子会社となる。21年8月には、グループの業務サポートやファシリティーサービスを提供するアステナハートフル(21年6月設立)が、障害者の雇用の促進等に関する法律に基づく特例子会社の認定を取得した。

 21年11月には能登地域のSDGs達成の支援を目的として、能登地域の自治体3市(七尾市、輪島市、珠洲市)・2町(穴水町、能都町)、および国立大学法人金沢大学、奥能登信用金庫、のと共栄信用金庫、北國フィナンシャルホールディングス、BPキャピタルと、SDGs推進に係る連携と協力に関する協定を締結した。21年12月には子会社のイワキ総合研究所の商号をアステナミネルヴァに変更した。新規事業推進室を移設し、事業内容も地方創生に関連する事業に変更した。

 22年7月にはアステナミネルヴァが、パープルテクノスの子会社で、石川県の地域ポータルメディアを展開するイシカワズカンの株式の一部を取得した。ヤマガタデザイン(山形県鶴岡市)と連携し、若者のU・Iターン地方移住を推進するウェブメディア「チイキズカン」プロジェクトを22年9月に立ち上げる予定だ。

 23年1月にはアステナミネルヴァが、のとSDGsファンドの投資先である有機米デザイン(東京都小金井市)の「アイガモロボ」(田んぼの雑草を抑制する自動ロボット)を使用した有機米事業を開始すると発表した。またアステナミネルヴァが、森林資源を生かした自立・分散型の脱炭素社会の実現に向けて、石川県珠洲市で森林事業を開始すると発表した。

 さらに23年1月には、スタートアップ企業を支援するベンチャーファンド「TUAT1号投資事業有限責任組合」への出資を発表した。同ファンドの主たる投資先は農学分野(特に脱炭素に資する循環型畜産業、スマート農業、持続可能な食料生産)の研究成果を活用したスタートアップ企業を想定しており、アステナミネルヴァとのシナジーを見込んでいる。

 23年3月には、経済産業省と日本健康会議が実施する健康経営優良法人認定制度において、持株会社が「健康経営優良法人2023(大規模法人部門)」に認定、グループ会社のアプロス、スペラファーマ、東海メルテックス、東京化工機、メルテックスが「健康経営優良法人2023(中規模法人部門)」に認定された。さらに、スポーツ庁が主催する「第2回Sport in Lifeアワード」にて優秀賞(企業部門)を受賞した。同社の「歩くふるさと納税」の取り組みが評価された。

 6月23日にはアステナミネルヴァの子会社であるAMトレーディングが、令和5年度奥能登地震からの復興支援の一環として、地震で影響を受けた事業者を応援する特産品販売サイトの開設を発表した。

■2030年に向けた中長期ビジョンとローリング形式の中期経営計画

 2030年に向けたグループ中長期ビジョン「Astena 2030 “Diversify for Tomorrow”」(21年1月公表)では、定量的ターゲットとして30年11月期の売上高1300億円以上、ROE13%以上を掲げている。セグメント別の30年11月期目標値は、ファインケミカル事業が売上高400億円で営業利益率9%、HBC・食品事業が売上高450億円で営業利益率3%、医薬事業が売上高228億円で営業利益率13%、化学品事業が売上高130億円で営業利益率10%としている。

 基本戦略としては、プラットフォーム戦略(CMC=医療用医薬品研究開発の国内トップレベルでの受託、ヘルスケア調達プラットフォーム=医薬品・化粧品・機能性食品製造会社の全ニーズをカバー、創薬インキュベーション=CMC提供を通じて新薬開発の成功確率を高める、CDMO=注射剤・外皮用剤・治験薬の受託製造)、ニッチトップ戦略(外皮用剤ジェネリック医薬品=国内塗り薬ジェネリック医薬品市場NO.1、ハイエンド表面処理薬品=エレクトロニクスに特化した表面処理薬品)、ソーシャルインパクト戦略(シニア・アクティベイト=化粧品・機能性食品の提供を通じてシニア総アクティブ化推進)を掲げている。

 ファインケミカル事業は、CMC・CDMO事業および調達プラットフォーム事業を2本柱として、原材料調達からCMC研究、原薬商用生産までの医薬品開発・製造の幅広いサービスを提供する。

 HBC・食品事業は、原料ビジネスのDX化による顧客の開発・調達プロセスの課題解決プラットフォームの提供、独自性を高めた商品・サービスの提供による市場価値増大を推進する。またダイレクトマーケティング領域への投資を実行して、領域特化型ネットワークを構築する。

 医薬事業は、皮膚科領域をベースとして外皮用剤品目数および生産キャパシティでトップ、グローバル要求水準に対応して高活性注射剤CDMOのトップを目指す。また外皮用剤、注射剤導入、新薬共同開発、M&A・アライアンスで事業基盤強化・拡大を目指す。

 化学品事業は、エレクトロニクス実装市場のトレンドを捉えたニッチトップ商品の継続的開発、ハイエンドパッケージ基板での地位確立、チップ部品用途の台湾・中国大手での採用、半導体パワー・センサー系薬品の差別化を推進する。またグローバル企業との共同開発も推進して成長を目指す。

 その他では既存事業との親和性、将来に亘る成長性、グループ全体への波及効果なども勘案して、SDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進することを目標とする。

 また、資本効率向上に向けた拠点見直しの一環として、21年6月に名古屋オフィスおよび福岡オフィスの不動産を譲渡すると発表している。譲渡時期は未定だが、譲渡後も賃借で継続利用する。

 23年1月には23年11月期からの中期経営計画(ローリング形式)を公表し、25年11月期の目標値を売上高593億円、営業利益22億円、ROE5.6%としている。

 セグメント別の目標は、ファインケミカル事業の売上高が180.9億円(22年11月期は146.3億円)で営業利益が10.5億円(同2.4億円)、HBC・食品事業の売上高が141.4億円(同139.7億円)で営業利益が3.1億円(同1.4億円)、医薬事業の売上高が153.2億円(同117.5億円)で営業利益が1.1億円(同3.9億円)、化学品事業の売上高が114.0億円(同92.7億円)で営業利益が5.9億円(同1.5億円の赤字)としている。

■23年11月期減益予想だが中期成長期待

 23年11月期連結業績予想は、売上高が22年11月期比3.8%増の515億円、営業利益が12.2%減の7億20百万円、経常利益が53.8%減の4億10百万円、親会社株主帰属当期純利益が98.3%減の10百万円としている。配当予想は22年11月期と同額の18円(第2四半期末9円、期末9円)としている。

 第1四半期は、売上高が前年同期比4.1%増の127億85百万円、営業利益が92百万円の損失(前年同期は6億30百万円の利益)、経常利益が63百万円の損失(同6億59百万円の利益)、親会社株主帰属四半期純利益が2億06百万円の損失(同4億49百万円の利益)だった。

 ファインケミカル事業における医薬品原料の好調、医薬事業における新製品の市場シェア拡大などで増収だが、エネルギーコストの高騰、一部の事業会社における経営改善の取り組み遅れなどの影響をカバーしきれず各利益は赤味だった。

 ファインケミカル事業は売上高(外部顧客への売上高)が3.1%減の36億45百万円で、営業利益(全社費用等調整前)が56百万円の損失(同5億20百万円の利益)だった。医薬品原料分野は好調だったが、医薬品CDMO分野において前期発生した経営改善の遅れの影響で売上回復が緩やかだった。

 HBC・食品事業は売上高が18.8%増の42億18百万円で、営業利益が40百万円の損失(同95百万円の損失)だった。大幅増収効果で赤字縮小した。化粧品および食品原料部門では新規顧客開拓に加えて、マルマンH&Bの自社企画健康食品や輸入化粧品の販売が好調だった。ファルマネット部門では一般医薬品卸売の事業撤退を進める一方で、化粧品輸入代行などを展開するアインズラボを子会社化した。

 医薬事業は売上高が5.8%増の29億06百万円で、営業利益が53.2%減の72百万円だった。医療用医薬品部門におけるルリコナゾール軟膏・クリームの発売で当初目標としていた市場シェアを獲得したが、原材料や用役費の高騰の影響で減益だった。なお岩城製薬佐倉工場では、高活性注射液棟の改修を行っており、23年秋の稼働に向けて準備を進めている。

 化学品事業は売上高が9.6%減の20億13百万円で、営業利益が1億04百万円の損失(同40百万円の利益)だった。減収減益だった。表面処理設備分野は堅調だが、表面処理薬品分野が対象市場の低迷や原材料・用役費高騰の影響を受けた。

 その他事業(人材事業、ふるさと納税事業などの新規事業)は、売上高が1百万円で営業利益が23百万円の損失だった。

 通期連結業績予想は据え置いている。原材料価格などの不透明感を考慮して減益予想としている。ただし中期経営計画(ローリング方式)では25年11月期の目標値を大幅増収増益の計画(売上高593億円、営業利益22億円、ROE5.6%)としている。積極的な事業展開で中期成長を期待したい。

 なお3月29日に固定資産譲渡(23年11月30日引渡予定、譲渡益の金額は未定)を発表した。23年11月期に特別利益が計上される見込みだが、詳細は譲渡価格および譲渡益が確定した後に公表するとしている。

■株主優待制度は毎年11月末時点で1年以上保有株主対象

 株主優待制度は毎年11月末時点で100株(1単元)以上を継続して1年以上保有する株主を対象として実施している。グループ化粧品詰め合わせセットなどを贈呈(詳細は会社HP参照)する。

■株価はモミ合い上放れ

 株価は安値圏だが、徐々に下値を切り上げてモミ合い上放れの動きを強めている。高配当利回りや1倍割れPBRも評価して戻りを試す展開を期待したい。6月27日の終値は446円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS25銭で算出)は約1784倍、今期予想配当利回り(会社予想の18円で算出)は約4.0%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS685円24銭で算出)は約0.7倍、そして時価総額は約182億円である。 (情報提供:日本インタビュ新聞社=Media−IR
[05月23日更新]

アステナホールディングスはモミ合い上放れの動き、23年11月期減益予想だが中期成長期待

 アステナホールディングス<8095>(東証プライム)はヘルスケア・ファインケミカル企業集団として、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。さらなる成長戦略として、3つのサステナビリティ戦略(プラットフォーム戦略、ニッチトップ戦略、ソーシャルインパクト戦略)を推進している。5月17日には「湘南創薬支援コンソーシアム」発足に向けた協議の開始を発表した。23年11月期は原材料価格などの不透明感を考慮して減益予想としている。ただし中期経営計画(ローリング方式)では25年11月期の目標値を大幅増収増益の計画としている。積極的な事業展開で中期成長を期待したい。株価は徐々に水準を切り上げている。そして安値圏モミ合いから上放れの動きを強めている。高配当利回りや1倍割れPBRも評価して出直りを期待したい。

■ヘルスケア・ファインケミカル企業集団

 旧イワキが21年6月1日付で持株会社体制に移行して商号をアステナホールディングスに変更した。アステナは「明日(未来)+サステナブル(持続可能)」の造語である。ヘルスケア・ファインケミカル企業集団として、製造分野が利益柱となり、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。

 セグメント区分はファインケミカル事業(医薬品のCMC研究開発・製造受託、医薬品原料の製造販売など)、HBC・食品事業(化粧品原料の販売、食品原料・機能性食品の製造販売、一般用医薬品の卸売、化粧品の通信販売など)、医薬事業(医薬品・医療機器の製造販売など)、化学品事業(表面処理薬品の製造販売、プリント基板製造プラントの製造販売など)、その他(地方創生関連事業など)としている。なお新規事業として有機米事業および森林事業を開始する。

 22年11月期(収益認識会計基準適用)のセグメント別売上高(外部顧客への売上高)の構成比はファインケミカル事業が29%、HBC・食品事業が28%、医薬事業が24%、化学品事業が19%、その他が0%だった。営業利益の構成比はファインケミカル事業が30%、HBC・食品事業が17%、医薬事業が48%、化学品事業が▲19%、その他が▲5%、そして調整額が29%だった。

■新しい戦略的ビジネスモデルを構築

 4つの新しい戦略的ビジネスモデル(調達プラットフォーム事業、インキュベーション事業、注射剤CDMO事業、塗り薬CDM事業)を構築している。

 ファインケミカル事業は、20年3月に子会社化した医薬品CMC研究開発・製造受託のスペラファーマと、スペラファーマの子会社として20年7月に設立したスペラネクサスを中心に展開している。さらに岩城製薬のファインケミカル事業をスペラネクサスに承継し、医薬品原薬のCMC研究開発から製造受託・販売まで一貫体制を構築した。20年6月にはスペラファーマが創薬ベンチャーのジェイファーマに出資した。21年4月にはスペラファーマがペプチド合成技術を保有するJITSUBOを子会社化した。

 21年3月には岩城製薬が、オンコリスバイオファーマ<4588>の新型コロナウイルス感染症治療薬OBP―2011の臨床試験開始に必要な治験薬原薬の製造法開発とGMP製造を受託(スペラネクサスに承継)することで基本合意し、21年7月にはスペラファーマがオンコロスバイオファーマからOBP―2011の治験薬製剤のGMP製造を受託することで基本合意した。

 22年2月にはスペラファーマがインタープロテインと、アンメット・メディカル・ニーズの高い様々な疾患に対する新規低分子およびペプチド医薬品の研究開発、製造ならびに商業化を目的とした包括的協業に関する覚書を締結した。22年11月にはジェイファーマが実施する第三者割当による新株予約権を引き受けた。

 5月17日には、創薬エコシステムを活性化する枠組みの構築を目指し、スペラファーマを含む6社が、ヘルスケアイノベーションが生まれる湘南アイパークで「湘南創薬コンソーシアム」発足に向けた協議の開始を発表した。

 HBC・食品事業はイワキ(イワキ分割準備会社が21年6月商号変更)とアプロスを中心に展開している。20年12月には健康食品・化粧品販売のマルマンH&Bを子会社化、21年7月にはイワキがスカイネットから薬事サポート事業、自社開発事業および輸入製販事業を譲り受け、21年9月にはイワキが住建情報センターのヘルスケア事業を譲り受けた。22年1月にはイワキが食品原料調達WEBプラットフォーム「シェアシマ」を運営するICS―netに資本参加した。

 22年11月には、不採算が続いていたイワキの一般医薬品を中心とする卸売分野から撤退すると発表した。23年11月期以降の連結業績に与える影響は軽微の見込みとしている。また22年12月にはイワキが、海外製化粧品輸入販売などを展開するアインズラボの全株式を取得して完全子会社化した。

 医薬事業は岩城製薬と20年7月に鳥居薬品佐倉工場を継承した岩城製薬佐倉工場を中心に展開している。20年1月には医療用後発医薬品・一般用医薬品開発の前田薬品工業に出資、21年1月には岩城製薬が新しいコンセプトの抗ウイルス薬開発に取り組んでいるキノファーマと業務提携、21年4月にはインタープロテインとCOVID―19治療薬の共同研究契約を締結した。22年4月には岩城製薬がヤンセンファーマから「ニゾラールローション2%」の日本における製造販売承認を承継・販売移管した。岩城製薬にとって初の長期収載品の扱いとなる。

 22年7月には、スキンケアブランド「ナビジョン/ナビジョンDR」について、資生堂ジャパンが保有していたブランドホルダー機能を岩城製薬に移管することで合意した。ブランド価値向上に向けて役割分担を見直し、資生堂ジャパンが行ってきた研究開発・商品開発機能およびマーケティング機能を岩城製薬が担い、資生堂ジャパンは現行品の製造を担う。22年8月には、岩城製薬がキノファーマと尋常性疣贅を適応症とした共同開発・商業化契約を締結し、22年10月にはキノファーマの第三者割当増資を引き受けて資本出資した。

 23年4月には、岩城製薬が帝人ファーマから「ボンアルファ」の日本における製造販売承認を承継(23年7月1日より)すると発表した。さらに岩城製薬がキノファーマと共同開発した製剤を用いて、ヒトパピローマウイルス感染症である尋常性疣贅を適応症として第2相臨床試験(キノファーマが実施)を開始すると発表した。

 化学品事業はメルテックス、東京化工機、および海外子会社等を中心に展開している。

■SDGsへの取り組み推進

 持株会社体制への移行に伴い、グループ全体のBCP(事業継続計画)対策および従業員の働き方・生き方の選択肢多様化を目的として、21年6月に本社機能の一部を石川県珠洲市に移転した。さらに、石川県珠洲市が地方創生に向けた人材育成事業の一環として行っている能登SDGsラボと協業し、30年までにSDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進する。

 21年6月には新規事業のインキュベーションを担う専任部署として新規事業推進室を設置した。SDGs推進に向けて、化粧品原料・製品(グループ会社JITSUBOのペプチド合成法Molecular Hivingによる高品質で環境に優しく、コスト優位性のある化粧品原料・製品)事業、地方創生に繋がるハイブリッド型ふるさと納税プラットフォーム事業、健康食品原料事業(国産の安心・安全な健康食品原料・製品の第6次産業化を目的として、石川県珠洲市で健康食品の原料となる植物等の栽培を行う事業)などを推進する。

 21年7月には、奥能登地域のSDGS達成支援を目的とするファンド「奥能登SDGs投資事業有限責任組合(のとSDGsファンド)」に出資した。特定子会社となる。21年8月には、グループの業務サポートやファシリティーサービスを提供するアステナハートフル(21年6月設立)が、障害者の雇用の促進等に関する法律に基づく特例子会社の認定を取得した。

 21年11月には能登地域のSDGs達成の支援を目的として、能登地域の自治体3市(七尾市、輪島市、珠洲市)・2町(穴水町、能都町)、および国立大学法人金沢大学、奥能登信用金庫、のと共栄信用金庫、北國フィナンシャルホールディングス、BPキャピタルと、SDGs推進に係る連携と協力に関する協定を締結した。21年12月には子会社のイワキ総合研究所の商号をアステナミネルヴァに変更した。新規事業推進室を移設し、事業内容も地方創生に関連する事業に変更した。

 22年7月にはアステナミネルヴァが、パープルテクノスの子会社で、石川県の地域ポータルメディアを展開するイシカワズカンの株式の一部を取得した。ヤマガタデザイン(山形県鶴岡市)と連携し、若者のU・Iターン地方移住を推進するウェブメディア「チイキズカン」プロジェクトを22年9月に立ち上げる予定だ。

 23年1月にはアステナミネルヴァが、のとSDGsファンドの投資先である有機米デザイン(東京都小金井市)の「アイガモロボ」(田んぼの雑草を抑制する自動ロボット)を使用した有機米事業を開始すると発表した。またアステナミネルヴァが、森林資源を生かした自立・分散型の脱炭素社会の実現に向けて、石川県珠洲市で森林事業を開始すると発表した。

 さらに23年1月には、スタートアップ企業を支援するベンチャーファンド「TUAT1号投資事業有限責任組合」への出資を発表した。同ファンドの主たる投資先は農学分野(特に脱炭素に資する循環型畜産業、スマート農業、持続可能な食料生産)の研究成果を活用したスタートアップ企業を想定しており、アステナミネルヴァとのシナジーを見込んでいる。

 23年3月には、経済産業省と日本健康会議が実施する健康経営優良法人認定制度において、持株会社が「健康経営優良法人2023(大規模法人部門)」に認定、グループ会社のアプロス、スペラファーマ、東海メルテックス、東京化工機、メルテックスが「健康経営優良法人2023(中規模法人部門)」に認定された。さらに、スポーツ庁が主催する「第2回Sport in Lifeアワード」にて優秀賞(企業部門)を受賞した。同社の「歩くふるさと納税」の取り組みが評価された。

■2030年に向けた中長期ビジョンとローリング形式の中期経営計画

 2030年に向けたグループ中長期ビジョン「Astena 2030 “Diversify for Tomorrow”」(21年1月公表)では、定量的ターゲットとして30年11月期の売上高1300億円以上、ROE13%以上を掲げている。セグメント別の30年11月期目標値は、ファインケミカル事業が売上高400億円で営業利益率9%、HBC・食品事業が売上高450億円で営業利益率3%、医薬事業が売上高228億円で営業利益率13%、化学品事業が売上高130億円で営業利益率10%としている。

 基本戦略としては、プラットフォーム戦略(CMC=医療用医薬品研究開発の国内トップレベルでの受託、ヘルスケア調達プラットフォーム=医薬品・化粧品・機能性食品製造会社の全ニーズをカバー、創薬インキュベーション=CMC提供を通じて新薬開発の成功確率を高める、CDMO=注射剤・外皮用剤・治験薬の受託製造)、ニッチトップ戦略(外皮用剤ジェネリック医薬品=国内塗り薬ジェネリック医薬品市場NO.1、ハイエンド表面処理薬品=エレクトロニクスに特化した表面処理薬品)、ソーシャルインパクト戦略(シニア・アクティベイト=化粧品・機能性食品の提供を通じてシニア総アクティブ化推進)を掲げている。

 ファインケミカル事業は、CMC・CDMO事業および調達プラットフォーム事業を2本柱として、原材料調達からCMC研究、原薬商用生産までの医薬品開発・製造の幅広いサービスを提供する。

 HBC・食品事業は、原料ビジネスのDX化による顧客の開発・調達プロセスの課題解決プラットフォームの提供、独自性を高めた商品・サービスの提供による市場価値増大を推進する。またダイレクトマーケティング領域への投資を実行して、領域特化型ネットワークを構築する。

 医薬事業は、皮膚科領域をベースとして外皮用剤品目数および生産キャパシティでトップ、グローバル要求水準に対応して高活性注射剤CDMOのトップを目指す。また外皮用剤、注射剤導入、新薬共同開発、M&A・アライアンスで事業基盤強化・拡大を目指す。

 化学品事業は、エレクトロニクス実装市場のトレンドを捉えたニッチトップ商品の継続的開発、ハイエンドパッケージ基板での地位確立、チップ部品用途の台湾・中国大手での採用、半導体パワー・センサー系薬品の差別化を推進する。またグローバル企業との共同開発も推進して成長を目指す。

 その他では既存事業との親和性、将来に亘る成長性、グループ全体への波及効果なども勘案して、SDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進することを目標とする。

 また、資本効率向上に向けた拠点見直しの一環として、21年6月に名古屋オフィスおよび福岡オフィスの不動産を譲渡すると発表している。譲渡時期は未定だが、譲渡後も賃借で継続利用する。

 23年1月には23年11月期からの中期経営計画(ローリング形式)を公表し、25年11月期の目標値を売上高593億円、営業利益22億円、ROE5.6%としている。

 セグメント別の目標は、ファインケミカル事業の売上高が180.9億円(22年11月期は146.3億円)で営業利益が10.5億円(同2.4億円)、HBC・食品事業の売上高が141.4億円(同139.7億円)で営業利益が3.1億円(同1.4億円)、医薬事業の売上高が153.2億円(同117.5億円)で営業利益が1.1億円(同3.9億円)、化学品事業の売上高が114.0億円(同92.7億円)で営業利益が5.9億円(同1.5億円の赤字)としている。

■23年11月期減益予想だが中期成長期待

 23年11月期連結業績予想は、売上高が22年11月期比3.8%増の515億円、営業利益が12.2%減の7億20百万円、経常利益が53.8%減の4億10百万円、親会社株主帰属当期純利益が98.3%減の10百万円としている。配当予想は22年11月期と同額の18円(第2四半期末9円、期末9円)としている。

 第1四半期は、売上高が前年同期比4.1%増の127億85百万円、営業利益が92百万円の損失(前年同期は6億30百万円の利益)、経常利益が63百万円の損失(同6億59百万円の利益)、親会社株主帰属四半期純利益が2億06百万円の損失(同4億49百万円の利益)だった。

 ファインケミカル事業における医薬品原料の好調、医薬事業における新製品の市場シェア拡大などで増収だが、エネルギーコストの高騰、一部の事業会社における経営改善の取り組み遅れなどの影響をカバーしきれず各利益は赤味だった。

 ファインケミカル事業は売上高(外部顧客への売上高)が3.1%減の36億45百万円で、営業利益(全社費用等調整前)が56百万円の損失(同5億20百万円の利益)だった。医薬品原料分野は好調だったが、医薬品CDMO分野において前期発生した経営改善の遅れの影響で売上回復が緩やかだった。

 HBC・食品事業は売上高が18.8%増の42億18百万円で、営業利益が40百万円の損失(同95百万円の損失)だった。大幅増収効果で赤字縮小した。化粧品および食品原料部門では新規顧客開拓に加えて、マルマンH&Bの自社企画健康食品や輸入化粧品の販売が好調だった。ファルマネット部門では一般医薬品卸売の事業撤退を進める一方で、化粧品輸入代行などを展開するアインズラボを子会社化した。

 医薬事業は売上高が5.8%増の29億06百万円で、営業利益が53.2%減の72百万円だった。医療用医薬品部門におけるルリコナゾール軟膏・クリームの発売で当初目標としていた市場シェアを獲得したが、原材料や用役費の高騰の影響で減益だった。なお岩城製薬佐倉工場では、高活性注射液棟の改修を行っており、23年秋の稼働に向けて準備を進めている。

 化学品事業は売上高が9.6%減の20億13百万円で、営業利益が1億04百万円の損失(同40百万円の利益)だった。減収減益だった。表面処理設備分野は堅調だが、表面処理薬品分野が対象市場の低迷や原材料・用役費高騰の影響を受けた。

 その他事業(人材事業、ふるさと納税事業などの新規事業)は、売上高が1百万円で営業利益が23百万円の損失だった。

 通期連結業績予想は据え置いている。原材料価格などの不透明感を考慮して減益予想としている。ただし中期経営計画(ローリング方式)では25年11月期の目標値を大幅増収増益の計画(売上高593億円、営業利益22億円、ROE5.6%)としている。積極的な事業展開で中期成長を期待したい。

 なお3月29日に固定資産譲渡(23年11月30日引渡予定、譲渡益の金額は未定)を発表した。23年11月期に特別利益が計上される見込みだが、詳細は譲渡価格および譲渡益が確定した後に公表するとしている。

■株主優待制度は毎年11月末時点で1年以上保有株主対象

 株主優待制度は毎年11月末時点で100株(1単元)以上を継続して1年以上保有する株主を対象として実施している。グループ化粧品詰め合わせセットなどを贈呈(詳細は会社HP参照)する。

■株価はモミ合い上放れの動き

 株価は徐々に水準を切り上げている。そして安値圏モミ合いから上放れの動きを強めている。高配当利回りや1倍割れPBRも評価して出直りを期待したい。5月22日の終値は451円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS25銭で算出)は約1804倍、今期予想配当利回り(会社予想の18円で算出)は約4.0%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS685円24銭で算出)は約0.7倍、そして時価総額は約184億円である。 (情報提供:日本インタビュ新聞社=Media−IR
[04月21日更新]

アステナホールディングスは上値試す、23年11月期1Q赤字で通期も減益予想だが中期成長期待

 アステナホールディングス<8095>(東証プライム)はヘルスケア・ファインケミカル企業集団として、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。さらなる成長戦略として、3つのサステナビリティ戦略(プラットフォーム戦略、ニッチトップ戦略、ソーシャルインパクト戦略)を推進している。23年11月期第1四半期は医薬品原料の好調などで増収だが、エネルギーコスト高騰などの影響をカバーしきれず各利益は赤字だった。そして通期の減益予想を据え置いた。原材料価格などの不透明感を考慮している。ただし中期経営計画(ローリング方式)では25年11月期の目標値を大幅増収増益の計画としている。積極的な事業展開で中期成長を期待したい。株価は第1四半期業績を嫌気する場面があったが、目先的な売り一巡して切り返しの動きを強めている。高配当利回りや低PBRも評価して上値を試す展開を期待したい。

■ヘルスケア・ファインケミカル企業集団

 旧イワキが21年6月1日付で持株会社体制に移行して商号をアステナホールディングスに変更した。アステナは「明日(未来)+サステナブル(持続可能)」の造語である。ヘルスケア・ファインケミカル企業集団として、製造分野が利益柱となり、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。

 セグメント区分はファインケミカル事業(医薬品のCMC研究開発・製造受託、医薬品原料の製造販売など)、HBC・食品事業(化粧品原料の販売、食品原料・機能性食品の製造販売、一般用医薬品の卸売、化粧品の通信販売など)、医薬事業(医薬品・医療機器の製造販売など)、化学品事業(表面処理薬品の製造販売、プリント基板製造プラントの製造販売など)、その他(地方創生関連事業など)としている。なお新規事業として有機米事業および森林事業を開始する。

 22年11月期(収益認識会計基準適用)のセグメント別売上高(外部顧客への売上高)の構成比はファインケミカル事業が29%、HBC・食品事業が28%、医薬事業が24%、化学品事業が19%、その他が0%だった。営業利益の構成比はファインケミカル事業が30%、HBC・食品事業が17%、医薬事業が48%、化学品事業が▲19%、その他が▲5%、そして調整額が29%だった。

■新しい戦略的ビジネスモデルを構築

 4つの新しい戦略的ビジネスモデル(調達プラットフォーム事業、インキュベーション事業、注射剤CDMO事業、塗り薬CDM事業)を構築している。

 ファインケミカル事業は、20年3月に子会社化した医薬品CMC研究開発・製造受託のスペラファーマと、スペラファーマの子会社として20年7月に設立したスペラネクサスを中心に展開している。さらに岩城製薬のファインケミカル事業をスペラネクサスに承継し、医薬品原薬のCMC研究開発から製造受託・販売まで一貫体制を構築した。20年6月にはスペラファーマが創薬ベンチャーのジェイファーマに出資した。21年4月にはスペラファーマがペプチド合成技術を保有するJITSUBOを子会社化した。

 21年3月には岩城製薬が、オンコリスバイオファーマ<4588>の新型コロナウイルス感染症治療薬OBP―2011の臨床試験開始に必要な治験薬原薬の製造法開発とGMP製造を受託(スペラネクサスに承継)することで基本合意し、21年7月にはスペラファーマがオンコロスバイオファーマからOBP―2011の治験薬製剤のGMP製造を受託することで基本合意した。

 22年2月にはスペラファーマがインタープロテインと、アンメット・メディカル・ニーズの高い様々な疾患に対する新規低分子およびペプチド医薬品の研究開発、製造ならびに商業化を目的とした包括的協業に関する覚書を締結した。22年11月にはジェイファーマが実施する第三者割当による新株予約権を引き受けた。

 HBC・食品事業はイワキ(イワキ分割準備会社が21年6月商号変更)とアプロスを中心に展開している。20年12月には健康食品・化粧品販売のマルマンH&Bを子会社化、21年7月にはイワキがスカイネットから薬事サポート事業、自社開発事業および輸入製販事業を譲り受け、21年9月にはイワキが住建情報センターのヘルスケア事業を譲り受けた。22年1月にはイワキが食品原料調達WEBプラットフォーム「シェアシマ」を運営するICS―netに資本参加した。

 22年11月には、不採算が続いていたイワキの一般医薬品を中心とする卸売分野から撤退すると発表した。23年11月期以降の連結業績に与える影響は軽微の見込みとしている。また22年12月にはイワキが、海外製化粧品輸入販売などを展開するアインズラボの全株式を取得して完全子会社化した。

 医薬事業は岩城製薬と20年7月に鳥居薬品佐倉工場を継承した岩城製薬佐倉工場を中心に展開している。20年1月には医療用後発医薬品・一般用医薬品開発の前田薬品工業に出資、21年1月には岩城製薬が新しいコンセプトの抗ウイルス薬開発に取り組んでいるキノファーマと業務提携、21年4月にはインタープロテインとCOVID―19治療薬の共同研究契約を締結した。22年4月には岩城製薬がヤンセンファーマから「ニゾラールローション2%」の日本における製造販売承認を承継・販売移管した。岩城製薬にとって初の長期収載品の扱いとなる。

 22年7月には、スキンケアブランド「ナビジョン/ナビジョンDR」について、資生堂ジャパンが保有していたブランドホルダー機能を岩城製薬に移管することで合意した。ブランド価値向上に向けて役割分担を見直し、資生堂ジャパンが行ってきた研究開発・商品開発機能およびマーケティング機能を岩城製薬が担い、資生堂ジャパンは現行品の製造を担う。22年8月には、岩城製薬がキノファーマと尋常性疣贅を適応症とした共同開発・商業化契約を締結し、22年10月にはキノファーマの第三者割当増資を引き受けて資本出資した。

 4月7日には、岩城製薬が帝人ファーマから「ボンアルファ」の日本における製造販売承認を承継(23年7月1日より)すると発表した。さらに岩城製薬がキノファーマと共同開発した製剤を用いて、ヒトパピローマウイルス感染症である尋常性疣贅を適応症として第2相臨床試験(キノファーマが実施)を開始すると発表した。

 化学品事業はメルテックス、東京化工機、および海外子会社等を中心に展開している。


■SDGsへの取り組み推進

 持株会社体制への移行に伴い、グループ全体のBCP(事業継続計画)対策および従業員の働き方・生き方の選択肢多様化を目的として、21年6月に本社機能の一部を石川県珠洲市に移転した。さらに、石川県珠洲市が地方創生に向けた人材育成事業の一環として行っている能登SDGsラボと協業し、30年までにSDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進する。

 21年6月には新規事業のインキュベーションを担う専任部署として新規事業推進室を設置した。SDGs推進に向けて、化粧品原料・製品(グループ会社JITSUBOのペプチド合成法Molecular Hivingによる高品質で環境に優しく、コスト優位性のある化粧品原料・製品)事業、地方創生に繋がるハイブリッド型ふるさと納税プラットフォーム事業、健康食品原料事業(国産の安心・安全な健康食品原料・製品の第6次産業化を目的として、石川県珠洲市で健康食品の原料となる植物等の栽培を行う事業)などを推進する。

 21年7月には、奥能登地域のSDGS達成支援を目的とするファンド「奥能登SDGs投資事業有限責任組合(のとSDGsファンド)」に出資した。特定子会社となる。21年8月には、グループの業務サポートやファシリティーサービスを提供するアステナハートフル(21年6月設立)が、障害者の雇用の促進等に関する法律に基づく特例子会社の認定を取得した。

 21年11月には能登地域のSDGs達成の支援を目的として、能登地域の自治体3市(七尾市、輪島市、珠洲市)・2町(穴水町、能都町)、および国立大学法人金沢大学、奥能登信用金庫、のと共栄信用金庫、北國フィナンシャルホールディングス、BPキャピタルと、SDGs推進に係る連携と協力に関する協定を締結した。21年12月には子会社のイワキ総合研究所の商号をアステナミネルヴァに変更した。新規事業推進室を移設し、事業内容も地方創生に関連する事業に変更した。

 22年7月にはアステナミネルヴァが、パープルテクノスの子会社で、石川県の地域ポータルメディアを展開するイシカワズカンの株式の一部を取得した。ヤマガタデザイン(山形県鶴岡市)と連携し、若者のU・Iターン地方移住を推進するウェブメディア「チイキズカン」プロジェクトを22年9月に立ち上げる予定だ。

 23年1月にはアステナミネルヴァが、のとSDGsファンドの投資先である有機米デザイン(東京都小金井市)の「アイガモロボ」(田んぼの雑草を抑制する自動ロボット)を使用した有機米事業を開始すると発表した。またアステナミネルヴァが、森林資源を生かした自立・分散型の脱炭素社会の実現に向けて、石川県珠洲市で森林事業を開始すると発表した。

 さらに23年1月には、スタートアップ企業を支援するベンチャーファンド「TUAT1号投資事業有限責任組合」への出資を発表した。同ファンドの主たる投資先は農学分野(特に脱炭素に資する循環型畜産業、スマート農業、持続可能な食料生産)の研究成果を活用したスタートアップ企業を想定しており、アステナミネルヴァとのシナジーを見込んでいる。

 23年3月には、経済産業省と日本健康会議が実施する健康経営優良法人認定制度において、持株会社が「健康経営優良法人2023(大規模法人部門)」に認定、グループ会社のアプロス、スペラファーマ、東海メルテックス、東京化工機、メルテックスが「健康経営優良法人2023(中規模法人部門)」に認定された。さらに、スポーツ庁が主催する「第2回Sport in Lifeアワード」にて優秀賞(企業部門)を受賞した。同社の「歩くふるさと納税」の取り組みが評価された。

■2030年に向けた中長期ビジョンとローリング形式の中期経営計画

 2030年に向けたグループ中長期ビジョン「Astena 2030 “Diversify for Tomorrow”」(21年1月公表)では、定量的ターゲットとして30年11月期の売上高1300億円以上、ROE13%以上を掲げている。セグメント別の30年11月期目標値は、ファインケミカル事業が売上高400億円で営業利益率9%、HBC・食品事業が売上高450億円で営業利益率3%、医薬事業が売上高228億円で営業利益率13%、化学品事業が売上高130億円で営業利益率10%としている。

 基本戦略としては、プラットフォーム戦略(CMC=医療用医薬品研究開発の国内トップレベルでの受託、ヘルスケア調達プラットフォーム=医薬品・化粧品・機能性食品製造会社の全ニーズをカバー、創薬インキュベーション=CMC提供を通じて新薬開発の成功確率を高める、CDMO=注射剤・外皮用剤・治験薬の受託製造)、ニッチトップ戦略(外皮用剤ジェネリック医薬品=国内塗り薬ジェネリック医薬品市場NO.1、ハイエンド表面処理薬品=エレクトロニクスに特化した表面処理薬品)、ソーシャルインパクト戦略(シニア・アクティベイト=化粧品・機能性食品の提供を通じてシニア総アクティブ化推進)を掲げている。

 ファインケミカル事業は、CMC・CDMO事業および調達プラットフォーム事業を2本柱として、原材料調達からCMC研究、原薬商用生産までの医薬品開発・製造の幅広いサービスを提供する。

 HBC・食品事業は、原料ビジネスのDX化による顧客の開発・調達プロセスの課題解決プラットフォームの提供、独自性を高めた商品・サービスの提供による市場価値増大を推進する。またダイレクトマーケティング領域への投資を実行して、領域特化型ネットワークを構築する。

 医薬事業は、皮膚科領域をベースとして外皮用剤品目数および生産キャパシティでトップ、グローバル要求水準に対応して高活性注射剤CDMOのトップを目指す。また外皮用剤、注射剤導入、新薬共同開発、M&A・アライアンスで事業基盤強化・拡大を目指す。

 化学品事業は、エレクトロニクス実装市場のトレンドを捉えたニッチトップ商品の継続的開発、ハイエンドパッケージ基板での地位確立、チップ部品用途の台湾・中国大手での採用、半導体パワー・センサー系薬品の差別化を推進する。またグローバル企業との共同開発も推進して成長を目指す。

 その他では既存事業との親和性、将来に亘る成長性、グループ全体への波及効果なども勘案して、SDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進することを目標とする。

 また、資本効率向上に向けた拠点見直しの一環として、21年6月に名古屋オフィスおよび福岡オフィスの不動産を譲渡すると発表している。譲渡時期は未定だが、譲渡後も賃借で継続利用する。

 23年1月には23年11月期からの中期経営計画(ローリング形式)を公表し、25年11月期の目標値を売上高593億円、営業利益22億円、ROE5.6%としている。

 セグメント別の目標は、ファインケミカル事業の売上高が180.9億円(22年11月期は146.3億円)で営業利益が10.5億円(同2.4億円)、HBC・食品事業の売上高が141.4億円(同139.7億円)で営業利益が3.1億円(同1.4億円)、医薬事業の売上高が153.2億円(同117.5億円)で営業利益が1.1億円(同3.9億円)、化学品事業の売上高が114.0億円(同92.7億円)で営業利益が5.9億円(同1.5億円の赤字)としている。

■23年11月期1Q赤字で通期も減益予想だが中期成長期待

 23年11月期連結業績予想は、売上高が22年11月期比3.8%増の515億円、営業利益が12.2%減の7億20百万円、経常利益が53.8%減の4億10百万円、親会社株主帰属当期純利益が98.3%減の10百万円としている。配当予想は22年11月期と同額の18円(第2四半期末9円、期末9円)としている。

 第1四半期は、売上高が前年同期比4.1%増の127億85百万円、営業利益が92百万円の損失(前年同期は6億30百万円の利益)、経常利益が63百万円の損失(同6億59百万円の利益)、親会社株主帰属四半期純利益が2億06百万円の損失(同4億49百万円の利益)だった。

 ファインケミカル事業における医薬品原料の好調、医薬事業における新製品の市場シェア拡大などで増収だが、エネルギーコストの高騰、一部の事業会社における経営改善の取り組み遅れなどの影響をカバーしきれず各利益は赤味だった。

 ファインケミカル事業は売上高(外部顧客への売上高)が3.1%減の36億45百万円で、営業利益(全社費用等調整前)が56百万円の損失(同5億20百万円の利益)だった。医薬品原料分野は好調だったが、医薬品CDMO分野において前期発生した経営改善の遅れの影響で売上回復が緩やかだった。

 HBC・食品事業は売上高が18.8%増の42億18百万円で、営業利益が40百万円の損失(同95百万円の損失)だった。大幅増収効果で赤字縮小した。化粧品および食品原料部門では新規顧客開拓に加えて、マルマンH&Bの自社企画健康食品や輸入化粧品の販売が好調だった。ファルマネット部門では一般医薬品卸売の事業撤退を進める一方で、化粧品輸入代行などを展開するアインズラボを子会社化した。

 医薬事業は売上高が5.8%増の29億06百万円で、営業利益が53.2%減の72百万円だった。医療用医薬品部門におけるルリコナゾール軟膏・クリームの発売で当初目標としていた市場シェアを獲得したが、原材料や用役費の高騰の影響で減益だった。なお岩城製薬佐倉工場では、高活性注射液棟の改修を行っており、23年秋の稼働に向けて準備を進めている。

 化学品事業は売上高が9.6%減の20億13百万円で、営業利益が1億04百万円の損失(同40百万円の利益)だった。減収減益だった。表面処理設備分野は堅調だが、表面処理薬品分野が対象市場の低迷や原材料・用役費高騰の影響を受けた。

 その他事業(人材事業、ふるさと納税事業などの新規事業)は、売上高が1百万円で営業利益が23百万円の損失だった。

 通期連結業績予想は据え置いている。原材料価格などの不透明感を考慮して減益予想としている。ただし中期経営計画(ローリング方式)では25年11月期の目標値を大幅増収増益の計画(売上高593億円、営業利益22億円、ROE5.6%)としている。積極的な事業展開で中期成長を期待したい。

 なお3月29日に固定資産譲渡(23年11月30日引渡予定、譲渡益の金額は未定)を発表した。23年11月期に特別利益が計上される見込みだが、詳細は譲渡価格および譲渡益が確定した後に公表するとしている。

■株主優待制度は毎年11月末時点で1年以上保有株主対象

 株主優待制度は毎年11月末時点で100株(1単元)以上を継続して1年以上保有する株主を対象として実施している。グループ化粧品詰め合わせセットなどを贈呈(詳細は会社HP参照)する。

■株価は上値試す

 株価は第1四半期業績を嫌気する場面があったが反応は限定的だった。そして目先的な売り一巡して切り返しの動きを強めている。高配当利回りや低PBRも評価して上値を試す展開を期待したい。4月20日の終値は438円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS25銭で算出)は約1752倍、今期予想配当利回り(会社予想の18円で算出)は約4.1%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS685円24銭で算出)は約0.6倍、そして時価総額は約179億円である。 (情報提供:日本インタビュ新聞社=Media−IR
[04月04日更新]

アステナホールディングスはモミ合い上放れの動き、23年11月期減益予想だが中期成長期待

 アステナホールディングス<8095>(東証プライム)はヘルスケア・ファインケミカル企業集団として、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。さらなる成長戦略として、3つのサステナビリティ戦略(プラットフォーム戦略、ニッチトップ戦略、ソーシャルインパクト戦略)を推進している。23年11月期は原材料価格などの不透明感や先行投資を考慮して減益予想としているが、中期経営計画では25年11月期を大幅増収増益の計画としている。なお3月29日に固定資産譲渡(23年11月30日引渡予定、譲渡益の金額は未定)を発表した。積極的な事業展開で中期成長を期待したい。株価は安値圏の小幅レンジでモミ合う形だったが、徐々に水準を切り上げてモミ合いから上放れの動きを強めている。高配当利回りや低PBRも再評価して戻りを試す展開を期待したい。

■ヘルスケア・ファインケミカル企業集団

 旧イワキが21年6月1日付で持株会社体制に移行して商号をアステナホールディングスに変更した。アステナは「明日(未来)+サステナブル(持続可能)」の造語である。ヘルスケア・ファインケミカル企業集団として、製造分野が利益柱となり、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。

 セグメント区分はファインケミカル事業(医薬品のCMC研究開発・製造受託、医薬品原料の製造販売など)、HBC・食品事業(化粧品原料の販売、食品原料・機能性食品の製造販売、一般用医薬品の卸売、化粧品の通信販売など)、医薬事業(医薬品・医療機器の製造販売など)、化学品事業(表面処理薬品の製造販売、プリント基板製造プラントの製造販売など)、その他(地方創生関連事業など)としている。

 22年11月期(収益認識会計基準適用)のセグメント別売上高(外部顧客への売上高)の構成比はファインケミカル事業が29%、HBC・食品事業が28%、医薬事業が24%、化学品事業が19%、その他が0%だった。営業利益の構成比はファインケミカル事業が30%、HBC・食品事業が17%、医薬事業が48%、化学品事業が▲19%、その他が▲5%、そして調整額が29%だった。

■新しい戦略的ビジネスモデルを構築

 4つの新しい戦略的ビジネスモデル(調達プラットフォーム事業、インキュベーション事業、注射剤CDMO事業、塗り薬CDM事業)を構築している。

 ファインケミカル事業は、20年3月に子会社化した医薬品CMC研究開発・製造受託のスペラファーマと、スペラファーマの子会社として20年7月に設立したスペラネクサスを中心に展開している。さらに岩城製薬のファインケミカル事業をスペラネクサスに承継し、医薬品原薬のCMC研究開発から製造受託・販売まで一貫体制を構築した。20年6月にはスペラファーマが創薬ベンチャーのジェイファーマに出資した。21年4月にはスペラファーマがペプチド合成技術を保有するJITSUBOを子会社化した。

 21年3月には岩城製薬が、オンコリスバイオファーマ<4588>の新型コロナウイルス感染症治療薬OBP―2011の臨床試験開始に必要な治験薬原薬の製造法開発とGMP製造を受託(スペラネクサスに承継)することで基本合意し、21年7月にはスペラファーマがオンコロスバイオファーマからOBP―2011の治験薬製剤のGMP製造を受託することで基本合意した。

 22年2月にはスペラファーマがインタープロテインと、アンメット・メディカル・ニーズの高い様々な疾患に対する新規低分子およびペプチド医薬品の研究開発、製造ならびに商業化を目的とした包括的協業に関する覚書を締結した。22年11月にはジェイファーマが実施する第三者割当による新株予約権を引き受けた。

 HBC・食品事業はイワキ(イワキ分割準備会社が21年6月商号変更)とアプロスを中心に展開している。20年12月には健康食品・化粧品販売のマルマンH&Bを子会社化、21年7月にはイワキがスカイネットから薬事サポート事業、自社開発事業および輸入製販事業を譲り受け、21年9月にはイワキが住建情報センターのヘルスケア事業を譲り受けた。22年1月にはイワキが食品原料調達WEBプラットフォーム「シェアシマ」を運営するICS―netに資本参加した。

 22年11月には、不採算が続いていたイワキの一般医薬品を中心とする卸売分野から撤退すると発表した。23年11月期以降の連結業績に与える影響は軽微の見込みとしている。また22年12月にはイワキが、海外製化粧品輸入販売などを展開するアインズラボの全株式を取得して完全子会社化した。

 医薬事業は岩城製薬と20年7月に鳥居薬品佐倉工場を継承した岩城製薬佐倉工場を中心に展開している。20年1月には医療用後発医薬品・一般用医薬品開発の前田薬品工業に出資、21年1月には岩城製薬が新しいコンセプトの抗ウイルス薬開発に取り組んでいるキノファーマと業務提携、21年4月にはインタープロテインとCOVID―19治療薬の共同研究契約を締結した。22年4月には岩城製薬がヤンセンファーマから「ニゾラールローション2%」の日本における製造販売承認を承継・販売移管した。岩城製薬にとって初の長期収載品の扱いとなる。

 22年7月には、スキンケアブランド「ナビジョン/ナビジョンDR」について、資生堂ジャパンが保有していたブランドホルダー機能を岩城製薬に移管することで合意した。ブランド価値向上に向けて役割分担を見直し、資生堂ジャパンが行ってきた研究開発・商品開発機能およびマーケティング機能を岩城製薬が担い、資生堂ジャパンは現行品の製造を担う。22年8月には、岩城製薬がキノファーマと尋常性疣贅を適応症とした共同開発・商業化契約を締結し、22年10月にはキノファーマの第三者割当増資を引き受けて資本出資した。

 化学品事業はメルテックス、東京化工機、および海外子会社等を中心に展開している。

■SDGsへの取り組み推進

 持株会社体制への移行に伴い、グループ全体のBCP(事業継続計画)対策および従業員の働き方・生き方の選択肢多様化を目的として、21年6月に本社機能の一部を石川県珠洲市に移転した。さらに、石川県珠洲市が地方創生に向けた人材育成事業の一環として行っている能登SDGsラボと協業し、30年までにSDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進する。

 21年6月には新規事業のインキュベーションを担う専任部署として新規事業推進室を設置した。SDGs推進に向けて、化粧品原料・製品(グループ会社JITSUBOのペプチド合成法Molecular Hivingによる高品質で環境に優しく、コスト優位性のある化粧品原料・製品)事業、地方創生に繋がるハイブリッド型ふるさと納税プラットフォーム事業、健康食品原料事業(国産の安心・安全な健康食品原料・製品の第6次産業化を目的として、石川県珠洲市で健康食品の原料となる植物等の栽培を行う事業)などを推進する。

 21年7月には、奥能登地域のSDGS達成支援を目的とするファンド「奥能登SDGs投資事業有限責任組合(のとSDGsファンド)」に出資した。特定子会社となる。21年8月には、グループの業務サポートやファシリティーサービスを提供するアステナハートフル(21年6月設立)が、障害者の雇用の促進等に関する法律に基づく特例子会社の認定を取得した。

 21年11月には能登地域のSDGs達成の支援を目的として、能登地域の自治体3市(七尾市、輪島市、珠洲市)・2町(穴水町、能都町)、および国立大学法人金沢大学、奥能登信用金庫、のと共栄信用金庫、北國フィナンシャルホールディングス、BPキャピタルと、SDGs推進に係る連携と協力に関する協定を締結した。21年12月には子会社のイワキ総合研究所の商号をアステナミネルヴァに変更した。新規事業推進室を移設し、事業内容も地方創生に関連する事業に変更した。

 22年7月にはアステナミネルヴァが、パープルテクノスの子会社で、石川県の地域ポータルメディアを展開するイシカワズカンの株式の一部を取得した。ヤマガタデザイン(山形県鶴岡市)と連携し、若者のU・Iターン地方移住を推進するウェブメディア「チイキズカン」プロジェクトを22年9月に立ち上げる予定だ。

 23年1月にはアステナミネルヴァが、のとSDGsファンドの投資先である有機米デザイン(東京都小金井市)の「アイガモロボ」(田んぼの雑草を抑制する自動ロボット)を使用した有機米事業を開始すると発表した。またアステナミネルヴァが、森林資源を生かした自立・分散型の脱炭素社会の実現に向けて、石川県珠洲市で森林事業を開始すると発表した。

 さらに23年1月には、スタートアップ企業を支援するベンチャーファンド「TUAT1号投資事業有限責任組合」への出資を発表した。同ファンドの主たる投資先は農学分野(特に脱炭素に資する循環型畜産業、スマート農業、持続可能な食料生産)の研究成果を活用したスタートアップ企業を想定しており、アステナミネルヴァとのシナジーを見込んでいる。

 23年3月には、経済産業省と日本健康会議が実施する健康経営優良法人認定制度において、持株会社が「健康経営優良法人2023(大規模法人部門)」に認定、グループ会社のアプロス、スペラファーマ、東海メルテックス、東京化工機、メルテックスが「健康経営優良法人2023(中規模法人部門)」に認定された。さらに、スポーツ庁が主催する「第2回Sport in Lifeアワード」にて優秀賞(企業部門)を受賞した。同社の「歩くふるさと納税」の取り組みが評価された。

■2030年に向けた中長期ビジョンとローリング形式の中期経営計画

 2030年に向けたグループ中長期ビジョン「Astena 2030 “Diversify for Tomorrow”」(21年1月公表)では、定量的ターゲットとして30年11月期の売上高1300億円以上、ROE13%以上を掲げている。セグメント別の30年11月期目標値は、ファインケミカル事業が売上高400億円で営業利益率9%、HBC・食品事業が売上高450億円で営業利益率3%、医薬事業が売上高228億円で営業利益率13%、化学品事業が売上高130億円で営業利益率10%としている。

 基本戦略としては、プラットフォーム戦略(CMC=医療用医薬品研究開発の国内トップレベルでの受託、ヘルスケア調達プラットフォーム=医薬品・化粧品・機能性食品製造会社の全ニーズをカバー、創薬インキュベーション=CMC提供を通じて新薬開発の成功確率を高める、CDMO=注射剤・外皮用剤・治験薬の受託製造)、ニッチトップ戦略(外皮用剤ジェネリック医薬品=国内塗り薬ジェネリック医薬品市場NO.1、ハイエンド表面処理薬品=エレクトロニクスに特化した表面処理薬品)、ソーシャルインパクト戦略(シニア・アクティベイト=化粧品・機能性食品の提供を通じてシニア総アクティブ化推進)を掲げている。

 ファインケミカル事業は、CMC・CDMO事業および調達プラットフォーム事業を2本柱として、原材料調達からCMC研究、原薬商用生産までの医薬品開発・製造の幅広いサービスを提供する。

 HBC・食品事業は、原料ビジネスのDX化による顧客の開発・調達プロセスの課題解決プラットフォームの提供、独自性を高めた商品・サービスの提供による市場価値増大を推進する。またダイレクトマーケティング領域への投資を実行して、領域特化型ネットワークを構築する。

 医薬事業は、皮膚科領域をベースとして外皮用剤品目数および生産キャパシティでトップ、グローバル要求水準に対応して高活性注射剤CDMOのトップを目指す。また外皮用剤、注射剤導入、新薬共同開発、M&A・アライアンスで事業基盤強化・拡大を目指す。

 化学品事業は、エレクトロニクス実装市場のトレンドを捉えたニッチトップ商品の継続的開発、ハイエンドパッケージ基板での地位確立、チップ部品用途の台湾・中国大手での採用、半導体パワー・センサー系薬品の差別化を推進する。またグローバル企業との共同開発も推進して成長を目指す。

 その他では既存事業との親和性、将来に亘る成長性、グループ全体への波及効果なども勘案して、SDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進することを目標とする。

 また、資本効率向上に向けた拠点見直しの一環として、21年6月に名古屋オフィスおよび福岡オフィスの不動産を譲渡すると発表している。譲渡時期は未定だが、譲渡後も賃借で継続利用する。

 23年1月には23年11月期からの中期経営計画(ローリング形式)を公表し、25年11月期の目標値を売上高593億円、営業利益22億円、ROE5.6%としている。

 セグメント別の目標は、ファインケミカル事業の売上高が180.9億円(22年11月期は146.3億円)で営業利益が10.5億円(同2.4億円)、HBC・食品事業の売上高が141.4億円(同139.7億円)で営業利益が3.1億円(同1.4億円)、医薬事業の売上高が153.2億円(同117.5億円)で営業利益が1.1億円(同3.9億円)、化学品事業の売上高が114.0億円(同92.7億円)で営業利益が5.9億円(同1.5億円の赤字)としている。

■23年11月期減益予想だが中期成長期待

 23年11月期連結業績予想は、売上高が22年11月期比3.8%増の515億円、営業利益が12.2%減の7億20百万円、経常利益が53.8%減の4億10百万円、親会社株主帰属当期純利益が98.3%減の10百万円としている。配当予想は22年11月期と同額の18円(第2四半期末9円、期末9円)としている。

 原材料価格などの不透明感や先行投資を考慮して減益予想としている。ただし23年11月期からの中期経営計画(ローリング方式)では、25年11月期の目標値を大幅増収増益の計画(売上高593億円、営業利益22億円、ROE5.6%)としている。積極的な事業展開で中期成長を期待したい。

 なお3月29日に固定資産譲渡(23年11月30日引渡予定、譲渡益の金額は未定)を発表した。23年11月期に特別利益が計上される見込みだが、詳細は譲渡価格および譲渡益が確定した後に公表するとしている。

■株主優待制度は毎年11月末時点で1年以上保有株主対象

 株主優待制度は毎年11月末時点で100株(1単元)以上を継続して1年以上保有する株主を対象として実施している。グループ化粧品詰め合わせセットなどを贈呈(詳細は会社HP参照)する。

■株価はモミ合い上放れの動き

 株価は安値圏の小幅レンジでモミ合う形だったが、徐々に水準を切り上げてモミ合いから上放れの動きを強めている。高配当利回りや低PBRも再評価して戻りを試す展開を期待したい。4月3日の終値は445円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS25銭で算出)は約1780倍、今期予想配当利回り(会社予想の18円で算出)は約4.0%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS685円24銭で算出)は約0.6倍、そして時価総額は約182億円である。 (情報提供:日本インタビュ新聞社=Media−IR
[03月17日更新]

アステナホールディングスは煮詰まり感、23年11月期減益予想だが中期成長期待

 アステナホールディングス<8095>(東証プライム)はヘルスケア・ファインケミカル企業集団として、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。さらなる成長戦略として、3つのサステナビリティ戦略(プラットフォーム戦略、ニッチトップ戦略、ソーシャルインパクト戦略)を推進している。3月8日には「健康経営優良法人2023」認定、3月13日には「第2回Sport in Lifeアワード」受賞を発表した。23年11月期は原材料価格などの不透明感や先行投資を考慮して減益予想としているが、中期経営計画では25年11月期を大幅増収増益の計画としている。積極的な事業展開で中期成長を期待したい。株価は安値圏の小幅レンジでモミ合う形だが、地合いが悪化する状況でも大きく下押す動きは見られない。そしてモミ合い煮詰まり感を強めている。23年11月期減益予想の織り込みが完了し、高配当利回りや低PBRも再評価して上放れの展開を期待したい。

■ヘルスケア・ファインケミカル企業集団

 旧イワキが21年6月1日付で持株会社体制に移行して商号をアステナホールディングスに変更した。アステナは「明日(未来)+サステナブル(持続可能)」の造語である。ヘルスケア・ファインケミカル企業集団として、製造分野が利益柱となり、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。

 セグメント区分はファインケミカル事業(医薬品のCMC研究開発・製造受託、医薬品原料の製造販売など)、HBC・食品事業(化粧品原料の販売、食品原料・機能性食品の製造販売、一般用医薬品の卸売、化粧品の通信販売など)、医薬事業(医薬品・医療機器の製造販売など)、化学品事業(表面処理薬品の製造販売、プリント基板製造プラントの製造販売など)、その他(地方創生関連事業など)としている。

 22年11月期(収益認識会計基準適用)のセグメント別売上高(外部顧客への売上高)の構成比はファインケミカル事業が29%、HBC・食品事業が28%、医薬事業が24%、化学品事業が19%、その他が0%だった。営業利益の構成比はファインケミカル事業が30%、HBC・食品事業が17%、医薬事業が48%、化学品事業が▲19%、その他が▲5%、そして調整額が29%だった。

■新しい戦略的ビジネスモデルを構築

 4つの新しい戦略的ビジネスモデル(調達プラットフォーム事業、インキュベーション事業、注射剤CDMO事業、塗り薬CDM事業)を構築している。

 ファインケミカル事業は、20年3月に子会社化した医薬品CMC研究開発・製造受託のスペラファーマと、スペラファーマの子会社として20年7月に設立したスペラネクサスを中心に展開している。さらに岩城製薬のファインケミカル事業をスペラネクサスに承継し、医薬品原薬のCMC研究開発から製造受託・販売まで一貫体制を構築した。20年6月にはスペラファーマが創薬ベンチャーのジェイファーマに出資した。21年4月にはスペラファーマがペプチド合成技術を保有するJITSUBOを子会社化した。

 21年3月には岩城製薬が、オンコリスバイオファーマ<4588>の新型コロナウイルス感染症治療薬OBP―2011の臨床試験開始に必要な治験薬原薬の製造法開発とGMP製造を受託(スペラネクサスに承継)することで基本合意し、21年7月にはスペラファーマがオンコロスバイオファーマからOBP―2011の治験薬製剤のGMP製造を受託することで基本合意した。

 22年2月にはスペラファーマがインタープロテインと、アンメット・メディカル・ニーズの高い様々な疾患に対する新規低分子およびペプチド医薬品の研究開発、製造ならびに商業化を目的とした包括的協業に関する覚書を締結した。22年11月にはジェイファーマが実施する第三者割当による新株予約権を引き受けた。

 HBC・食品事業はイワキ(イワキ分割準備会社が21年6月商号変更)とアプロスを中心に展開している。20年12月には健康食品・化粧品販売のマルマンH&Bを子会社化、21年7月にはイワキがスカイネットから薬事サポート事業、自社開発事業および輸入製販事業を譲り受け、21年9月にはイワキが住建情報センターのヘルスケア事業を譲り受けた。22年1月にはイワキが食品原料調達WEBプラットフォーム「シェアシマ」を運営するICS―netに資本参加した。

 22年11月には、不採算が続いていたイワキの一般医薬品を中心とする卸売分野から撤退すると発表した。23年11月期以降の連結業績に与える影響は軽微の見込みとしている。また22年12月にはイワキが、海外製化粧品輸入販売などを展開するアインズラボの全株式を取得して完全子会社化した。

 医薬事業は岩城製薬と20年7月に鳥居薬品佐倉工場を継承した岩城製薬佐倉工場を中心に展開している。20年1月には医療用後発医薬品・一般用医薬品開発の前田薬品工業に出資、21年1月には岩城製薬が新しいコンセプトの抗ウイルス薬開発に取り組んでいるキノファーマと業務提携、21年4月にはインタープロテインとCOVID―19治療薬の共同研究契約を締結した。22年4月には岩城製薬がヤンセンファーマから「ニゾラールローション2%」の日本における製造販売承認を承継・販売移管した。岩城製薬にとって初の長期収載品の扱いとなる。

 22年7月には、スキンケアブランド「ナビジョン/ナビジョンDR」について、資生堂ジャパンが保有していたブランドホルダー機能を岩城製薬に移管することで合意した。ブランド価値向上に向けて役割分担を見直し、資生堂ジャパンが行ってきた研究開発・商品開発機能およびマーケティング機能を岩城製薬が担い、資生堂ジャパンは現行品の製造を担う。22年8月には、岩城製薬がキノファーマと尋常性疣贅を適応症とした共同開発・商業化契約を締結し、22年10月にはキノファーマの第三者割当増資を引き受けて資本出資した。

 化学品事業はメルテックス、東京化工機、および海外子会社等を中心に展開している。

■SDGsへの取り組み推進

 持株会社体制への移行に伴い、グループ全体のBCP(事業継続計画)対策および従業員の働き方・生き方の選択肢多様化を目的として、21年6月に本社機能の一部を石川県珠洲市に移転した。さらに、石川県珠洲市が地方創生に向けた人材育成事業の一環として行っている能登SDGsラボと協業し、30年までにSDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進する。

 21年6月には新規事業のインキュベーションを担う専任部署として新規事業推進室を設置した。SDGs推進に向けて、化粧品原料・製品(グループ会社JITSUBOのペプチド合成法Molecular Hivingによる高品質で環境に優しく、コスト優位性のある化粧品原料・製品)事業、地方創生に繋がるハイブリッド型ふるさと納税プラットフォーム事業、健康食品原料事業(国産の安心・安全な健康食品原料・製品の第6次産業化を目的として、石川県珠洲市で健康食品の原料となる植物等の栽培を行う事業)などを推進する。

 21年7月には、奥能登地域のSDGS達成支援を目的とするファンド「奥能登SDGs投資事業有限責任組合(のとSDGsファンド)」に出資した。特定子会社となる。21年8月には、グループの業務サポートやファシリティーサービスを提供するアステナハートフル(21年6月設立)が、障害者の雇用の促進等に関する法律に基づく特例子会社の認定を取得した。

 21年11月には能登地域のSDGs達成の支援を目的として、能登地域の自治体3市(七尾市、輪島市、珠洲市)・2町(穴水町、能都町)、および国立大学法人金沢大学、奥能登信用金庫、のと共栄信用金庫、北國フィナンシャルホールディングス、BPキャピタルと、SDGs推進に係る連携と協力に関する協定を締結した。21年12月には子会社のイワキ総合研究所の商号をアステナミネルヴァに変更した。新規事業推進室を移設し、事業内容も地方創生に関連する事業に変更した。

 22年7月にはアステナミネルヴァが、パープルテクノスの子会社で、石川県の地域ポータルメディアを展開するイシカワズカンの株式の一部を取得した。ヤマガタデザイン(山形県鶴岡市)と連携し、若者のU・Iターン地方移住を推進するウェブメディア「チイキズカン」プロジェクトを22年9月に立ち上げる予定だ。

 23年1月にはアステナミネルヴァが、のとSDGsファンドの投資先である有機米デザイン(東京都小金井市)の「アイガモロボ」(田んぼの雑草を抑制する自動ロボット)を使用した有機米事業を開始すると発表した。またアステナミネルヴァが、森林資源を生かした自立・分散型の脱炭素社会の実現に向けて、石川県珠洲市で森林事業を開始すると発表した。

 さらに23年1月には、スタートアップ企業を支援するベンチャーファンド「TUAT1号投資事業有限責任組合」への出資を発表した。同ファンドの主たる投資先は農学分野(特に脱炭素に資する循環型畜産業、スマート農業、持続可能な食料生産)の研究成果を活用したスタートアップ企業を想定しており、アステナミネルヴァとのシナジーを見込んでいる。

 3月8日には、経済産業省と日本健康会議が実施する健康経営優良法人認定制度において「健康経営優良法人2023(大規模法人部門)」に認定された。3月13日には、スポーツ庁が主催する「第2回Sport in Lifeアワード」にて優秀賞(企業部門)を受賞したと発表している。同社の「歩くふるさと納税」の取り組みが評価された。

■2030年に向けた中長期ビジョンとローリング形式の中期経営計画

 2030年に向けたグループ中長期ビジョン「Astena 2030 “Diversify for Tomorrow”」(21年1月公表)では、定量的ターゲットとして30年11月期の売上高1300億円以上、ROE13%以上を掲げている。セグメント別の30年11月期目標値は、ファインケミカル事業が売上高400億円で営業利益率9%、HBC・食品事業が売上高450億円で営業利益率3%、医薬事業が売上高228億円で営業利益率13%、化学品事業が売上高130億円で営業利益率10%としている。

 基本戦略としては、プラットフォーム戦略(CMC=医療用医薬品研究開発の国内トップレベルでの受託、ヘルスケア調達プラットフォーム=医薬品・化粧品・機能性食品製造会社の全ニーズをカバー、創薬インキュベーション=CMC提供を通じて新薬開発の成功確率を高める、CDMO=注射剤・外皮用剤・治験薬の受託製造)、ニッチトップ戦略(外皮用剤ジェネリック医薬品=国内塗り薬ジェネリック医薬品市場NO.1、ハイエンド表面処理薬品=エレクトロニクスに特化した表面処理薬品)、ソーシャルインパクト戦略(シニア・アクティベイト=化粧品・機能性食品の提供を通じてシニア総アクティブ化推進)を掲げている。

 ファインケミカル事業は、CMC・CDMO事業および調達プラットフォーム事業を2本柱として、原材料調達からCMC研究、原薬商用生産までの医薬品開発・製造の幅広いサービスを提供する。

 HBC・食品事業は、原料ビジネスのDX化による顧客の開発・調達プロセスの課題解決プラットフォームの提供、独自性を高めた商品・サービスの提供による市場価値増大を推進する。またダイレクトマーケティング領域への投資を実行して、領域特化型ネットワークを構築する。

 医薬事業は、皮膚科領域をベースとして外皮用剤品目数および生産キャパシティでトップ、グローバル要求水準に対応して高活性注射剤CDMOのトップを目指す。また外皮用剤、注射剤導入、新薬共同開発、M&A・アライアンスで事業基盤強化・拡大を目指す。

 化学品事業は、エレクトロニクス実装市場のトレンドを捉えたニッチトップ商品の継続的開発、ハイエンドパッケージ基板での地位確立、チップ部品用途の台湾・中国大手での採用、半導体パワー・センサー系薬品の差別化を推進する。またグローバル企業との共同開発も推進して成長を目指す。

 その他では既存事業との親和性、将来に亘る成長性、グループ全体への波及効果なども勘案して、SDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進することを目標とする。

 また、資本効率向上に向けた拠点見直しの一環として、21年6月に名古屋オフィスおよび福岡オフィスの不動産を譲渡すると発表している。譲渡時期は未定だが、譲渡後も賃借で継続利用する。

 23年1月には23年11月期からの中期経営計画(ローリング形式)を公表し、25年11月期の目標値を売上高593億円、営業利益22億円、ROE5.6%としている。

 セグメント別の目標は、ファインケミカル事業の売上高が180.9億円(22年11月期は146.3億円)で営業利益が10.5億円(同2.4億円)、HBC・食品事業の売上高が141.4億円(同139.7億円)で営業利益が3.1億円(同1.4億円)、医薬事業の売上高が153.2億円(同117.5億円)で営業利益が1.1億円(同3.9億円)、化学品事業の売上高が114.0億円(同92.7億円)で営業利益が5.9億円(同1.5億円の赤字)としている。

■23年11月期減益予想だが中期成長期待

 23年11月期連結業績予想は、売上高が22年11月期比3.8%増の515億円、営業利益が12.2%減の7億20百万円、経常利益が53.8%減の4億10百万円、親会社株主帰属当期純利益が98.3%減の10百万円としている。配当予想は22年11月期と同額の18円(第2四半期末9円、期末9円)としている。

 原材料価格などの不透明感や先行投資を考慮して減益予想としている。ただし23年11月期からの中期経営計画(ローリング方式)では、25年11月期の目標値を大幅増収増益の計画(売上高593億円、営業利益22億円、ROE5.6%)としている。積極的な事業展開で中期成長を期待したい。

■株主優待制度は毎年11月末時点で1年以上保有株主対象

 株主優待制度は毎年11月末時点で100株(1単元)以上を継続して1年以上保有する株主を対象として実施している。グループ化粧品詰め合わせセットなどを贈呈(詳細は会社HP参照)する。

■株価は煮詰まり感

 株価は安値圏の小幅レンジでモミ合う形だが、地合いが悪化する状況でも大きく下押す動きは見られない。そしてモミ合い煮詰まり感を強めている。23年11月期減益予想の織り込みが完了し、高配当利回りや低PBRも再評価して上放れの展開を期待したい。3月16日の終値は421円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS25銭で算出)は約1684倍、今期予想配当利回り(会社予想の18円で算出)は約4.3%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS685円24銭で算出)は約0.6倍、そして時価総額は約172億円である。 (情報提供:日本インタビュ新聞社=Media−IR
[02月27日更新]

アステナホールディングスは下値切り上げ、23年11月期減益予想だが中期成長期待

 アステナホールディングス<8095>(東証プライム)はヘルスケア・ファインケミカル企業集団として、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。そして成長に向けた基本戦略として、3つのサステナビリティ戦略(プラットフォーム戦略、ニッチトップ戦略、ソーシャルインパクト戦略)を推進している。23年11月期は原材料価格などの不透明感や先行投資を考慮して減益予想としているが、中期経営計画では25年11月期の目標値を大幅増収増益の計画としている。積極的な事業展開で中期成長を期待したい。株価は上値が重く安値圏の小幅レンジでモミ合う形だが、徐々に下値を切り上げている。23年11月期減益予想の織り込みが完了し、高配当利回りや低PBRも再評価して出直りを期待したい。

■ヘルスケア・ファインケミカル企業集団

 旧イワキが21年6月1日付で持株会社体制に移行して商号をアステナホールディングスに変更した。アステナは「明日(未来)+サステナブル(持続可能)」の造語である。ヘルスケア・ファインケミカル企業集団として、製造分野が利益柱となり、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。

 セグメント区分はファインケミカル事業(医薬品のCMC研究開発・製造受託、医薬品原料の製造販売など)、HBC・食品事業(化粧品原料の販売、食品原料・機能性食品の製造販売、一般用医薬品の卸売、化粧品の通信販売など)、医薬事業(医薬品・医療機器の製造販売など)、化学品事業(表面処理薬品の製造販売、プリント基板製造プラントの製造販売など)、その他(地方創生関連事業など)としている。

 22年11月期(収益認識会計基準適用)のセグメント別売上高(外部顧客への売上高)の構成比はファインケミカル事業が29%、HBC・食品事業が28%、医薬事業が24%、化学品事業が19%、その他が0%だった。営業利益の構成比はファインケミカル事業が30%、HBC・食品事業が17%、医薬事業が48%、化学品事業が▲19%、その他が▲5%、そして調整額が29%だった。

■新しい戦略的ビジネスモデルを構築

 4つの新しい戦略的ビジネスモデル(調達プラットフォーム事業、インキュベーション事業、注射剤CDMO事業、塗り薬CDM事業)を構築している。

 ファインケミカル事業は、20年3月に子会社化した医薬品CMC研究開発・製造受託のスペラファーマと、スペラファーマの子会社として20年7月に設立したスペラネクサスを中心に展開している。さらに岩城製薬のファインケミカル事業をスペラネクサスに承継し、医薬品原薬のCMC研究開発から製造受託・販売まで一貫体制を構築した。20年6月にはスペラファーマが創薬ベンチャーのジェイファーマに出資した。21年4月にはスペラファーマがペプチド合成技術を保有するJITSUBOを子会社化した。

 21年3月には岩城製薬が、オンコリスバイオファーマ<4588>の新型コロナウイルス感染症治療薬OBP―2011の臨床試験開始に必要な治験薬原薬の製造法開発とGMP製造を受託(スペラネクサスに承継)することで基本合意し、21年7月にはスペラファーマがオンコロスバイオファーマからOBP―2011の治験薬製剤のGMP製造を受託することで基本合意した。

 22年2月にはスペラファーマがインタープロテインと、アンメット・メディカル・ニーズの高い様々な疾患に対する新規低分子およびペプチド医薬品の研究開発、製造ならびに商業化を目的とした包括的協業に関する覚書を締結した。22年11月にはジェイファーマが実施する第三者割当による新株予約権を引き受けた。

 HBC・食品事業はイワキ(イワキ分割準備会社が21年6月商号変更)とアプロスを中心に展開している。20年12月には健康食品・化粧品販売のマルマンH&Bを子会社化、21年7月にはイワキがスカイネットから薬事サポート事業、自社開発事業および輸入製販事業を譲り受け、21年9月にはイワキが住建情報センターのヘルスケア事業を譲り受けた。22年1月にはイワキが食品原料調達WEBプラットフォーム「シェアシマ」を運営するICS―netに資本参加した。

 22年11月には、不採算が続いていたイワキの一般医薬品を中心とする卸売分野から撤退すると発表した。23年11月期以降の連結業績に与える影響は軽微の見込みとしている。また22年12月にはイワキが、海外製化粧品輸入販売などを展開するアインズラボの全株式を取得して完全子会社化した。

 医薬事業は岩城製薬と20年7月に鳥居薬品佐倉工場を継承した岩城製薬佐倉工場を中心に展開している。20年1月には医療用後発医薬品・一般用医薬品開発の前田薬品工業に出資、21年1月には岩城製薬が新しいコンセプトの抗ウイルス薬開発に取り組んでいるキノファーマと業務提携、21年4月にはインタープロテインとCOVID―19治療薬の共同研究契約を締結した。22年4月には岩城製薬がヤンセンファーマから「ニゾラールローション2%」の日本における製造販売承認を承継・販売移管した。岩城製薬にとって初の長期収載品の扱いとなる。

 22年7月には、スキンケアブランド「ナビジョン/ナビジョンDR」について、資生堂ジャパンが保有していたブランドホルダー機能を岩城製薬に移管することで合意した。ブランド価値向上に向けて役割分担を見直し、資生堂ジャパンが行ってきた研究開発・商品開発機能およびマーケティング機能を岩城製薬が担い、資生堂ジャパンは現行品の製造を担う。22年8月には、岩城製薬がキノファーマと尋常性疣贅を適応症とした共同開発・商業化契約を締結し、22年10月にはキノファーマの第三者割当増資を引き受けて資本出資した。

 化学品事業はメルテックス、東京化工機、および海外子会社等を中心に展開している。

■SDGsへの取り組み推進

 持株会社体制への移行に伴い、グループ全体のBCP(事業継続計画)対策および従業員の働き方・生き方の選択肢多様化を目的として、21年6月に本社機能の一部を石川県珠洲市に移転した。さらに、石川県珠洲市が地方創生に向けた人材育成事業の一環として行っている能登SDGsラボと協業し、30年までにSDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進する。

 21年6月には新規事業のインキュベーションを担う専任部署として新規事業推進室を設置した。SDGs推進に向けて、化粧品原料・製品(グループ会社JITSUBOのペプチド合成法Molecular Hivingによる高品質で環境に優しく、コスト優位性のある化粧品原料・製品)事業、地方創生に繋がるハイブリッド型ふるさと納税プラットフォーム事業、健康食品原料事業(国産の安心・安全な健康食品原料・製品の第6次産業化を目的として、石川県珠洲市で健康食品の原料となる植物等の栽培を行う事業)などを推進する。

 21年7月には、奥能登地域のSDGS達成支援を目的とするファンド「奥能登SDGs投資事業有限責任組合(のとSDGsファンド)」に出資した。特定子会社となる。21年8月には、グループの業務サポートやファシリティーサービスを提供するアステナハートフル(21年6月設立)が、障害者の雇用の促進等に関する法律に基づく特例子会社の認定を取得した。

 21年11月には能登地域のSDGs達成の支援を目的として、能登地域の自治体3市(七尾市、輪島市、珠洲市)・2町(穴水町、能都町)、および国立大学法人金沢大学、奥能登信用金庫、のと共栄信用金庫、北國フィナンシャルホールディングス、BPキャピタルと、SDGs推進に係る連携と協力に関する協定を締結した。21年12月には子会社のイワキ総合研究所の商号をアステナミネルヴァに変更した。新規事業推進室を移設し、事業内容も地方創生に関連する事業に変更した。

 22年7月にはアステナミネルヴァが、パープルテクノスの子会社で、石川県の地域ポータルメディアを展開するイシカワズカンの株式の一部を取得した。ヤマガタデザイン(山形県鶴岡市)と連携し、若者のU・Iターン地方移住を推進するウェブメディア「チイキズカン」プロジェクトを22年9月に立ち上げる予定だ。

 23年1月にはアステナミネルヴァが、のとSDGsファンドの投資先である有機米デザイン(東京都小金井市)の「アイガモロボ」(田んぼの雑草を抑制する自動ロボット)を使用した有機米事業を開始すると発表した。またアステナミネルヴァが、森林資源を生かした自立・分散型の脱炭素社会の実現に向けて、石川県珠洲市で森林事業を開始すると発表した。

 さらに23年1月には、スタートアップ企業を支援するベンチャーファンド「TUAT1号投資事業有限責任組合」への出資を発表した。同ファンドの主たる投資先は農学分野(特に脱炭素に資する循環型畜産業、スマート農業、持続可能な食料生産)の研究成果を活用したスタートアップ企業を想定しており、アステナミネルヴァとのシナジーを見込んでいる。

■2030年に向けた中長期ビジョンとローリング形式の中期経営計画

 2030年に向けたグループ中長期ビジョン「Astena 2030 “Diversify for Tomorrow”」(21年1月公表)では、定量的ターゲットとして30年11月期の売上高1300億円以上、ROE13%以上を掲げている。セグメント別の30年11月期目標値は、ファインケミカル事業が売上高400億円で営業利益率9%、HBC・食品事業が売上高450億円で営業利益率3%、医薬事業が売上高228億円で営業利益率13%、化学品事業が売上高130億円で営業利益率10%としている。

 基本戦略としては、プラットフォーム戦略(CMC=医療用医薬品研究開発の国内トップレベルでの受託、ヘルスケア調達プラットフォーム=医薬品・化粧品・機能性食品製造会社の全ニーズをカバー、創薬インキュベーション=CMC提供を通じて新薬開発の成功確率を高める、CDMO=注射剤・外皮用剤・治験薬の受託製造)、ニッチトップ戦略(外皮用剤ジェネリック医薬品=国内塗り薬ジェネリック医薬品市場NO.1、ハイエンド表面処理薬品=エレクトロニクスに特化した表面処理薬品)、ソーシャルインパクト戦略(シニア・アクティベイト=化粧品・機能性食品の提供を通じてシニア総アクティブ化推進)を掲げている。

 ファインケミカル事業は、CMC・CDMO事業および調達プラットフォーム事業を2本柱として、原材料調達からCMC研究、原薬商用生産までの医薬品開発・製造の幅広いサービスを提供する。

 HBC・食品事業は、原料ビジネスのDX化による顧客の開発・調達プロセスの課題解決プラットフォームの提供、独自性を高めた商品・サービスの提供による市場価値増大を推進する。またダイレクトマーケティング領域への投資を実行して、領域特化型ネットワークを構築する。

 医薬事業は、皮膚科領域をベースとして外皮用剤品目数および生産キャパシティでトップ、グローバル要求水準に対応して高活性注射剤CDMOのトップを目指す。また外皮用剤、注射剤導入、新薬共同開発、M&A・アライアンスで事業基盤強化・拡大を目指す。

 化学品事業は、エレクトロニクス実装市場のトレンドを捉えたニッチトップ商品の継続的開発、ハイエンドパッケージ基板での地位確立、チップ部品用途の台湾・中国大手での採用、半導体パワー・センサー系薬品の差別化を推進する。またグローバル企業との共同開発も推進して成長を目指す。

 その他では既存事業との親和性、将来に亘る成長性、グループ全体への波及効果なども勘案して、SDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進することを目標とする。

 また、資本効率向上に向けた拠点見直しの一環として、21年6月に名古屋オフィスおよび福岡オフィスの不動産を譲渡すると発表している。譲渡時期は未定だが、譲渡後も賃借で継続利用する。

 23年1月には23年11月期からの中期経営計画(ローリング形式)を公表し、25年11月期の目標値を売上高593億円、営業利益22億円、ROE5.6%としている。

 セグメント別の目標は、ファインケミカル事業の売上高が180.9億円(22年11月期は146.3億円)で営業利益が10.5億円(同2.4億円)、HBC・食品事業の売上高が141.4億円(同139.7億円)で営業利益が3.1億円(同1.4億円)、医薬事業の売上高が153.2億円(同117.5億円)で営業利益が1.1億円(同3.9億円)、化学品事業の売上高が114.0億円(同92.7億円)で営業利益が5.9億円(同1.5億円の赤字)としている。

■23年11月期減益予想だが中期成長期待

 23年11月期連結業績予想は、売上高が22年11月期比3.8%増の515億円、営業利益が12.2%減の7億20百万円、経常利益が53.8%減の4億10百万円、親会社株主帰属当期純利益が98.3%減の10百万円としている。配当予想は22年11月期と同額の18円(第2四半期末9円、期末9円)としている。

 原材料価格などの不透明感や先行投資を考慮して減益予想としている。ただし23年11月期からの中期経営計画(ローリング方式)では、25年11月期の目標値を大幅増収増益の計画(売上高593億円、営業利益22億円、ROE5.6%)としている。積極的な事業展開で中期成長を期待したい。

■株主優待制度は毎年11月末時点で1年以上保有株主対象

 株主優待制度は毎年11月末時点で100株(1単元)以上を継続して1年以上保有する株主を対象として実施している。グループ化粧品詰め合わせセットなどを贈呈(詳細は会社HP参照)する。

■株価は下値切り上げ

 株価は上値が重く安値圏の小幅レンジでモミ合う形だが、徐々に下値を切り上げている。23年11月期減益予想の織り込みが完了し、高配当利回りや低PBRも再評価して出直りを期待したい。2月27日の終値は428円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS25銭で算出)は約1712倍、今期予想配当利回り(会社予想の18円で算出)は約4.2%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS685円24銭で算出)は約0.6倍、そして時価総額は約175億円である。 (情報提供:日本インタビュ新聞社=Media−IR)
[01月31日更新]

アステナホールディングスは下値固め完了、23年11月期減益予想だが中期成長期待

 アステナホールディングス<8095>(東証プライム)はヘルスケア・ファインケミカル企業集団として、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。そして成長に向けた基本戦略として、3つのサステナビリティ戦略(プラットフォーム戦略、ニッチトップ戦略、ソーシャルインパクト戦略)を推進している。23年11月期は原材料価格などの不透明感や先行投資を考慮して減益予想としているが、中期経営計画では25年11月期の目標値を大幅増収増益の計画としている。積極的な事業展開で中期成長を期待したい。株価は安値圏の小幅レンジでモミ合う展開だが下値固め完了感を強めている。23年11月期減益予想に対するネガティブ反応は限定的だった。高配当利回りや低PBRも再評価して出直りを期待したい。

■ヘルスケア・ファインケミカル企業集団

 旧イワキが21年6月1日付で持株会社体制に移行して商号をアステナホールディングスに変更した。アステナは「明日(未来)+サステナブル(持続可能)」の造語である。ヘルスケア・ファインケミカル企業集団として、製造分野が利益柱となり、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。

 セグメント区分はファインケミカル事業(医薬品のCMC研究開発・製造受託、医薬品原料の製造販売など)、HBC・食品事業(化粧品原料の販売、食品原料・機能性食品の製造販売、一般用医薬品の卸売、化粧品の通信販売など)、医薬事業(医薬品・医療機器の製造販売など)、化学品事業(表面処理薬品の製造販売、プリント基板製造プラントの製造販売など)、その他(地方創生関連事業など)としている。

 22年11月期(収益認識会計基準適用)のセグメント別売上高(外部顧客への売上高)の構成比はファインケミカル事業が29%、HBC・食品事業が28%、医薬事業が24%、化学品事業が19%、その他が0%だった。営業利益の構成比はファインケミカル事業が30%、HBC・食品事業が17%、医薬事業が48%、化学品事業が▲19%、その他が▲5%、そして調整額が29%だった。

■新しい戦略的ビジネスモデルを構築

 4つの新しい戦略的ビジネスモデル(調達プラットフォーム事業、インキュベーション事業、注射剤CDMO事業、塗り薬CDM事業)を構築している。

 ファインケミカル事業は、20年3月に子会社化した医薬品CMC研究開発・製造受託のスペラファーマと、スペラファーマの子会社として20年7月に設立したスペラネクサスを中心に展開している。さらに岩城製薬のファインケミカル事業をスペラネクサスに承継し、医薬品原薬のCMC研究開発から製造受託・販売まで一貫体制を構築した。20年6月にはスペラファーマが創薬ベンチャーのジェイファーマに出資した。21年4月にはスペラファーマがペプチド合成技術を保有するJITSUBOを子会社化した。

 21年3月には岩城製薬が、オンコリスバイオファーマ<4588>の新型コロナウイルス感染症治療薬OBP―2011の臨床試験開始に必要な治験薬原薬の製造法開発とGMP製造を受託(スペラネクサスに承継)することで基本合意し、21年7月にはスペラファーマがオンコロスバイオファーマからOBP―2011の治験薬製剤のGMP製造を受託することで基本合意した。

 22年2月にはスペラファーマがインタープロテインと、アンメット・メディカル・ニーズの高い様々な疾患に対する新規低分子およびペプチド医薬品の研究開発、製造ならびに商業化を目的とした包括的協業に関する覚書を締結した。22年11月にはジェイファーマが実施する第三者割当による新株予約権を引き受けた。

 HBC・食品事業はイワキ(イワキ分割準備会社が21年6月商号変更)とアプロスを中心に展開している。20年12月には健康食品・化粧品販売のマルマンH&Bを子会社化、21年7月にはイワキがスカイネットから薬事サポート事業、自社開発事業および輸入製販事業を譲り受け、21年9月にはイワキが住建情報センターのヘルスケア事業を譲り受けた。22年1月にはイワキが食品原料調達WEBプラットフォーム「シェアシマ」を運営するICS―netに資本参加した。

 22年11月には、不採算が続いていたイワキの一般医薬品を中心とする卸売分野から撤退すると発表した。23年11月期以降の連結業績に与える影響は軽微の見込みとしている。また22年12月にはイワキが、海外製化粧品輸入販売などを展開するアインズラボの全株式を取得して完全子会社化した。

 医薬事業は岩城製薬と20年7月に鳥居薬品佐倉工場を継承した岩城製薬佐倉工場を中心に展開している。20年1月には医療用後発医薬品・一般用医薬品開発の前田薬品工業に出資、21年1月には岩城製薬が新しいコンセプトの抗ウイルス薬開発に取り組んでいるキノファーマと業務提携、21年4月にはインタープロテインとCOVID―19治療薬の共同研究契約を締結した。22年4月には岩城製薬がヤンセンファーマから「ニゾラールローション2%」の日本における製造販売承認を承継・販売移管した。岩城製薬にとって初の長期収載品の扱いとなる。

 22年7月には、スキンケアブランド「ナビジョン/ナビジョンDR」について、資生堂ジャパンが保有していたブランドホルダー機能を岩城製薬に移管することで合意した。ブランド価値向上に向けて役割分担を見直し、資生堂ジャパンが行ってきた研究開発・商品開発機能およびマーケティング機能を岩城製薬が担い、資生堂ジャパンは現行品の製造を担う。22年8月には、岩城製薬がキノファーマと尋常性疣贅を適応症とした共同開発・商業化契約を締結し、22年10月にはキノファーマの第三者割当増資を引き受けて資本出資した。

 化学品事業はメルテックス、東京化工機、および海外子会社等を中心に展開している。

■SDGsへの取り組み推進

 持株会社体制への移行に伴い、グループ全体のBCP(事業継続計画)対策および従業員の働き方・生き方の選択肢多様化を目的として、21年6月に本社機能の一部を石川県珠洲市に移転した。さらに、石川県珠洲市が地方創生に向けた人材育成事業の一環として行っている能登SDGsラボと協業し、30年までにSDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進する。

 21年6月には新規事業のインキュベーションを担う専任部署として新規事業推進室を設置した。SDGs推進に向けて、化粧品原料・製品(グループ会社JITSUBOのペプチド合成法Molecular Hivingによる高品質で環境に優しく、コスト優位性のある化粧品原料・製品)事業、地方創生に繋がるハイブリッド型ふるさと納税プラットフォーム事業、健康食品原料事業(国産の安心・安全な健康食品原料・製品の第6次産業化を目的として、石川県珠洲市で健康食品の原料となる植物等の栽培を行う事業)などを推進する。

 21年7月には、奥能登地域のSDGS達成支援を目的とするファンド「奥能登SDGs投資事業有限責任組合(のとSDGsファンド)」に出資した。特定子会社となる。21年8月には、グループの業務サポートやファシリティーサービスを提供するアステナハートフル(21年6月設立)が、障害者の雇用の促進等に関する法律に基づく特例子会社の認定を取得した。

 21年11月には能登地域のSDGs達成の支援を目的として、能登地域の自治体3市(七尾市、輪島市、珠洲市)・2町(穴水町、能都町)、および国立大学法人金沢大学、奥能登信用金庫、のと共栄信用金庫、北國フィナンシャルホールディングス、BPキャピタルと、SDGs推進に係る連携と協力に関する協定を締結した。21年12月には子会社のイワキ総合研究所の商号をアステナミネルヴァに変更した。新規事業推進室を移設し、事業内容も地方創生に関連する事業に変更した。

 22年7月にはアステナミネルヴァが、パープルテクノスの子会社で、石川県の地域ポータルメディアを展開するイシカワズカンの株式の一部を取得した。ヤマガタデザイン(山形県鶴岡市)と連携し、若者のU・Iターン地方移住を推進するウェブメディア「チイキズカン」プロジェクトを22年9月に立ち上げる予定だ。

 1月13日にはアステナミネルヴァが、のとSDGsファンドの投資先である有機米デザイン(東京都小金井市)の「アイガモロボ」(田んぼの雑草を抑制する自動ロボット)を使用した有機米事業を介すると発表した。またアステナミネルヴァが、森林資源を生かした自立・分散型の脱炭素社会の実現に向けて、石川県珠洲市で森林事業を開始すると発表した。

 さらに1月19日には、スタートアップ企業を支援するベンチャーファンド「TUAT1号投資事業有限責任組合」への出資を発表した。同ファンドの主たる投資先は農学分野(特に脱炭素に資する循環型畜産業、スマート農業、持続可能な食料生産)の研究成果を活用したスタートアップ企業を想定しており、アステナミネルヴァとのシナジーを見込んでいる。

■2030年に向けた中長期ビジョンとローリング形式の中期経営計画

 2030年に向けたグループ中長期ビジョン「Astena 2030 “Diversify for Tomorrow”」(21年1月公表)では、定量的ターゲットとして30年11月期の売上高1300億円以上、ROE13%以上を掲げている。セグメント別の30年11月期目標値は、ファインケミカル事業が売上高400億円で営業利益率9%、HBC・食品事業が売上高450億円で営業利益率3%、医薬事業が売上高228億円で営業利益率13%、化学品事業が売上高130億円で営業利益率10%としている。

 基本戦略としては、プラットフォーム戦略(CMC=医療用医薬品研究開発の国内トップレベルでの受託、ヘルスケア調達プラットフォーム=医薬品・化粧品・機能性食品製造会社の全ニーズをカバー、創薬インキュベーション=CMC提供を通じて新薬開発の成功確率を高める、CDMO=注射剤・外皮用剤・治験薬の受託製造)、ニッチトップ戦略(外皮用剤ジェネリック医薬品=国内塗り薬ジェネリック医薬品市場NO.1、ハイエンド表面処理薬品=エレクトロニクスに特化した表面処理薬品)、ソーシャルインパクト戦略(シニア・アクティベイト=化粧品・機能性食品の提供を通じてシニア総アクティブ化推進)を掲げている。

 ファインケミカル事業は、CMC・CDMO事業および調達プラットフォーム事業を2本柱として、原材料調達からCMC研究、原薬商用生産までの医薬品開発・製造の幅広いサービスを提供する。

 HBC・食品事業は、原料ビジネスのDX化による顧客の開発・調達プロセスの課題解決プラットフォームの提供、独自性を高めた商品・サービスの提供による市場価値増大を推進する。またダイレクトマーケティング領域への投資を実行して、領域特化型ネットワークを構築する。

 医薬事業は、皮膚科領域をベースとして外皮用剤品目数および生産キャパシティでトップ、グローバル要求水準に対応して高活性注射剤CDMOのトップを目指す。また外皮用剤、注射剤導入、新薬共同開発、M&A・アライアンスで事業基盤強化・拡大を目指す。

 化学品事業は、エレクトロニクス実装市場のトレンドを捉えたニッチトップ商品の継続的開発、ハイエンドパッケージ基板での地位確立、チップ部品用途の台湾・中国大手での採用、半導体パワー・センサー系薬品の差別化を推進する。またグローバル企業との共同開発も推進して成長を目指す。

 その他では既存事業との親和性、将来に亘る成長性、グループ全体への波及効果なども勘案して、SDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進することを目標とする。

 また、資本効率向上に向けた拠点見直しの一環として、21年6月に名古屋オフィスおよび福岡オフィスの不動産を譲渡すると発表している。譲渡時期は未定だが、譲渡後も賃借で継続利用する。

 1月13日には23年11月期からの中期経営計画(ローリング形式)を公表し、25年11月期の目標値を売上高593億円、営業利益22億円、ROE5.6%としている。

 セグメント別の目標は、ファインケミカル事業の売上高が180.9億円(22年11月期は146.3億円)で営業利益が10.5億円(同2.4億円)、HBC・食品事業の売上高が141.4億円(同139.7億円)で営業利益が3.1億円(同1.4億円)、医薬事業の売上高が153.2億円(同117.5億円)で営業利益が1.1億円(同3.9億円)、化学品事業の売上高が114.0億円(同92.7億円)で営業利益が5.9億円(同1.5億円の赤字)としている。

■23年11月期減益予想だが中期成長期待

 22年11月期連結業績(収益認識会計基準適用のため前期比増減率は非記載、売上高が従来の方法と比較して減少しているが営業利益以下への影響は軽微)は、売上高が496億36百万円(収益認識会計基準適用前の21年11月期は723億22百万円)、営業利益が8億19百万円(同22億33百万円)、経常利益が8億87百万円(同24億20百万円)、親会社株主帰属当期純利益が5億79百万円(同17億36百万円)だった。配当は21年11月期と同額の18円(第2四半期末9円、期末9円)とした。

 原材料価格高騰なども影響して前回予想(22年7月13日付で利益を下方修正、売上高500億円、営業利益10億円、経常利益10億円、親会社株主帰属当期純利益11億円)を下回り、実質減益で着地した。特別利益には固定資産売却益6億95百万円、投資有価証券売却益2億61百万円、特別損失には投資有価証券評価損3億03百万円などを計上した。収益認識会計基準適用の影響額として、従来方法に比べて売上高が227億53百万円減少、売上原価が226億55百万円減少、営業利益、経常利益、税金等調整前当期純利益がそれぞれ28百万円減少している。

 ファインケミカル事業は売上高が146億30百万円(同229億33百万円)で営業利益(調整前)が2億48百万円(同13億86百万円)だった。売上面は旧基準ベースで増収だが、利益はセールスミックス影響などで大幅減益だった。医薬品原料分野は堅調だったが、医薬品CDMO分野が事業環境の変化などの影響で弱含みだった。

 HBC・食品事業は売上高が139億70百万円(同282億38百万円)で営業利益が1億41百万円(同3億43百万円の赤字)だった。売上面は旧基準ベースで小幅減収だが、利益面は不採算取引減少などで黒字転換した。化粧品通販分野の堅調推移、一般用医薬品を主体とする卸売分野における不採算取引の是正、韓国コスメ関連や自社ブランドのシートマスク「ピュレア」の好調、食品原料分野における大口顧客の獲得なども寄与した。

 医薬事業は売上高が117億54百万円(同124億52百万円)で営業利益が3億92百万円(同9億08百万円)だった。売上面は旧基準ベースで減収となり、利益面は契約変更影響などで減益だった。岩城製薬佐倉工場において、欧州からの輸入機器の納期が遅延し、注射設備の竣工が約2ヶ月延期となったことも影響した。国内初となる抗真菌薬ジェネリック新製品の発売に向けたマーケティング活動、キノファーマとの共同開発・商業化契約、美容医療ブランドホルダー機能移管に伴う自社新製品開発などは順調に進捗した。

 化学品事業は売上高が92億78百万円(同86億97百万円)で営業利益が1億56百万円の赤字(同3億83百万円の黒字)だった。売上面は旧基準・新基準ベースとも増収だが、利益面はセールスミックス影響や原料高騰影響などで大幅減益だった。表面処理設備分野は好調だったが、表面処理薬品分野は電子部品・半導体向けを中心に販売が低調だった。

 なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高が122億85百万円で営業利益が6億30百万円、第2四半期は売上高が126億49百万円で営業利益が90百万円、第3四半期は売上高が119億94百万円で営業利益が2億94百万円の赤字、第4四半期は売上高が127億08百万円で営業利益が3億93百万円だった。第3四半期がボトムとなった可能性がありそうだ。

 23年11月期連結業績予想は、売上高が22年11月期比3.8%増の515億円、営業利益が12.2%減の7億20百万円、経常利益が53.8%減の4億10百万円、親会社株主帰属当期純利益が98.3%減の10百万円としている。配当予想は22年11月期と同額の18円(第2四半期末9円、期末9円)としている。

 原材料価格などの不透明感や先行投資を考慮して減益予想としている。ただし23年11月期からの中期経営計画(ローリング方式)では、25年11月期の目標値を大幅増収増益の計画(売上高593億円、営業利益22億円、ROE5.6%)としている。積極的な事業展開で中期成長を期待したい。

■株主優待制度は毎年11月末時点で1年以上保有株主対象

 株主優待制度は毎年11月末時点で100株(1単元)以上を継続して1年以上保有する株主を対象として実施している。グループ化粧品詰め合わせセットなどを贈呈(詳細は会社HP参照)する。

■株価は下値固め完了

 株価は反発力が鈍く安値圏の小幅レンジでモミ合う展開だが下値固め完了感を強めている。23年11月期減益予想に対するネガティブ反応は限定的だった。高配当利回りや低PBRも再評価して出直りを期待したい。1月30日の終値は416円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS25銭で算出)は約1664倍、今期予想配当利回り(会社予想の18円で算出)は約4.3%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS685円24銭で算出)は約0.6倍、そして時価総額は約170億円である。(情報提供:日 本インタビュ新聞社=Media−IR)
[01月04日更新]

アステナホールディングスは煮詰まり感、23年11月期収益拡大期待

 アステナホールディングス<8095>(東証プライム)はヘルスケア・ファインケミカル企業集団として、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。そしてグループ中長期ビジョンでは定量的ターゲットとして30年11月期売上高1300億円以上、ROE13%以上を掲げている。22年11月期は原材料価格や物流費の高騰などの影響で減益予想だが、積極的な事業展開で23年11月期の収益拡大を期待したい。株価は小幅レンジでのモミ合いが続いているが煮詰まり感を強めている。高配当利回りや低PBRも再評価してモミ合いから上放れの展開を期待したい。なお1月13日に22年11月期決算発表を予定している。

■ヘルスケア・ファインケミカル企業集団

 旧イワキが21年6月1日付で持株会社体制に移行して商号をアステナホールディングスに変更した。アステナは「明日(未来)+サステナブル(持続可能)」の造語である。ヘルスケア・ファインケミカル企業集団として、製造分野が利益柱となり、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。

 21年11月期のセグメント別売上高構成比はファインケミカル事業(医薬品のCMC研究開発・製造受託、医薬品原料の製造販売)が32%、医薬事業(医薬品・医療機器の製造販売)が17%、HBC・食品事業(化粧品原料の販売、食品原料・機能性食品の製造販売、一般用医薬品の卸売、化粧品の通信販売)が39%、化学品事業(表面処理薬品の製造販売、プリント基板製造プラントの製造販売)が12%、営業利益(全社費用等調整前)の構成比はファインケミカル事業が58%、医薬事業が40%、HBC・食品事業が▲14%、化学品事業が16%だった。

■新しい戦略的ビジネスモデルを構築

 4つの新しい戦略的ビジネスモデル(調達プラットフォーム事業、インキュベーション事業、注射剤CDMO事業、塗り薬CDM事業)を構築している。

 ファインケミカル事業は、20年3月に子会社化した医薬品CMC研究開発・製造受託のスペラファーマと、スペラファーマの子会社として20年7月に設立したスペラネクサスを中心に展開している。さらに岩城製薬のファインケミカル事業をスペラネクサスに承継し、医薬品原薬のCMC研究開発から製造受託・販売まで一貫体制を構築した。20年6月にはスペラファーマが創薬ベンチャーのジェイファーマに出資した。21年4月にはスペラファーマがペプチド合成技術を保有するJITSUBOを子会社化した。

 21年3月には岩城製薬が、オンコリスバイオファーマ<4588>の新型コロナウイルス感染症治療薬OBP―2011の臨床試験開始に必要な治験薬原薬の製造法開発とGMP製造を受託(スペラネクサスに承継)することで基本合意し、21年7月にはスペラファーマがオンコロスバイオファーマからOBP―2011の治験薬製剤のGMP製造を受託することで基本合意した。

 22年2月にはスペラファーマがインタープロテインと、アンメット・メディカル・ニーズの高い様々な疾患に対する新規低分子およびペプチド医薬品の研究開発、製造ならびに商業化を目的とした包括的協業に関する覚書を締結した。22年11月にはジェイファーマが実施する第三者割当による新株予約権を引き受けた。

 医薬事業は岩城製薬と20年7月に鳥居薬品佐倉工場を継承した岩城製薬佐倉工場を中心に展開している。20年1月には医療用後発医薬品・一般用医薬品開発の前田薬品工業に出資、21年1月には岩城製薬が新しいコンセプトの抗ウイルス薬開発に取り組んでいるキノファーマと業務提携、21年4月にはインタープロテインとCOVID―19治療薬の共同研究契約を締結した。22年4月には岩城製薬がヤンセンファーマから「ニゾラールローション2%」の日本における製造販売承認を承継・販売移管した。岩城製薬にとって初の長期収載品の扱いとなる。

 22年7月には、スキンケアブランド「ナビジョン/ナビジョンDR」について、資生堂ジャパンが保有していたブランドホルダー機能を岩城製薬に移管することで合意した。ブランド価値向上に向けて役割分担を見直し、資生堂ジャパンが行ってきた研究開発・商品開発機能およびマーケティング機能を岩城製薬が担い、資生堂ジャパンは現行品の製造を担う。

 22年8月には、岩城製薬がキノファーマと尋常性疣贅を適応症とした共同開発・商業化契約を締結し、22年10月にはキノファーマの第三者割当増資を引き受けて資本出資した。

 HBC・食品事業はイワキ(イワキ分割準備会社が21年6月商号変更)とアプロスを中心に展開している。20年12月には健康食品・化粧品販売のマルマンH&Bを子会社化、21年7月にはイワキがスカイネットから薬事サポート事業、自社開発事業および輸入製販事業を譲り受け、21年9月にはイワキが住建情報センターのヘルスケア事業を譲り受けた。22年1月にはイワキが食品原料調達WEBプラットフォーム「シェアシマ」を運営するICS―netに資本参加した。

 なお22年11月には、不採算が続いていたイワキの一般医薬品を中心とする卸売分野から撤退すると発表した。23年11月期以降の連結業績に与える影響は軽微の見込みとしている。また22年12月にはイワキが、海外製化粧品輸入販売などを展開するアインズラボの全株式を取得して完全子会社化した。

 化学品事業はメルテックス、東京化工機、および海外子会社等を中心に展開している。

■SDGsへの取り組み推進

 持株会社体制への移行に伴い、グループ全体のBCP(事業継続計画)対策および従業員の働き方・生き方の選択肢多様化を目的として、21年6月に本社機能の一部を石川県珠洲市に移転した。さらに、石川県珠洲市が地方創生に向けた人材育成事業の一環として行っている能登SDGsラボと協業し、30年までにSDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進する。

 21年6月には新規事業のインキュベーションを担う専任部署として新規事業推進室を設置した。SDGs推進に向けて、化粧品原料・製品(グループ会社JITSUBOのペプチド合成法Molecular Hivingによる高品質で環境に優しく、コスト優位性のある化粧品原料・製品)事業、地方創生に繋がるハイブリッド型ふるさと納税プラットフォーム事業、健康食品原料事業(国産の安心・安全な健康食品原料・製品の第6次産業化を目的として、石川県珠洲市で健康食品の原料となる植物等の栽培を行う事業)などを推進する。

 21年7月には、奥能登地域のSDGS達成支援を目的とするファンド「奥能登SDGs投資事業有限責任組合(奥能登SDGsファンド)」に出資した。特定子会社となる。21年8月には、グループの業務サポートやファシリティーサービスを提供するアステナハートフル(21年6月設立)が、障害者の雇用の促進等に関する法律に基づく特例子会社の認定を取得した。

 21年11月には能登地域のSDGs達成の支援を目的として、能登地域の自治体3市(七尾市、輪島市、珠洲市)・2町(穴水町、能都町)、および国立大学法人金沢大学、奥能登信用金庫、のと共栄信用金庫、北國フィナンシャルホールディングス、BPキャピタルと、SDGs推進に係る連携と協力に関する協定を締結した。21年12月には子会社のイワキ総合研究所の商号をアステナミネルヴァに変更した。新規事業推進室を移設し、事業内容も地方創生に関連する事業に変更した。

 22年7月にはアステナミネルヴァが、パープルテクノスの子会社で、石川県の地域ポータルメディアを展開するイシカワズカンの株式の一部を取得した。ヤマガタデザイン(山形県鶴岡市)と連携し、若者のU・Iターン地方移住を推進するウェブメディア「チイキズカン」プロジェクトを22年9月に立ち上げる予定だ。

■中長期ビジョンの目標は売上高1300億円以上、ROE13%以上

 2030年に向けたグループ中長期ビジョン「Astena2030」では、定量的ターゲットとして30年11月期の売上高1300億円以上、ROE13%以上を掲げ、中期経営計画(ローリング形式、新会計基準)の目標値は24年11月期の売上高600億円、営業利益38億円、ROE8.9%としている。

 セグメント別30年11月期目標値は、ファインケミカル事業が売上高400億円で営業利益率9%、医薬事業が売上高228億円で営業利益率13%、化学品事業が売上高130億円で営業利益率10%、HBC・食品事業が売上高450億円で営業利益率3%としている。

 基本戦略としては、プラットフォーム戦略(CMC=医療用医薬品研究開発の国内トップレベルでの受託、ヘルスケア調達プラットフォーム=医薬品・化粧品・機能性食品製造会社の全ニーズをカバー、創薬インキュベーション=CMC提供を通じて新薬開発の成功確率を高める、CDMO=注射剤・外皮用剤・治験薬の受託製造)、ニッチトップ戦略(外皮用剤ジェネリック医薬品=国内塗り薬ジェネリック医薬品市場NO.1、ハイエンド表面処理薬品=エレクトロニクスに特化した表面処理薬品)、ソーシャルインパクト戦略(シニア・アクティベイト=化粧品・機能性食品の提供を通じてシニア総アクティブ化推進)を掲げている。

 ファインケミカル事業は、CMC・CDMO事業および調達プラットフォーム事業を2本柱として、原材料調達からCMC研究、原薬商用生産までの医薬品開発・製造の幅広いサービスを提供する。

 医薬事業は、皮膚科領域をベースとして外皮用剤品目数および生産キャパシティでトップ、グローバル要求水準に対応して高活性注射剤CDMOのトップを目指す。また外皮用剤、注射剤導入、新薬共同開発、M&A・アライアンスで事業基盤強化・拡大を目指す。

 化学品事業は、エレクトロニクス実装市場のトレンドを捉えたニッチトップ商品の継続的開発、ハイエンドパッケージ基板での地位確立、チップ部品用途の台湾・中国大手での採用、半導体パワー・センサー系薬品の差別化を推進する。またグローバル企業との共同開発も推進して成長を目指す。

 HBC・食品事業は、原料ビジネスのDX化による顧客の開発・調達プロセスの課題解決プラットフォームの提供、独自性を高めた商品・サービスの提供による市場価値増大を推進する。またダイレクトマーケティング領域への投資を実行して、領域特化型ネットワークを構築する。

 その他では既存事業との親和性、将来に亘る成長性、グループ全体への波及効果なども勘案して、SDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進することを目標とする。

 なお資本効率向上に向けた拠点見直しの一環として、21年6月に名古屋オフィスおよび福岡オフィスの不動産を譲渡すると発表している。譲渡時期は未定だが、譲渡後も賃借で継続利用する。

■22年11月期減益予想だが23年11月期収益拡大期待

 22年11月期の連結業績予想(収益認識会計基準適用のため前期比増減率は非掲載、利益への影響なし、22年7月13日付で利益を下方修正)は、売上高が500億円、営業利益が10億円、経常利益が10億円、親会社株主帰属当期純利益が11億円としている。なお特別利益に固定資産譲渡益(IW日本橋ビル、引渡日22年3月、譲渡益約6億50百万円)を計上する。配当予想は21年11月期と同額の18円(第2四半期末9円、期末9円)としている。

 為替の急激な円安進行、原材料価格や物流費の高騰などで減益予想としている。収益認識会計基準適用の影響としては、従来方法と比較して売上高が約230億円減少する見込みだが、営業利益、経常利益、親会社株主帰属当期純利益への影響はないとしている。各利益の増減率を収益認識会計基準適用前の21年11月期実績値との単純比較で算出すると、営業利益は55.2%減益、経常利益は58.7%減益、親会社株主帰属当期純利益は36.6%減益となる。

 第3四半期累計は、売上高が369億28百万円(収益認識会計基準適用前の前年同期は537億27百万円)、営業利益が4億26百万円(同19億53百万円)、経常利益が5億16百万円(同20億40百万円)、親会社株主帰属四半期純利益が6億06百万円(同11億30百万円)だった。

 収益認識会計基準適用の影響額として、従来方法に比べて売上高が167億48百万円減少、売上原価が167億02百万円減少、営業利益、経常利益、税金等調整前四半期純利益がそれぞれ9百万円増加している。収益認識会計基準適用前ベースで見ると売上高は前年同期比0.1%減の536億76百万円、営業利益が78.6%減の4億17百万円、経常利益が75.1%減の5億07百万円、税金等調整前四半期純利益が43.8%減の11億15百万円となる。売上面は堅調だが、為替の急激な円安進行、原材料価格や物流費の高騰などの影響で減益だった。

 ファインケミカル事業は、売上高が110億90百万円(同169億50百万円)で、利益(調整前営業利益)が1億68百万円(同10億13百万円)だった。大幅減益だった。医薬品原料分野は新規GE品目や中間体も寄与して堅調だったが、CDMO分野が事業環境の変化や案件納期の変更などの影響で低調だった。

 HBC・食品事業は売上高が104億44百万円(同208億49百万円)で、利益が91百万円の赤字(同4億42百万円の赤字)だった。赤字が大幅に縮小した。化粧品通販分野における広告見直し、一般用医薬品を主体とする卸売分野における不採算取引整理や営業機能再編等の構造改革、マルマンH&Bが取り扱う韓国コスメ関連や自社ブランドのシートマスク「ピュレア」の拡販などが寄与した。

 医薬事業は売上高が89億32百万円(同96億91百万円)で、利益が3億88百万円(同11億19百万円)だった。大幅減益だった。成長に向けた国内初のGE新製品の承認取得、美容医療ブランドホルダー機能移管などで売上面は堅調だが、医療用医薬品分野における各種コスト上昇が影響した。

 化学品事業は、売上高が64億59百万円(同62億35百万円)で、利益が1億30百万円の赤字(同3億10百万円の黒字)だった。大幅減益だった。表面処理薬品分野では既存製品の販売が伸び悩み、表面処理設備分野では原材料価格高騰の影響を受けた。

 なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高が122億85百万円で営業利益が6億30百万円、第2四半期は売上高が126億49百万円で営業利益が90百万円、そして第3四半期は売上高が119億94百万円で営業利益が2億94百万円の赤字だった。

 通期の連結業績予想は据え置いている。為替の急激な円安進行、原材料価格や物流費の高騰などが影響する見込みだ。ファインケミカル事業と医薬事業の収益回復に向けて事業戦略の再構築を図るとしている。

 第3四半期累計の進捗率は売上高が73.9%、営業利益が42.6%、経常利益が51.6%、親会社株主帰属当期純利益が55.1%だった。22年11月期は原材料価格や物流費の高騰などの影響で減益予想だが、積極的な事業展開で23年11月期の収益拡大を期待したい。

■株主優待制度は毎年11月末時点で1年以上保有株主対象

 株主優待制度は毎年11月末時点で100株(1単元)以上を継続して1年以上保有する株主を対象として実施している。グループ化粧品詰め合わせセットなどを贈呈(詳細は会社HP参照)する。

■株価は煮詰まり感

 株価は小幅レンジでモミ合う形だが煮詰まり感を強めている。高配当利回りや低PBRも評価材料であり、モミ合いから上放れの展開を期待したい。12月30日の終値は424円、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS27円59銭で算出)は約15倍、前期推定配当利回り(会社予想の18円で算出)は約4.2%、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS677円09銭で算出)は約0.6倍、そして時価総額は約173億円である。(情報提供:日 本インタビュ新聞社=Media−IR)
[12月13日更新]

アステナホールディングスは22年11月期減益予想だが23年11月期収益拡大期待

 アステナホールディングス<8095>(東証プライム)はヘルスケア・ファインケミカル企業集団として、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。そしてグループ中長期ビジョンでは定量的ターゲットとして30年11月期売上高1300億円以上、ROE13%以上を掲げている。22年11月期は原材料価格や物流費の高騰などの影響で減益予想だが、積極的な事業展開で23年11月期の収益拡大を期待したい。なお11月30日に、不採算が続いていた一般医薬品を中心とする卸売分野から撤退すると発表した。23年11月期以降の連結業績に与える影響は軽微の見込みとしている。株価は反発力の鈍い展開だが、一方では下値固め完了感を強めている。高配当利回りや低PBRも評価材料であり、出直りを期待したい。

■ヘルスケア・ファインケミカル企業集団

 旧イワキが21年6月1日付で持株会社体制に移行して商号をアステナホールディングスに変更した。アステナは「明日(未来)+サステナブル(持続可能)」の造語である。ヘルスケア・ファインケミカル企業集団として、製造分野が利益柱となり、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。

 21年11月期のセグメント別売上高構成比はファインケミカル事業(医薬品のCMC研究開発・製造受託、医薬品原料の製造販売)が32%、医薬事業(医薬品・医療機器の製造販売)が17%、HBC・食品事業(化粧品原料の販売、食品原料・機能性食品の製造販売、一般用医薬品の卸売、化粧品の通信販売)が39%、化学品事業(表面処理薬品の製造販売、プリント基板製造プラントの製造販売)が12%、営業利益(全社費用等調整前)の構成比はファインケミカル事業が58%、医薬事業が40%、HBC・食品事業が▲14%、化学品事業が16%だった。

■新しい戦略的ビジネスモデルを構築

 4つの新しい戦略的ビジネスモデル(調達プラットフォーム事業、インキュベーション事業、注射剤CDMO事業、塗り薬CDM事業)を構築している。

 ファインケミカル事業は、20年3月に子会社化した医薬品CMC研究開発・製造受託のスペラファーマと、スペラファーマの子会社として20年7月に設立したスペラネクサスを中心に展開している。さらに岩城製薬のファインケミカル事業をスペラネクサスに承継し、医薬品原薬のCMC研究開発から製造受託・販売まで一貫体制を構築した。20年6月にはスペラファーマが創薬ベンチャーのジェイファーマに出資した。21年4月にはスペラファーマがペプチド合成技術を保有するJITSUBOを子会社化した。

 21年3月には岩城製薬が、オンコリスバイオファーマ<4588>の新型コロナウイルス感染症治療薬OBP―2011の臨床試験開始に必要な治験薬原薬の製造法開発とGMP製造を受託(スペラネクサスに承継)することで基本合意し、21年7月にはスペラファーマがオンコロスバイオファーマからOBP―2011の治験薬製剤のGMP製造を受託することで基本合意した。

 22年2月にはスペラファーマがインタープロテインと、アンメット・メディカル・ニーズの高い様々な疾患に対する新規低分子およびペプチド医薬品の研究開発、製造ならびに商業化を目的とした包括的協業に関する覚書を締結した。22年11月にはジェイファーマが実施する第三者割当による新株予約権を引き受けた。

 医薬事業は岩城製薬と20年7月に鳥居薬品佐倉工場を継承した岩城製薬佐倉工場を中心に展開している。20年1月には医療用後発医薬品・一般用医薬品開発の前田薬品工業に出資、21年1月には岩城製薬が新しいコンセプトの抗ウイルス薬開発に取り組んでいるキノファーマと業務提携、21年4月にはインタープロテインとCOVID―19治療薬の共同研究契約を締結した。22年4月には岩城製薬がヤンセンファーマから「ニゾラールローション2%」の日本における製造販売承認を承継・販売移管した。岩城製薬にとって初の長期収載品の扱いとなる。

 22年7月には、スキンケアブランド「ナビジョン/ナビジョンDR」について、資生堂ジャパンが保有していたブランドホルダー機能を岩城製薬に移管することで合意した。ブランド価値向上に向けて役割分担を見直し、資生堂ジャパンが行ってきた研究開発・商品開発機能およびマーケティング機能を岩城製薬が担い、資生堂ジャパンは現行品の製造を担う。

 22年8月には、岩城製薬がキノファーマと尋常性疣贅を適応症とした共同開発・商業化契約を締結し、22年10月にはキノファーマの第三者割当増資を引き受けて資本出資した。

 HBC・食品事業はイワキ(イワキ分割準備会社が21年6月商号変更)とアプロスを中心に展開している。20年12月には健康食品・化粧品販売のマルマンH&Bを子会社化、21年7月にはイワキがスカイネットから薬事サポート事業、自社開発事業および輸入製販事業を譲り受け、21年9月にはイワキが住建情報センターのヘルスケア事業を譲り受けた。22年1月にはイワキが食品原料調達WEBプラットフォーム「シェアシマ」を運営するICS―netに資本参加した。

 なお11月30日には、不採算が続いていたイワキの一般医薬品を中心とする卸売分野から撤退すると発表した。23年11月期以降の連結業績に与える影響は軽微の見込みとしている。また12月1日にはイワキが、海外製化粧品輸入販売などを展開するアインズラボの全株式を取得して完全子会社化すると発表した。

 化学品事業はメルテックス、東京化工機、および海外子会社等を中心に展開している。

■SDGsへの取り組み推進

 持株会社体制への移行に伴い、グループ全体のBCP(事業継続計画)対策および従業員の働き方・生き方の選択肢多様化を目的として、21年6月に本社機能の一部を石川県珠洲市に移転した。さらに、石川県珠洲市が地方創生に向けた人材育成事業の一環として行っている能登SDGsラボと協業し、30年までにSDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進する。

 21年6月には新規事業のインキュベーションを担う専任部署として新規事業推進室を設置した。SDGs推進に向けて、化粧品原料・製品(グループ会社JITSUBOのペプチド合成法Molecular Hivingによる高品質で環境に優しく、コスト優位性のある化粧品原料・製品)事業、地方創生に繋がるハイブリッド型ふるさと納税プラットフォーム事業、健康食品原料事業(国産の安心・安全な健康食品原料・製品の第6次産業化を目的として、石川県珠洲市で健康食品の原料となる植物等の栽培を行う事業)などを推進する。

 21年7月には、奥能登地域のSDGS達成支援を目的とするファンド「奥能登SDGs投資事業有限責任組合(奥能登SDGsファンド)」に出資した。特定子会社となる。21年8月には、グループの業務サポートやファシリティーサービスを提供するアステナハートフル(21年6月設立)が、障害者の雇用の促進等に関する法律に基づく特例子会社の認定を取得した。

 21年11月には能登地域のSDGs達成の支援を目的として、能登地域の自治体3市(七尾市、輪島市、珠洲市)・2町(穴水町、能都町)、および国立大学法人金沢大学、奥能登信用金庫、のと共栄信用金庫、北國フィナンシャルホールディングス、BPキャピタルと、SDGs推進に係る連携と協力に関する協定を締結した。21年12月には子会社のイワキ総合研究所の商号をアステナミネルヴァに変更した。新規事業推進室を移設し、事業内容も地方創生に関連する事業に変更した。

 22年7月にはアステナミネルヴァが、パープルテクノスの子会社で、石川県の地域ポータルメディアを展開するイシカワズカンの株式の一部を取得した。ヤマガタデザイン(山形県鶴岡市)と連携し、若者のU・Iターン地方移住を推進するウェブメディア「チイキズカン」プロジェクトを22年9月に立ち上げる予定だ。

■中長期ビジョンの目標は売上高1300億円以上、ROE13%以上

 2030年に向けたグループ中長期ビジョン「Astena2030」では、定量的ターゲットとして30年11月期の売上高1300億円以上、ROE13%以上を掲げ、中期経営計画(ローリング形式、新会計基準)の目標値は24年11月期の売上高600億円、営業利益38億円、ROE8.9%としている。

 セグメント別30年11月期目標値は、ファインケミカル事業が売上高400億円で営業利益率9%、医薬事業が売上高228億円で営業利益率13%、化学品事業が売上高130億円で営業利益率10%、HBC・食品事業が売上高450億円で営業利益率3%としている。

 基本戦略としては、プラットフォーム戦略(CMC=医療用医薬品研究開発の国内トップレベルでの受託、ヘルスケア調達プラットフォーム=医薬品・化粧品・機能性食品製造会社の全ニーズをカバー、創薬インキュベーション=CMC提供を通じて新薬開発の成功確率を高める、CDMO=注射剤・外皮用剤・治験薬の受託製造)、ニッチトップ戦略(外皮用剤ジェネリック医薬品=国内塗り薬ジェネリック医薬品市場NO.1、ハイエンド表面処理薬品=エレクトロニクスに特化した表面処理薬品)、ソーシャルインパクト戦略(シニア・アクティベイト=化粧品・機能性食品の提供を通じてシニア総アクティブ化推進)を掲げている。

 ファインケミカル事業は、CMC・CDMO事業および調達プラットフォーム事業を2本柱として、原材料調達からCMC研究、原薬商用生産までの医薬品開発・製造の幅広いサービスを提供する。

 医薬事業は、皮膚科領域をベースとして外皮用剤品目数および生産キャパシティでトップ、グローバル要求水準に対応して高活性注射剤CDMOのトップを目指す。また外皮用剤、注射剤導入、新薬共同開発、M&A・アライアンスで事業基盤強化・拡大を目指す。

 化学品事業は、エレクトロニクス実装市場のトレンドを捉えたニッチトップ商品の継続的開発、ハイエンドパッケージ基板での地位確立、チップ部品用途の台湾・中国大手での採用、半導体パワー・センサー系薬品の差別化を推進する。またグローバル企業との共同開発も推進して成長を目指す。

 HBC・食品事業は、原料ビジネスのDX化による顧客の開発・調達プロセスの課題解決プラットフォームの提供、独自性を高めた商品・サービスの提供による市場価値増大を推進する。またダイレクトマーケティング領域への投資を実行して、領域特化型ネットワークを構築する。

 その他では既存事業との親和性、将来に亘る成長性、グループ全体への波及効果なども勘案して、SDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進することを目標とする。

 なお資本効率向上に向けた拠点見直しの一環として、21年6月に名古屋オフィスおよび福岡オフィスの不動産を譲渡すると発表している。譲渡時期は未定だが、譲渡後も賃借で継続利用する。

■22年11月期減益予想だが23年11月期収益拡大期待

 22年11月期の連結業績予想(収益認識会計基準適用のため前期比増減率は非掲載、利益への影響なし、22年7月13日付で利益を下方修正)は、売上高が500億円、営業利益が10億円、経常利益が10億円、親会社株主帰属当期純利益が11億円としている。なお特別利益に固定資産譲渡益(IW日本橋ビル、引渡日22年3月、譲渡益約6億50百万円)を計上する。配当予想は21年11月期と同額の18円(第2四半期末9円、期末9円)としている。

 為替の急激な円安進行、原材料価格や物流費の高騰などで減益予想としている。収益認識会計基準適用の影響としては、従来方法と比較して売上高が約230億円減少する見込みだが、営業利益、経常利益、親会社株主帰属当期純利益への影響はないとしている。各利益の増減率を収益認識会計基準適用前の21年11月期実績値との単純比較で算出すると、営業利益は55.2%減益、経常利益は58.7%減益、親会社株主帰属当期純利益は36.6%減益となる。

 第3四半期累計は、売上高が369億28百万円(収益認識会計基準適用前の前年同期は537億27百万円)、営業利益が4億26百万円(同19億53百万円)、経常利益が5億16百万円(同20億40百万円)、親会社株主帰属四半期純利益が6億06百万円(同11億30百万円)だった。

 収益認識会計基準適用の影響額として、従来方法に比べて売上高が167億48百万円減少、売上原価が167億02百万円減少、営業利益、経常利益、税金等調整前四半期純利益がそれぞれ9百万円増加している。収益認識会計基準適用前ベースで見ると売上高は前年同期比0.1%減の536億76百万円、営業利益が78.6%減の4億17百万円、経常利益が75.1%減の5億07百万円、税金等調整前四半期純利益が43.8%減の11億15百万円となる。売上面は堅調だが、為替の急激な円安進行、原材料価格や物流費の高騰などの影響で減益だった。

 ファインケミカル事業は、売上高が110億90百万円(同169億50百万円)で、利益(調整前営業利益)が1億68百万円(同10億13百万円)だった。大幅減益だった。医薬品原料分野は新規GE品目や中間体も寄与して堅調だったが、CDMO分野が事業環境の変化や案件納期の変更などの影響で低調だった。

 HBC・食品事業は売上高が104億44百万円(同208億49百万円)で、利益が91百万円の赤字(同4億42百万円の赤字)だった。赤字が大幅に縮小した。化粧品通販分野における広告見直し、一般用医薬品を主体とする卸売分野における不採算取引整理や営業機能再編等の構造改革、マルマンH&Bが取り扱う韓国コスメ関連や自社ブランドのシートマスク「ピュレア」の拡販などが寄与した。

 医薬事業は売上高が89億32百万円(同96億91百万円)で、利益が3億88百万円(同11億19百万円)だった。大幅減益だった。成長に向けた国内初のGE新製品の承認取得、美容医療ブランドホルダー機能移管などで売上面は堅調だが、医療用医薬品分野における各種コスト上昇が影響した。

 化学品事業は、売上高が64億59百万円(同62億35百万円)で、利益が1億30百万円の赤字(同3億10百万円の黒字)だった。大幅減益だった。表面処理薬品分野では既存製品の販売が伸び悩み、表面処理設備分野では原材料価格高騰の影響を受けた。

 なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高が122億85百万円で営業利益が6億30百万円、第2四半期は売上高が126億49百万円で営業利益が90百万円、そして第3四半期は売上高が119億94百万円で営業利益が2億94百万円の赤字だった。

 通期の連結業績予想は据え置いている。為替の急激な円安進行、原材料価格や物流費の高騰などが影響する見込みだ。ファインケミカル事業と医薬事業の収益回復に向けて事業戦略の再構築を図るとしている。

 第3四半期累計の進捗率は売上高が73.9%、営業利益が42.6%、経常利益が51.6%、親会社株主帰属当期純利益が55.1%だった。22年11月期は原材料価格や物流費の高騰などの影響で減益予想だが、積極的な事業展開で23年11月期の収益拡大を期待したい。

■株主優待制度は毎年11月末時点で1年以上保有株主対象

 株主優待制度は毎年11月末時点で100株(1単元)以上を継続して1年以上保有する株主を対象として実施している。グループ化粧品詰め合わせセットなどを贈呈(詳細は会社HP参照)する。

■株価は下値固め完了

 株価は反発力の鈍い展開だが、一方では下値固め完了感を強めている。高配当利回りや低PBRも評価材料であり、出直りを期待したい。12月12日の終値は430円、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS27円59銭で算出)は約16倍、前期推定配当利回り(会社予想の18円で算出)は約4.2%、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS677円09銭で算出)は約0.6倍、そして時価総額は約175億円である。(情報提供:日 本インタビュ新聞社=Media−IR)
[11月25日更新]

アステナホールディングスは下値切り上げ、22年11月期減益予想だが23年11月期収益拡大期待

 アステナホールディングス<8095>(東証プライム)はヘルスケア・ファインケミカル企業集団として、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。そしてグループ中長期ビジョンでは定量的ターゲットとして30年11月期売上高1300億円以上、ROE13%以上を掲げている。22年11月期は原材料価格や物流費の高騰などの影響で減益予想としているが、積極的な事業展開で23年11月期の収益拡大を期待したい。株価は年初来安値圏でモミ合う形だが、徐々に下値を切り上げて反発の動きを強めている。高配当利回りや低PBRも評価材料であり、22年11月期減益予想の織り込み完了して出直りを期待したい。

■ヘルスケア・ファインケミカル企業集団

 旧イワキが21年6月1日付で持株会社体制に移行して商号をアステナホールディングスに変更した。アステナは「明日(未来)+サステナブル(持続可能)」の造語である。ヘルスケア・ファインケミカル企業集団として、製造分野が利益柱となり、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。

 21年11月期のセグメント別売上高構成比はファインケミカル事業(医薬品のCMC研究開発・製造受託、医薬品原料の製造販売)が32%、医薬事業(医薬品・医療機器の製造販売)が17%、HBC・食品事業(化粧品原料の販売、食品原料・機能性食品の製造販売、一般用医薬品の卸売、化粧品の通信販売)が39%、化学品事業(表面処理薬品の製造販売、プリント基板製造プラントの製造販売)が12%、営業利益(全社費用等調整前)の構成比はファインケミカル事業が58%、医薬事業が40%、HBC・食品事業が▲14%、化学品事業が16%だった。

■新しい戦略的ビジネスモデルを構築

 4つの新しい戦略的ビジネスモデル(調達プラットフォーム事業、インキュベーション事業、注射剤CDMO事業、塗り薬CDM事業)を構築している。

 ファインケミカル事業は、20年3月に子会社化した医薬品CMC研究開発・製造受託のスペラファーマと、スペラファーマの子会社として20年7月に設立したスペラネクサスを中心に展開している。さらに岩城製薬のファインケミカル事業をスペラネクサスに承継し、医薬品原薬のCMC研究開発から製造受託・販売まで一貫体制を構築した。20年6月にはスペラファーマが創薬ベンチャーのジェイファーマに出資した。21年4月にはスペラファーマがペプチド合成技術を保有するJITSUBOを子会社化した。

 なお21年3月には岩城製薬(スペラネクサスに承継)が、オンコリスバイオファーマ<4588>の新型コロナウイルス感染症治療薬OBP―2011の臨床試験開始に必要な治験薬原薬の製造法開発とGMP製造を受託することで基本合意し、21年7月にはスペラファーマがオンコロスバイオファーマからOBP―2011の治験薬製剤のGMP製造を受託することで基本合意した。

 22年2月にはスペラファーマがインタープロテインと、アンメット・メディカル・ニーズの高い様々な疾患に対する新規低分子およびペプチド医薬品の研究開発、製造ならびに商業化を目的とした包括的協業に関する覚書を締結した。なお11月18日には、ジェイファーマが実施する第三者割当による新株予約権を引き受けたと発表している。

 医薬事業は岩城製薬と20年7月に鳥居薬品佐倉工場を継承した岩城製薬佐倉工場を中心に展開している。20年1月には医療用後発医薬品・一般用医薬品開発の前田薬品工業に出資、21年1月には岩城製薬が新しいコンセプトの抗ウイルス薬開発に取り組んでいるキノファーマと業務提携、21年4月にはインタープロテインとCOVID―19治療薬の共同研究契約を締結した。22年4月には岩城製薬がヤンセンファーマから「ニゾラールローション2%」の日本における製造販売承認を承継・販売移管した。岩城製薬にとって初の長期収載品の扱いとなる。

 22年7月には、スキンケアブランド「ナビジョン/ナビジョンDR」について、資生堂ジャパンが保有していたブランドホルダー機能を岩城製薬に移管することで合意した。ブランド価値向上に向けて役割分担を見直し、資生堂ジャパンが行ってきた研究開発・商品開発機能およびマーケティング機能を岩城製薬が担い、資生堂ジャパンは現行品の製造を担う。

 22年8月には、岩城製薬がキノファーマと尋常性疣贅を適応症とした共同開発・商業化契約を締結し、さらに22年10月にはキノファーマの第三者割当増資を引き受けて資本出資した。

 HBC・食品事業はイワキ(イワキ分割準備会社が21年6月商号変更)とアプロスを中心に展開している。20年12月には健康食品・化粧品販売のマルマンH&Bを子会社化、21年7月にはイワキがスカイネットから薬事サポート事業、自社開発事業および輸入製販事業を譲り受け、21年9月にはイワキが住建情報センターのヘルスケア事業を譲り受けた。22年1月にはイワキが食品原料調達WEBプラットフォーム「シェアシマ」を運営するICS―netに資本参加した。

 化学品事業はメルテックス、東京化工機、および海外子会社等を中心に展開している。

■SDGsへの取り組み推進

 持株会社体制への移行に伴い、グループ全体のBCP(事業継続計画)対策および従業員の働き方・生き方の選択肢多様化を目的として、21年6月に本社機能の一部を石川県珠洲市に移転した。さらに、石川県珠洲市が地方創生に向けた人材育成事業の一環として行っている能登SDGsラボと協業し、30年までにSDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進する。

 21年6月には新規事業のインキュベーションを担う専任部署として新規事業推進室を設置した。SDGs推進に向けて、化粧品原料・製品(グループ会社JITSUBOのペプチド合成法Molecular Hivingによる高品質で環境に優しく、コスト優位性のある化粧品原料・製品)事業、地方創生に繋がるハイブリッド型ふるさと納税プラットフォーム事業、健康食品原料事業(国産の安心・安全な健康食品原料・製品の第6次産業化を目的として、石川県珠洲市で健康食品の原料となる植物等の栽培を行う事業)などを推進する。

 21年7月には、奥能登地域のSDGS達成支援を目的とするファンド「奥能登SDGs投資事業有限責任組合(奥能登SDGsファンド)」に出資した。特定子会社となる。21年8月には、グループの業務サポートやファシリティーサービスを提供するアステナハートフル(21年6月設立)が、障害者の雇用の促進等に関する法律に基づく特例子会社の認定を取得した。

 21年11月には能登地域のSDGs達成の支援を目的として、能登地域の自治体3市(七尾市、輪島市、珠洲市)・2町(穴水町、能都町)、および国立大学法人金沢大学、奥能登信用金庫、のと共栄信用金庫、北國フィナンシャルホールディングス、BPキャピタルと、SDGs推進に係る連携と協力に関する協定を締結した。21年12月には子会社のイワキ総合研究所の商号をアステナミネルヴァに変更した。新規事業推進室を移設し、事業内容も地方創生に関連する事業に変更した。

 22年7月にはアステナミネルヴァが、パープルテクノスの子会社で、石川県の地域ポータルメディアを展開するイシカワズカンの株式の一部を取得した。ヤマガタデザイン(山形県鶴岡市)と連携し、若者のU・Iターン地方移住を推進するウェブメディア「チイキズカン」プロジェクトを22年9月に立ち上げる予定だ。

■中長期ビジョンの目標は売上高1300億円以上、ROE13%以上

 2030年に向けたグループ中長期ビジョン「Astena2030」では、定量的ターゲットとして30年11月期の売上高1300億円以上、ROE13%以上を掲げ、中期経営計画(ローリング形式、新会計基準)の目標値は24年11月期の売上高600億円、営業利益38億円、ROE8.9%としている。

 セグメント別30年11月期目標値は、ファインケミカル事業が売上高400億円で営業利益率9%、医薬事業が売上高228億円で営業利益率13%、化学品事業が売上高130億円で営業利益率10%、HBC・食品事業が売上高450億円で営業利益率3%としている。

 基本戦略としては、プラットフォーム戦略(CMC=医療用医薬品研究開発の国内トップレベルでの受託、ヘルスケア調達プラットフォーム=医薬品・化粧品・機能性食品製造会社の全ニーズをカバー、創薬インキュベーション=CMC提供を通じて新薬開発の成功確率を高める、CDMO=注射剤・外皮用剤・治験薬の受託製造)、ニッチトップ戦略(外皮用剤ジェネリック医薬品=国内塗り薬ジェネリック医薬品市場NO.1、ハイエンド表面処理薬品=エレクトロニクスに特化した表面処理薬品)、ソーシャルインパクト戦略(シニア・アクティベイト=化粧品・機能性食品の提供を通じてシニア総アクティブ化推進)を掲げている。

 ファインケミカル事業は、CMC・CDMO事業および調達プラットフォーム事業を2本柱として、原材料調達からCMC研究、原薬商用生産までの医薬品開発・製造の幅広いサービスを提供する。

 医薬事業は、皮膚科領域をベースとして外皮用剤品目数および生産キャパシティでトップ、グローバル要求水準に対応して高活性注射剤CDMOのトップを目指す。また外皮用剤、注射剤導入、新薬共同開発、M&A・アライアンスで事業基盤強化・拡大を目指す。

 化学品事業は、エレクトロニクス実装市場のトレンドを捉えたニッチトップ商品の継続的開発、ハイエンドパッケージ基板での地位確立、チップ部品用途の台湾・中国大手での採用、半導体パワー・センサー系薬品の差別化を推進する。またグローバル企業との共同開発も推進して成長を目指す。

 HBC・食品事業は、原料ビジネスのDX化による顧客の開発・調達プロセスの課題解決プラットフォームの提供、独自性を高めた商品・サービスの提供による市場価値増大を推進する。またダイレクトマーケティング領域への投資を実行して、領域特化型ネットワークを構築する。

 その他では既存事業との親和性、将来に亘る成長性、グループ全体への波及効果なども勘案して、SDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進することを目標とする。

 なお資本効率向上に向けた拠点見直しの一環として、21年6月に名古屋オフィスおよび福岡オフィスの不動産を譲渡すると発表している。譲渡時期は未定だが、譲渡後も賃借で継続利用する。

■22年11月期減益予想だが23年11月期収益拡大期待

 22年11月期の連結業績予想(収益認識会計基準適用のため前期比増減率は非掲載、利益への影響なし、22年7月13日付で利益を下方修正)は、売上高が500億円、営業利益が10億円、経常利益が10億円、親会社株主帰属当期純利益が11億円としている。なお特別利益に固定資産譲渡益(IW日本橋ビル、引渡日22年3月、譲渡益約6億50百万円)を計上する。配当予想は21年11月期と同額の18円(第2四半期末9円、期末9円)としている。

 為替の急激な円安進行、原材料価格や物流費の高騰などで減益予想としている。収益認識会計基準適用の影響としては、従来方法と比較して売上高が約230億円減少する見込みだが、営業利益、経常利益、親会社株主帰属当期純利益への影響はないとしている。各利益の増減率を収益認識会計基準適用前の21年11月期実績値との単純比較で算出すると、営業利益は55.2%減益、経常利益は58.7%減益、親会社株主帰属当期純利益は36.6%減益となる。

 第3四半期累計は、売上高が369億28百万円(収益認識会計基準適用前の前年同期は537億27百万円)、営業利益が4億26百万円(同19億53百万円)、経常利益が5億16百万円(同20億40百万円)、親会社株主帰属四半期純利益が6億06百万円(同11億30百万円)だった。

 収益認識会計基準適用の影響額として、従来方法に比べて売上高が167億48百万円減少、売上原価が167億02百万円減少、営業利益、経常利益、税金等調整前四半期純利益がそれぞれ9百万円増加している。収益認識会計基準適用前ベースで見ると売上高は前年同期比0.1%減の536億76百万円、営業利益が78.6%減の4億17百万円、経常利益が75.1%減の5億07百万円、税金等調整前四半期純利益が43.8%減の11億15百万円となる。売上面は堅調だが、為替の急激な円安進行、原材料価格や物流費の高騰などの影響で減益だった。

 ファインケミカル事業は、売上高が110億90百万円(同169億50百万円)で、利益(調整前営業利益)が1億68百万円(同10億13百万円)だった。大幅減益だった。医薬品原料分野は新規GE品目や中間体も寄与して堅調だったが、CDMO分野が事業環境の変化や案件納期の変更などの影響で低調だった。

 HBC・食品事業は売上高が104億44百万円(同208億49百万円)で、利益が91百万円の赤字(同4億42百万円の赤字)だった。赤字が大幅に縮小した。化粧品通販分野における広告見直し、一般用医薬品を主体とする卸売分野における不採算取引整理や営業機能再編等の構造改革、マルマンH&Bが取り扱う韓国コスメ関連や自社ブランドのシートマスク「ピュレア」の拡販などが寄与した。

 医薬事業は売上高が89億32百万円(同96億91百万円)で、利益が3億88百万円(同11億19百万円)だった。大幅減益だった。成長に向けた国内初のGE新製品の承認取得、美容医療ブランドホルダー機能移管などで売上面は堅調だが、医療用医薬品分野における各種コスト上昇が影響した。

 化学品事業は、売上高が64億59百万円(同62億35百万円)で、利益が1億30百万円の赤字(同3億10百万円の黒字)だった。大幅減益だった。表面処理薬品分野では既存製品の販売が伸び悩み、表面処理設備分野では原材料価格高騰の影響を受けた。

 なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高が122億85百万円で営業利益が6億30百万円、第2四半期は売上高が126億49百万円で営業利益が90百万円、そして第3四半期は売上高が119億94百万円で営業利益が2億94百万円の赤字だった。

 通期の連結業績予想は据え置いている。為替の急激な円安進行、原材料価格や物流費の高騰などが影響する見込みだ。ファインケミカル事業と医薬事業の収益回復に向けて事業戦略の再構築を図るとしている。

 第3四半期累計の進捗率は売上高が73.9%、営業利益が42.6%、経常利益が51.6%、親会社株主帰属当期純利益が55.1%だった。四半期別に見て第3四半期が営業赤字だったことを勘案すれば、通期利益予想は再下振れの可能性に注意が必要だが、第4四半期の挽回を期待したい。そして積極的な事業展開で23年11月期の収益拡大を期待したい。

■株主優待制度は毎年11月末時点で1年以上保有株主対象

 株主優待制度は毎年11月末時点で100株(1単元)以上を継続して1年以上保有する株主を対象として実施している。グループ化粧品詰め合わせセットなどを贈呈(詳細は会社HP参照)する。

■株価は下値切り上げ

 株価は年初来安値圏でモミ合う形だが、徐々に下値を切り上げて反発の動きを強めている。高配当利回りや低PBRも評価材料であり、22年11月期減益予想の織り込み完了して出直りを期待したい。11月24日の終値は425円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS27円59銭で算出)は約15倍、今期予想配当利回り(会社予想の18円で算出)は約4.2%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS677円09銭で算出)は約0.6倍、時価総額は約173億円である。(情報提供:日 本インタビュ新聞社=Media−IR)
[10月21日更新]

アステナホールディングスは下値固め完了、22年11月期減益予想だが23年11月期収益拡大期待

 アステナホールディングス<8095>(東証プライム)はヘルスケア・ファインケミカル企業集団として、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。そしてグループ中長期ビジョンでは定量的ターゲットとして30年11月期売上高1300億円以上、ROE13%以上を掲げている。22年11月期は第3四半期累計が原材料価格高騰などで減益となり、通期も減益予想としているが、積極的な事業展開で23年11月期の収益拡大を期待したい。株価は地合い悪化も影響して反発力の鈍い展開だが、1月の年初来安値圏まで下押すことなく推移して下値固め完了感を強めている。高配当利回りや低PBRも評価して出直りを期待したい。

■ヘルスケア・ファインケミカル企業集団

 旧イワキが21年6月1日付で持株会社体制に移行して商号をアステナホールディングスに変更した。アステナは「明日(未来)+サステナブル(持続可能)」の造語である。ヘルスケア・ファインケミカル企業集団として、製造分野が利益柱となり、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。

 21年11月期のセグメント別売上高構成比はファインケミカル事業(医薬品のCMC研究開発・製造受託、医薬品原料の製造販売)が32%、医薬事業(医薬品・医療機器の製造販売)が17%、HBC・食品事業(化粧品原料の販売、食品原料・機能性食品の製造販売、一般用医薬品の卸売、化粧品の通信販売)が39%、化学品事業(表面処理薬品の製造販売、プリント基板製造プラントの製造販売)が12%、営業利益(全社費用等調整前)の構成比はファインケミカル事業が58%、医薬事業が40%、HBC・食品事業が▲14%、化学品事業が16%だった。

■新しい戦略的ビジネスモデルを構築

 4つの新しい戦略的ビジネスモデル(調達プラットフォーム事業、インキュベーション事業、注射剤CDMO事業、塗り薬CDM事業)を構築している。

 ファインケミカル事業は、20年3月に子会社化した医薬品CMC研究開発・製造受託のスペラファーマと、スペラファーマの子会社として20年7月に設立したスペラネクサスを中心に展開している。さらに岩城製薬のファインケミカル事業をスペラネクサスに承継し、医薬品原薬のCMC研究開発から製造受託・販売まで一貫体制を構築した。20年6月にはスペラファーマが創薬ベンチャーのジェイファーマに出資した。21年4月にはスペラファーマがペプチド合成技術を保有するJITSUBOを子会社化した。

 なお21年3月には岩城製薬(スペラネクサスに承継)が、オンコリスバイオファーマ<4588>の新型コロナウイルス感染症治療薬OBP―2011の臨床試験開始に必要な治験薬原薬の製造法開発とGMP製造を受託することで基本合意し、21年7月にはスペラファーマがオンコロスバイオファーマからOBP―2011の治験薬製剤のGMP製造を受託することで基本合意した。

 22年2月にはスペラファーマがインタープロテインと、アンメット・メディカル・ニーズの高い様々な疾患に対する新規低分子およびペプチド医薬品の研究開発、製造ならびに商業化を目的とした包括的協業に関する覚書を締結した。

 医薬事業は岩城製薬と20年7月に鳥居薬品佐倉工場を継承した岩城製薬佐倉工場を中心に展開している。20年1月には医療用後発医薬品・一般用医薬品開発の前田薬品工業に出資、21年1月には岩城製薬が新しいコンセプトの抗ウイルス薬開発に取り組んでいるキノファーマと業務提携、21年4月にはインタープロテインとCOVID―19治療薬の共同研究契約を締結した。22年4月には岩城製薬がヤンセンファーマから「ニゾラールローション2%」の日本における製造販売承認を承継・販売移管した。岩城製薬にとって初の長期収載品の扱いとなる。

 22年7月には、スキンケアブランド「ナビジョン/ナビジョンDR」について、資生堂ジャパンが保有していたブランドホルダー機能を岩城製薬に移管することで合意した。ブランド価値向上に向けて役割分担を見直し、資生堂ジャパンが行ってきた研究開発・商品開発機能およびマーケティング機能を岩城製薬が担い、資生堂ジャパンは現行品の製造を担う。

 22年8月には、岩城製薬がキノファーマと尋常性疣贅を適応症とした共同開発・商業化契約を締結し、さらに22年10月にはキノファーマの第三者割当増資を引き受けて資本出資した。

 HBC・食品事業はイワキ(イワキ分割準備会社が21年6月商号変更)とアプロスを中心に展開している。20年12月には健康食品・化粧品販売のマルマンH&Bを子会社化、21年7月にはイワキがスカイネットから薬事サポート事業、自社開発事業および輸入製販事業を譲り受け、21年9月にはイワキが住建情報センターのヘルスケア事業を譲り受けた。22年1月にはイワキが食品原料調達WEBプラットフォーム「シェアシマ」を運営するICS―netに資本参加した。

 化学品事業はメルテックス、東京化工機、および海外子会社等を中心に展開している。

■SDGsへの取り組み推進

 持株会社体制への移行に伴い、グループ全体のBCP(事業継続計画)対策および従業員の働き方・生き方の選択肢多様化を目的として、21年6月に本社機能の一部を石川県珠洲市に移転した。さらに、石川県珠洲市が地方創生に向けた人材育成事業の一環として行っている能登SDGsラボと協業し、30年までにSDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進する。

 21年6月には新規事業のインキュベーションを担う専任部署として新規事業推進室を設置した。SDGs推進に向けて、化粧品原料・製品(グループ会社JITSUBOのペプチド合成法Molecular Hivingによる高品質で環境に優しく、コスト優位性のある化粧品原料・製品)事業、地方創生に繋がるハイブリッド型ふるさと納税プラットフォーム事業、健康食品原料事業(国産の安心・安全な健康食品原料・製品の第6次産業化を目的として、石川県珠洲市で健康食品の原料となる植物等の栽培を行う事業)などを推進する。

 21年7月には、奥能登地域のSDGS達成支援を目的とするファンド「奥能登SDGs投資事業有限責任組合(奥能登SDGsファンド)」に出資した。特定子会社となる。21年8月には、グループの業務サポートやファシリティーサービスを提供するアステナハートフル(21年6月設立)が、障害者の雇用の促進等に関する法律に基づく特例子会社の認定を取得した。

 21年11月には能登地域のSDGs達成の支援を目的として、能登地域の自治体3市(七尾市、輪島市、珠洲市)・2町(穴水町、能都町)、および国立大学法人金沢大学、奥能登信用金庫、のと共栄信用金庫、北國フィナンシャルホールディングス、BPキャピタルと、SDGs推進に係る連携と協力に関する協定を締結した。21年12月には子会社のイワキ総合研究所の商号をアステナミネルヴァに変更した。新規事業推進室を移設し、事業内容も地方創生に関連する事業に変更した。

 22年7月にはアステナミネルヴァが、パープルテクノスの子会社で、石川県の地域ポータルメディアを展開するイシカワズカンの株式の一部を取得した。ヤマガタデザイン(山形県鶴岡市)と連携し、若者のU・Iターン地方移住を推進するウェブメディア「チイキズカン」プロジェクトを22年9月に立ち上げる予定だ。

■中長期ビジョンの目標は売上高1300億円以上、ROE13%以上

 2030年に向けたグループ中長期ビジョン「Astena2030」では、定量的ターゲットとして30年11月期の売上高1300億円以上、ROE13%以上を掲げ、中期経営計画(ローリング形式、新会計基準)の目標値は24年11月期の売上高600億円、営業利益38億円、ROE8.9%としている。

 セグメント別30年11月期目標値は、ファインケミカル事業が売上高400億円で営業利益率9%、医薬事業が売上高228億円で営業利益率13%、化学品事業が売上高130億円で営業利益率10%、HBC・食品事業が売上高450億円で営業利益率3%としている。

 基本戦略としては、プラットフォーム戦略(CMC=医療用医薬品研究開発の国内トップレベルでの受託、ヘルスケア調達プラットフォーム=医薬品・化粧品・機能性食品製造会社の全ニーズをカバー、創薬インキュベーション=CMC提供を通じて新薬開発の成功確率を高める、CDMO=注射剤・外皮用剤・治験薬の受託製造)、ニッチトップ戦略(外皮用剤ジェネリック医薬品=国内塗り薬ジェネリック医薬品市場NO.1、ハイエンド表面処理薬品=エレクトロニクスに特化した表面処理薬品)、ソーシャルインパクト戦略(シニア・アクティベイト=化粧品・機能性食品の提供を通じてシニア総アクティブ化推進)を掲げている。

 ファインケミカル事業は、CMC・CDMO事業および調達プラットフォーム事業を2本柱として、原材料調達からCMC研究、原薬商用生産までの医薬品開発・製造の幅広いサービスを提供する。

 医薬事業は、皮膚科領域をベースとして外皮用剤品目数および生産キャパシティでトップ、グローバル要求水準に対応して高活性注射剤CDMOのトップを目指す。また外皮用剤、注射剤導入、新薬共同開発、M&A・アライアンスで事業基盤強化・拡大を目指す。

 化学品事業は、エレクトロニクス実装市場のトレンドを捉えたニッチトップ商品の継続的開発、ハイエンドパッケージ基板での地位確立、チップ部品用途の台湾・中国大手での採用、半導体パワー・センサー系薬品の差別化を推進する。またグローバル企業との共同開発も推進して成長を目指す。

 HBC・食品事業は、原料ビジネスのDX化による顧客の開発・調達プロセスの課題解決プラットフォームの提供、独自性を高めた商品・サービスの提供による市場価値増大を推進する。またダイレクトマーケティング領域への投資を実行して、領域特化型ネットワークを構築する。

 その他では既存事業との親和性、将来に亘る成長性、グループ全体への波及効果なども勘案して、SDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進することを目標とする。

 なお資本効率向上に向けた拠点見直しの一環として、21年6月に名古屋オフィスおよび福岡オフィスの不動産を譲渡すると発表している。譲渡時期は未定だが、譲渡後も賃借で継続利用する。

■22年11月期減益予想だが23年11月期収益拡大期待

 22年11月期の連結業績予想(収益認識会計基準適用のため前期比増減率は非掲載、利益への影響なし、22年7月13日付で利益を下方修正)は、売上高が500億円、営業利益が10億円、経常利益が10億円、親会社株主帰属当期純利益が11億円としている。なお特別利益に固定資産譲渡益(IW日本橋ビル、引渡日22年3月、譲渡益約6億50百万円)を計上する。配当予想は21年11月期と同額の18円(第2四半期末9円、期末9円)としている。

 為替の急激な円安進行、原材料価格や物流費の高騰などで減益予想としている。収益認識会計基準適用の影響としては、従来方法と比較して売上高が約230億円減少する見込みだが、営業利益、経常利益、親会社株主帰属当期純利益への影響はないとしている。各利益の増減率を収益認識会計基準適用前の21年11月期実績値との単純比較で算出すると、営業利益は55.2%減益、経常利益は58.7%減益、親会社株主帰属当期純利益は36.6%減益となる。

 第3四半期累計は、売上高が369億28百万円(収益認識会計基準適用前の前年同期は537億27百万円)、営業利益が4億26百万円(同19億53百万円)、経常利益が5億16百万円(同20億40百万円)、親会社株主帰属四半期純利益が6億06百万円(同11億30百万円)だった。

 収益認識会計基準適用の影響額として、従来方法に比べて売上高が167億48百万円減少、売上原価が167億02百万円減少、営業利益、経常利益、税金等調整前四半期純利益がそれぞれ9百万円増加している。収益認識会計基準適用前ベースで見ると売上高は前年同期比0.1%減の536億76百万円、営業利益が78.6%減の4億17百万円、経常利益が75.1%減の5億07百万円、税金等調整前四半期純利益が43.8%減の11億15百万円となる。売上面は堅調だが、為替の急激な円安進行、原材料価格や物流費の高騰などの影響で減益だった。

 ファインケミカル事業は、売上高が110億90百万円(同169億50百万円)で、利益(調整前営業利益)が1億68百万円(同10億13百万円)だった。大幅減益だった。医薬品原料分野は新規GE品目や中間体も寄与して堅調だったが、CDMO分野が事業環境の変化や案件納期の変更などの影響で低調だった。

 HBC・食品事業は売上高が104億44百万円(同208億49百万円)で、利益が91百万円の赤字(同4億42百万円の赤字)だった。赤字が大幅に縮小した。化粧品通販分野における広告見直し、一般用医薬品を主体とする卸売分野における不採算取引整理や営業機能再編等の構造改革、マルマンH&Bが取り扱う韓国コスメ関連や自社ブランドのシートマスク「ピュレア」の拡販などが寄与した。

 医薬事業は売上高が89億32百万円(同96億91百万円)で、利益が3億88百万円(同11億19百万円)だった。大幅減益だった。成長に向けた国内初のGE新製品の承認取得、美容医療ブランドホルダー機能移管などで売上面は堅調だが、医療用医薬品分野における各種コスト上昇が影響した。

 化学品事業は、売上高が64億59百万円(同62億35百万円)で、利益が1億30百万円の赤字(同3億10百万円の黒字)だった。大幅減益だった。表面処理薬品分野では既存製品の販売が伸び悩み、表面処理設備分野では原材料価格高騰の影響を受けた。

 なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高が122億85百万円で営業利益が6億30百万円、第2四半期は売上高が126億49百万円で営業利益が90百万円、そして第3四半期は売上高が119億94百万円で営業利益が2億94百万円の赤字だった。

 通期の連結業績予想は据え置いている。為替の急激な円安進行、原材料価格や物流費の高騰などが影響する見込みだ。ファインケミカル事業と医薬事業の収益回復に向けて事業戦略の再構築を図るとしている。

 第3四半期累計の進捗率は売上高が73.9%、営業利益が42.6%、経常利益が51.6%、親会社株主帰属当期純利益が55.1%だった。四半期別に見て第3四半期が営業赤字だったことを勘案すれば、通期利益予想は再下振れの可能性に注意が必要だが、第4四半期の挽回を期待したい。そして積極的な事業展開で23年11月期の収益拡大を期待したい。

■株主優待制度は毎年11月末時点で1年以上保有株主対象

 株主優待制度は毎年11月末時点で100株(1単元)以上を継続して1年以上保有する株主を対象として実施している。グループ化粧品詰め合わせセットなどを贈呈(詳細は会社HP参照)する。

■株価は下値固め完了

 株価は地合い悪化も影響して反発力の鈍い展開だが、1月の年初来安値圏まで下押すことなく推移して下値固め完了感を強めている。高配当利回りや低PBRも評価して出直りを期待したい。10月20日の終値は414円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS27円59銭で算出)は約15倍、今期予想配当利回り(会社予想の18円で算出)は約4.3%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS677円09銭で算出)は約0.6倍、そして時価総額は約169億円である。(情報提供:日 本インタビュ新聞社=Media−IR)
[10月13日更新]

アステナホールディングスは22年11月期3Q累計減益、通期予想据え置き

 アステナホールディングス<8095>(東証プライム)は10月12日の取引時間終了後に22年11月期第3四半期累計連結業績(収益認識会計基準適用のため前年同期比増減率は非記載)を発表した。旧基準で比較すると売上高は堅調だが、原材料価格高騰などの影響で減益だった。そして通期も減益予想(7月13日付で利益を下方修正)としているが、積極的な事業展開で23年11月期の収益拡大を期待したい。株価は地合い悪化も影響して反発力の鈍い展開だ。目先的には第3四半期累計業績を嫌気する動きが優勢になる可能性もあるが、通期減益予想を織り込み済みで下値限定的だろう。

■22年11月期3Q累計減益、通期減益予想据え置き

 22年11月期第3四半期累計の連結業績(収益認識会計基準適用のため前期比増減率は非記載、売上高が従来の方法と比較して減少するが営業利益以下への影響は軽微)は、売上高が369億28百万円(収益認識会計基準適用前の前年同期は537億27百万円)、営業利益が4億26百万円(同19億53百万円)、経常利益が5億16百万円(同20億40百万円)、そして親会社株主帰属四半期純利益が6億06百万円(同11億30百万円)だった。

 収益認識会計基準適用の影響額として、従来方法に比べて売上高が167億48百万円減少、売上原価が167億02百万円減少、営業利益、経常利益、税金等調整前四半期純利益がそれぞれ9百万円増加している。収益認識会計基準適用前ベースで見ると売上高は前年同期比0.1%減の536億76百万円、営業利益が78.6%減の4億17百万円、経常利益が75.1%減の5億07百万円、税金等調整前四半期純利益が43.8%減の11億15百万円となる。売上面は堅調だが、為替の急激な円安進行、原材料価格や物流費の高騰などの影響で減益となった。

 ファインケミカル事業は、売上高が110億90百万円(同169億50百万円)で、利益(調整前営業利益)が1億68百万円(同10億13百万円)だった。大幅減益だった。医薬品原料分野は新規GE品目や中間体も寄与して堅調だったが、CDMO分野が事業環境の変化や案件納期の変更などの影響で低調だった。

 HBC・食品事業は売上高が104億44百万円(同208億49百万円)で、利益が91百万円の赤字(同4億42百万円の赤字)だった。赤字が大幅に縮小した。化粧品通販分野における広告見直し、一般用医薬品を主体とする卸売分野における不採算取引整理や営業機能再編等の構造改革、マルマンH&Bが取り扱う韓国コスメ関連や自社ブランドのシートマスク「ピュレア」の拡販などが寄与した。

 医薬事業は売上高が89億32百万円(同96億91百万円)で、利益が3億88百万円(同11億19百万円)だった。大幅減益だった。成長に向けた国内初のGE新製品の承認取得、美容医療ブランドホルダー機能移管などで売上面は堅調だが、医療用医薬品分野における各種コスト上昇が影響した。

 化学品事業は、売上高が64億59百万円(同62億35百万円)で、利益が1億30百万円の赤字(同3億10百万円の黒字)だった。大幅減益だった。表面処理薬品分野では既存製品の販売が伸び悩み、表面処理設備分野では原材料価格高騰の影響を受けた。

 なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高が122億85百万円で営業利益が6億30百万円、第2四半期は売上高が126億49百万円で営業利益が90百万円、そして第3四半期は売上高が119億94百万円で営業利益が2億94百万円の赤字だった。

 通期の連結業績予想(22年7月13日付で利益を下方修正)は据え置いて、売上高が500億円(収益認識会計基準適用前ベースでは700億円)、営業利益が10億円、経常利益が10億円、親会社株主帰属当期純利益が11億円としている。配当予想は21年11月期と同額の18円(第2四半期末9円、期末9円)としている。

 収益認識会計基準適用前の21年11月期実績(売上高が723億22百万円、営業利益が22億33百万円、経常利益が24億20百万円、親会社株主帰属当期純利益が17億36百万円)との単純比較で算出すると、営業利益は55.2%減益、経常利益は58.7%減益、親会社株主帰属当期純利益は36.6%減益となる。為替の急激な円安進行、原材料価格や物流費の高騰などが影響する見込みだ。

 第3四半期累計の進捗率は売上高が73.9%、営業利益が42.6%、経常利益が51.6%、親会社株主帰属当期純利益が55.1%だった。四半期別に見て第3四半期が営業赤字だったことを勘案すれば、通期利益予想は再下振れの可能性に注意が必要だが、第4四半期の挽回を期待したい。そして積極的な事業展開で23年11月期の収益拡大を期待したい。

■株価は下値限定的

 株価は地合い悪化も影響して反発力の鈍い展開だ。目先的には第3四半期累計業績を嫌気する動きが優勢になる可能性もあるが、通期減益予想を織り込み済みで下値限定的だろう。10月12日の終値は422円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS27円59銭で算出)は約15倍、今期予想配当利回り(会社予想の18円で算出)は約4.3%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS677円09銭で算出)は約0.6倍、そして時価総額は約172億円である。 (情報提供:日本インタビュ新聞社=Media−IR
[09月30日更新]

アステナホールディングスは調整一巡、23年11月期収益拡大期待

 アステナホールディングス<8095>(東証プライム)はヘルスケア・ファインケミカル企業集団として、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。そしてグループ中長期ビジョンでは定量的ターゲットとして30年11月期売上高1300億円以上、ROE13%以上を掲げている。22年11月期は為替の急激な円安進行、原材料価格や物流費の高騰などで減益予想だが、ファインケミカル事業と医薬事業の収益回復に向けて下期は事業戦略の再構築を図るとしている。積極的な事業展開で23年11月期の収益拡大を期待したい。株価は地合い悪化も影響して反発力の鈍い展開だが、高配当利回りや低PBRも評価材料であり、調整一巡して出直りを期待したい。

■ヘルスケア・ファインケミカル企業集団

 旧イワキが21年6月1日付で持株会社体制に移行して商号をアステナホールディングスに変更した。アステナは「明日(未来)+サステナブル(持続可能)」の造語である。ヘルスケア・ファインケミカル企業集団として、製造分野が利益柱となり、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。

 21年11月期のセグメント別売上高構成比はファインケミカル事業(医薬品のCMC研究開発・製造受託、医薬品原料の製造販売)が32%、医薬事業(医薬品・医療機器の製造販売)が17%、HBC・食品事業(化粧品原料の販売、食品原料・機能性食品の製造販売、一般用医薬品の卸売、化粧品の通信販売)が39%、化学品事業(表面処理薬品の製造販売、プリント基板製造プラントの製造販売)が12%、営業利益(全社費用等調整前)の構成比はファインケミカル事業が58%、医薬事業が40%、HBC・食品事業が▲14%、化学品事業が16%だった。

■新しい戦略的ビジネスモデルを構築

 4つの新しい戦略的ビジネスモデル(調達プラットフォーム事業、インキュベーション事業、注射剤CDMO事業、塗り薬CDM事業)を構築している。

 ファインケミカル事業は、20年3月に子会社化した医薬品CMC研究開発・製造受託のスペラファーマと、スペラファーマの子会社として20年7月に設立したスペラネクサスを中心に展開している。さらに岩城製薬のファインケミカル事業をスペラネクサスに承継し、医薬品原薬のCMC研究開発から製造受託・販売まで一貫体制を構築した。20年6月にはスペラファーマが創薬ベンチャーのジェイファーマに出資した。21年4月にはスペラファーマがペプチド合成技術を保有するJITSUBOを子会社化した。

 なお21年3月には岩城製薬(スペラネクサスに承継)が、オンコリスバイオファーマ<4588>の新型コロナウイルス感染症治療薬OBP―2011の臨床試験開始に必要な治験薬原薬の製造法開発とGMP製造を受託することで基本合意し、21年7月にはスペラファーマがオンコロスバイオファーマからOBP―2011の治験薬製剤のGMP製造を受託することで基本合意した。

 22年2月にはスペラファーマがインタープロテインと、アンメット・メディカル・ニーズの高い様々な疾患に対する新規低分子およびペプチド医薬品の研究開発、製造ならびに商業化を目的とした包括的協業に関する覚書を締結した。

 医薬事業は岩城製薬と20年7月に鳥居薬品佐倉工場を継承した岩城製薬佐倉工場を中心に展開している。さらに20年1月には医療用後発医薬品・一般用医薬品開発の前田薬品工業に出資、21年1月には岩城製薬が新しいコンセプトの抗ウイルス薬開発に取り組んでいるキノファーマに出資して業務提携した。21年4月には岩城製薬がインタープロテインとCOVID―19治療薬の共同研究契約を締結した。22年4月には岩城製薬がヤンセンファーマから「ニゾラールローション2%」の日本における製造販売承認を承継・販売移管した。岩城製薬にとって初の長期収載品の扱いとなる。

 22年7月には、スキンケアブランド「ナビジョン/ナビジョンDR」について、資生堂ジャパンが保有していたブランドホルダー機能を岩城製薬に移管することで合意した。ブランド価値向上に向けて役割分担を見直し、資生堂ジャパンが行ってきた研究開発・商品開発機能およびマーケティング機能を岩城製薬が担い、資生堂ジャパンは現行品の製造を担う。22年8月には、岩城製薬がキノファーマと尋常性疣贅を適応症とした共同開発・商業化契約を締結した。

 HBC・食品事業はイワキ(イワキ分割準備会社が21年6月商号変更)とアプロスを中心に展開している。20年12月には健康食品・化粧品販売のマルマンH&Bを子会社化、21年7月にはイワキがスカイネットから薬事サポート事業、自社開発事業および輸入製販事業を譲り受け、21年9月にはイワキが住建情報センターのヘルスケア事業を譲り受けた。22年1月にはイワキが食品原料調達WEBプラットフォーム「シェアシマ」を運営するICS―netに資本参加した。

 化学品事業はメルテックス、東京化工機、および海外子会社等を中心に展開している。

■SDGsへの取り組み推進

 持株会社体制への移行に伴い、グループ全体のBCP(事業継続計画)対策および従業員の働き方・生き方の選択肢多様化を目的として、21年6月に本社機能の一部を石川県珠洲市に移転した。さらに、石川県珠洲市が地方創生に向けた人材育成事業の一環として行っている能登SDGsラボと協業し、30年までにSDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進する。

 21年6月には新規事業のインキュベーションを担う専任部署として新規事業推進室を設置した。SDGs推進に向けて、化粧品原料・製品(グループ会社JITSUBOのペプチド合成法Molecular Hivingによる高品質で環境に優しく、コスト優位性のある化粧品原料・製品)事業、地方創生に繋がるハイブリッド型ふるさと納税プラットフォーム事業、健康食品原料事業(国産の安心・安全な健康食品原料・製品の第6次産業化を目的として、石川県珠洲市で健康食品の原料となる植物等の栽培を行う事業)などを推進する。

 21年7月には、奥能登地域のSDGS達成支援を目的とするファンド「奥能登SDGs投資事業有限責任組合(奥能登SDGsファンド)」に出資した。特定子会社となる。21年8月には、グループの業務サポートやファシリティーサービスを提供するアステナハートフル(21年6月設立)が、障害者の雇用の促進等に関する法律に基づく特例子会社の認定を取得した。

 21年11月には能登地域のSDGs達成の支援を目的として、能登地域の自治体3市(七尾市、輪島市、珠洲市)・2町(穴水町、能都町)、および国立大学法人金沢大学、奥能登信用金庫、のと共栄信用金庫、北國フィナンシャルホールディングス、BPキャピタルと、SDGs推進に係る連携と協力に関する協定を締結した。21年12月には子会社のイワキ総合研究所の商号をアステナミネルヴァに変更した。新規事業推進室を移設し、事業内容も地方創生に関連する事業に変更した。

 22年7月にはアステナミネルヴァが、パープルテクノスの子会社で、石川県の地域ポータルメディアを展開するイシカワズカンの株式の一部を取得した。ヤマガタデザイン(山形県鶴岡市)と連携し、若者のU・Iターン地方移住を推進するウェブメディア「チイキズカン」プロジェクトを22年9月に立ち上げる予定だ。

■中長期ビジョンの目標は売上高1300億円以上、ROE13%以上

 2030年に向けたグループ中長期ビジョン「Astena2030」では、定量的ターゲットとして30年11月期の売上高1300億円以上、ROE13%以上を掲げ、中期経営計画(ローリング形式、新会計基準)の目標値は24年11月期の売上高600億円、営業利益38億円、ROE8.9%としている。

 セグメント別30年11月期目標値は、ファインケミカル事業が売上高400億円で営業利益率9%、医薬事業が売上高228億円で営業利益率13%、化学品事業が売上高130億円で営業利益率10%、HBC・食品事業が売上高450億円で営業利益率3%としている。

 基本戦略としては、プラットフォーム戦略(CMC=医療用医薬品研究開発の国内トップレベルでの受託、ヘルスケア調達プラットフォーム=医薬品・化粧品・機能性食品製造会社の全ニーズをカバー、創薬インキュベーション=CMC提供を通じて新薬開発の成功確率を高める、CDMO=注射剤・外皮用剤・治験薬の受託製造)、ニッチトップ戦略(外皮用剤ジェネリック医薬品=国内塗り薬ジェネリック医薬品市場NO.1、ハイエンド表面処理薬品=エレクトロニクスに特化した表面処理薬品)、ソーシャルインパクト戦略(シニア・アクティベイト=化粧品・機能性食品の提供を通じてシニア総アクティブ化推進)を掲げている。

 ファインケミカル事業は、CMC・CDMO事業および調達プラットフォーム事業を2本柱として、原材料調達からCMC研究、原薬商用生産までの医薬品開発・製造の幅広いサービスを提供する。

 医薬事業は、皮膚科領域をベースとして外皮用剤品目数および生産キャパシティでトップ、グローバル要求水準に対応して高活性注射剤CDMOのトップを目指す。また外皮用剤、注射剤導入、新薬共同開発、M&A・アライアンスで事業基盤強化・拡大を目指す。

 化学品事業は、エレクトロニクス実装市場のトレンドを捉えたニッチトップ商品の継続的開発、ハイエンドパッケージ基板での地位確立、チップ部品用途の台湾・中国大手での採用、半導体パワー・センサー系薬品の差別化を推進する。またグローバル企業との共同開発も推進して成長を目指す。

 HBC・食品事業は、原料ビジネスのDX化による顧客の開発・調達プロセスの課題解決プラットフォームの提供、独自性を高めた商品・サービスの提供による市場価値増大を推進する。またダイレクトマーケティング領域への投資を実行して、領域特化型ネットワークを構築する。

 その他では既存事業との親和性、将来に亘る成長性、グループ全体への波及効果なども勘案して、SDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進することを目標とする。

 なお資本効率向上に向けた拠点見直しの一環として、21年6月に名古屋オフィスおよび福岡オフィスの不動産を譲渡すると発表している。譲渡時期は未定だが、譲渡後も賃借で継続利用する。

■22年11月期減益予想だが23年11月期収益拡大期待

 22年11月期の連結業績予想(収益認識会計基準適用のため前期比増減率は非掲載、利益への影響なし、22年7月13日付で利益を下方修正)は、売上高が500億円、営業利益が10億円、経常利益が10億円、親会社株主帰属当期純利益が11億円としている。なお特別利益に固定資産譲渡益(IW日本橋ビル、引渡日22年3月、譲渡益約6億50百万円)を計上する。配当予想は21年11月期と同額の18円(第2四半期末9円、期末9円)としている。

 為替の急激な円安進行、原材料価格や物流費の高騰などで減益予想としている。収益認識会計基準適用の影響としては、従来方法と比較して売上高が約230億円減少する見込みだが、営業利益、経常利益、親会社株主帰属当期純利益への影響はないとしている。修正後の各利益の増減率を21年11月期実績値(収益認識会計基準適用前)との単純比較で算出すると、営業利益は55.2%減益、経常利益は58.7%減益、親会社株主帰属当期純利益は36.6%減益となる。

 第2四半期累計は、売上高が249億34百万円(収益認識会計基準適用前の前年同期は362億34百万円)、営業利益が7億20百万円(同14億94百万円)、経常利益が8億35百万円(同15億73百万円)、そして親会社株主帰属四半期純利益が9億32百万円(同9億75百万円)だった。

 収益認識会計基準適用の影響額として、従来方法に比べて売上高が110億90百万円減少、売上原価が110億57百万円減少、営業利益、経常利益、税金等調整前四半期純利益がそれぞれ0百万円減少している。収益認識会計基準適用前ベースで見ると売上高は前年同期比0.6%減の360億25百万円、営業利益が51.8%減の7億20百万円、経常利益が46.9%減の8億35百万円、税金等調整前四半期純利益が4.3%減の14億64百万円となる。売上面は堅調だが、為替の急激な円安進行、原材料価格や物流費の高騰などの影響で減益となった。

 ファインケミカル事業は売上高が75億29百万円(同116億39百万円)で、利益(調整前営業利益)が4億73百万円(同7億25百万円)だった。旧会計基準ベースではスペラネクサスの売上増加や有機EL材料製造受託などで増収だが、スペラファーマの売上減少やコスト増加などで大幅営業減益だった。CDMO分野が事業環境の変化や案件納期の変更などの影響で低調だった。

 HBC・食品事業は売上高が72億01百万円(同140億01百万円)で、利益が65百万円の赤字(同3億49百万円の赤字)だった。旧会計基準ベースでは小幅減収だが、グループ内事業ポートフォリオ組替影響や不採算取引減少などで赤字が縮小した。

 医薬事業は売上高が58億84百万円(同65億13百万円)で、利益が3億52百万円(同9億22百万円)だった。旧会計基準ベースで減収となり、大幅減益だった。前期発生した一過性の自主回収費用は剥落したが、佐倉工場の売上減少、蒲田工場の稼働率低下、グループ内事業ポートフォリオ組替影響、原料・電力料高騰などが影響した。

 化学品事業は売上高が43億18百万円(同40億96百万円)で、利益が38百万円の赤字(同2億05百万円の黒字)だった。旧会計基準ベースでは増収だが、売上構成変化やコスト増加の影響で大幅減益だった。予定していた新規採用が第3四半期に延期となったことも影響した。

 なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高が122億85百万円で営業利益が6億30百万円、第2四半期は売上高が126億49百万円で営業利益が90百万円だった。

 通期(修正後)の営業利益の前期比増減計画は、ファインケミカル事業がスペラファーマの売上減少やコスト影響などで9.6億円減益(期初時点の計画は3.7億円減益)、医薬事業が売上減や稼働率低下などで7.0億円減益(同4.8億円減益)、HBC・食品事業が本社経費配分変更や化粧品回復などの影響で4.5億円増益(同1.4億円増益)、化学品事業が本社経費配分変更などで1.9億円減益(同1.8億円増益)としている。

 また、旧会計基準・HD化に伴う影響を除外したベースの計画(前期比)は、ファインケミカル事業が2.6億円減収で7.0億円減益、医薬事業が3.6億円減収で6.4億円減益、HBC・食品事業が13.2億円減収で1.8億円増益、化学品事業が7.9億円増収で0.9億円増益としている。

 22年11月期は減益見込みとなったが、減収減益見込みのファインケミカル事業と医薬事業の収益回復に向けて下期は事業戦略の再構築を図るとしている。積極的な事業展開で23年11月期の収益拡大を期待したい。

■株主優待制度は毎年11月末時点で1年以上保有株主対象

 株主優待制度は毎年11月末時点で100株(1単元)以上を継続して1年以上保有する株主を対象として実施している。グループ化粧品詰め合わせセットなどを贈呈(詳細は会社HP参照)する。

■株価は調整一巡

 22年7月13日発表の自己株式取得(上限90万株・3億円、取得期間22年7月14日〜22年9月30日)については、22年9月16日時点の累計取得株式数が67万6400株となって終了した。

 株価は地合い悪化も影響して反発力の鈍い展開だが、高配当利回りや低PBRも評価材料であり、調整一巡して出直りを期待したい。9月29日の終値は430円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS27円59銭で算出)は約16倍、今期予想配当利回り(会社予想の18円で算出)は約4.2%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS677円09銭で算出)は約0.6倍、時価総額は約175億円である。(情報提供:日 本インタビュ新聞社=Media−IR)
[09月05日更新]

アステナホールディングスは下値切り上げ、22年11月期減益予想だが23年11月期収益拡大期待

ヘルスケア・ファインケミカル企業集団として、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。そしてグループ中長期ビジョンでは定量的ターゲットとして30年11月期売上高1300億円以上、ROE13%以上を掲げている。22年11月期は為替の急激な円安進行、原材料価格や物流費の高騰などで減益予想としている。ただしファインケミカル事業と医薬事業の収益回復に向けて、下期は事業戦略の再構築を図るとしている。積極的な事業展開で23年11月期の収益拡大を期待したい。株価は安値圏でモミ合う形だが徐々に下値を切り上げている。高配当利回りや低PBRも評価材料であり、出直りを期待したい。

■ヘルスケア・ファインケミカル企業集団

 旧イワキが21年6月1日付で持株会社体制に移行して商号をアステナホールディングスに変更した。アステナは「明日(未来)+サステナブル(持続可能)」の造語である。ヘルスケア・ファインケミカル企業集団として、製造分野が利益柱となり、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。

 21年11月期のセグメント別売上高構成比はファインケミカル事業(医薬品のCMC研究開発・製造受託、医薬品原料の製造販売)が32%、医薬事業(医薬品・医療機器の製造販売)が17%、HBC・食品事業(化粧品原料の販売、食品原料・機能性食品の製造販売、一般用医薬品の卸売、化粧品の通信販売)が39%、化学品事業(表面処理薬品の製造販売、プリント基板製造プラントの製造販売)が12%、営業利益(全社費用等調整前)の構成比はファインケミカル事業が58%、医薬事業が40%、HBC・食品事業が▲14%、化学品事業が16%だった。

■新しい戦略的ビジネスモデルを構築

 4つの新しい戦略的ビジネスモデル(調達プラットフォーム事業、インキュベーション事業、注射剤CDMO事業、塗り薬CDM事業)を構築している。

 ファインケミカル事業は、20年3月に子会社化した医薬品CMC研究開発・製造受託のスペラファーマと、スペラファーマの子会社として20年7月に設立したスペラネクサスを中心に展開している。さらに岩城製薬のファインケミカル事業をスペラネクサスに承継し、医薬品原薬のCMC研究開発から製造受託・販売まで一貫体制を構築した。20年6月にはスペラファーマが創薬ベンチャーのジェイファーマに出資した。21年4月にはスペラファーマがペプチド合成技術を保有するJITSUBOを子会社化した。

 なお21年3月には岩城製薬(スペラネクサスに承継)が、オンコリスバイオファーマ<4588>の新型コロナウイルス感染症治療薬OBP―2011の臨床試験開始に必要な治験薬原薬の製造法開発とGMP製造を受託することで基本合意し、21年7月にはスペラファーマがオンコロスバイオファーマからOBP―2011の治験薬製剤のGMP製造を受託することで基本合意した。

 22年2月にはスペラファーマがインタープロテインと、アンメット・メディカル・ニーズの高い様々な疾患に対する新規低分子およびペプチド医薬品の研究開発、製造ならびに商業化を目的とした包括的協業に関する覚書を締結した。

 医薬事業は岩城製薬と20年7月に鳥居薬品佐倉工場を継承した岩城製薬佐倉工場を中心に展開している。さらに20年1月には医療用後発医薬品・一般用医薬品開発の前田薬品工業に出資、21年1月には岩城製薬が新しいコンセプトの抗ウイルス薬開発に取り組んでいるキノファーマに出資して業務提携した。21年4月には岩城製薬がインタープロテインとCOVID―19治療薬の共同研究契約を締結した。22年4月には岩城製薬がヤンセンファーマから「ニゾラールローション2%」の日本における製造販売承認を承継・販売移管した。岩城製薬にとって初の長期収載品の扱いとなる。

 22年7月には、スキンケアブランド「ナビジョン/ナビジョンDR」について、資生堂ジャパンが保有していたブランドホルダー機能を岩城製薬に移管することで合意した。ブランド価値向上に向けて役割分担を見直し、資生堂ジャパンが行ってきた研究開発・商品開発機能およびマーケティング機能を岩城製薬が担い、資生堂ジャパンは現行品の製造を担う。22年8月には、岩城製薬がキノファーマと尋常性疣贅を適応症とした共同開発・商業化契約を締結した。

 HBC・食品事業はイワキ(イワキ分割準備会社が21年6月商号変更)とアプロスを中心に展開している。20年12月には健康食品・化粧品販売のマルマンH&Bを子会社化、21年7月にはイワキがスカイネットから薬事サポート事業、自社開発事業および輸入製販事業を譲り受け、21年9月にはイワキが住建情報センターのヘルスケア事業を譲り受けた。22年1月にはイワキが食品原料調達WEBプラットフォーム「シェアシマ」を運営するICS―netに資本参加した。

 化学品事業はメルテックス、東京化工機、および海外子会社等を中心に展開している。

■SDGsへの取り組み推進

 持株会社体制への移行に伴い、グループ全体のBCP(事業継続計画)対策および従業員の働き方・生き方の選択肢多様化を目的として、21年6月に本社機能の一部を石川県珠洲市に移転した。さらに、石川県珠洲市が地方創生に向けた人材育成事業の一環として行っている能登SDGsラボと協業し、30年までにSDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進する。

 21年6月には新規事業のインキュベーションを担う専任部署として新規事業推進室を設置した。SDGs推進に向けて、化粧品原料・製品(グループ会社JITSUBOのペプチド合成法Molecular Hivingによる高品質で環境に優しく、コスト優位性のある化粧品原料・製品)事業、地方創生に繋がるハイブリッド型ふるさと納税プラットフォーム事業、健康食品原料事業(国産の安心・安全な健康食品原料・製品の第6次産業化を目的として、石川県珠洲市で健康食品の原料となる植物等の栽培を行う事業)などを推進する。

 21年7月には、奥能登地域のSDGS達成支援を目的とするファンド「奥能登SDGs投資事業有限責任組合(奥能登SDGsファンド)」に出資した。特定子会社となる。21年8月には、グループの業務サポートやファシリティーサービスを提供するアステナハートフル(21年6月設立)が、障害者の雇用の促進等に関する法律に基づく特例子会社の認定を取得した。

 21年11月には能登地域のSDGs達成の支援を目的として、能登地域の自治体3市(七尾市、輪島市、珠洲市)・2町(穴水町、能都町)、および国立大学法人金沢大学、奥能登信用金庫、のと共栄信用金庫、北國フィナンシャルホールディングス、BPキャピタルと、SDGs推進に係る連携と協力に関する協定を締結した。21年12月には子会社のイワキ総合研究所の商号をアステナミネルヴァに変更した。新規事業推進室を移設し、事業内容も地方創生に関連する事業に変更した。

 22年7月にはアステナミネルヴァが、パープルテクノスの子会社で、石川県の地域ポータルメディアを展開するイシカワズカンの株式の一部を取得した。ヤマガタデザイン(山形県鶴岡市)と連携し、若者のU・Iターン地方移住を推進するウェブメディア「チイキズカン」プロジェクトを22年9月に立ち上げる予定だ。

■中長期ビジョンの目標は売上高1300億円以上、ROE13%以上

 2030年に向けたグループ中長期ビジョン「Astena2030」では、定量的ターゲットとして30年11月期の売上高1300億円以上、ROE13%以上を掲げ、中期経営計画(ローリング形式、新会計基準)の目標値は24年11月期の売上高600億円、営業利益38億円、ROE8.9%としている。

 セグメント別30年11月期目標値は、ファインケミカル事業が売上高400億円で営業利益率9%、医薬事業が売上高228億円で営業利益率13%、化学品事業が売上高130億円で営業利益率10%、HBC・食品事業が売上高450億円で営業利益率3%としている。

 基本戦略としては、プラットフォーム戦略(CMC=医療用医薬品研究開発の国内トップレベルでの受託、ヘルスケア調達プラットフォーム=医薬品・化粧品・機能性食品製造会社の全ニーズをカバー、創薬インキュベーション=CMC提供を通じて新薬開発の成功確率を高める、CDMO=注射剤・外皮用剤・治験薬の受託製造)、ニッチトップ戦略(外皮用剤ジェネリック医薬品=国内塗り薬ジェネリック医薬品市場NO.1、ハイエンド表面処理薬品=エレクトロニクスに特化した表面処理薬品)、ソーシャルインパクト戦略(シニア・アクティベイト=化粧品・機能性食品の提供を通じてシニア総アクティブ化推進)を掲げている。

 ファインケミカル事業は、CMC・CDMO事業および調達プラットフォーム事業を2本柱として、原材料調達からCMC研究、原薬商用生産までの医薬品開発・製造の幅広いサービスを提供する。

 医薬事業は、皮膚科領域をベースとして外皮用剤品目数および生産キャパシティでトップ、グローバル要求水準に対応して高活性注射剤CDMOのトップを目指す。また外皮用剤、注射剤導入、新薬共同開発、M&A・アライアンスで事業基盤強化・拡大を目指す。

 化学品事業は、エレクトロニクス実装市場のトレンドを捉えたニッチトップ商品の継続的開発、ハイエンドパッケージ基板での地位確立、チップ部品用途の台湾・中国大手での採用、半導体パワー・センサー系薬品の差別化を推進する。またグローバル企業との共同開発も推進して成長を目指す。

 HBC・食品事業は、原料ビジネスのDX化による顧客の開発・調達プロセスの課題解決プラットフォームの提供、独自性を高めた商品・サービスの提供による市場価値増大を推進する。またダイレクトマーケティング領域への投資を実行して、領域特化型ネットワークを構築する。

 その他では既存事業との親和性、将来に亘る成長性、グループ全体への波及効果なども勘案して、SDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進することを目標とする。

 なお資本効率向上に向けた拠点見直しの一環として、21年6月に名古屋オフィスおよび福岡オフィスの不動産を譲渡すると発表している。譲渡時期は未定だが、譲渡後も賃借で継続利用する。

■22年11月期減益予想だが23年11月期収益拡大期待

 22年11月期の連結業績予想(収益認識会計基準適用のため前期比増減率は非掲載、利益への影響なし、22年7月13日付で利益を下方修正)は、売上高が500億円、営業利益が10億円、経常利益が10億円、親会社株主帰属当期純利益が11億円としている。なお特別利益に固定資産譲渡益(IW日本橋ビル、引渡日22年3月、譲渡益約6億50百万円)を計上する。配当予想は21年11月期と同額の18円(第2四半期末9円、期末9円)としている。

 為替の急激な円安進行、原材料価格や物流費の高騰などで減益予想としている。収益認識会計基準適用の影響としては、従来方法と比較して売上高が約230億円減少する見込みだが、営業利益、経常利益、親会社株主帰属当期純利益への影響はないとしている。修正後の各利益の増減率を21年11月期実績値(収益認識会計基準適用前)との単純比較で算出すると、営業利益は55.2%減益、経常利益は58.7%減益、親会社株主帰属当期純利益は36.6%減益となる。

 第2四半期累計は、売上高が249億34百万円(収益認識会計基準適用前の前年同期は362億34百万円)、営業利益が7億20百万円(同14億94百万円)、経常利益が8億35百万円(同15億73百万円)、そして親会社株主帰属四半期純利益が9億32百万円(同9億75百万円)だった。

 収益認識会計基準適用の影響額として、従来方法に比べて売上高が110億90百万円減少、売上原価が110億57百万円減少、営業利益、経常利益、税金等調整前四半期純利益がそれぞれ0百万円減少している。収益認識会計基準適用前ベースで見ると売上高は前年同期比0.6%減の360億25百万円、営業利益が51.8%減の7億20百万円、経常利益が46.9%減の8億35百万円、税金等調整前四半期純利益が4.3%減の14億64百万円となる。売上面は堅調だが、為替の急激な円安進行、原材料価格や物流費の高騰などの影響で減益となった。

 ファインケミカル事業は売上高が75億29百万円(同116億39百万円)で、利益(調整前営業利益)が4億73百万円(同7億25百万円)だった。旧会計基準ベースではスペラネクサスの売上増加や有機EL材料製造受託などで増収だが、スペラファーマの売上減少やコスト増加などで大幅営業減益だった。CDMO分野が事業環境の変化や案件納期の変更などの影響で低調だった。

 HBC・食品事業は売上高が72億01百万円(同140億01百万円)で、利益が65百万円の赤字(同3億49百万円の赤字)だった。旧会計基準ベースでは小幅減収だが、グループ内事業ポートフォリオ組替影響や不採算取引減少などで赤字が縮小した。

 医薬事業は売上高が58億84百万円(同65億13百万円)で、利益が3億52百万円(同9億22百万円)だった。旧会計基準ベースで減収となり、大幅減益だった。前期発生した一過性の自主回収費用は剥落したが、佐倉工場の売上減少、蒲田工場の稼働率低下、グループ内事業ポートフォリオ組替影響、原料・電力料高騰などが影響した。

 化学品事業は売上高が43億18百万円(同40億96百万円)で、利益が38百万円の赤字(同2億05百万円の黒字)だった。旧会計基準ベースでは増収だが、売上構成変化やコスト増加の影響で大幅減益だった。予定していた新規採用が第3四半期に延期となったことも影響した。

 なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高が122億85百万円で営業利益が6億30百万円、第2四半期は売上高が126億49百万円で営業利益が90百万円だった。

 通期(修正後)の営業利益の前期比増減計画は、ファインケミカル事業がスペラファーマの売上減少やコスト影響などで9.6億円減益(期初時点の計画は3.7億円減益)、医薬事業が売上減や稼働率低下などで7.0億円減益(同4.8億円減益)、HBC・食品事業が本社経費配分変更や化粧品回復などの影響で4.5億円増益(同1.4億円増益)、化学品事業が本社経費配分変更などで1.9億円減益(同1.8億円増益)としている。

 また、旧会計基準・HD化に伴う影響を除外したベースの計画(前期比)は、ファインケミカル事業が2.6億円減収で7.0億円減益、医薬事業が3.6億円減収で6.4億円減益、HBC・食品事業が13.2億円減収で1.8億円増益、化学品事業が7.9億円増収で0.9億円増益としている。

 22年11月期は下方修正して大幅減益見込みとなったが、減収減益見込みのファインケミカル事業と医薬事業の収益回復に向けて、下期は事業戦略の再構築を図るとしている。積極的な事業展開で23年11月期の収益拡大を期待したい。

■株主優待制度は毎年11月末時点で1年以上保有株主対象

 株主優待制度は毎年11月末時点で100株(1単元)以上を継続して1年以上保有する株主を対象として実施している。グループ化粧品詰め合わせセットなどを贈呈(詳細は会社HP参照)する。

■株価は下値切り上げ

 22年7月13日発表の自己株式取得(上限90万株・3億円、取得期間22年7月14日〜22年9月30日)については、22年8月31日時点の累計取得株式数が47万4800株となっている。

 株価は安値圏でモミ合う形だが徐々に下値を切り上げている。高配当利回りや低PBRも評価材料であり、出直りを期待したい。9月2日の終値は448円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS27円59銭で算出)は約16倍、今期予想配当利回り(会社予想の18円で算出)は約4.0%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS677円09銭で算出)は約0.7倍、そして時価総額は約183億円である。


情報提供:日本インタビュ新聞社=Media−IR) [08月01日更新]

アステナホールディングスは下値固め完了、22年11月期減益予想だが23年11月期収益拡大期待

 アステナホールディングス<8095>(東証プライム)はヘルスケア・ファインケミカル企業集団として、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。22年11月期の連結業績は、円安や原材料費高騰の影響で期初計画に比べて減益幅が拡大する見込みとなったが、23年11月期の収益拡大を期待したい。株価は安値圏でモミ合う形だが下値固め完了感を強めている。22年11月期予想下方修正に対するネガティブ反応は限定的だった。高配当利回りや低PBRも評価材料であり、出直りを期待したい。

■ヘルスケア・ファインケミカル企業集団

 旧イワキが21年6月1日付で持株会社体制に移行して商号をアステナホールディングスに変更した。アステナは「明日(未来)+サステナブル(持続可能)」の造語である。ヘルスケア・ファインケミカル企業集団として、製造分野が利益柱となり、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。

 21年11月期のセグメント別売上高構成比はファインケミカル事業(医薬品のCMC研究開発・製造受託、医薬品原料の製造販売)が32%、医薬事業(医薬品・医療機器の製造販売)が17%、HBC・食品事業(化粧品原料の販売、食品原料・機能性食品の製造販売、一般用医薬品の卸売、化粧品の通信販売)が39%、化学品事業(表面処理薬品の製造販売、プリント基板製造プラントの製造販売)が12%、営業利益(全社費用等調整前)の構成比はファインケミカル事業が58%、医薬事業が40%、HBC・食品事業が▲14%、化学品事業が16%だった。

■新しい戦略的ビジネスモデルを構築

 4つの新しい戦略的ビジネスモデル(調達プラットフォーム事業、インキュベーション事業、注射剤CDMO事業、塗り薬CDM事業)を構築している。

 ファインケミカル事業は、20年3月に子会社化した医薬品CMC研究開発・製造受託のスペラファーマと、スペラファーマの子会社として20年7月に設立したスペラネクサスを中心に展開している。さらに岩城製薬のファインケミカル事業をスペラネクサスに承継し、医薬品原薬のCMC研究開発から製造受託・販売まで一貫体制を構築した。20年6月にはスペラファーマが創薬ベンチャーのジェイファーマに出資した。21年4月にはスペラファーマがペプチド合成技術を保有するJITSUBOを子会社化した。

 なお21年3月には岩城製薬(スペラネクサスに承継)が、オンコリスバイオファーマ<4588>の新型コロナウイルス感染症治療薬OBP―2011の臨床試験開始に必要な治験薬原薬の製造法開発とGMP製造を受託することで基本合意し、21年7月にはスペラファーマがオンコロスバイオファーマからOBP―2011の治験薬製剤のGMP製造を受託することで基本合意した。

 22年2月にはスペラファーマがインタープロテインと、アンメット・メディカル・ニーズの高い様々な疾患に対する新規低分子およびペプチド医薬品の研究開発、製造ならびに商業化を目的とした包括的協業に関する覚書を締結した。

 医薬事業は岩城製薬と、20年7月に鳥居薬品佐倉工場を継承した岩城製薬佐倉工場を中心に展開している。さらに20年1月には医療用後発医薬品・一般用医薬品開発の前田薬品工業に出資、21年1月には岩城製薬が医薬品開発のキノファーマに出資して業務提携している。21年4月には岩城製薬がインタープロテインとCOVID―19治療薬の共同研究契約を締結した。22年4月には岩城製薬がヤンセンファーマから「ニゾラールローション2%」の日本における製造販売承認を承継・販売移管した。岩城製薬にとって初の長期収載品の扱いとなる。

 22年7月には、スキンケアブランド「ナビジョン/ナビジョンDR」について、資生堂ジャパンが保有していたブランドホルダー機能を岩城製薬に移管することで合意した。ブランド価値向上に向けて役割分担を見直し、資生堂ジャパンが行ってきた研究開発・商品開発機能およびマーケティング機能を岩城製薬が担い、資生堂ジャパンは現行品の製造を担う。

 HBC・食品事業はイワキ(イワキ分割準備会社が21年6月商号変更)とアプロスを中心に展開している。20年12月には健康食品・化粧品販売のマルマンH&Bを子会社化、21年7月にはイワキがスカイネットから薬事サポート事業、自社開発事業および輸入製販事業を譲り受け、21年9月にはイワキが住建情報センターのヘルスケア事業を譲り受けた。22年1月にはイワキが食品原料調達WEBプラットフォーム「シェアシマ」を運営するICS―netに資本参加した。

 化学品事業はメルテックス、東京化工機、および海外子会社等を中心に展開している。

■SDGsへの取り組み推進

 持株会社体制への移行に伴い、グループ全体のBCP(事業継続計画)対策および従業員の働き方・生き方の選択肢多様化を目的として、21年6月に本社機能の一部を石川県珠洲市に移転した。さらに、石川県珠洲市が地方創生に向けた人材育成事業の一環として行っている能登SDGsラボと協業し、30年までにSDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進する。

 21年6月には新規事業のインキュベーションを担う専任部署として新規事業推進室を設置した。SDGs推進に向けて、化粧品原料・製品(グループ会社JITSUBOのペプチド合成法Molecular Hivingによる高品質で環境に優しく、コスト優位性のある化粧品原料・製品)事業、地方創生に繋がるハイブリッド型ふるさと納税プラットフォーム事業、健康食品原料事業(国産の安心・安全な健康食品原料・製品の第6次産業化を目的として、石川県珠洲市で健康食品の原料となる植物等の栽培を行う事業)などを推進する。

 21年7月には、奥能登地域のSDGS達成支援を目的とするファンド「奥能登SDGs投資事業有限責任組合(奥能登SDGsファンド)」に出資した。特定子会社となる。21年8月には、グループの業務サポートやファシリティーサービスを提供するアステナハートフル(21年6月設立)が、障害者の雇用の促進等に関する法律に基づく特例子会社の認定を取得した。

 21年11月には能登地域のSDGs達成の支援を目的として、能登地域の自治体3市(七尾市、輪島市、珠洲市)・2町(穴水町、能都町)、および国立大学法人金沢大学、奥能登信用金庫、のと共栄信用金庫、北國フィナンシャルホールディングス、BPキャピタルと、SDGs推進に係る連携と協力に関する協定を締結した。21年12月には子会社のイワキ総合研究所の商号をアステナミネルヴァに変更した。新規事業推進室を移設し、事業内容も地方創生に関連する事業に変更した。

 22年7月にはアステナミネルヴァが、パープルテクノスの子会社で、石川県の地域ポータルメディアを展開するイシカワズカンの株式の一部を取得した。ヤマガタデザイン(山形県鶴岡市)と連携し、若者のU・Iターン地方移住を推進するウェブメディア「チイキズカン」プロジェクトを22年9月に立ち上げる予定だ。

■中長期ビジョンの目標は売上高1300億円以上、ROE13%以上

 2030年に向けたグループ中長期ビジョン「Astena2030」では、定量的ターゲットとして30年11月期の売上高1300億円以上、ROE13%以上を掲げ、中期経営計画(ローリング形式、新会計基準)の目標値は24年11月期の売上高600億円、営業利益38億円、ROE8.9%としている。

 セグメント別30年11月期目標値は、ファインケミカル事業が売上高400億円で営業利益率9%、医薬事業が売上高228億円で営業利益率13%、化学品事業が売上高130億円で営業利益率10%、HBC・食品事業が売上高450億円で営業利益率3%としている。

 基本戦略としては、プラットフォーム戦略(CMC=医療用医薬品研究開発の国内トップレベルでの受託、ヘルスケア調達プラットフォーム=医薬品・化粧品・機能性食品製造会社の全ニーズをカバー、創薬インキュベーション=CMC提供を通じて新薬開発の成功確率を高める、CDMO=注射剤・外皮用剤・治験薬の受託製造)、ニッチトップ戦略(外皮用剤ジェネリック医薬品=国内塗り薬ジェネリック医薬品市場NO.1、ハイエンド表面処理薬品=エレクトロニクスに特化した表面処理薬品)、ソーシャルインパクト戦略(シニア・アクティベイト=化粧品・機能性食品の提供を通じてシニア総アクティブ化推進)を掲げている。

 ファインケミカル事業は、CMC・CDMO事業および調達プラットフォーム事業を2本柱として、原材料調達からCMC研究、原薬商用生産までの医薬品開発・製造の幅広いサービスを提供する。

 医薬事業は、皮膚科領域をベースとして外皮用剤品目数および生産キャパシティでトップ、グローバル要求水準に対応して高活性注射剤CDMOのトップを目指す。また外皮用剤、注射剤導入、新薬共同開発、M&A・アライアンスで事業基盤強化・拡大を目指す。

 化学品事業は、エレクトロニクス実装市場のトレンドを捉えたニッチトップ商品の継続的開発、ハイエンドパッケージ基板での地位確立、チップ部品用途の台湾・中国大手での採用、半導体パワー・センサー系薬品の差別化を推進する。またグローバル企業との共同開発も推進して成長を目指す。

 HBC・食品事業は、原料ビジネスのDX化による顧客の開発・調達プロセスの課題解決プラットフォームの提供、独自性を高めた商品・サービスの提供による市場価値増大を推進する。またダイレクトマーケティング領域への投資を実行して、領域特化型ネットワークを構築する。

 その他では既存事業との親和性、将来に亘る成長性、グループ全体への波及効果なども勘案して、SDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進することを目標とする。

 なお資本効率向上に向けた拠点見直しの一環として、21年6月に名古屋オフィスおよび福岡オフィスの不動産を譲渡すると発表している。譲渡時期は未定だが、譲渡後も賃借で継続利用する。

■22年11月期は下方修正して減益幅拡大見込み

 22年11月期の連結業績予想(収益認識会計基準適用のため前期比増減率は非掲載、利益への影響なし、22年7月13日付で利益を下方修正)は、売上高が500億円、営業利益が10億円、経常利益が10億円、親会社株主帰属当期純利益が11億円としている。なお特別利益に固定資産譲渡益(IW日本橋ビル、引渡日22年3月、譲渡益約6億50百万円)を計上する。配当予想は21年11月期と同額の18円(第2四半期末9円、期末9円)としている。

 従来予想(22年1月13日公表)に対して、売上高を据え置いたが、営業利益は7億円、経常利益は6億円、親会社株主帰属当期純利益は4億円、それぞれ下回る見込みとした。為替の急激な円安進行、原材料価格や物流費の高騰などにより、コスト増加が想定を上回る見込みとなった。

 なお収益認識会計基準適用の影響としては、従来方法と比較して売上高が約230億円減少する見込みだが、営業利益、経常利益、親会社株主帰属当期純利益への影響はないとしている。修正後の各利益の増減率を、21年11月期実績値(収益認識会計基準適用前)との単純比較で算出すると、営業利益は55.2%減益、経常利益は58.7%減益、親会社株主帰属当期純利益は36.6%減益となる。

 第2四半期累計は、売上高が249億34百万円(収益認識会計基準適用前の前年同期は362億34百万円)、営業利益が7億20百万円(同14億94百万円)、経常利益が8億35百万円(同15億73百万円)、そして親会社株主帰属四半期純利益が9億32百万円(同9億75百万円)だった。

 収益認識会計基準適用の影響額として、従来方法に比べて売上高が110億90百万円減少、売上原価が110億57百万円減少、営業利益、経常利益、税金等調整前四半期純利益がそれぞれ0百万円減少している。収益認識会計基準適用前ベースで見ると、売上高は前年同期比0.6%減の360億25百万円、営業利益が51.8%減の7億20百万円、経常利益が46.9%減の8億35百万円、税金等調整前四半期純利益が4.3%減の14億64百万円となる。売上面は堅調だが、為替の急激な円安進行、原材料価格や物流費の高騰などの影響で減益となった。

 ファインケミカル事業は売上高が75億29百万円(同116億39百万円)で、利益(調整前営業利益)が4億73百万円(同7億25百万円)だった。旧会計基準ベースではスペラネクサスの売上増加や有機EL材料製造受託などで増収だが、スペラファーマの売上減少やコスト増加などで大幅営業減益だった。CDMO分野が事業環境の変化や案件納期の変更などの影響で低調だった。

 HBC・食品事業は売上高が72億01百万円(同140億01百万円)で、利益が65百万円の赤字(同3億49百万円の赤字)だった。旧会計基準ベースでは小幅減収だが、グループ内事業ポートフォリオ組替影響や不採算取引減少などで赤字が縮小した。

 医薬事業は売上高が58億84百万円(同65億13百万円)で、利益が3億52百万円(同9億22百万円)だった。旧会計基準ベースで減収となり、大幅減益だった。前期発生した一過性の自主回収費用は剥落したが、佐倉工場の売上減少、蒲田工場の稼働率低下、グループ内事業ポートフォリオ組替影響、原料・電力料高騰などが影響した。

 化学品事業は売上高が43億18百万円(同40億96百万円)で、利益が38百万円の赤字(同2億05百万円の黒字)だった。旧会計基準ベースでは増収だが、売上構成変化やコスト増加の影響で大幅減益だった。予定していた新規採用が第3四半期に延期となったことも影響した。

 なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高が122億85百万円で営業利益が6億30百万円、第2四半期は売上高が126億49百万円で営業利益が90百万円だった。

 通期(修正後)の営業利益の前期比増減計画は、ファインケミカル事業がスペラファーマの売上減少やコスト影響などで9.6億円減益(期初時点の計画は3.7億円減益)、医薬事業が売上減や稼働率低下などで7.0億円減益(同4.8億円減益)、HBC・食品事業が本社経費配分変更や化粧品回復などの影響で4.5億円増益(同1.4億円増益)、化学品事業が本社経費配分変更などで1.9億円減益(同1.8億円増益)としている。

 また、旧会計基準・HD化に伴う影響を除外したベースの計画(前期比)は、ファインケミカル事業が2.6億円減収で7.0億円減益、医薬事業が3.6億円減収で6.4億円減益、HBC・食品事業が13.2億円減収で1.8億円増益、化学品事業が7.9億円増収で0.9億円増益としている。

 22年11月期は下方修正して大幅減益見込みとなったが、減収減益見込みのファインケミカル事業と医薬事業の収益回復に向けて、下期は事業戦略の再構築を図るとしている。23年11月期は積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。

■株主優待制度は毎年11月末時点で1年以上保有株主対象

 株主優待制度は毎年11月末時点で100株(1単元)以上を継続して1年以上保有する株主を対象として実施している。グループ化粧品詰め合わせセットなどを贈呈(詳細は会社HP参照)する。

■株価は下値固め完了

 22年7月13日に自己株式取得を発表した。上限90万株・3億円で、取得期間は22年7月14日〜22年9月30日としている。

 株価は安値圏でモミ合う形だが下値固め完了感を強めている。22年11月期予想下方修正に対するネガティブ反応は限定的だった。高配当利回りや低PBRも評価材料であり、出直りを期待したい。7月29日の終値は425円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS27円59銭で算出)は約15倍、今期予想配当利回り(会社予想の18円で算出)は約4.2%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS677円09銭で算出)は約0.6倍、時価総額は約173億円である。(情報提供:日 本インタビュ新聞社=Media−IR)
[07月14日更新]

アステナホールディングスは22年11月期利益予想を下方修正、自己株式取得発表

 アステナホールディングス<8095>(東証プライム)は7月13日の取引時間終了後に22年11月期第2四半期累計連結業績を発表した。売上面は堅調だが、原材料価格高騰などの影響で減益となった。そして通期利益予想を下方修正した。なお配当予想は据え置き、新たに自己株式取得を発表している。23年11月期は積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。株価は下値固め完了して反発の動きを強めている。目先的には下方修正を嫌気する動きが優勢になりそうだが下値限定的だろう。

■22年11月期2Q累計減益、通期予想下方修正

 22年11月期第2四半期累計の連結業績(収益認識会計基準適用のため前期比増減率は非掲載、売上高が従来の方法と比較して減少するが営業利益以下への影響は軽微)は、売上高が249億34百万円(収益認識会計基準適用前の前年同期は362億34百万円)、営業利益が7億20百万円(同14億94百万円)、経常利益が8億35百万円(同15億73百万円)、そして親会社株主帰属四半期純利益が9億32百万円(同9億75百万円)だった。

 収益認識会計基準適用の影響額として、従来方法に比べて売上高が110億90百万円減少、売上原価が110億57百万円減少、営業利益、経常利益、税金等調整前四半期純利益がそれぞれ0百万円減少している。収益認識会計基準適用前ベースで見ると、売上高は前年同期比0.6%減の360億25百万円、営業利益が51.8%減の7億20百万円、経常利益が45.6%減の8億35百万円、税金等調整前四半期純利益が4.7%減の14億64百万円となる。売上面は堅調だが、為替の急激な円安進行、原材料価格や物流費の高騰などの影響で減益となった。

 ファインケミカル事業は売上高が75億29百万円(同116億39百万円)で、利益(調整前営業利益)が4億73百万円(同7億25百万円)だった。大幅減益だった。医薬品原料分野は新規GE品目や中間体も寄与して堅調だったが、CDMO分野が事業環境の変化や案件納期の変更などの影響で低調だった。

 HBC・食品事業は売上高が72億01百万円(同140億01百万円)で、利益が65百万円の赤字(同3億49百万円の赤字)だった。赤字が縮小した。一般用医薬品を主体とする卸売分野はマルマンH&Bが取り扱う韓国コスメ関連も寄与して好調だった。食品原料分野は大口受注も寄与して好調だった。化粧品原料分野や通販化粧品分野も堅調だった。

 医薬事業は売上高が58億84百万円(同65億13百万円)で、利益が3億52百万円(同9億22百万円)だった。大幅減益だった。美容医療分野や岩城製薬佐倉工場は堅調だったが、医療用医薬品が各種コスト増の影響を受けた。

 化学品事業は売上高が43億18百万円(同40億96百万円)で、利益が38百万円の赤字(同2億05百万円の黒字)だった。大幅減益だった。表面処理薬品において既存製品の一部の販売が伸び悩み、予定していた新規採用が第3四半期に延期となった。

 なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高が122億85百万円で営業利益が6億30百万円、第2四半期は売上高が126億49百万円で営業利益が90百万円だった。

 通期連結業績予想は売上高を据え置き、利益を下方修正(前回予想に比べて営業利益を7億円、経常利益を6億円、親会社株主帰属当期純利益を4億円、それぞれ下方修正)し、売上高が500億円(収益認識会計基準適用前ベースでは700億円)、営業利益が10億円、経常利益が10億円、親会社株主帰属当期純利益が11億円とした。

 収益認識会計基準適用前の21年11月期実績(売上高が723億22百万円、営業利益が22億33百万円、経常利益が24億20百万円、親会社株主帰属当期純利益が17億36百万円)との単純比較で算出すると、営業利益は55.2%減益、経常利益は58.7%減益、親会社株主帰属当期純利益は36.6%減益となる。為替の急激な円安進行、原材料価格や物流費の高騰などが影響する見込みだ。

 なお配当予想は据え置いて、21年11月期と同額の18円(第2四半期末9円、期末9円)としている。また新たに自己株式取得を発表した。上限90万株・3億円で、取得期間は22年7月14日〜22年9月30日としている。

 22年11月期は下方修正して大幅減益見込みとなったが、23年11月期は積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。

■株価は下値限定的

 株価は下値固め完了して反発の動きを強めている。目先的には下方修正を嫌気する動きが優勢になりそうだが下値限定的だろう。7月13日の終値は451円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS27円59銭で算出)は約16倍、今期予想配当利回り(会社予想の18円で算出)は約4.0%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS677円09銭で算出)は約0.7倍、そして時価総額は約184億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media−IR
[07月01日更新]

アステナホールディングスはモミ合い上放れ、22年11月期は先行投資で減益予想だが上振れ余地

 アステナホールディングス<8095>(東証プライム)はヘルスケア・ファインケミカル企業集団として、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。さらにM&Aも積極活用して、新しい戦略的ビジネスモデル(調達プラットフォーム事業、インキュベーション事業、注射剤CDMO事業、塗り薬CDM事業)を構築している。22年11月期は不透明感や先行投資などを考慮して減益予想としているが上振れ余地がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。株価は安値圏でのモミ合いから上放れの動きを強めている。高配当利回りや低PBRも見直して戻りを試す展開を期待したい。なお7月13日に22年11月期第2四半期決算発表を予定している。

■ヘルスケア・ファインケミカル企業集団

 旧イワキが21年6月1日付で持株会社体制に移行して商号をアステナホールディングスに変更した。アステナは「明日(未来)+サステナブル(持続可能)」の造語である。ヘルスケア・ファインケミカル企業集団として、製造分野が利益柱となり、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。

 21年11月期のセグメント別売上高構成比はファインケミカル事業(医薬品のCMC研究開発・製造受託、医薬品原料の製造販売)が32%、医薬事業(医薬品・医療機器の製造販売)が17%、HBC・食品事業(化粧品原料の販売、食品原料・機能性食品の製造販売、一般用医薬品の卸売、化粧品の通信販売)が39%、化学品事業(表面処理薬品の製造販売、プリント基板製造プラントの製造販売)が12%、営業利益(全社費用等調整前)の構成比はファインケミカル事業が58%、医薬事業が40%、HBC・食品事業が▲14%、化学品事業が16%だった。

■新しい戦略的ビジネスモデルを構築

 M&Aも積極活用して、4つの新しい戦略的ビジネスモデル(調達プラットフォーム事業、インキュベーション事業、注射剤CDMO事業、塗り薬CDM事業)を構築している。

 ファインケミカル事業は、20年3月に子会社化した医薬品CMC研究開発・製造受託のスペラファーマと、スペラファーマの子会社として20年7月に設立したスペラネクサスを中心に展開している。さらに岩城製薬のファインケミカル事業をスペラネクサスに承継し、医薬品原薬のCMC研究開発から製造受託・販売まで一貫体制を構築した。20年6月にはスペラファーマが創薬ベンチャーのジェイファーマに出資した。21年4月にはスペラファーマがペプチド合成技術を保有するJITSUBOを子会社化した。

 なお21年3月には岩城製薬(スペラネクサスに承継)が、オンコリスバイオファーマ<4588>の新型コロナウイルス感染症治療薬OBP―2011の臨床試験開始に必要な治験薬原薬の製造法開発とGMP製造を受託することで基本合意し、21年7月にはスペラファーマがオンコロスバイオファーマからOBP―2011の治験薬製剤のGMP製造を受託することで基本合意した。

 22年2月にはスペラファーマがインタープロテインと、アンメット・メディカル・ニーズの高い様々な疾患に対する新規低分子およびペプチド医薬品の研究開発、製造ならびに商業化を目的とした包括的協業に関する覚書を締結した。

 医薬事業は岩城製薬と、20年7月に鳥居薬品佐倉工場を継承した岩城製薬佐倉工場を中心に展開している。さらに20年1月には医療用後発医薬品・一般用医薬品開発の前田薬品工業に出資、21年1月には岩城製薬が医薬品開発のキノファーマに出資して業務提携している。21年4月には岩城製薬がインタープロテインとCOVID―19治療薬の共同研究契約を締結した。22年4月には岩城製薬がヤンセンファーマから「ニゾラールローション2%」の日本における製造販売承認を承継・販売移管予定である。岩城製薬にとって初の長期収載品の扱いとなる。

 HBC・食品事業はイワキ(イワキ分割準備会社が21年6月商号変更)とアプロスを中心に展開している。20年12月には健康食品・化粧品販売のマルマンH&Bを子会社化、21年7月にはイワキがスカイネットから薬事サポート事業、自社開発事業および輸入製販事業を譲り受け、21年9月にはイワキが住建情報センターのヘルスケア事業を譲り受けた。22年1月にはイワキが食品原料調達WEBプラットフォーム「シェアシマ」を運営するICS―netに資本参加した。

 化学品事業はメルテックス、東京化工機、および海外子会社等を中心に展開している。

■SDGsへの取り組み推進

 持株会社体制への移行に伴い、グループ全体のBCP(事業継続計画)対策および従業員の働き方・生き方の選択肢多様化を目的として、21年6月に本社機能の一部を石川県珠洲市に移転した。さらに、石川県珠洲市が地方創生に向けた人材育成事業の一環として行っている能登SDGsラボと協業し、30年までにSDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進する。

 21年6月には新規事業のインキュベーションを担う専任部署として新規事業推進室を設置した。SDGs推進に向けて、化粧品原料・製品(グループ会社JITSUBOのペプチド合成法Molecular Hivingによる高品質で環境に優しく、コスト優位性のある化粧品原料・製品)事業、地方創生に繋がるハイブリッド型ふるさと納税プラットフォーム事業、健康食品原料事業(国産の安心・安全な健康食品原料・製品の第6次産業化を目的として、石川県珠洲市で健康食品の原料となる植物等の栽培を行う事業)などを推進する。

 21年7月には、奥能登地域のSDGS達成支援を目的とするファンド「奥能登SDGs投資事業有限責任組合(奥能登SDGsファンド)」に出資した。特定子会社となる。21年8月には、グループの業務サポートやファシリティーサービスを提供するアステナハートフル(21年6月設立)が、障害者の雇用の促進等に関する法律に基づく特例子会社の認定を取得した。

 21年11月には能登地域のSDGs達成の支援を目的として、能登地域の自治体3市(七尾市、輪島市、珠洲市)・2町(穴水町、能都町)、および国立大学法人金沢大学、奥能登信用金庫、のと共栄信用金庫、北國フィナンシャルホールディングス、BPキャピタルと、SDGs推進に係る連携と協力に関する協定を締結した。21年12月には子会社のイワキ総合研究所の商号をアステナミネルヴァに変更した。新規事業推進室を移設し、事業内容も地方創生に関連する事業に変更した。

■中長期ビジョンの目標は売上高1300億円以上、ROE13%以上

 2030年に向けたグループ中長期ビジョン「Astena2030」では、定量的ターゲットとして30年11月期の売上高1300億円以上、ROE13%以上を掲げ、中期経営計画(ローリング形式、新会計基準)の目標値は24年11月期の売上高600億円、営業利益38億円、ROE8.9%としている。

 セグメント別30年11月期目標値は、ファインケミカル事業が売上高400億円で営業利益率9%、医薬事業が売上高228億円で営業利益率13%、化学品事業が売上高130億円で営業利益率10%、HBC・食品事業が売上高450億円で営業利益率3%としている。

 基本戦略としては、プラットフォーム戦略(CMC=医療用医薬品研究開発の国内トップレベルでの受託、ヘルスケア調達プラットフォーム=医薬品・化粧品・機能性食品製造会社の全ニーズをカバー、創薬インキュベーション=CMC提供を通じて新薬開発の成功確率を高める、CDMO=注射剤・外皮用剤・治験薬の受託製造)、ニッチトップ戦略(外皮用剤ジェネリック医薬品=国内塗り薬ジェネリック医薬品市場NO.1、ハイエンド表面処理薬品=エレクトロニクスに特化した表面処理薬品)、ソーシャルインパクト戦略(シニア・アクティベイト=化粧品・機能性食品の提供を通じてシニア総アクティブ化推進)を掲げている。

 ファインケミカル事業は、CMC・CDMO事業および調達プラットフォーム事業を2本柱として、原材料調達からCMC研究、原薬商用生産までの医薬品開発・製造の幅広いサービスを提供する。

 医薬事業は、皮膚科領域をベースとして外皮用剤品目数および生産キャパシティでトップ、グローバル要求水準に対応して高活性注射剤CDMOのトップを目指す。また外皮用剤、注射剤導入、新薬共同開発、M&A・アライアンスで事業基盤強化・拡大を目指す。

 化学品事業は、エレクトロニクス実装市場のトレンドを捉えたニッチトップ商品の継続的開発、ハイエンドパッケージ基板での地位確立、チップ部品用途の台湾・中国大手での採用、半導体パワー・センサー系薬品の差別化を推進する。またグローバル企業との共同開発も推進して成長を目指す。

 HBC・食品事業は、原料ビジネスのDX化による顧客の開発・調達プロセスの課題解決プラットフォームの提供、独自性を高めた商品・サービスの提供による市場価値増大を推進する。またダイレクトマーケティング領域への投資を実行して、領域特化型ネットワークを構築する。

 その他では既存事業との親和性、将来に亘る成長性、グループ全体への波及効果なども勘案して、SDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進することを目標とする。

 なお資本効率向上に向けた拠点見直しの一環として、21年6月に名古屋オフィスおよび福岡オフィスの不動産を譲渡すると発表している。譲渡時期は未定だが、譲渡後も賃借で継続利用する。

■22年11月期は先行投資などで減益予想だが上振れ余地

 22年11月期の連結業績予想(収益認識会計基準適用のため前期比増減率は非掲載、利益への影響なし)は、売上高が500億円、営業利益が17億円、経常利益が16億円、親会社株主帰属当期純利益が15億円としている。特別利益には固定資産譲渡益(IW日本橋ビル、引渡日22年3月、譲渡益約6億50百万円)を計上予定である。配当予想は21年11月期と同額の18円(第2四半期末9円、期末9円)としている。

 収益認識会計基準適用の影響としては、従来方法と比較して売上高が約230億円減少する見込みだが、営業利益、経常利益、親会社株主帰属当期純利益への影響はないとしている。各利益の増減率を21年11月期実績値との単純比較で算出すると、営業利益は23.9%減益、経常利益は33.9%減益、親会社株主帰属当期純利益は13.6%減益となる。

 事業環境の不透明感、薬価改定、のれん償却、新製品開発に向けた先行投資などを考慮して減益予想としている。営業利益の前期比増減計画は、ファインケミカル事業が3.7億円減益、医薬事業が4.8億円減益、HBC・食品事業が不採算取引減少や化粧品回復などで1.4億円増益、化学品事業が需要好調で1.8億円増益としている。

 第1四半期は売上高が122億85百万円(前年同期は169億75百万円)で、営業利益が6億30百万円(同6億63百万円)、経常利益が6億59百万円(同7億05百万円)、そして親会社株主帰属四半期純利益が4億49百万円(同3億98百万円)だった。

 収益認識会計基準適用の影響額として、従来方法に比べて売上高が53億79百万円減少、売上原価が53億57百万円減少、営業利益、経常利益、税金等調整前四半期純利益がそれぞれ12百万円減少している。営業利益以下への影響は軽微である。

 なお収益認識会計基準適用前ベースでは、売上高が前年同期比4.1%増の176億65百万円、営業利益が3.1%減の6億42百万円、経常利益が4.8%減の6億72百万円、税金等調整前四半期純利益が4.8%減の6億71百万円だった。先行投資などの影響で小幅減益だった。

 ファインケミカル事業は売上高が37億63百万円(同53億16百万円)で、利益(調整前営業利益)が5億20百万円(同2億03百万円)だった。CDMO分野において顧客関係強化や新規顧客開発を推進し、新規GE品目や新規中間体などが順調だった。CDMO分野においても新規サービスなどが順調だった。

 HBC・食品事業は売上高が35億49百万円(同65億88百万円)で、利益が95百万円の赤字(同2億35百万円の赤字)だった。食品分野、化粧品分野、マルマンH&Bが好調に推移した。特に化粧品原料が大幅伸長して赤字縮小した。

 医薬事業は売上高が27億46百万円(同31億74百万円)で、利益が1億56百万円(同6億25百万円)だった。医療用医薬品ではアトピー性皮膚炎治療薬などが伸長した。出資先であるキノファーマとの新薬製剤共同開発も順調だった。

 化学品事業は売上高が22億26百万円(同18億96百万円)で、利益が40百万円(同80百万円)だった。表面処理薬品、表面処理設備とも需要拡大で順調だった。

 第1四半期は小幅減益だったが、通期予想に対する進捗率は売上高24.6%、営業利益37.1%、経常利益41.2%、親会社株主帰属当期純利益29.9%で、利益進捗率が高水準だった。22年11月期は不透明感や先行投資などを考慮して減益予想としているが上振れ余地がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。

■株主優待制度は毎年11月末時点で1年以上保有株主対象

 株主優待制度は毎年11月末時点で100株(1単元)以上を継続して1年以上保有する株主を対象として実施している。グループ化粧品詰め合わせセットなどを贈呈(詳細は会社HP参照)する。

■株価はモミ合い上放れ

 株価は安値圏でのモミ合いから上放れの動きを強めている。高配当利回りや低PBRも見直して戻りを試す展開を期待したい。6月30日の終値は446円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS37円62銭で算出)は約12倍、今期予想配当利回り(会社予想の18円で算出)は約4.0%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS677円09銭で算出)は約0.7倍、そして時価総額は約182億円である。(情報提供:日 本インタビュ新聞社=Media−IR
[06月20日更新]

アステナホールディングスは下値固め完了、22年11月期は先行投資で減益予想だが上振れ余地

 アステナホールディングス<8095>(東証プライム)はヘルスケア・ファインケミカル企業集団として、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。さらにM&Aも積極活用して、4つの新しい戦略的ビジネスモデル(調達プラットフォーム事業、インキュベーション事業、注射剤CDMO事業、塗り薬CDM事業)を構築している。22年11月期は先行投資などを考慮して減益予想としているが、第1四半期の利益進捗率が高水準であり、通期予想に上振れ余地がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。株価は年初来安値圏でモミ合う形だが下値固め完了感を強めている。出直りを期待したい。なお7月13日に22年11月期第2四半期決算発表を予定している。

■ヘルスケア・ファインケミカル企業集団

 旧イワキが21年6月1日付で持株会社体制に移行して商号をアステナホールディングスに変更した。アステナは「明日(未来)+サステナブル(持続可能)」の造語である。ヘルスケア・ファインケミカル企業集団として、製造分野が利益柱となり、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。

 21年11月期のセグメント別売上高構成比はファインケミカル事業(医薬品のCMC研究開発・製造受託、医薬品原料の製造販売)が32%、医薬事業(医薬品・医療機器の製造販売)が17%、HBC・食品事業(化粧品原料の販売、食品原料・機能性食品の製造販売、一般用医薬品の卸売、化粧品の通信販売)が39%、化学品事業(表面処理薬品の製造販売、プリント基板製造プラントの製造販売)が12%、営業利益(全社費用等調整前)の構成比はファインケミカル事業が58%、医薬事業が40%、HBC・食品事業が▲14%、化学品事業が16%だった。

■4つの新しい戦略的ビジネスモデル

 M&Aも積極活用して、4つの新しい戦略的ビジネスモデル(調達プラットフォーム事業、インキュベーション事業、注射剤CDMO事業、塗り薬CDM事業)を構築している。

 ファインケミカル事業は、20年3月に子会社化した医薬品CMC研究開発・製造受託のスペラファーマと、スペラファーマの子会社として20年7月に設立したスペラネクサスを中心に展開している。さらに岩城製薬のファインケミカル事業をスペラネクサスに承継し、医薬品原薬のCMC研究開発から製造受託・販売まで一貫体制を構築した。20年6月にはスペラファーマが創薬ベンチャーのジェイファーマに出資した。21年4月にはスペラファーマがペプチド合成技術を保有するJITSUBOを子会社化した。

 なお21年3月には岩城製薬(スペラネクサスに承継)が、オンコリスバイオファーマ<4588>の新型コロナウイルス感染症治療薬OBP―2011の臨床試験開始に必要な治験薬原薬の製造法開発とGMP製造を受託することで基本合意し、21年7月にはスペラファーマがオンコロスバイオファーマからOBP―2011の治験薬製剤のGMP製造を受託することで基本合意した。

 22年2月にはスペラファーマがインタープロテインと、アンメット・メディカル・ニーズの高い様々な疾患に対する新規低分子およびペプチド医薬品の研究開発、製造ならびに商業化を目的とした包括的協業に関する覚書を締結した。

 医薬事業は岩城製薬と、20年7月に鳥居薬品佐倉工場を継承した岩城製薬佐倉工場を中心に展開している。さらに20年1月には医療用後発医薬品・一般用医薬品開発の前田薬品工業に出資、21年1月には岩城製薬が医薬品開発のキノファーマに出資して業務提携している。21年4月には岩城製薬がインタープロテインとCOVID―19治療薬の共同研究契約を締結した。22年4月には岩城製薬がヤンセンファーマから「ニゾラールローション2%」の日本における製造販売承認を承継・販売移管予定である。岩城製薬にとって初の長期収載品の扱いとなる。

 HBC・食品事業はイワキ(イワキ分割準備会社が21年6月商号変更)とアプロスを中心に展開している。20年12月には健康食品・化粧品販売のマルマンH&Bを子会社化、21年7月にはイワキがスカイネットから薬事サポート事業、自社開発事業および輸入製販事業を譲り受け、21年9月にはイワキが住建情報センターのヘルスケア事業を譲り受けた。22年1月にはイワキが食品原料調達WEBプラットフォーム「シェアシマ」を運営するICS―netに資本参加した。

 化学品事業はメルテックス、東京化工機、および海外子会社等を中心に展開している。

■SDGsへの取り組み推進

 持株会社体制への移行に伴い、グループ全体のBCP(事業継続計画)対策および従業員の働き方・生き方の選択肢多様化を目的として、21年6月に本社機能の一部を石川県珠洲市に移転した。さらに、石川県珠洲市が地方創生に向けた人材育成事業の一環として行っている能登SDGsラボと協業し、30年までにSDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進する。

 21年6月には新規事業のインキュベーションを担う専任部署として新規事業推進室を設置した。SDGs推進に向けて、化粧品原料・製品(グループ会社JITSUBOのペプチド合成法Molecular Hivingによる高品質で環境に優しく、コスト優位性のある化粧品原料・製品)事業、地方創生に繋がるハイブリッド型ふるさと納税プラットフォーム事業、健康食品原料事業(国産の安心・安全な健康食品原料・製品の第6次産業化を目的として、石川県珠洲市で健康食品の原料となる植物等の栽培を行う事業)などを推進する。

 21年7月には、奥能登地域のSDGS達成支援を目的とするファンド「奥能登SDGs投資事業有限責任組合(奥能登SDGsファンド)」に出資した。特定子会社となる。21年8月には、グループの業務サポートやファシリティーサービスを提供するアステナハートフル(21年6月設立)が、障害者の雇用の促進等に関する法律に基づく特例子会社の認定を取得した。

 21年11月には能登地域のSDGs達成の支援を目的として、能登地域の自治体3市(七尾市、輪島市、珠洲市)・2町(穴水町、能都町)、および国立大学法人金沢大学、奥能登信用金庫、のと共栄信用金庫、北國フィナンシャルホールディングス、BPキャピタルと、SDGs推進に係る連携と協力に関する協定を締結した。21年12月には子会社のイワキ総合研究所の商号をアステナミネルヴァに変更した。新規事業推進室を移設し、事業内容も地方創生に関連する事業に変更した。

■中長期ビジョンの目標は売上高1300億円以上、ROE13%以上

 2030年に向けたグループ中長期ビジョン「Astena2030」では、定量的ターゲットとして30年11月期の売上高1300億円以上、ROE13%以上を掲げ、中期経営計画(ローリング形式、新会計基準)の目標値は24年11月期の売上高600億円、営業利益38億円、ROE8.9%としている。

 セグメント別30年11月期目標値は、ファインケミカル事業が売上高400億円で営業利益率9%、医薬事業が売上高228億円で営業利益率13%、化学品事業が売上高130億円で営業利益率10%、HBC・食品事業が売上高450億円で営業利益率3%としている。

 基本戦略としては、プラットフォーム戦略(CMC=医療用医薬品研究開発の国内トップレベルでの受託、ヘルスケア調達プラットフォーム=医薬品・化粧品・機能性食品製造会社の全ニーズをカバー、創薬インキュベーション=CMC提供を通じて新薬開発の成功確率を高める、CDMO=注射剤・外皮用剤・治験薬の受託製造)、ニッチトップ戦略(外皮用剤ジェネリック医薬品=国内塗り薬ジェネリック医薬品市場NO.1、ハイエンド表面処理薬品=エレクトロニクスに特化した表面処理薬品)、ソーシャルインパクト戦略(シニア・アクティベイト=化粧品・機能性食品の提供を通じてシニア総アクティブ化推進)を掲げている。

 ファインケミカル事業は、CMC・CDMO事業および調達プラットフォーム事業を2本柱として、原材料調達からCMC研究、原薬商用生産までの医薬品開発・製造の幅広いサービスを提供する。

 医薬事業は、皮膚科領域をベースとして外皮用剤品目数および生産キャパシティでトップ、グローバル要求水準に対応して高活性注射剤CDMOのトップを目指す。また外皮用剤、注射剤導入、新薬共同開発、M&A・アライアンスで事業基盤強化・拡大を目指す。

 化学品事業は、エレクトロニクス実装市場のトレンドを捉えたニッチトップ商品の継続的開発、ハイエンドパッケージ基板での地位確立、チップ部品用途の台湾・中国大手での採用、半導体パワー・センサー系薬品の差別化を推進する。またグローバル企業との共同開発も推進して成長を目指す。

 HBC・食品事業は、原料ビジネスのDX化による顧客の開発・調達プロセスの課題解決プラットフォームの提供、独自性を高めた商品・サービスの提供による市場価値増大を推進する。またダイレクトマーケティング領域への投資を実行して、領域特化型ネットワークを構築する。

 その他では既存事業との親和性、将来に亘る成長性、グループ全体への波及効果なども勘案して、SDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進することを目標とする。

 なお資本効率向上に向けた拠点見直しの一環として、21年6月に名古屋オフィスおよび福岡オフィスの不動産を譲渡すると発表している。譲渡時期は未定だが、譲渡後も賃借で継続利用する。

■22年11月期は先行投資などで減益予想だが上振れ余地

 22年11月期の連結業績予想(収益認識会計基準適用のため前期比増減率は非掲載、利益への影響なし)は、売上高が500億円、営業利益が17億円、経常利益が16億円、親会社株主帰属当期純利益が15億円としている。特別利益には固定資産譲渡益(IW日本橋ビル、引渡日22年3月、譲渡益約6億50百万円)を計上予定である。配当予想は21年11月期と同額の18円(第2四半期末9円、期末9円)としている。

 収益認識会計基準適用の影響としては、従来方法と比較して売上高が約230億円減少する見込みだが、営業利益、経常利益、親会社株主帰属当期純利益への影響はないとしている。各利益の増減率を21年11月期実績値との単純比較で算出すると、営業利益は23.9%減益、経常利益は33.9%減益、親会社株主帰属当期純利益は13.6%減益となる。

 事業環境の不透明感、薬価改定、のれん償却、新製品開発に向けた先行投資などを考慮して減益予想としている。営業利益の前期比増減計画は、ファインケミカル事業が3.7億円減益、医薬事業が4.8億円減益、HBC・食品事業が不採算取引減少や化粧品回復などで1.4億円増益、化学品事業が需要好調で1.8億円増益としている。

 第1四半期は売上高が122億85百万円(前年同期は169億75百万円)で、営業利益が6億30百万円(同6億63百万円)、経常利益が6億59百万円(同7億05百万円)、そして親会社株主帰属四半期純利益が4億49百万円(同3億98百万円)だった。

 収益認識会計基準適用の影響額として、従来方法に比べて売上高が53億79百万円減少、売上原価が53億57百万円減少、営業利益、経常利益、税金等調整前四半期純利益がそれぞれ12百万円減少している。営業利益以下への影響は軽微である。

 なお収益認識会計基準適用前ベースでは、売上高が前年同期比4.1%増の176億65百万円、営業利益が3.1%減の6億42百万円、経常利益が4.8%減の6億72百万円、税金等調整前四半期純利益が4.8%減の6億71百万円だった。先行投資などの影響で小幅減益だった。

 ファインケミカル事業は売上高が37億63百万円(同53億16百万円)で、利益(調整前営業利益)が5億20百万円(同2億03百万円)だった。CDMO分野において顧客関係強化や新規顧客開発を推進し、新規GE品目や新規中間体などが順調だった。CDMO分野においても新規サービスなどが順調だった。

 HBC・食品事業は売上高が35億49百万円(同65億88百万円)で、利益が95百万円の赤字(同2億35百万円の赤字)だった。食品分野、化粧品分野、マルマンH&Bが好調に推移した。特に化粧品原料が大幅伸長して赤字縮小した。

 医薬事業は売上高が27億46百万円(同31億74百万円)で、利益が1億56百万円(同6億25百万円)だった。医療用医薬品ではアトピー性皮膚炎治療薬などが伸長した。出資先であるキノファーマとの新薬製剤共同開発も順調だった。

 化学品事業は売上高が22億26百万円(同18億96百万円)で、利益が40百万円(同80百万円)だった。表面処理薬品、表面処理設備とも需要拡大で順調だった。

 第1四半期は小幅減益だったが、通期予想に対する進捗率は売上高24.6%、営業利益37.1%、経常利益41.2%、親会社株主帰属当期純利益29.9%で、利益進捗率が高水準だった。22年11月期は不透明感や先行投資などを考慮して減益予想としているが上振れ余地がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。

■株主優待制度は毎年11月末時点で1年以上保有株主対象

 株主優待制度は毎年11月末時点で100株(1単元)以上を継続して1年以上保有する株主を対象として実施している。グループ化粧品詰め合わせセットなどを贈呈(詳細は会社HP参照)する。

■株価は下値固め完了

 株価は年初来安値圏でモミ合う形だが下値固め完了感を強めている。指標面の割安感も評価材料として出直りを期待したい。6月17日の終値は410円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS37円62銭で算出)は約11倍、今期予想配当利回り(会社予想の18円で算出)は約4.4%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS677円09銭で算出)は約0.6倍、そして時価総額は約167億円である。(情報提供:日 本インタビュ新聞社=Media−IR
[05月23日更新]

アステナホールディングスは下値切り上げ、22年11月期は先行投資などで減益予想だが1Qの利益進捗率高水準

 アステナホールディングス<8095>(東証プライム)はヘルスケア・ファインケミカル企業集団として、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。さらにM&Aも積極活用して、4つの新しい戦略的ビジネスモデル(調達プラットフォーム事業、インキュベーション事業、注射剤CDMO事業、塗り薬CDM事業)の構築を推進している。22年11月期は不透明感や先行投資などを考慮して減益予想としているが、第1四半期の利益進捗率が高水準であり、通期予想に上振れ余地がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。株価は地合い悪化も影響して小動きだが、1月の年初来安値圏から徐々に下値を切り上げている。出直りを期待したい。

■ヘルスケア・ファインケミカル企業集団

 旧イワキが21年6月1日付で持株会社体制に移行して商号をアステナホールディングスに変更した。アステナは「明日(未来)+サステナブル(持続可能)」の造語である。ヘルスケア・ファインケミカル企業集団として、製造分野が利益柱となり、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。

 21年11月期のセグメント別売上高構成比はファインケミカル事業(医薬品のCMC研究開発・製造受託、医薬品原料の製造販売)が32%、医薬事業(医薬品・医療機器の製造販売)が17%、HBC・食品事業(化粧品原料の販売、食品原料・機能性食品の製造販売、一般用医薬品の卸売、化粧品の通信販売)が39%、化学品事業(表面処理薬品の製造販売、プリント基板製造プラントの製造販売)が12%、営業利益(全社費用等調整前)の構成比はファインケミカル事業が58%、医薬事業が40%、HBC・食品事業が▲14%、化学品事業が16%だった。

■4つの新しい戦略的ビジネスモデル

 M&Aも積極活用して、4つの新しい戦略的ビジネスモデル(調達プラットフォーム事業、インキュベーション事業、注射剤CDMO事業、塗り薬CDM事業)の構築を推進している。

 ファインケミカル事業は、20年3月に子会社化した医薬品CMC研究開発・製造受託のスペラファーマと、スペラファーマの子会社として20年7月に設立したスペラネクサスが展開している。さらに岩城製薬のファインケミカル事業をスペラネクサスに承継し、医薬品原薬のCMC研究開発から製造受託・販売まで一貫体制を構築した。20年6月にはスペラファーマが創薬ベンチャーのジェイファーマに出資、21年4月にはスペラファーマがペプチド合成技術を保有するJITSUBOを子会社化した。

 21年3月には岩城製薬(スペラネクサスに承継)が、オンコリスバイオファーマ<4588>の新型コロナウイルス感染症治療薬OBP―2011の臨床試験開始に必要な治験薬原薬の製造法開発とGMP製造を受託することで基本合意し、21年7月にはスペラファーマがオンコロスバイオファーマからOBP―2011の治験薬製剤のGMP製造を受託することで基本合意した。

 22年2月にはスペラファーマがインタープロテインと、アンメット・メディカル・ニーズの高い様々な疾患に対する新規低分子およびペプチド医薬品の研究開発、製造ならびに商業化を目的とした包括的協業に関する覚書を締結した。

 医薬事業は岩城製薬と、20年7月に鳥居薬品佐倉工場を継承した岩城製薬佐倉工場が展開している。さらに20年1月には医療用後発医薬品・一般用医薬品開発の前田薬品工業に出資、21年1月には岩城製薬が医薬品開発のキノファーマに出資して業務提携した。21年4月には岩城製薬がインタープロテインとCOVID―19治療薬の共同研究契約を締結した。22年4月には岩城製薬がヤンセンファーマから「ニゾラールローション2%」の日本における製造販売承認を承継・販売移管予定である。岩城製薬にとって初の長期収載品の扱いとなる。

 HBC・食品事業はイワキ(イワキ分割準備会社が21年6月商号変更)とアプロスが展開している。20年12月には健康食品・化粧品販売のマルマンH&Bを子会社化、21年7月にはイワキがスカイネットから薬事サポート事業、自社開発事業および輸入製販事業を譲り受け、21年9月にはイワキが住建情報センターのヘルスケア事業を譲り受けた。22年1月にはイワキが食品原料調達WEBプラットフォーム「シェアシマ」を運営するICS―netに資本参加した。

 化学品事業はメルテックス、東京化工機、および海外子会社等が展開している。

■SDGsへの取り組み推進

 持株会社体制への移行に伴い、グループ全体のBCP(事業継続計画)対策および従業員の働き方・生き方の選択肢多様化を目的として、21年6月に本社機能の一部を石川県珠洲市に移転した。さらに、石川県珠洲市が地方創生に向けた人材育成事業の一環として行っている能登SDGsラボと協業し、30年までにSDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進する。

 21年6月には新規事業のインキュベーションを担う専任部署として新規事業推進室を設置した。SDGs推進に向けて、化粧品原料・製品(グループ会社JITSUBOのペプチド合成法Molecular Hivingによる高品質で環境に優しく、コスト優位性のある化粧品原料・製品)事業、地方創生に繋がるハイブリッド型ふるさと納税プラットフォーム事業、健康食品原料事業(国産の安心・安全な健康食品原料・製品の第6次産業化を目的として、石川県珠洲市で健康食品の原料となる植物等の栽培を行う事業)などを推進する。

 21年7月には、奥能登地域のSDGS達成支援を目的とするファンド「奥能登SDGs投資事業有限責任組合(奥能登SDGsファンド)」に出資した。特定子会社となる。21年8月には、グループの業務サポートやファシリティーサービスを提供するアステナハートフル(21年6月設立)が、障害者の雇用の促進等に関する法律に基づく特例子会社の認定を取得した。

 21年11月には能登地域のSDGs達成の支援を目的として、能登地域の自治体3市(七尾市、輪島市、珠洲市)・2町(穴水町、能都町)、および国立大学法人金沢大学、奥能登信用金庫、のと共栄信用金庫、北國フィナンシャルホールディングス、BPキャピタルと、SDGs推進に係る連携と協力に関する協定を締結した。21年12月には子会社のイワキ総合研究所の商号をアステナミネルヴァに変更した。新規事業推進室を移設し、事業内容も地方創生に関連する事業に変更した。

■中長期ビジョンの目標は売上高1300億円以上、ROE13%以上

 2030年に向けたグループ中長期ビジョン「Astena2030」では、定量的ターゲットとして30年11月期の売上高1300億円以上、ROE13%以上を掲げ、中期経営計画(ローリング形式、新会計基準)の目標値は24年11月期の売上高600億円、営業利益38億円、ROE8.9%としている。

 セグメント別30年11月期目標値は、ファインケミカル事業が売上高400億円で営業利益率9%、医薬事業が売上高228億円で営業利益率13%、化学品事業が売上高130億円で営業利益率10%、HBC・食品事業が売上高450億円で営業利益率3%としている。

 基本戦略としては、プラットフォーム戦略(CMC=医療用医薬品研究開発の国内トップレベルでの受託、ヘルスケア調達プラットフォーム=医薬品・化粧品・機能性食品製造会社の全ニーズをカバー、創薬インキュベーション=CMC提供を通じて新薬開発の成功確率を高める、CDMO=注射剤・外皮用剤・治験薬の受託製造)、ニッチトップ戦略(外皮用剤ジェネリック医薬品=国内塗り薬ジェネリック医薬品市場NO.1、ハイエンド表面処理薬品=エレクトロニクスに特化した表面処理薬品)、ソーシャルインパクト戦略(シニア・アクティベイト=化粧品・機能性食品の提供を通じてシニア総アクティブ化推進)を掲げている。

 ファインケミカル事業は、CMC・CDMO事業および調達プラットフォーム事業を2本柱として、原材料調達からCMC研究、原薬商用生産までの医薬品開発・製造の幅広いサービスを提供する。

 医薬事業は、皮膚科領域をベースとして外皮用剤品目数および生産キャパシティでトップ、グローバル要求水準に対応して高活性注射剤CDMOのトップを目指す。また外皮用剤、注射剤導入、新薬共同開発、M&A・アライアンスで事業基盤強化・拡大を目指す。

 化学品事業は、エレクトロニクス実装市場のトレンドを捉えたニッチトップ商品の継続的開発、ハイエンドパッケージ基板での地位確立、チップ部品用途の台湾・中国大手での採用、半導体パワー・センサー系薬品の差別化を推進する。またグローバル企業との共同開発も推進して成長を目指す。

 HBC・食品事業は、原料ビジネスのDX化による顧客の開発・調達プロセスの課題解決プラットフォームの提供、独自性を高めた商品・サービスの提供による市場価値増大を推進する。またダイレクトマーケティング領域への投資を実行して、領域特化型ネットワークを構築する。

 その他では既存事業との親和性、将来に亘る成長性、グループ全体への波及効果なども勘案して、SDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進することを目標とする。

 なお資本効率向上に向けた拠点見直しの一環として、21年6月に名古屋オフィスおよび福岡オフィスの不動産を譲渡すると発表している。譲渡時期は未定だが、譲渡後も賃借で継続利用する。

■22年11月期は先行投資などで減益予想だが1Qの利益進捗率高水準

 22年11月期の連結業績予想(収益認識会計基準適用のため前期比増減率は非掲載、利益への影響なし)は、売上高が500億円、営業利益が17億円、経常利益が16億円、親会社株主帰属当期純利益が15億円としている。特別利益には固定資産譲渡益(IW日本橋ビル、引渡日22年3月、譲渡益約6億50百万円)を計上予定である。配当予想は21年11月期と同額の18円(第2四半期末9円、期末9円)としている。

 収益認識会計基準適用の影響としては、従来方法と比較して売上高が約230億円減少する見込みだが、営業利益、経常利益、親会社株主帰属当期純利益への影響はないとしている。各利益の増減率を21年11月期実績値との単純比較で算出すると、営業利益は23.9%減益、経常利益は33.9%減益、親会社株主帰属当期純利益は13.6%減益となる。

 事業環境の不透明感、薬価改定、のれん償却、新製品開発に向けた先行投資などを考慮して減益予想としている。営業利益の前期比増減計画は、ファインケミカル事業が3.7億円減益、医薬事業が4.8億円減益、HBC・食品事業が不採算取引減少や化粧品回復などで1.4億円増益、化学品事業が需要好調で1.8億円増益としている。

 第1四半期は売上高が122億85百万円(前年同期は169億75百万円)で、営業利益が6億30百万円(同6億63百万円)、経常利益が6億59百万円(同7億05百万円)、そして親会社株主帰属四半期純利益が4億49百万円(同3億98百万円)だった。

 収益認識会計基準適用の影響額として、従来方法に比べて売上高が53億79百万円減少、売上原価が53億57百万円減少、営業利益、経常利益、税金等調整前四半期純利益がそれぞれ12百万円減少している。営業利益以下への影響は軽微である。

 なお収益認識会計基準適用前ベースでは、売上高が前年同期比4.1%増の176億65百万円、営業利益が3.1%減の6億42百万円、経常利益が4.8%減の6億72百万円、税金等調整前四半期純利益が4.8%減の6億71百万円だった。先行投資などの影響で小幅減益だった。

 ファインケミカル事業は売上高が37億63百万円(同53億16百万円)で、利益(調整前営業利益)が5億20百万円(同2億03百万円)だった。CDMO分野において顧客関係強化や新規顧客開発を推進し、新規GE品目や新規中間体などが順調だった。CDMO分野においても新規サービスなどが順調だった。

 HBC・食品事業は売上高が35億49百万円(同65億88百万円)で、利益が95百万円の赤字(同2億35百万円の赤字)だった。食品分野、化粧品分野、マルマンH&Bが好調に推移した。特に化粧品原料が大幅伸長して赤字縮小した。

 医薬事業は売上高が27億46百万円(同31億74百万円)で、利益が1億56百万円(同6億25百万円)だった。医療用医薬品ではアトピー性皮膚炎治療薬などが伸長した。出資先であるキノファーマとの新薬製剤共同開発も順調だった。

 化学品事業は売上高が22億26百万円(同18億96百万円)で、利益が40百万円(同80百万円)だった。表面処理薬品、表面処理設備とも需要拡大で順調だった。

 第1四半期は小幅減益だったが、通期予想に対する進捗率は売上高24.6%、営業利益37.1%、経常利益41.2%、親会社株主帰属当期純利益29.9%で、利益進捗率が高水準だった。22年11月期は不透明感や先行投資などを考慮して減益予想としているが上振れ余地がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。

■株主優待制度は毎年11月末時点で1年以上保有株主対象

 株主優待制度は毎年11月末時点で100株(1単元)以上を継続して1年以上保有する株主を対象として実施している。グループ化粧品詰め合わせセットなどを贈呈(詳細は会社HP参照)する。

■株価は下値切り上げ

 株価は地合い悪化も影響して小動きだが、1月の年初来安値圏から徐々に下値を切り上げている。出直りを期待したい。5月20日の終値は418円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS37円62銭で算出)は約11倍、今期予想配当利回り(会社予想の18円で算出)は約4.3%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS677円09銭で算出)は約0.6倍、時価総額は約170億円である。(情報提供:日 本インタビュ新聞社=Media−IR)
[04月25日更新]

アステナホールディングスは下値切り上げ、22年11月期1Q減益だが利益進捗率高水準

 アステナホールディングス<8095>(東証プライム)はヘルスケア・ファインケミカル企業集団として、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。さらにM&Aも積極活用して、4つの新しい戦略的ビジネスモデル(調達プラットフォーム事業、インキュベーション事業、注射剤CDMO事業、塗り薬CDM事業)の構築を推進している。22年11月期第1四半期は先行投資の影響などで小幅減益だったが、利益進捗率は高水準であり、通期予想に上振れ余地がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。株価は小動きだが1月の年初来安値圏から徐々に下値を切り上げている。指標面の割安感も見直して戻りを試す展開を期待したい。

■ヘルスケア・ファインケミカル企業集団

 旧イワキが21年6月1日付で持株会社体制に移行して商号をアステナホールディングスに変更した。アステナは「明日(未来)+サステナブル(持続可能)」の造語である。ヘルスケア・ファインケミカル企業集団として、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。

 21年11月期のセグメント別売上高構成比はファインケミカル事業(医薬品のCMC研究開発・製造受託、医薬品原料の製造販売)が32%、医薬事業(医薬品・医療機器の製造販売)が17%、HBC・食品事業(化粧品原料の販売、食品原料・機能性食品の製造販売、一般用医薬品の卸売、化粧品の通信販売)が39%、化学品事業(表面処理薬品の製造販売、プリント基板製造プラントの製造販売)が12%、営業利益(全社費用等調整前)の構成比はファインケミカル事業が58%、医薬事業が40%、HBC・食品事業が▲14%、化学品事業が16%だった。

 なお営業利益の構成比を製造・非製造で分解すると、15年11月期は製造業分野が35%で非製造業分野が65%だったが、20年11月期は製造業分野が92%で非製造業分野が8%となり、専門商社からメーカーへの変貌を鮮明にしている。

■4つの新しい戦略的ビジネスモデル

 M&Aも積極活用して、4つの新しい戦略的ビジネスモデル(調達プラットフォーム事業、インキュベーション事業、注射剤CDMO事業、塗り薬CDM事業)の構築を推進している。

 ファインケミカル事業は、20年3月に子会社化した医薬品CMC研究開発・製造受託のスペラファーマと、スペラファーマの子会社として20年7月に設立したスペラネクサスが展開している。さらに岩城製薬のファインケミカル事業をスペラネクサスに承継し、医薬品原薬のCMC研究開発から製造受託・販売まで一貫体制を構築した。20年6月にはスペラファーマが創薬ベンチャーのジェイファーマに出資、21年4月にはスペラファーマがペプチド合成技術を保有するJITSUBOを子会社化した。

 21年3月には岩城製薬(スペラネクサスに承継)が、オンコリスバイオファーマ<4588>の新型コロナウイルス感染症治療薬OBP―2011の臨床試験開始に必要な治験薬原薬の製造法開発とGMP製造を受託することで基本合意し、21年7月にはスペラファーマがオンコロスバイオファーマからOBP―2011の治験薬製剤のGMP製造を受託することで基本合意した。

 22年2月にはスペラファーマがインタープロテインと、アンメット・メディカル・ニーズの高い様々な疾患に対する新規低分子およびペプチド医薬品の研究開発、製造ならびに商業化を目的とした包括的協業に関する覚書を締結した。

 医薬事業は岩城製薬と、20年7月に鳥居薬品佐倉工場を継承した岩城製薬佐倉工場が展開している。さらに20年1月には医療用後発医薬品・一般用医薬品開発の前田薬品工業に出資、21年1月には岩城製薬が医薬品開発のキノファーマに出資して業務提携した。21年4月には岩城製薬がインタープロテインとCOVID―19治療薬の共同研究契約を締結した。22年4月には岩城製薬がヤンセンファーマから「ニゾラールローション2%」の日本における製造販売承認を承継・販売移管予定である。岩城製薬にとって初の長期収載品の扱いとなる。

 HBC・食品事業はイワキ(イワキ分割準備会社が21年6月商号変更)とアプロスが展開している。20年12月には健康食品・化粧品販売のマルマンH&Bを子会社化、21年7月にはイワキがスカイネットから薬事サポート事業、自社開発事業および輸入製販事業を譲り受け、21年9月にはイワキが住建情報センターのヘルスケア事業を譲り受けた。22年1月にはイワキが食品原料調達WEBプラットフォーム「シェアシマ」を運営するICS―netに資本参加した。

 化学品事業はメルテックス、東京化工機、および海外子会社等が展開している。

■SDGsへの取り組み推進

 持株会社体制への移行に伴い、グループ全体のBCP(事業継続計画)対策および従業員の働き方・生き方の選択肢多様化を目的として、21年6月に本社機能の一部を石川県珠洲市に移転した。さらに、石川県珠洲市が地方創生に向けた人材育成事業の一環として行っている能登SDGsラボと協業し、30年までにSDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進する。

 21年6月には新規事業のインキュベーションを担う専任部署として新規事業推進室を設置した。SDGs推進に向けて、化粧品原料・製品(グループ会社JITSUBOのペプチド合成法Molecular Hivingによる高品質で環境に優しく、コスト優位性のある化粧品原料・製品)事業、地方創生に繋がるハイブリッド型ふるさと納税プラットフォーム事業、健康食品原料事業(国産の安心・安全な健康食品原料・製品の第6次産業化を目的として、石川県珠洲市で健康食品の原料となる植物等の栽培を行う事業)などを推進する。

 21年7月には、奥能登地域のSDGS達成支援を目的とするファンド「奥能登SDGs投資事業有限責任組合(奥能登SDGsファンド)」に出資した。特定子会社となる。21年8月には、グループの業務サポートやファシリティーサービスを提供するアステナハートフル(21年6月設立)が、障害者の雇用の促進等に関する法律に基づく特例子会社の認定を取得した。

 21年11月には能登地域のSDGs達成の支援を目的として、能登地域の自治体3市(七尾市、輪島市、珠洲市)・2町(穴水町、能都町)、および国立大学法人金沢大学、奥能登信用金庫、のと共栄信用金庫、北國フィナンシャルホールディングス、BPキャピタルと、SDGs推進に係る連携と協力に関する協定を締結した。21年12月には子会社のイワキ総合研究所の商号をアステナミネルヴァに変更した。新規事業推進室を移設し、事業内容も地方創生に関連する事業に変更した。

■中長期ビジョンの目標は売上高1300億円以上、ROE13%以上

 2030年に向けたグループ中長期ビジョン「Astena2030」では、定量的ターゲットとして30年11月期の売上高1300億円以上、ROE13%以上を掲げ、中期経営計画(ローリング形式、新会計基準)の目標値は24年11月期の売上高600億円、営業利益38億円、ROE8.9%としている。

 セグメント別30年11月期目標値は、ファインケミカル事業が売上高400億円で営業利益率9%、医薬事業が売上高228億円で営業利益率13%、化学品事業が売上高130億円で営業利益率10%、HBC・食品事業が売上高450億円で営業利益率3%としている。

 基本戦略としては、プラットフォーム戦略(CMC=医療用医薬品研究開発の国内トップレベルでの受託、ヘルスケア調達プラットフォーム=医薬品・化粧品・機能性食品製造会社の全ニーズをカバー、創薬インキュベーション=CMC提供を通じて新薬開発の成功確率を高める、CDMO=注射剤・外皮用剤・治験薬の受託製造)、ニッチトップ戦略(外皮用剤ジェネリック医薬品=国内塗り薬ジェネリック医薬品市場NO.1、ハイエンド表面処理薬品=エレクトロニクスに特化した表面処理薬品)、ソーシャルインパクト戦略(シニア・アクティベイト=化粧品・機能性食品の提供を通じてシニア総アクティブ化推進)を掲げている。

 ファインケミカル事業は、CMC・CDMO事業および調達プラットフォーム事業を2本柱として、原材料調達からCMC研究、原薬商用生産までの医薬品開発・製造の幅広いサービスを提供する。

 医薬事業は、皮膚科領域をベースとして外皮用剤品目数および生産キャパシティでトップ、グローバル要求水準に対応して高活性注射剤CDMOのトップを目指す。また外皮用剤、注射剤導入、新薬共同開発、M&A・アライアンスで事業基盤強化・拡大を目指す。

 化学品事業は、エレクトロニクス実装市場のトレンドを捉えたニッチトップ商品の継続的開発、ハイエンドパッケージ基板での地位確立、チップ部品用途の台湾・中国大手での採用、半導体パワー・センサー系薬品の差別化を推進する。またグローバル企業との共同開発も推進して成長を目指す。

 HBC・食品事業は、原料ビジネスのDX化による顧客の開発・調達プロセスの課題解決プラットフォームの提供、独自性を高めた商品・サービスの提供による市場価値増大を推進する。またダイレクトマーケティング領域への投資を実行して、領域特化型ネットワークを構築する。

 その他では既存事業との親和性、将来に亘る成長性、グループ全体への波及効果なども勘案して、SDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進することを目標とする。

 なお資本効率向上に向けた拠点見直しの一環として、21年6月に名古屋オフィスおよび福岡オフィスの不動産を譲渡すると発表している。譲渡時期は未定だが、譲渡後も賃借で継続利用する。

■22年11月期1Q減益だが利益進捗率高水準

 22年11月期の連結業績予想(収益認識会計基準適用のため前期比増減率は非掲載、利益への影響なし)は、売上高が500億円、営業利益が17億円、経常利益が16億円、親会社株主帰属当期純利益が15億円としている。特別利益には固定資産譲渡益(IW日本橋ビル、引渡日22年3月、譲渡益約6億50百万円)を計上予定である。配当予想は21年11月期と同額の18円(第2四半期末9円、期末9円)としている。

 収益認識会計基準適用の影響としては、従来方法と比較して売上高が約230億円減少する見込みだが、営業利益、経常利益、親会社株主帰属当期純利益への影響はないとしている。各利益の増減率を21年11月期実績値との単純比較で算出すると、営業利益は23.9%減益、経常利益は33.9%減益、親会社株主帰属当期純利益は13.6%減益となる。

 事業環境の不透明感、薬価改定、のれん償却、新製品開発に向けた先行投資などを考慮して減益予想としている。営業利益の前期比増減計画は、ファインケミカル事業が3.7億円減益、医薬事業が4.8億円減益、HBC・食品事業が不採算取引減少や化粧品回復などで1.4億円増益、化学品事業が需要好調で1.8億円増益としている。

 第1四半期は売上高が122億85百万円(前年同期は169億75百万円)で、営業利益が6億30百万円(同6億63百万円)、経常利益が6億59百万円(同7億05百万円)、そして親会社株主帰属四半期純利益が4億49百万円(同3億98百万円)だった。

 収益認識会計基準適用の影響額として、従来方法に比べて売上高が53億79百万円減少、売上原価が53億57百万円減少、営業利益、経常利益、税金等調整前四半期純利益がそれぞれ12百万円減少している。営業利益以下への影響は軽微である。

 なお収益認識会計基準適用前ベースでは、売上高が前年同期比4.1%増の176億65百万円、営業利益が3.1%減の6億42百万円、経常利益が4.8%減の6億72百万円、税金等調整前四半期純利益が4.8%減の6億71百万円だった。先行投資などの影響で小幅減益だった。

 ファインケミカル事業は売上高が37億63百万円(同53億16百万円)で、利益(調整前営業利益)が5億20百万円(同2億03百万円)だった。CDMO分野において顧客関係強化や新規顧客開発を推進し、新規GE品目や新規中間体などが順調だった。CDMO分野においても新規サービスなどが順調だった。

 HBC・食品事業は売上高が35億49百万円(同65億88百万円)で、利益が95百万円の赤字(同2億35百万円の赤字)だった。食品分野、化粧品分野、マルマンH&Bが好調に推移した。特に化粧品原料が大幅伸長して赤字縮小した。

 医薬事業は売上高が27億46百万円(同31億74百万円)で、利益が1億56百万円(同6億25百万円)だった。医療用医薬品ではアトピー性皮膚炎治療薬などが伸長した。出資先であるキノファーマとの新薬製剤共同開発も順調だった。

 化学品事業は売上高が22億26百万円(同18億96百万円)で、利益が40百万円(同80百万円)だった。表面処理薬品、表面処理設備とも需要拡大で順調だった。

 第1四半期は小幅減益だったが、通期予想に対する進捗率は売上高24.6%、営業利益37.1%、経常利益41.2%、親会社株主帰属当期純利益29.9%で、利益進捗率が高水準だった。22年11月期は不透明感や先行投資などを考慮して減益予想としているが上振れ余地がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。

■株主優待制度は毎年11月末時点で1年以上保有株主対象

 株主優待制度は毎年11月末時点で100株(1単元)以上を継続して1年以上保有する株主を対象として実施している。グループ化粧品詰め合わせセットなどを贈呈(詳細は会社HP参照)する。

■株価は下値切り上げ

 株価は小動きだが1月の年初来安値圏から徐々に下値を切り上げている。指標面の割安感も見直して戻りを試す展開を期待したい。4月22日の終値は423円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS37円62銭で算出)は約11倍、今期予想配当利回り(会社予想の18円で算出)は約4.3%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS677円09銭で算出)は約0.6倍、そして時価総額は約172億円である。(情報提供:日 本インタビュ新聞社=Media−IR
[04月14日更新]

アステナホールディングスは22年11月期1Qの利益進捗率高水準

 アステナホールディングス<8095>(東証プライム)(旧イワキが21年6月1日付で持株会社に移行して社名変更)は、4月13日の取引時間終了後に22年11月期第1四半期連結業績(収益認識会計基準適用のため前年比増減率は非記載、営業利益以下への影響軽微)を発表した。先行投資などの影響で小幅減益だが、利益進捗率は高水準だった。通期減益予想を据え置いているが上振れ余地がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。株価は1月の年初来安値圏で底打ちし、その後は徐々に下値を切り上げている。第1四半期利益の高進捗率を評価して出直りを期待したい。

■22年11月期1Q小幅減益だが、利益進捗率高水準

 22年11月期第1四半期の連結業績は、売上高が122億85百万円(前年同期は169億75百万円)、営業利益が6億30百万円(同6億63百万円)、経常利益が6億59百万円(同7億05百万円)、親会社株主帰属四半期純利益が4億49百万円(同3億98百万円)だった。

 収益認識会計基準適用の影響額として、従来方法に比べて売上高が53億79百万円減少、売上原価が53億57百万円減少、営業利益、経常利益、税金等調整前四半期純利益がそれぞれ12百万円減少している。営業利益以下への影響は軽微である。

 なお収益認識会計基準適用前ベースでは、売上高が前年同期比4.1%増の176億65百万円、営業利益が3.1%減の6億42百万円、経常利益が4.8%減の6億72百万円、税金等調整前四半期純利益が4.8%減の6億71百万円だった。先行投資などの影響で小幅減益だった。

 ファインケミカル事業は売上高が37億63百万円(同53億16百万円)で、利益(調整前営業利益)が5億20百万円(同2億03百万円)だった。CDMO分野において顧客関係強化や新規顧客開発を推進し、新規GE品目や新規中間体などが順調だった。CDMO分野においても新規サービスなどが順調だった。

 HBC・食品事業は売上高が35億49百万円(同65億88百万円)で、利益が95百万円の赤字(同2億35百万円の赤字)だった。食品分野、化粧品分野、マルマンH&Bが好調に推移した。特に化粧品原料が大幅伸長して赤字縮小した。

 医薬事業は売上高が27億46百万円(同31億74百万円)で、利益が1億56百万円(同6億25百万円)だった。医療用医薬品ではアトピー性皮膚炎治療薬などが伸長した。出資先であるキノファーマとの新薬製剤共同開発も順調だった。

 化学品事業は売上高が22億26百万円(同18億96百万円)で、利益が40百万円(同80百万円)だった。表面処理薬品、表面処理設備とも需要拡大で順調だった。

 通期の連結業績予想(収益認識会計基準適用のため前期比増減率は非掲載、売上高が従来の方法と比較して減少するが、営業利益以下への影響は軽微)は据え置いて、売上高が500億円、営業利益が17億円、経常利益が16億円、親会社株主帰属当期純利益が15億円としている。配当予想は21年11月期と同額の18円(第2四半期末9円、期末9円)としている。

 なお各利益を収益認識会計基準適用前の21年11月期実績との単純比較で算出すると、営業利益は25.5%減益、経常利益は35.2%減益、親会社株主帰属当期純利益は15.3%減益となる。

 第1四半期は小幅減益だったが、通期予想に対する進捗率は売上高24.6%、営業利益37.1%、経常利益41.2%、親会社株主帰属当期純利益29.9%で、利益進捗率が高水準だった。22年11月期は不透明感や先行投資などを考慮して減益予想としているが上振れ余地がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。

■株価は下値固め完了

 株価は1月の年初来安値圏で底打ちし、その後は徐々に下値を切り上げている。第1四半期利益の高進捗率を評価して出直りを期待したい。4月13日の終値は418円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS37円62銭で算出)は約11倍、時価総額は約170億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media−IR
[04月04日更新]

アステナホールディングスは戻り試す、22年11月期減益予想だが保守的

 アステナホールディングス<8095>(東証プライム)はヘルスケア・ファインケミカル企業集団として、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌した。さらにM&Aも積極活用してグループ戦略を再構築し、4つの新しい戦略的ビジネスモデル(調達プラットフォーム事業、インキュベーション事業、注射剤CDMO事業、塗り薬CDM事業)を構築している。22年11月期は不透明感や先行投資などを考慮して減益予想としているが保守的だろう。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。株価は下値を徐々に切り上げている。指標面の割安感も見直し材料であり、調整一巡して戻りを試す展開を期待したい。

■ヘルスケア・ファインケミカル企業集団

 旧イワキが21年6月1日付で持株会社体制に移行して商号をアステナホールディングスに変更した。アステナは「明日(未来)+サステナブル(持続可能)」の造語である。ヘルスケア・ファインケミカル企業集団として、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌した。

 21年11月期のセグメント別売上高構成比はファインケミカル事業(医薬品のCMC研究開発・製造受託、医薬品原料の製造販売)が32%、医薬事業(医薬品・医療機器の製造販売)が17%、HBC・食品事業(化粧品原料の販売、食品原料・機能性食品の製造販売、一般用医薬品の卸売、化粧品の通信販売)が39%、化学品事業(表面処理薬品の製造販売、プリント基板製造プラントの製造販売)が12%、営業利益(全社費用等調整前)の構成比はファインケミカル事業が58%、医薬事業が40%、HBC・食品事業が▲14%、化学品事業が16%だった。

 なお営業利益の構成比を製造・非製造で分解すると、15年11月期は製造業分野が35%で非製造業分野が65%だったが、20年11月期は製造業分野が92%で非製造業分野が8%となり、専門商社からメーカーへの変貌を鮮明にしている。

■グループ戦略を再構築

 M&Aも積極活用してグループ戦略を再構築し、4つの新しい戦略的ビジネスモデル(調達プラットフォーム事業、インキュベーション事業、注射剤CDMO事業、塗り薬CDM事業)を構築している。

 ファインケミカル事業は、20年3月に子会社化した医薬品CMC研究開発・製造受託のスペラファーマと、スペラファーマの子会社として20年7月に設立したスペラネクサスが展開している。さらに岩城製薬のファインケミカル事業をスペラネクサスに承継し、医薬品原薬のCMC研究開発から製造受託・販売まで一貫体制を構築した。20年6月にはスペラファーマが創薬ベンチャーのジェイファーマに出資、21年4月にはスペラファーマがペプチド合成技術を保有するJITSUBOを子会社化した。

 21年3月には岩城製薬(スペラネクサスに承継)が、オンコリスバイオファーマ<4588>の新型コロナウイルス感染症治療薬OBP―2011の臨床試験開始に必要な治験薬原薬の製造法開発とGMP製造を受託することで基本合意した。21年7月にはスペラファーマがオンコロスバイオファーマからOBP―2011の治験薬製剤のGMP製造を受託することで基本合意した。22年2月にはスペラファーマがインタープロテインと、アンメット・メディカル・ニーズの高い様々な疾患に対する新規低分子およびペプチド医薬品の研究開発、製造ならびに商業化を目的とした包括的協業に関する覚書を締結した。

 医薬事業は岩城製薬と、20年7月に鳥居薬品佐倉工場を継承した岩城製薬佐倉工場が展開している。さらに20年1月には医療用後発医薬品・一般用医薬品開発の前田薬品工業に出資、21年1月には岩城製薬が医薬品開発のキノファーマに出資して業務提携した。21年4月には岩城製薬がインタープロテインとCOVID―19治療薬の共同研究契約を締結した。22年4月には岩城製薬がヤンセンファーマから「ニゾラールローション2%」の日本における製造販売承認を承継・販売移管予定である。岩城製薬にとって初の長期収載品の扱いとなる。

 HBC・食品事業はイワキ(イワキ分割準備会社が21年6月商号変更)とアプロスが展開している。20年12月には健康食品・化粧品販売のマルマンH&Bを子会社化、21年7月にはイワキがスカイネットから薬事サポート事業、自社開発事業および輸入製販事業を譲り受け、21年9月にはイワキが住建情報センターのヘルスケア事業を譲り受けた。さらに22年1月にはイワキが食品原料調達WEBプラットフォーム「シェアシマ」を運営するICS―netに資本参加した。

 化学品事業はメルテックス、東京化工機、および海外子会社等が展開している。

■SDGsへの取り組み推進

 持株会社体制への移行に伴い、グループ全体のBCP(事業継続計画)対策および従業員の働き方・生き方の選択肢多様化を目的として、21年6月に本社機能の一部を石川県珠洲市に移転した。さらに、石川県珠洲市が地方創生に向けた人材育成事業の一環として行っている能登SDGsラボと協業し、30年までにSDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進する。

 21年6月には新規事業のインキュベーションを担う専任部署として新規事業推進室を設置した。SDGs推進に向けて、化粧品原料・製品(グループ会社JITSUBOのペプチド合成法Molecular Hivingによる高品質で環境に優しく、コスト優位性のある化粧品原料・製品)事業、地方創生に繋がるハイブリッド型ふるさと納税プラットフォーム事業、健康食品原料事業(国産の安心・安全な健康食品原料・製品の第6次産業化を目的として、石川県珠洲市で健康食品の原料となる植物等の栽培を行う事業)などを推進する。

 21年7月には、奥能登地域のSDGS達成支援を目的とするファンド「奥能登SDGs投資事業有限責任組合(奥能登SDGsファンド)」に出資した。特定子会社となる。21年8月には、グループの業務サポートやファシリティーサービスを提供するアステナハートフル(21年6月設立)が、障害者の雇用の促進等に関する法律に基づく特例子会社の認定を取得した。

 21年11月には能登地域のSDGs達成の支援を目的として、能登地域の自治体3市(七尾市、輪島市、珠洲市)・2町(穴水町、能都町)、および国立大学法人金沢大学、奥能登信用金庫、のと共栄信用金庫、北國フィナンシャルホールディングス、BPキャピタルと、SDGs推進に係る連携と協力に関する協定を締結した。21年12月には子会社のイワキ総合研究所の商号をアステナミネルヴァに変更した。新規事業推進室を移設し、事業内容も地方創生に関連する事業に変更した。

■中長期ビジョンの目標は売上高1300億円以上、ROE13%以上

 2030年に向けたグループ中長期ビジョン「Astena2030」では、定量的ターゲットとして30年11月期の売上高1300億円以上、ROE13%以上を掲げ、中期経営計画(ローリング形式、新会計基準)の目標値は24年11月期の売上高600億円、営業利益38億円、ROE8.9%としている。

 セグメント別30年11月期目標値は、ファインケミカル事業が売上高400億円で営業利益率9%、医薬事業が売上高228億円で営業利益率13%、化学品事業が売上高130億円で営業利益率10%、HBC・食品事業が売上高450億円で営業利益率3%としている。

 基本戦略としては、プラットフォーム戦略(CMC=医療用医薬品研究開発の国内トップレベルでの受託、ヘルスケア調達プラットフォーム=医薬品・化粧品・機能性食品製造会社の全ニーズをカバー、創薬インキュベーション=CMC提供を通じて新薬開発の成功確率を高める、CDMO=注射剤・外皮用剤・治験薬の受託製造)、ニッチトップ戦略(外皮用剤ジェネリック医薬品=国内塗り薬ジェネリック医薬品市場NO.1、ハイエンド表面処理薬品=エレクトロニクスに特化した表面処理薬品)、ソーシャルインパクト戦略(シニア・アクティベイト=化粧品・機能性食品の提供を通じてシニア総アクティブ化推進)を掲げている。

 ファインケミカル事業は、CMC・CDMO事業および調達プラットフォーム事業を2本柱として、原材料調達からCMC研究、原薬商用生産までの医薬品開発・製造の幅広いサービスを提供する。

 医薬事業は、皮膚科領域をベースとして外皮用剤品目数および生産キャパシティでトップ、グローバル要求水準に対応して高活性注射剤CDMOのトップを目指す。また外皮用剤、注射剤導入、新薬共同開発、M&A・アライアンスで事業基盤強化・拡大を目指す。

 化学品事業は、エレクトロニクス実装市場のトレンドを捉えたニッチトップ商品の継続的開発、ハイエンドパッケージ基板での地位確立、チップ部品用途の台湾・中国大手での採用、半導体パワー・センサー系薬品の差別化を推進する。またグローバル企業との共同開発も推進して成長を目指す。

 HBC・食品事業は、原料ビジネスのDX化による顧客の開発・調達プロセスの課題解決プラットフォームの提供、独自性を高めた商品・サービスの提供による市場価値増大を推進する。またダイレクトマーケティング領域への投資を実行して、領域特化型ネットワークを構築する。

 その他では既存事業との親和性、将来に亘る成長性、グループ全体への波及効果なども勘案して、SDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進することを目標とする。

 なお資本効率向上に向けた拠点見直しの一環として、21年6月に名古屋オフィスおよび福岡オフィスの不動産を譲渡すると発表している。譲渡時期は未定だが、譲渡後も賃借で継続利用する。また22年1月には組織変更を発表した。事業戦略見直しを図ることを目的として、事業戦略および財務に対する権限・責任を代表取締役社長に集中させた。

■22年11月期減益予想だが保守的

 22年11月期の連結業績予想(収益認識会計基準適用のため前期比増減率は非掲載、利益への影響なし)は、売上高が500億円、営業利益が17億円、経常利益が16億円、親会社株主帰属当期純利益が15億円としている。特別利益には固定資産譲渡益(IW日本橋ビル、引渡日22年3月予定、譲渡益約6億50百万円)を計上予定である。配当予想は21年11月期と同額の18円(第2四半期末9円、期末9円)としている。

 収益認識会計基準適用の影響としては、従来方法と比較して売上高が約230億円減少する見込みだが、営業利益、経常利益、親会社株主帰属当期純利益への影響はないとしている。各利益の増減率を21年11月期実績値との単純比較で算出すると、営業利益は23.9%減益、経常利益は33.9%減益、親会社株主帰属当期純利益は13.6%減益となる。

 事業環境の不透明感、薬価改定、のれん償却、新製品開発に向けた先行投資などを考慮して減益予想としている。営業利益の前期比増減計画は、ファインケミカル事業が3.7億円減益、医薬事業が4.8億円減益、HBC・食品事業が不採算取引減少や化粧品回復などで1.4億円増益、化学品事業が需要好調で1.8億円増益としている。22年11月期は不透明感や先行投資などを考慮して減益予想としているが保守的だろう。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。

■株主優待制度は毎年11月末時点で1年以上保有株主対象

 株主優待制度は毎年11月末時点で100株(1単元)以上を継続して1年以上保有する株主を対象として実施している。グループ化粧品詰め合わせセットなどを贈呈(詳細は会社HP参照)する。

■株価は戻り試す

 株価は下値を徐々に切り上げている。指標面の割安感も見直し材料であり、調整一巡して戻りを試す展開を期待したい。4月1日の終値は438円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS37円62銭で算出)は約12倍、今期予想配当利回り(会社予想の18円で算出)は約4.1%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS677円09銭で算出)は約0.6倍、そして時価総額は約179億円である。(情報提供:日 本インタビュ新聞社=Media−IR
[02月28日更新]

アステナホールディングスは反発の動き、22年11月期減益予想だが保守的

 アステナホールディングス<8095 旧イワキ>(東1、新市場区分プライム)はヘルスケア・ファインケミカル企業集団を目指し、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。M&Aも積極活用してグループ戦略を再構築し、4つの新しい戦略的ビジネスモデル(調達プラットフォーム事業、インキュベーション事業、注射剤CDMO事業、塗り薬CDM事業)を構築した。22年11月期は不透明感や先行投資などを考慮して減益予想としているが保守的だろう。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。株価は22年11月期減益予想を嫌気し、さらに地合い悪化も影響して昨年来安値を更新する展開だったが、調整一巡して反発の動きを強めている。出直りを期待したい。

■ヘルスケア・ファインケミカル企業集団

 旧イワキが21年6月1日付で持株会社体制に移行して商号をアステナホールディングスに変更した。アステナは「明日(未来)+サステナブル(持続可能)」の造語である。ヘルスケア・ファインケミカル企業集団を目指し、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。

 21年11月期のセグメント別売上高構成比はファインケミカル事業(医薬品のCMC研究開発・製造受託、医薬品原料の製造販売)が32%、医薬事業(医薬品・医療機器の製造販売)が17%、HBC・食品事業(化粧品原料の販売、食品原料・機能性食品の製造販売、一般用医薬品の卸売、化粧品の通信販売)が39%、化学品事業(表面処理薬品の製造販売、プリント基板製造プラントの製造販売)が12%、営業利益(全社費用等調整前)の構成比はファインケミカル事業が58%、医薬事業が40%、HBC・食品事業が▲14%、化学品事業が16%だった。

 なお営業利益の構成比を製造・非製造で分解すると、15年11月期は製造業分野が35%で非製造業分野が65%だったが、20年11月期は製造業分野が92%で非製造業分野が8%となり、専門商社からメーカーへの変貌を鮮明にしている。

■グループ戦略を再構築

 M&Aも積極活用してグループ戦略を再構築し、4つの新しい戦略的ビジネスモデル(調達プラットフォーム事業、インキュベーション事業、注射剤CDMO事業、塗り薬CDM事業)を構築した。

 ファインケミカル事業は、20年3月に子会社化した医薬品CMC研究開発・製造受託のスペラファーマと、スペラファーマの子会社として20年7月に設立したスペラネクサスが展開している。さらに岩城製薬のファインケミカル事業をスペラネクサスに承継し、医薬品原薬のCMC研究開発から製造受託・販売まで一貫体制を構築した。20年6月にはスペラファーマが創薬ベンチャーのジェイファーマに出資、21年4月にはスペラファーマがペプチド合成技術を保有するJITSUBOを子会社化した。

 また21年3月には岩城製薬(スペラネクサスに承継)が、オンコリスバイオファーマ<4588>が開発中の新型コロナウイルス感染症治療薬OBP―2011の臨床試験開始に必要な治験薬原薬の製造法開発とGMP製造を受託することで基本合意した。21年7月にはスペラファーマがオンコロスバイオファーマからOBP―2011の治験薬製剤のGMP製造を受託することで基本合意した。

 2月16日にはスペラファーマがインタープロテインと、アンメット・メディカル・ニーズの高い様々な疾患に対する新規低分子およびペプチド医薬品の研究開発、製造ならびに商業化を目的とした包括的協業に関する覚書を締結したと発表している。

 医薬事業は岩城製薬と、20年7月に鳥居薬品佐倉工場を継承した岩城製薬佐倉工場が展開している。さらに20年1月には医療用後発医薬品・一般用医薬品開発の前田薬品工業に出資、21年1月には岩城製薬が医薬品開発のキノファーマに出資して業務提携した。21年4月には岩城製薬がインタープロテインとCOVID―19治療薬の共同研究契約を締結した。22年4月には岩城製薬がヤンセンファーマから「ニゾラールローション2%」の日本における製造販売承認を承継・販売移管予定である。岩城製薬にとって初の長期収載品の扱いとなる。

 HBC・食品事業はイワキ(イワキ分割準備会社が21年6月商号変更)とアプロスが展開している。20年12月には健康食品・化粧品販売のマルマンH&Bを子会社化、21年7月にはイワキがスカイネットから薬事サポート事業、自社開発事業および輸入製販事業を譲り受け、21年9月にはイワキが住建情報センターのヘルスケア事業を譲り受けた。さらに22年1月にはイワキが食品原料調達WEBプラットフォーム「シェアシマ」を運営するICS―netに資本参加した。

 化学品事業はメルテックス、東京化工機、および海外子会社等が展開している。

■SDGsへの取り組み推進

 持株会社体制への移行に伴い、グループ全体のBCP(事業継続計画)対策および従業員の働き方・生き方の選択肢多様化を目的として、21年6月に本社機能の一部を石川県珠洲市に移転した。さらに、石川県珠洲市が地方創生に向けた人材育成事業の一環として行っている能登SDGsラボと協業し、30年までにSDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進する。

 21年6月には新規事業のインキュベーションを担う専任部署として新規事業推進室を設置した。SDGs推進に向けて、化粧品原料・製品(グループ会社JITSUBOのペプチド合成法Molecular Hivingによる高品質で環境に優しく、コスト優位性のある化粧品原料・製品)事業、地方創生に繋がるハイブリッド型ふるさと納税プラットフォーム事業、健康食品原料事業(国産の安心・安全な健康食品原料・製品の第6次産業化を目的として、石川県珠洲市で健康食品の原料となる植物等の栽培を行う事業)などを推進する。

 21年7月には、奥能登地域のSDGS達成支援を目的とするファンド「奥能登SDGs投資事業有限責任組合(奥能登SDGsファンド)」への出資を発表した。特定子会社となる。21年8月には、グループの業務サポートやファシリティーサービスを提供するアステナハートフル(21年6月設立)が、障害者の雇用の促進等に関する法律に基づく特例子会社の認定を取得した。

 21年11月には能登地域のSDGs達成の支援を目的として、能登地域の自治体3市(七尾市、輪島市、珠洲市)・2町(穴水町、能都町)、および国立大学法人金沢大学、奥能登信用金庫、のと共栄信用金庫、北國フィナンシャルホールディングス、BPキャピタルと、SDGs推進に係る連携と協力に関する協定を締結した。21年12月には子会社のイワキ総合研究所の商号をアステナミネルヴァに変更した。新規事業推進室を移設し、事業内容も地方創生に関連する事業に変更した。

■中長期ビジョンの目標は売上高1300億円以上、ROE13%以上

 2030年に向けたグループ中長期ビジョン「Astena2030」では、定量的ターゲットとして30年11月期の売上高1300億円以上、ROE13%以上を掲げ、中期経営計画(ローリング形式、新会計基準)の目標値は24年11月期の売上高600億円、営業利益38億円、ROE8.9%としている。

 セグメント別30年11月期目標値は、ファインケミカル事業が売上高400億円で営業利益率9%、医薬事業が売上高228億円で営業利益率13%、化学品事業が売上高130億円で営業利益率10%、HBC・食品事業が売上高450億円で営業利益率3%としている。

 基本戦略としては、プラットフォーム戦略(CMC=医療用医薬品研究開発の国内トップレベルでの受託、ヘルスケア調達プラットフォーム=医薬品・化粧品・機能性食品製造会社の全ニーズをカバー、創薬インキュベーション=CMC提供を通じて新薬開発の成功確率を高める、CDMO=注射剤・外皮用剤・治験薬の受託製造)、ニッチトップ戦略(外皮用剤ジェネリック医薬品=国内塗り薬ジェネリック医薬品市場NO.1、ハイエンド表面処理薬品=エレクトロニクスに特化した表面処理薬品)、ソーシャルインパクト戦略(シニア・アクティベイト=化粧品・機能性食品の提供を通じてシニア総アクティブ化推進)を掲げている。

 ファインケミカル事業は、CMC・CDMO事業および調達プラットフォーム事業を2本柱として、原材料調達からCMC研究、原薬商用生産までの医薬品開発・製造の幅広いサービスを提供する。

 医薬事業は、皮膚科領域をベースとして外皮用剤品目数および生産キャパシティでトップ、グローバル要求水準に対応して高活性注射剤CDMOのトップを目指す。また外皮用剤、注射剤導入、新薬共同開発、M&A・アライアンスで事業基盤強化・拡大を目指す。

 化学品事業は、エレクトロニクス実装市場のトレンドを捉えたニッチトップ商品の継続的開発、ハイエンドパッケージ基板での地位確立、チップ部品用途の台湾・中国大手での採用、半導体パワー・センサー系薬品の差別化を推進する。またグローバル企業との共同開発も推進して成長を目指す。

 HBC・食品事業は、原料ビジネスのDX化による顧客の開発・調達プロセスの課題解決プラットフォームの提供、独自性を高めた商品・サービスの提供による市場価値増大を推進する。またダイレクトマーケティング領域への投資を実行して、領域特化型ネットワークを構築する。

 その他では既存事業との親和性、将来に亘る成長性、グループ全体への波及効果なども勘案して、SDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進することを目標とする。

 なお、資本効率向上に向けた拠点見直しの一環として、21年6月に名古屋オフィスおよび福岡オフィスの不動産を譲渡すると発表している。譲渡時期は未定だが、譲渡後も賃借で継続利用する。また22年1月には組織変更を発表した。事業戦略見直しを図ることを目的として、事業戦略および財務に対する権限・責任を代表取締役社長に集中させた。

■22年11月期減益予想だが保守的

 22年11月期の連結業績予想(収益認識会計基準適用のため前期比増減率は非掲載、利益への影響なし)は、売上高が500億円、営業利益が17億円、経常利益が16億円、親会社株主帰属当期純利益が15億円としている。特別利益には固定資産譲渡益(IW日本橋ビル、引渡日22年3月予定、譲渡益約6億50百万円)を計上予定である。配当予想は21年11月期と同額の18円(第2四半期末9円、期末9円)としている。

 収益認識会計基準適用の影響としては、従来方法と比較して売上高が約230億円減少する見込みだが、営業利益、経常利益、親会社株主帰属当期純利益への影響はないとしている。各利益の増減率を21年11月期実績値との単純比較で算出すると、営業利益は23.9%減益、経常利益は33.9%減益、親会社株主帰属当期純利益は13.6%減益となる。

 事業環境の不透明感、薬価改定、のれん償却、新製品開発に向けた先行投資、重要な契約の変更(スペラファーマと武田薬品の契約変更、佐倉工場の契約変更)などを考慮して減益予想としている。営業利益の前期比増減計画は、ファインケミカル事業が3.7億円減益、医薬事業が4.8億円減益、HBC・食品事業が不採算取引減少や化粧品回復などで1.4億円増益、化学品事業が需要好調で1.8億円増益としている。

 22年11月期は不透明感や先行投資などを考慮して減益予想としているが保守的だろう。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。

■株主優待制度は毎年11月末時点で1年以上保有株主対象

 株主優待制度は毎年11月末時点で100株(1単元)以上を継続して1年以上保有する株主を対象として実施している。グループ化粧品詰め合わせセットなどを贈呈(詳細は会社HP参照)する。

■株価は反発の動き

 株価は22年11月期減益予想を嫌気し、さらに地合い悪化も影響して昨年来安値を更新する展開だったが、調整一巡して反発の動きを強めている。出直りを期待したい。2月25日の終値は418円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS37円62銭で算出)は約11倍、今期予想配当利回り(会社予想の18円で算出)は約4.3%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS677円09銭で算出)は約0.6倍、時価総額は約170億円である。(情報提供:日 本インタビュ新聞社=Media−IR
[01月31日更新]

アステナホールディングスは売り一巡、22年11月期減益予想だが保守的

 アステナホールディングス<8095 旧イワキ>(東1、新市場区分プライム)はヘルスケア・ファインケミカル企業集団を目指し、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。21年11月期は需要回復などで営業・経常増益だった。22年11月期は不透明感や先行投資などを考慮して減益予想としているが保守的だろう。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。4月4日移行予定の新市場区分についてはプライム市場に移行する。株価は減益予想を嫌気し、さらに地合い悪化も影響して急落の形となったが、売り一巡感を強めている。反発を期待したい。

■ヘルスケア・ファインケミカル企業集団

 旧イワキが21年6月1日付で持株会社体制に移行して商号をアステナホールディングスに変更した。アステナは「明日(未来)+サステナブル(持続可能)」の造語である。ヘルスケア・ファインケミカル企業集団を目指し、M&Aも積極活用して、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。

 21年11月期のセグメント別売上高構成比はファインケミカル事業(医薬品のCMC研究開発・製造受託、医薬品原料の製造販売)が32%、医薬事業(医薬品・医療機器の製造販売)が17%、HBC・食品事業(化粧品原料の販売、食品原料・機能性食品の製造販売、一般用医薬品の卸売、化粧品の通信販売)が39%、化学品事業(表面処理薬品の製造販売、プリント基板製造プラントの製造販売)が12%、営業利益(全社費用等調整前)の構成比はファインケミカル事業が58%、医薬事業が40%、HBC・食品事業が▲14%、化学品事業が16%だった。

 なお営業利益の構成比を製造・非製造で分解すると、15年11月期は製造業分野が35%で非製造業分野が65%だったが、20年11月期は製造業分野が92%で非製造業分野が8%となり、専門商社からメーカーへの変貌を鮮明にしている。M&Aも活用して4つの新しい戦略的ビジネスモデル(調達プラットフォーム事業、インキュベーション事業、注射剤CDMO事業、塗り薬CDM事業)を構築した。

■グループ事業戦略を再構築

 ファインケミカル事業は、20年3月に子会社化した医薬品CMC研究開発・製造受託のスペラファーマと、スペラファーマの子会社として20年7月に設立したスペラネクサスが展開している。さらに岩城製薬のファインケミカル事業をスペラネクサスに承継し、医薬品原薬のCMC研究開発から製造受託・販売まで一貫体制を構築した。また20年6月にはスペラファーマが創薬ベンチャーのジェイファーマに出資、21年4月にスペラファーマがペプチド合成技術を保有するJITSUBOを子会社化した。

 医薬事業は岩城製薬と、20年7月に鳥居薬品佐倉工場を継承した岩城製薬佐倉工場が展開している。さらに20年1月には医療用後発医薬品・一般用医薬品開発の前田薬品工業に出資、21年1月には岩城製薬が医薬品開発のキノファーマに出資して業務提携している。22年4月には岩城製薬がヤンセンファーマから「ニゾラールローション2%」の日本における製造販売承認を承継・販売移管予定である。岩城製薬にとって初の長期収載品の扱いとなる。

 HBC・食品事業はイワキ(イワキ分割準備会社が21年6月商号変更)とアプロスが展開している。20年12月には健康食品・化粧品販売のマルマンH&Bを子会社化、21年7月にはイワキがスカイネットから薬事サポート事業、自社開発事業および輸入製販事業を譲り受け、21年9月にはイワキが住建情報センターのヘルスケア事業を譲り受けた。さらに22年1月にはイワキが食品原料調達WEBプラットフォーム「シェアシマ」を運営するICS―netに資本参加した。

 化学品事業はメルテックス、東京化工機、および海外子会社等が展開している。

■SDGsへの取り組み強化

 持株会社体制への移行に伴って、グループ全体のBCP(事業継続計画)対策および従業員の働き方・生き方の選択肢多様化を目的として、21年6月に本社機能の一部を石川県珠洲市に移転した。さらに、石川県珠洲市が地方創生に向けた人材育成事業の一環として行っている能登SDGsラボと協業し、30年までにSDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進する。

 21年6月には新規事業のインキュベーションを担う専任部署として新規事業推進室を設置した。SDGs推進に向けて、化粧品原料・製品(グループ会社JITSUBOのペプチド合成法Molecular Hivingによる高品質で環境に優しく、コスト優位性のある化粧品原料・製品)事業、地方創生に繋がるハイブリッド型ふるさと納税プラットフォーム事業、健康食品原料事業(国産の安心・安全な健康食品原料・製品の第6次産業化を目的として、石川県珠洲市で健康食品の原料となる植物等の栽培を行う事業)などを推進する。

 21年7月には、奥能登地域のSDGS達成支援を目的とするファンド「奥能登SDGs投資事業有限責任組合(奥能登SDGsファンド)」への出資を発表した。特定子会社となる。21年8月には、グループの業務サポートやファシリティーサービスを提供するアステナハートフル(21年6月設立)が、障害者の雇用の促進等に関する法律に基づく特例子会社の認定を取得した。

 21年11月には能登地域のSDGs達成の支援を目的として、能登地域の自治体3市(七尾市、輪島市、珠洲市)・2町(穴水町、能都町)、および国立大学法人金沢大学、奥能登信用金庫、のと共栄信用金庫、北國フィナンシャルホールディングス、BPキャピタルと、SDGs推進に係る連携と協力に関する協定を締結した。21年12月には子会社のイワキ総合研究所の商号をアステナミネルヴァに変更した。新規事業推進室を移設し、事業内容も地方創生に関連する事業に変更した。

■中長期ビジョンの目標は売上高1300億円以上、ROE13%以上

 2030年に向けたグループ中長期ビジョン「Astena2030」では、定量的ターゲットとして30年11月期の売上高1300億円以上、ROE13%以上を掲げ、中期経営計画(ローリング形式、新会計基準)の目標値は24年11月期の売上高600億円、営業利益38億円、ROE8.9%としている。

 セグメント別30年11月期目標値は、ファインケミカル事業が売上高400億円で営業利益率9%、医薬事業が売上高228億円で営業利益率13%、化学品事業が売上高130億円で営業利益率10%、HBC・食品事業が売上高450億円で営業利益率3%としている。

 基本戦略としては、プラットフォーム戦略(CMC=医療用医薬品研究開発の国内トップレベルでの受託、ヘルスケア調達プラットフォーム=医薬品・化粧品・機能性食品製造会社の全ニーズをカバー、創薬インキュベーション=CMC提供を通じて新薬開発の成功確率を高める、CDMO=注射剤・外皮用剤・治験薬の受託製造)、ニッチトップ戦略(外皮用剤ジェネリック医薬品=国内塗り薬ジェネリック医薬品市場NO.1、ハイエンド表面処理薬品=エレクトロニクスに特化した表面処理薬品)、ソーシャルインパクト戦略(シニア・アクティベイト=化粧品・機能性食品の提供を通じてシニア総アクティブ化推進)を掲げている。

 ファインケミカル事業は、CMC・CDMO事業および調達プラットフォーム事業を2本柱として、原材料調達からCMC研究、原薬商用生産までの医薬品開発・製造の幅広いサービスを提供する。21年3月には、岩城製薬(スペラネクサスに承継)が、オンコリスバイオファーマ<4588>が開発中の新型コロナウイルス感染症治療薬OBP―2011の、臨床試験開始に必要な治験薬原薬の製造法開発とGMP製造を受託することで基本合意した。21年7月にはスペラファーマがオンコロスバイオファーマからOBP―2011の治験薬製剤のGMP製造を受託することで基本合意した。

 医薬事業は、皮膚科領域をベースとして外皮用剤品目数および生産キャパシティでトップ、グローバル要求水準に対応して高活性注射剤CDMOのトップを目指す。また外皮用剤、注射剤導入、新薬共同開発、M&A・アライアンスで事業基盤強化・拡大を目指す。21年4月には岩城製薬がインタープロテインとCOVID―19治療薬の共同研究契約を締結した。

 化学品事業は、エレクトロニクス実装市場のトレンドを捉えたニッチトップ商品の継続的開発、ハイエンドパッケージ基板での地位確立、チップ部品用途の台湾・中国大手での採用、半導体パワー・センサー系薬品の差別化を推進する。またグローバル企業との共同開発も推進して成長を目指す。

 HBC・食品事業は、原料ビジネスのDX化による顧客の開発・調達プロセスの課題解決プラットフォームの提供、独自性を高めた商品・サービスの提供による市場価値増大を推進する。またダイレクトマーケティング領域への投資を実行して、領域特化型ネットワークを構築する。

 その他では既存事業との親和性、将来に亘る成長性、グループ全体への波及効果なども勘案して、SDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進することを目標とする。

 なお、資本効率向上に向けた拠点見直しの一環として、21年6月に名古屋オフィスおよび福岡オフィスの不動産を譲渡すると発表している。譲渡時期は未定だが、譲渡後も賃借で継続利用する。また22年1月には組織変更を発表した。事業戦略見直しを図ることを目的として、事業戦略および財務に対する権限・責任を代表取締役社長に集中させた。

■21年11月期営業・経常増益、22年11月期は減益予想だが保守的

 21年11月期の連結業績は、売上高が20年11月期比10.7%増の723億22百万円、営業利益が9.7%増の22億33百万円、経常利益が23.0%増の24億20百万円、親会社株主帰属当期純利益が12.4%減の17億36百万円だった。配当は20年11月期比2円増配の18円(第2四半期末9円、期末9円)とした。

 新規受注や需要回復などで増収、営業・経常増益だった。期初計画との比較では、医薬品需要減に起因する医薬品原料の販売不振、ジェネリック医薬品の品質不良に伴う回収費用の発生、持株会社化・社名変更・本社一部移転に関わる費用の増加で、売上高・利益とも計画を下回った。親会社株主帰属当期純利益は前期計上の負ののれん発生益6億20百万円が剥落したため減益だった。

 ファインケミカル事業は売上高が6.9%増の229億33百万円で、営業利益が15.2%増の13億86百万円だった。コロナ禍で製薬企業の医薬品開発の遅れや変更の影響があったものの、医薬品原料のジェネリック新規品目採用やM&A効果などでカバーして増収増益だった。

 医薬事業は売上高が17.0%増の124億52百万円で、営業利益が4.0%減の9億58百万円だった。医療用医薬品で外皮用剤やアトピー性皮膚炎治療薬などが伸長したが、一般用医薬品でビタミン原末や提携外用新製品が低調だった。

 HBC・食品事業は売上高が9.4%増の282億38百万円で、営業利益が3億43百万円の赤字(20年11月期は4億90百万円の赤字)だった。通販化粧品や一般用医薬品の卸売が低調だったが、食品原料や機能性食品原料が好調に推移して赤字縮小した。

 化学品事業は売上高が17.1%増の86億97百万円で、営業利益が16.9%増の3億83百万円だった。表面処理薬品、表面処理設備とも需要が拡大した。

 なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高が169億75百万円で営業利益が6億63百万円、第2四半期は売上高が192億74百万円で営業利益が8億32百万円、第3四半期は売上高が174億78百万円で営業利益が4億59百万円、第4四半期は売上高が185億95百万円で営業利益が2億79百万円だった。

 22年11月期の連結業績予想(収益認識会計基準適用のため前期比増減率は非掲載)は、売上高が500億円、営業利益が17億円、経常利益が16億円、親会社株主帰属当期純利益が15億円としている。特別利益に固定資産譲渡益(IW日本橋ビル、引渡日22年3月予定、譲渡益約6億50百万円)を計上予定である。配当予想は21年11月期と同額の18円(第2四半期末9円、期末9円)としている。

 なお収益認識会計基準適用の影響としては、売上高が従来方法と比較して約230億円減少する見込みだが、営業利益、経常利益、親会社株主帰属当期純利益への影響はないとしている。各利益の増減率を21年11月期実績値との単純比較で算出すると、営業利益は23.9%減益、経常利益は33.9%減益、親会社株主帰属当期純利益は13.6%減益となる。

 事業環境の不透明感、新製品開発に向けた先行投資、重要な契約の変更(スペラファーマと武田薬品の契約変更、佐倉工場の契約変更)などを考慮して減益予想としている。営業利益の前期比増減計画はファインケミカル事業が3.7億円減益、医薬事業が5.3億円減益、HBC・食品事業が不採算取引減少や化粧品回復などで1.4億円増益、化学品事業が需要好調で1.8億円増益としている。

 22年11月期は不透明感や先行投資などを考慮して減益予想としているが保守的だろう。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。

■株主優待制度は毎年11月末時点で1年以上保有株主対象

 株主優待制度は毎年11月末時点で100株(1単元)以上を継続して1年以上保有する株主を対象として実施している。グループ化粧品詰め合わせセットなどを贈呈(詳細は会社HP参照)する。

■株価は売り一巡

 株価は22年11月期減益予想を嫌気し、さらに地合い悪化も影響して急落の形となったが、売り一巡感を強めている。反発を期待したい。1月28日の終値は377円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS37円62銭で算出)は約10倍、今期予想配当利回り(会社予想の18円で算出)は約4.8%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS677円09銭で算出)は約0.6倍、時価総額は約153億円である。(情報提供:日 本インタビュ新聞社=Media−IR
[12月23日更新]

アステナホールディングスは調整一巡、22年11月期も収益拡大基調

 アステナホールディングス<8095 旧イワキ>(東1)はヘルスケア・ファインケミカル企業集団を目指し、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。21年11月期は需要拡大、利益率改善、M&A効果などで大幅営業・経常増益予想としている。22年11月期も積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。12月22日には固定資産譲渡を発表した。22年11月期に特別利益を計上予定である。株価は地合い悪化も影響して年初来安値を更新したが、調整一巡して出直りを期待したい。なお1月13日に21年11月期決算発表を予定している。

■ヘルスケア・ファインケミカル企業集団

 旧イワキが21年6月1日付で持株会社体制に移行して商号をアステナホールディングスに変更した。アステナは「明日(未来)+サステナブル(持続可能)」の造語である。ヘルスケア・ファインケミカル企業集団を目指し、M&Aも活用して、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。

 20年11月期セグメント別売上高構成比はファインケミカル事業(CMC研究開発、医薬品原料)が33%、医薬事業(医薬品、医療機器)が16%、HBC・食品事業(化粧品、食品原料、ファルマネット)が40%、化学品事業(表面処理薬品、スペシャリティマテリアル、表面処理設備)が11%、営業利益構成比はファインケミカル事業が59%、医薬事業が49%、HBC・食品事業が▲24%、化学品事業が16%だった。

 なお営業利益の構成比を製造・非製造で分解すると、15年11月期は製造業分野が35%で非製造業分野が65%だったが、20年11月期は製造業分野が92%で非製造業分野が8%となり、専門商社からメーカーへの変貌を鮮明にしている。M&Aも活用して4つの新しい戦略的ビジネスモデル(調達プラットフォーム事業、インキュベーション事業、注射剤CDMO事業、塗り薬CDM事業)を構築した。

■グループ組織再編

 ファインケミカル事業は、20年3月に子会社化した医薬品CMC研究・製造受託のスペラファーマと、スペラファーマの子会社として20年7月に設立したスペラネクサスが展開している。さらに岩城製薬のファインケミカル事業をスペラネクサスに承継し、医薬品原薬のCMC研究開発から製造・販売まで一貫体制を構築した。また20年6月にスペラファーマが創薬ベンチャーのジェイファーマに出資、21年4月にスペラファーマがペプチド合成技術を保有するJITSUBOを子会社化した。

 医薬事業は岩城製薬と、20年7月に鳥居薬品佐倉工場を継承した岩城製薬佐倉工場が展開している。さらに20年1月には医療用後発医薬品・一般用医薬品開発の前田薬品工業に出資、21年1月には岩城製薬が医薬品開発のキノファーマに出資して業務提携している。12月10日には岩城製薬が22年4月1日より、ヤンセンファーマから「ニゾラールローション2%」の日本における製造販売承認を承継し、販売移管を行うと発表した。岩城製薬にとって初の長期収載品の扱いとなる。

 HBC・食品事業はイワキ(イワキ分割準備会社が21年6月商号変更)とアプロスが展開している。20年12月には健康食品・化粧品販売のマルマンH&Bを子会社化した。21年7月にはイワキがスカイネットから薬事サポート事業、自社開発事業および輸入製販事業を譲り受けた。21年9月にはイワキが住建情報センターのヘルスケア事業を譲り受けた。

 化学品事業はメルテックス、東京化工機、および海外子会社等が展開している。

■SDGsへの取り組み強化

 持株会社体制への移行に伴って、グループ全体のBCP(事業継続計画)対策および従業員の働き方・生き方の選択肢多様化を目的として、21年6月に本社機能の一部を石川県珠洲市に移転した。さらに、石川県珠洲市が地方創生に向けた人材育成事業の一環として行っている能登SDGsラボと協業し、30年までにSDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進する。

 21年6月には新規事業のインキュベーションを担う専任部署として新規事業推進室を設置した。SDGs推進に向けて、化粧品原料・製品(グループ会社JITSUBOのペプチド合成法Molecular Hivingによる高品質で環境に優しく、コスト優位性のある化粧品原料・製品)事業、地方創生に繋がるハイブリッド型ふるさと納税プラットフォーム事業、健康食品原料事業(国産の安心・安全な健康食品原料・製品の第6次産業化を目的として、石川県珠洲市で健康食品の原料となる植物等の栽培を行う事業)などを推進する。

 21年7月には、奥能登地域のSDGS達成支援を目的とするファンド「奥能登SDGs投資事業有限責任組合(奥能登SDGsファンド)」への出資を発表した。特定子会社となる。21年8月には、グループの業務サポートやファシリティーサービスを提供するアステナハートフル(21年6月設立)が、障害者の雇用の促進等に関する法律に基づく特例子会社の認定を取得した。

 21年11月には能登地域のSDGs達成の支援を目的として、能登地域の自治体3市(七尾市、輪島市、珠洲市)・2町(穴水町、能都町)、および国立大学法人金沢大学、奥能登信用金庫、のと共栄信用金庫、北國フィナンシャルホールディングス、BPキャピタルと、SDGs推進に係る連携と協力に関する協定を締結した。

 なお21年12月1日付で子会社のイワキ総合研究所が商号をアステナミネルヴァに変更した。新規事業推進室を移設し、事業内容も地方創生に関連する事業に変更した。

■中長期ビジョンの目標は売上高1300億円以上、ROE13%以上

 2030年を目標とした中長期ビジョン「Astena2030」では、定量的ターゲットとして30年11月期連結売上高1300億円以上、ROE13%以上を掲げ、中期連結数値計画は23年11月期売上高820億円、営業利益42億円、ROE9.7%としている。

 セグメント別30年11月期目標値は、ファインケミカル事業が売上高400億円で営業利益率9%、医薬事業が売上高228億円で営業利益率13%、化学品事業が売上高130億円で営業利益率10%、HBC・食品事業が売上高450億円で営業利益率3%とした。

 基本戦略は、プラットフォーマー戦略(CMC=医療用医薬品研究開発の国内トップレベルでの受託、ヘルスケア調達プラットフォーム=医薬品・化粧品・機能性食品製造会社の全ニーズをカバー、創薬インキュベーション=CMC提供を通じて新薬開発の成功確率を高める、CDMO=注射剤・外皮用剤・治験薬の受託製造)、ニッチトップ戦略(外皮用剤ジェネリック医薬品=国内塗り薬ジェネリック医薬品市場NO.1、ハイエンド表面処理薬品=エレクトロニクスに特化した表面処理薬品)、ソーシャルインパクト戦略(シニア・アクティベイト=化粧品・機能性食品の提供を通じてシニア総アクティブ化推進)としている。

 ファインケミカル事業は、CMC・CDMO事業および調達プラットフォーム事業を2本柱として、原材料調達からCMC研究、原薬商用生産までの医薬品開発・製造の幅広いサービスを提供する。21年3月には、岩城製薬(スペラネクサスに承継)が、オンコリスバイオファーマ<4588>が開発中の新型コロナウイルス感染症治療薬OBP―2011の、臨床試験開始に必要な治験薬原薬の製造法開発とGMP製造を受託することで基本合意した。21年7月にはスペラファーマがオンコロスバイオファーマからOBP―2011の治験薬製剤のGMP製造を受託することで基本合意した。

 医薬事業は、皮膚科領域をベースとして外皮用剤品目数および生産キャパシティでトップ、グローバル要求水準に対応して高活性注射剤CDMOのトップを目指す。また外皮用剤、注射剤導入、新薬共同開発、M&A・アライアンスで事業基盤強化・拡大を目指す。21年4月には岩城製薬がインタープロテインとCOVID―19治療薬の共同研究契約を締結した。

 化学品事業は、エレクトロニクス実装市場のトレンドを捉えたニッチトップ商品の継続的開発、ハイエンドパッケージ基板での地位確立、チップ部品用途の台湾・中国大手での採用、半導体パワー・センサー系薬品の差別化を推進する。またグローバル企業との共同開発も推進して成長を目指す。

 HBC・食品事業は、原料ビジネスのDX化による顧客の開発・調達プロセスの課題解決プラットフォームの提供、独自性を高めた商品・サービスの提供による市場価値増大を推進する。またダイレクトマーケティング領域への投資を実行して、領域特化型ネットワークを構築する。

 その他では既存事業との親和性、将来に亘る成長性、グループ全体への波及効果なども勘案して、SDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進することを目標とする。

 なお、資本効率向上に向けた拠点見直しの一環として、21年6月に名古屋オフィスおよび福岡オフィスの不動産を譲渡すると発表している。譲渡時期は未定だが、譲渡後も賃借で継続利用する。

■21年11月期大幅営業・経常増益予想、22年11月期も収益拡大基調

 21年11月期の連結業績予想は売上高が20年11月期比11.7%増の730億円、営業利益が27.8%増の26億円、経常利益が37.2%増の27億円、親会社株主帰属当期純利益が0.8%増の20億円としている。配当予想は2円増配の18円(第2四半期末9円、期末9円)である。5期連続増配となる。

 第3四半期累計は売上高が前年同期比13.0%増の537億27百万円、営業利益が39.0%増の19億54百万円、経常利益が43.7%増の20億41百万円だった。新規受注や需要回復などで大幅営業・経常増益だった。親会社株主帰属四半期純利益は26.7%減の11億30百万円だった。前期計上の負ののれん発生益6億20百万円が剥落した。

 ファインケミカル事業は、売上高が10.5%増の169億50百万円で営業利益が19.4%増の10億15百万円だった。医薬品原料分野では風邪薬関連等のOTC用原薬や国内ジェネリック用原料が低調だったが、ジェネリック新規品採用などでカバーした。CDMO分野の安定的稼働も寄与して大幅増収増益だった。

 医薬事業は、売上高が30.7%増の96億91百万円で営業利益が49.6%増の11億09百万円だった。医療用医薬品分野で主力の副腎皮質ホルモン剤をはじめとする外皮用剤、男性型脱毛治療薬、アトピー性皮膚炎治療薬などが好調に推移し、岩城製薬佐倉工場における新規受託や増産要請対応も寄与して大幅増収増益だった。

 HBC・食品事業は、売上高が7.0%増の208億49百万円だが、営業利益が4億42百万円の赤字(前年同期は4億01百万円の赤字)だった。食品原料および機能性食品原料分野は堅調だったが、一般医薬品が主体の卸売、化粧品原料分野、通販化粧品分野が低調だった。

 化学品事業は、売上高が17.1%増の62億35百万円で営業利益が45.7%増の3億10百万円だった。表面処理薬品分野の需要が半導体・電子部品向けに拡大した。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高169億75百万円で営業利益6億63百万円、第2四半期は売上高192億74百万円で営業利益8億32百万円、第3四半期は売上高174億78百万円で営業利益4億59百万円だった。

 通期は親会社株主帰属当期純利益が特別利益の剥落で横ばいだが、需要拡大、利益率改善、M&A効果などで大幅営業・経常増益予想としている。コロナ禍で医薬事業やHBC・食品事業を中心に不透明な状況が続くが、化学品事業では5G関連やパワーデバイス半導体分野の表面処理薬品の需要が拡大基調である。また全社的に積極的な営業展開による案件獲得、不採算品目や活動費の見直しなどによる利益率改善に取り組むとしている。

 第3四半期累計の進捗率は売上高が73.6%、営業利益が75.2%、経常利益が75.6%と順調だった。さらに22年11月期も積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。なお12月22日には固定資産譲渡(IW日本橋ビル、引渡日22年3月予定、譲渡益約6億50百万円)を発表した。22年11月期に特別利益を計上予定である。

■株主優待制度は毎年11月末時点で1年以上保有株主対象

 株主優待制度は毎年11月末時点で100株(1単元)以上を継続して1年以上保有する株主を対象として実施している。グループ化粧品詰め合わせセットなどを贈呈(詳細は会社HP参照)する。

■株価は調整一巡

 22年4月4日移行予定の新市場区分については、新市場区分における上場維持基準への適合状況に関する一次判定結果でプライム市場適合を確認し、21年9月17日開催の取締役会においてプライム市場選択申請を決議した。所定のスケジュールに基づいて手続を進める。

 株価は地合い悪化も影響して年初来安値を更新したが、調整一巡して出直りを期待したい。12月22日の終値は479円、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS60円65銭で算出)は約8倍、前期推定配当利回り(会社予想の18円で算出)は約3.8%、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS656円54銭で算出)は約0.7倍、時価総額は約195億円である。(情報提供:日 本インタビュ新聞社=Media−IR)
[12月01日更新]

アステナホールディングスは売られ過ぎ感、22年11月期も収益拡大基調

 アステナホールディングス<8095 旧イワキ>(東1)はヘルスケア・ファインケミカル企業集団を目指し、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。21年11月期は需要拡大、利益率改善、M&A効果などで大幅営業・経常増益予想としている。22年11月期も積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は地合い悪の影響で急落して年初来安値を更新したが売られ過ぎ感を強めている。出直りを期待したい。

■ヘルスケア・ファインケミカル企業集団

 旧イワキが21年6月1日付で持株会社体制に移行して商号をアステナホールディングスに変更した。アステナは「明日(未来)+サステナブル(持続可能)」の造語である。ヘルスケア・ファインケミカル企業集団を目指し、M&Aも活用して、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。

 20年11月期セグメント別売上高構成比はファインケミカル事業(CMC研究開発、医薬品原料)が33%、医薬事業(医薬品、医療機器)が16%、HBC・食品事業(化粧品、食品原料、ファルマネット)が40%、化学品事業(表面処理薬品、スペシャリティマテリアル、表面処理設備)が11%、営業利益構成比はファインケミカル事業が59%、医薬事業が49%、HBC・食品事業が▲24%、化学品事業が16%だった。

 また営業利益の構成比を製造・非製造で分解すると、15年11月期は製造業分野が35%で非製造業分野が65%だったが、20年11月期は製造業分野が92%で非製造業分野が8%となり、専門商社からメーカーへの変貌を鮮明にしている。M&Aも活用して4つの新しい戦略的ビジネスモデル(調達プラットフォーム事業、インキュベーション事業、注射剤CDMO事業、塗り薬CDM事業)を構築した。

■グループ組織再編

 ファインケミカル事業は、20年3月に子会社化した医薬品CMC研究・製造受託のスペラファーマと、スペラファーマの子会社として20年7月に設立したスペラネクサスが展開している。さらに岩城製薬のファインケミカル事業をスペラネクサスに承継し、医薬品原薬のCMC研究開発から製造・販売まで一貫体制を構築した。また20年6月にスペラファーマが創薬ベンチャーのジェイファーマに出資、21年4月にスペラファーマがペプチド合成技術を保有するJITSUBOを子会社化した。

 医薬事業は岩城製薬と、20年7月に鳥居薬品佐倉工場を継承した岩城製薬佐倉工場が展開している。さらに20年1月には医療用後発医薬品・一般用医薬品開発の前田薬品工業に出資、21年1月には岩城製薬が医薬品開発のキノファーマに出資して業務提携している。

 HBC・食品事業はイワキ(イワキ分割準備会社が21年6月商号変更)とアプロスが展開している。20年12月には健康食品・化粧品販売のマルマンH&Bを子会社化した。21年7月にはイワキがスカイネットから薬事サポート事業、自社開発事業および輸入製販事業を譲り受けた。21年9月にはイワキが住建情報センターのヘルスケア事業を譲り受けた。

 化学品事業はメルテックス、東京化工機、および海外子会社等が展開している。

■SDGsへの取り組み強化

 持株会社体制への移行に伴って、グループ全体のBCP(事業継続計画)対策および従業員の働き方・生き方の選択肢多様化を目的として、21年6月に本社機能の一部を石川県珠洲市に移転した。さらに、石川県珠洲市が地方創生に向けた人材育成事業の一環として行っている能登SDGsラボと協業し、30年までにSDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進する。

 21年6月には新規事業のインキュベーションを担う専任部署として新規事業推進室を設置した。SDGs推進に向けて、化粧品原料・製品(グループ会社JITSUBOのペプチド合成法Molecular Hivingによる高品質で環境に優しく、コスト優位性のある化粧品原料・製品)事業、地方創生に繋がるハイブリッド型ふるさと納税プラットフォーム事業、健康食品原料事業(国産の安心・安全な健康食品原料・製品の第6次産業化を目的として、石川県珠洲市で健康食品の原料となる植物等の栽培を行う事業)などを推進する。

 21年7月には、奥能登地域のSDGS達成支援を目的とするファンド「奥能登SDGs投資事業有限責任組合(奥能登SDGsファンド)」への出資を発表した。特定子会社となる。21年8月には、グループの業務サポートやファシリティーサービスを提供するアステナハートフル(21年6月設立)が、障害者の雇用の促進等に関する法律に基づく特例子会社の認定を取得した。

 21年11月には能登地域のSDGs達成の支援を目的として、能登地域の自治体3市(七尾市、輪島市、珠洲市)・2町(穴水町、能都町)、および国立大学法人金沢大学、奥能登信用金庫、のと共栄信用金庫、北國フィナンシャルホールディングス、BPキャピタルと、SDGs推進に係る連携と協力に関する協定を締結した。

■中長期ビジョンの目標は売上高1300億円以上、ROE13%以上

 2030年を目標とした中長期ビジョン「Astena2030」では、定量的ターゲットとして30年11月期連結売上高1300億円以上、ROE13%以上を掲げ、中期連結数値計画は23年11月期売上高820億円、営業利益42億円、ROE9.7%としている。

 セグメント別30年11月期目標値は、ファインケミカル事業が売上高400億円で営業利益率9%、医薬事業が売上高228億円で営業利益率13%、化学品事業が売上高130億円で営業利益率10%、HBC・食品事業が売上高450億円で営業利益率3%とした。

 基本戦略は、プラットフォーマー戦略(CMC=医療用医薬品研究開発の国内トップレベルでの受託、ヘルスケア調達プラットフォーム=医薬品・化粧品・機能性食品製造会社の全ニーズをカバー、創薬インキュベーション=CMC提供を通じて新薬開発の成功確率を高める、CDMO=注射剤・外皮用剤・治験薬の受託製造)、ニッチトップ戦略(外皮用剤ジェネリック医薬品=国内塗り薬ジェネリック医薬品市場NO.1、ハイエンド表面処理薬品=エレクトロニクスに特化した表面処理薬品)、ソーシャルインパクト戦略(シニア・アクティベイト=化粧品・機能性食品の提供を通じてシニア総アクティブ化推進)としている。

 ファインケミカル事業は、CMC・CDMO事業および調達プラットフォーム事業を2本柱として、原材料調達からCMC研究、原薬商用生産までの医薬品開発・製造の幅広いサービスを提供する。21年3月には、岩城製薬(スペラネクサスに承継)が、オンコリスバイオファーマ<4588>が開発中の新型コロナウイルス感染症治療薬OBP―2011の、臨床試験開始に必要な治験薬原薬の製造法開発とGMP製造を受託することで基本合意した。21年7月にはスペラファーマがオンコロスバイオファーマからOBP―2011の治験薬製剤のGMP製造を受託することで基本合意した。

 医薬事業は、皮膚科領域をベースとして外皮用剤品目数および生産キャパシティでトップ、グローバル要求水準に対応して高活性注射剤CDMOのトップを目指す。また外皮用剤、注射剤導入、新薬共同開発、M&A・アライアンスで事業基盤強化・拡大を目指す。21年4月には岩城製薬がインタープロテインとCOVID―19治療薬の共同研究契約を締結した。

 化学品事業は、エレクトロニクス実装市場のトレンドを捉えたニッチトップ商品の継続的開発、ハイエンドパッケージ基板での地位確立、チップ部品用途の台湾・中国大手での採用、半導体パワー・センサー系薬品の差別化を推進する。またグローバル企業との共同開発も推進して成長を目指す。

 HBC・食品事業は、原料ビジネスのDX化による顧客の開発・調達プロセスの課題解決プラットフォームの提供、独自性を高めた商品・サービスの提供による市場価値増大を推進する。またダイレクトマーケティング領域への投資を実行して、領域特化型ネットワークを構築する。

 その他では既存事業との親和性、将来に亘る成長性、グループ全体への波及効果なども勘案して、SDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進することを目標とする。

 なお、資本効率向上に向けた拠点見直しの一環として、21年6月に名古屋オフィスおよび福岡オフィスの不動産を譲渡すると発表している。譲渡時期は未定だが、譲渡後も賃借で継続利用する。

■21年11月期大幅営業・経常増益予想、22年11月期も収益拡大基調

 21年11月期の連結業績予想は売上高が20年11月期比11.7%増の730億円、営業利益が27.8%増の26億円、経常利益が37.2%増の27億円、親会社株主帰属当期純利益が0.8%増の20億円としている。配当予想は2円増配の18円(第2四半期末9円、期末9円)である。5期連続増配となる。

 第3四半期累計は売上高が前年同期比13.0%増の537億27百万円、営業利益が39.0%増の19億54百万円、経常利益が43.7%増の20億41百万円だった。新規受注や需要回復などで大幅営業・経常増益だった。親会社株主帰属四半期純利益は26.7%減の11億30百万円だった。前期計上の負ののれん発生益6億20百万円が剥落した。

 ファインケミカル事業は、売上高が10.5%増の169億50百万円で営業利益が19.4%増の10億15百万円だった。医薬品原料分野では風邪薬関連等のOTC用原薬や国内ジェネリック用原料が低調だったが、ジェネリック新規品採用などでカバーした。CDMO分野の安定的稼働も寄与して大幅増収増益だった。

 医薬事業は、売上高が30.7%増の96億91百万円で営業利益が49.6%増の11億09百万円だった。医療用医薬品分野で主力の副腎皮質ホルモン剤をはじめとする外皮用剤、男性型脱毛治療薬、アトピー性皮膚炎治療薬などが好調に推移し、岩城製薬佐倉工場における新規受託や増産要請対応も寄与して大幅増収増益だった。

 HBC・食品事業は、売上高が7.0%増の208億49百万円だが、営業利益が4億42百万円の赤字(前年同期は4億01百万円の赤字)だった。食品原料および機能性食品原料分野は堅調だったが、一般医薬品が主体の卸売、化粧品原料分野、通販化粧品分野が低調だった。

 化学品事業は、売上高が17.1%増の62億35百万円で営業利益が45.7%増の3億10百万円だった。表面処理薬品分野の需要が半導体・電子部品向けに拡大した。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高169億75百万円で営業利益6億63百万円、第2四半期は売上高192億74百万円で営業利益8億32百万円、第3四半期は売上高174億78百万円で営業利益4億59百万円だった。

 通期は親会社株主帰属当期純利益が特別利益の剥落で横ばいだが、需要拡大、利益率改善、M&A効果などで大幅営業・経常増益予想としている。コロナ禍で医薬事業やHBC・食品事業を中心に不透明な状況が続くが、化学品事業では5G関連やパワーデバイス半導体分野の表面処理薬品の需要が拡大基調である。また全社的に積極的な営業展開による案件獲得、不採算品目や活動費の見直しなどによる利益率改善に取り組むとしている。

 第3四半期累計の進捗率は売上高が73.6%、営業利益が75.2%、経常利益が75.6%と順調だった。需要が回復基調であり、通期予想は上振れの可能性がありそうだ。さらに22年11月期も積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株主優待制度は毎年11月末時点で1年以上保有株主対象

 株主優待制度は毎年11月末時点で100株(1単元)以上を継続して1年以上保有する株主を対象として実施している。グループ化粧品詰め合わせセットなどを贈呈(詳細は会社HP参照)する。

■株価は売られ過ぎ感

 22年4月4日移行予定の新市場区分については、新市場区分における上場維持基準への適合状況に関する一次判定結果でプライム市場適合を確認し、21年9月17日開催の取締役会においてプライム市場選択申請を決議した。所定のスケジュールに基づいて手続を進める。

 株価は地合い悪の影響で急落して年初来安値を更新したが売られ過ぎ感を強めている。出直りを期待したい。11月30日の終値は486円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS60円65銭で算出)は約8倍、今期予想配当利回り(会社予想の18円で算出)は約3.7%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS656円54銭で算出)は約0.7倍、時価総額は約197億円である。(情報提供:日 本インタビュ新聞社=Media−IR
[11月19日更新]

アステナホールディングスは下値固め完了、22年11月期も収益拡大基調

 アステナホールディングス<8095 旧イワキ>(東1)はヘルスケア・ファインケミカル企業集団を目指し、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。21年11月期は需要拡大、利益率改善、M&A効果などで大幅営業・経常増益予想としている。さらに22年11月期も積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は戻り高値圏から反落してモミ合う形だが、下値固め完了感を強めている。調整一巡して出直りを期待したい。

■ヘルスケア・ファインケミカル企業集団

 旧イワキが21年6月1日付で持株会社体制に移行して商号をアステナホールディングスに変更した。アステナは「明日(未来)+サステナブル(持続可能)」の造語である。ヘルスケア・ファインケミカル企業集団を目指し、M&Aも活用して、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。

 20年11月期セグメント別売上高構成比はファインケミカル事業(CMC研究開発、医薬品原料)が33%、医薬事業(医薬品、医療機器)が16%、HBC・食品事業(化粧品、食品原料、ファルマネット)が40%、化学品事業(表面処理薬品、スペシャリティマテリアル、表面処理設備)が11%、営業利益構成比はファインケミカル事業が59%、医薬事業が49%、HBC・食品事業が▲24%、化学品事業が16%だった。

 また営業利益の構成比を製造・非製造で分解すると、15年11月期は製造業分野が35%で非製造業分野が65%だったが、20年11月期は製造業分野が92%で非製造業分野が8%となり、専門商社からメーカーへの変貌を鮮明にしている。M&Aも活用して4つの新しい戦略的ビジネスモデル(調達プラットフォーム事業、インキュベーション事業、注射剤CDMO事業、塗り薬CDM事業)を構築した。

■グループ組織再編や新規事業を推進

 ファインケミカル事業は、20年3月に子会社化した医薬品CMC研究・製造受託のスペラファーマと、スペラファーマの子会社として20年7月に設立したスペラネクサスが展開している。さらに岩城製薬のファインケミカル事業をスペラネクサスに承継し、医薬品原薬のCMC研究開発から製造・販売まで一貫体制を構築した。また20年6月にスペラファーマが創薬ベンチャーのジェイファーマに出資、21年4月にスペラファーマがペプチド合成技術を保有するJITSUBOを子会社化した。

 医薬事業は岩城製薬と、20年7月に鳥居薬品佐倉工場を継承した岩城製薬佐倉工場が展開している。さらに20年1月には医療用後発医薬品・一般用医薬品開発の前田薬品工業に出資、21年1月には岩城製薬が医薬品開発のキノファーマに出資して業務提携している。

 HBC・食品事業はイワキ(イワキ分割準備会社が21年6月商号変更)とアプロスが展開している。20年12月には健康食品・化粧品販売のマルマンH&Bを子会社化した。21年7月にはイワキがスカイネットから薬事サポート事業、自社開発事業および輸入製販事業を譲り受けた。21年9月にはイワキが住建情報センターのヘルスケア事業を譲り受けた。

 化学品事業はメルテックス、東京化工機、および海外子会社等が展開している。

 持株会社体制への移行に伴って、グループ各社の組織再編とともに、人的リソースの適正配置、働き方改革などにも取り組んでいる。グループ全体のBCP(事業継続計画)対策および従業員の働き方・生き方の選択肢多様化を目的として、21年6月に本社機能の一部を石川県珠洲市に移転した。石川県珠洲市が地方創生に向けた人材育成事業の一環として行っている能登SDGsラボと協業し、30年までにSDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進することを目標とする。

 21年6月には新規事業のインキュベーションを担う専任部署として新規事業推進室を設置した。SDGs推進に向けて、化粧品原料・製品(グループ会社JITSUBOのペプチド合成法Molecular Hivingによる高品質で環境に優しく、コスト優位性のある化粧品原料・製品)事業、地方創生に繋がるハイブリッド型ふるさと納税プラットフォーム事業、健康食品原料事業(国産の安心・安全な健康食品原料・製品の第6次産業化を目的として、石川県珠洲市で健康食品の原料となる植物等の栽培を行う事業)などを推進する。

 21年7月には、奥能登地域のSDGS達成支援を目的とするファンド「奥能登SDGs投資事業有限責任組合(奥能登SDGsファンド)」への出資を発表した。特定子会社となる。21年8月には、グループの業務サポートやファシリティーサービスを提供するアステナハートフル(21年6月設立)が、障害者の雇用の促進等に関する法律に基づく特例子会社の認定を取得した。

 さらに資本効率向上に向けた拠点見直しの一環として、21年6月に名古屋オフィスおよび福岡オフィスの不動産を譲渡すると発表した。譲渡時期は未定だが、譲渡後も賃借で継続利用する。

■中長期ビジョンの目標は売上高1300億円以上、ROE13%以上

 2030年を目標とした中長期ビジョン「Astena2030」では、定量的ターゲットとして30年11月期連結売上高1300億円以上、ROE13%以上を掲げ、中期連結数値計画は23年11月期売上高820億円、営業利益42億円、ROE9.7%としている。

 セグメント別30年11月期目標値は、ファインケミカル事業が売上高400億円で営業利益率9%、医薬事業が売上高228億円で営業利益率13%、化学品事業が売上高130億円で営業利益率10%、HBC・食品事業が売上高450億円で営業利益率3%とした。

 基本戦略は、プラットフォーマー戦略(CMC=医療用医薬品研究開発の国内トップレベルでの受託、ヘルスケア調達プラットフォーム=医薬品・化粧品・機能性食品製造会社の全ニーズをカバー、創薬インキュベーション=CMC提供を通じて新薬開発の成功確率を高める、CDMO=注射剤・外皮用剤・治験薬の受託製造)、ニッチトップ戦略(外皮用剤ジェネリック医薬品=国内塗り薬ジェネリック医薬品市場NO.1、ハイエンド表面処理薬品=エレクトロニクスに特化した表面処理薬品)、ソーシャルインパクト戦略(シニア・アクティベイト=化粧品・機能性食品の提供を通じてシニア総アクティブ化推進)としている。

 ファインケミカル事業は、CMC・CDMO事業および調達プラットフォーム事業を2本柱として、原材料調達からCMC研究、原薬商用生産までの医薬品開発・製造の幅広いサービスを提供する。21年3月には、岩城製薬(スペラネクサスに承継)が、オンコリスバイオファーマ<4588>が開発中の新型コロナウイルス感染症治療薬OBP―2011の、臨床試験開始に必要な治験薬原薬の製造法開発とGMP製造を受託することで基本合意した。21年7月にはスペラファーマがオンコロスバイオファーマからOBP―2011の治験薬製剤のGMP製造を受託することで基本合意した。

 医薬事業は、皮膚科領域をベースとして外皮用剤品目数および生産キャパシティでトップ、グローバル要求水準に対応して高活性注射剤CDMOのトップを目指す。また外皮用剤、注射剤導入、新薬共同開発、M&A・アライアンスで事業基盤強化・拡大を目指す。21年4月には岩城製薬がインタープロテインとCOVID―19治療薬の共同研究契約を締結した。

 化学品事業は、エレクトロニクス実装市場のトレンドを捉えたニッチトップ商品の継続的開発、ハイエンドパッケージ基板での地位確立、チップ部品用途の台湾・中国大手での採用、半導体パワー・センサー系薬品の差別化を推進する。またグローバル企業との共同開発も推進して成長を目指す。

 HBC・食品事業は、原料ビジネスのDX化による顧客の開発・調達プロセスの課題解決プラットフォームの提供、独自性を高めた商品・サービスの提供による市場価値増大を推進する。またダイレクトマーケティング領域への投資を実行して、領域特化型ネットワークを構築する。

 その他では既存事業との親和性、将来に亘る成長性、グループ全体への波及効果なども勘案して、SDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進することを目標とする。

■21年11月期大幅営業・経常増益予想、22年11月期も収益拡大基調

 21年11月期の連結業績予想は売上高が20年11月期比11.7%増の730億円、営業利益が27.8%増の26億円、経常利益が37.2%増の27億円、親会社株主帰属当期純利益が0.8%増の20億円としている。配当予想は2円増配の18円(第2四半期末9円、期末9円)である。5期連続増配となる。

 第3四半期累計は売上高が前年同期比13.0%増の537億27百万円、営業利益が39.0%増の19億54百万円、経常利益が43.7%増の20億41百万円だった。新規受注や需要回復などで大幅営業・経常増益だった。親会社株主帰属四半期純利益は26.7%減の11億30百万円だった。前期計上の負ののれん発生益6億20百万円が剥落した。

 ファインケミカル事業は、売上高が10.5%増の169億50百万円で営業利益が19.4%増の10億15百万円だった。医薬品原料分野では風邪薬関連等のOTC用原薬や国内ジェネリック用原料が低調だったが、ジェネリック新規品採用などでカバーした。CDMO分野の安定的稼働も寄与して大幅増収増益だった。

 医薬事業は、売上高が30.7%増の96億91百万円で営業利益が49.6%増の11億09百万円だった。医療用医薬品分野で主力の副腎皮質ホルモン剤をはじめとする外皮用剤、男性型脱毛治療薬、アトピー性皮膚炎治療薬などが好調に推移し、岩城製薬佐倉工場における新規受託や増産要請対応も寄与して大幅増収増益だった。

 HBC・食品事業は、売上高が7.0%増の208億49百万円だが、営業利益が4億42百万円の赤字(前年同期は4億01百万円の赤字)だった。食品原料および機能性食品原料分野は堅調だったが、一般医薬品が主体の卸売、化粧品原料分野、通販化粧品分野が低調だった。

 化学品事業は、売上高が17.1%増の62億35百万円で営業利益が45.7%増の3億10百万円だった。表面処理薬品分野の需要が半導体・電子部品向けに拡大した。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高169億75百万円で営業利益6億63百万円、第2四半期は売上高192億74百万円で営業利益8億32百万円、第3四半期は売上高174億78百万円で営業利益4億59百万円だった。

 通期は親会社株主帰属当期純利益が特別利益の剥落で横ばいだが、需要拡大、利益率改善、M&A効果などで大幅営業・経常増益予想としている。コロナ禍で医薬事業やHBC・食品事業を中心に不透明な状況が続くが、化学品事業では5G関連やパワーデバイス半導体分野の表面処理薬品の需要が拡大基調である。また全社的に積極的な営業展開による案件獲得、不採算品目や活動費の見直しなどによる利益率改善に取り組むとしている。

 第3四半期累計の進捗率は売上高が73.6%、営業利益が75.2%、経常利益が75.6%と順調だった。需要が回復基調であり、通期予想は上振れの可能性がありそうだ。さらに22年11月期も積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株主優待制度は毎年11月末時点で1年以上保有株主対象

 株主優待制度は毎年11月末時点で100株(1単元)以上を継続して1年以上保有する株主を対象として実施している。グループ化粧品詰め合わせセットなどを贈呈(詳細は会社HP参照)する。

■株価は調整一巡

 22年4月4日移行予定の新市場区分については、新市場区分における上場維持基準への適合状況に関する一次判定結果でプライム市場適合を確認し、21年9月17日開催の取締役会においてプライム市場選択申請を決議した。所定のスケジュールに基づいて手続を進める。

 株価は戻り高値圏から反落してモミ合う形だが、下値固め完了感を強めている。調整一巡して出直りを期待したい。11月18日の終値は561円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS60円65銭で算出)は約9倍、今期予想配当利回り(会社予想の18円で算出)は約3.2%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS656円54銭で算出)は約0.9倍、時価総額は約228億円である。(情報提供:日 本インタビュ新聞社=Media−IR
[10月25日更新]

アステナホールディングスは調整一巡、21年11月期3Q累計大幅営業・経常増益で通期上振れの可能性

 アステナホールディングス<8095 旧イワキ>(東1)はヘルスケア・ファインケミカル企業集団を目指し、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。21年11月期は需要拡大、利益率改善、M&A効果などで大幅営業・経常増益予想としている。第3四半期累計は大幅営業・経常増益だった。通期予想を据え置いたが上振れの可能性が高いだろう。積極的な事業展開で収益拡大基調を期待したい。株価は戻り高値圏から反落して上値を切り下げる形となったが、調整一巡して出直りを期待したい。

■ヘルスケア・ファインケミカル企業集団

 旧イワキが21年6月1日付で持株会社体制に移行して商号をアステナホールディングスに変更した。アステナは「明日(未来)+サステナブル(持続可能)」の造語である。ヘルスケア・ファインケミカル企業集団を目指し、M&Aも活用して、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。

 20年11月期セグメント別売上高構成比はファインケミカル事業(CMC研究開発、医薬品原料)が33%、医薬事業(医薬品、医療機器)が16%、HBC・食品事業(化粧品、食品原料、ファルマネット)が40%、化学品事業(表面処理薬品、スペシャリティマテリアル、表面処理設備)が11%、営業利益構成比はファインケミカル事業が59%、医薬事業が49%、HBC・食品事業が▲24%、化学品事業が16%だった。

 また営業利益構成比を製造・非製造で分類すると、15年11月期は製造業分野が35%で非製造業分野が65%だったが、20年11月期は製造業分野が92%、非製造業分野が8%となり、専門商社からメーカーへの変貌を鮮明にしている。M&Aを活用して、4つの新しい戦略的ビジネスモデル(調達プラットフォーム事業、インキュベーション事業、注射剤CDMO事業、塗り薬CDM事業)が誕生した。

■グループ組織再編や新規事業を推進

 ファインケミカル事業は、20年3月に子会社化した医薬品CMC研究・製造受託のスペラファーマと、スペラファーマの子会社として20年7月に設立したスペラネクサスが展開している。岩城製薬のファインケミカル事業はスペラネクサスに承継され、医薬品原薬のCMC研究開発から製造・販売まで一貫体制を構築している。また20年6月にはスペラファーマが創薬ベンチャーのジェイファーマに出資、21年4月にはスペラファーマがペプチド合成技術を保有するJITSUBOを子会社化している。

 医薬事業は岩城製薬と、20年7月に鳥居薬品佐倉工場を継承した岩城製薬佐倉工場が展開している。20年1月には医療用後発医薬品・一般用医薬品開発の前田薬品工業に出資、21年1月には岩城製薬が医薬品開発のキノファーマに出資して業務提携している。

 HBC・食品事業はイワキ(イワキ分割準備会社が21年6月商号変更)とアプロスが展開している。20年12月には健康食品・化粧品販売のマルマンH&Bを子会社化した。21年7月にはイワキが、スカイネットから薬事サポート事業、自社開発事業および輸入製販事業を譲り受けた。21年9月にはイワキが、住建情報センターのヘルスケア事業を譲り受けた。

 化学品事業はメルテックス、東京化工機、および海外子会社等が展開している。

 持株会社体制への移行に伴って、グループ各社の組織再編とともに、人的リソースの適正配置、働き方改革などにも取り組んでいる。グループ全体のBCP(事業継続計画)対策および従業員の働き方・生き方の選択肢多様化を目的として、21年6月に本社機能の一部を石川県珠洲市に移転した。石川県珠洲市が地方創生に向けた人材育成事業の一環として行っている能登SDGsラボと協業し、30年までにSDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進することを目標とする。

 21年6月には新規事業のインキュベーションを担う専任部署として新規事業推進室を設置した。SDGs推進に向けて、化粧品原料・製品(グループ会社JITSUBOのペプチド合成法Molecular Hivingによる高品質で環境に優しく、コスト優位性のある化粧品原料・製品)事業、地方創生に繋がるハイブリッド型ふるさと納税プラットフォーム事業、健康食品原料事業(国産の安心・安全な健康食品原料・製品の第6次産業化を目的として、石川県珠洲市で健康食品の原料となる植物等の栽培を行う事業)などを推進する。

 21年7月には、奥能登地域のSDGS達成支援を目的とするファンド「奥能登SDGs投資事業有限責任組合(奥能登SDGsファンド)」への出資を発表した。特定子会社となる。21年8月には、グループの業務サポートやファシリティーサービスを提供するアステナハートフル(21年6月設立)が、障害者の雇用の促進等に関する法律に基づく特例子会社の認定を取得した。

 さらに資本効率向上に向けた拠点見直しの一環として、21年6月に名古屋オフィスおよび福岡オフィスの不動産を譲渡すると発表した。譲渡時期は未定だが、譲渡後も賃借で継続利用する。

■中長期ビジョンの目標は売上高1300億円以上、ROE13%以上

 2030年を目標とした中長期ビジョン「Astena2030」では、定量的ターゲットとして30年11月期連結売上高1300億円以上、ROE13%以上を掲げ、中期連結数値計画は23年11月期売上高820億円、営業利益42億円、ROE9.7%としている。

 セグメント別30年11月期目標値は、ファインケミカル事業が売上高400億円で営業利益率9%、医薬事業が売上高228億円で営業利益率13%、化学品事業が売上高130億円で営業利益率10%、HBC・食品事業が売上高450億円で営業利益率3%とした。

 基本戦略は、プラットフォーマー戦略(CMC=医療用医薬品研究開発の国内トップレベルでの受託、ヘルスケア調達プラットフォーム=医薬品・化粧品・機能性食品製造会社の全ニーズをカバー、創薬インキュベーション=CMC提供を通じて新薬開発の成功確率を高める、CDMO=注射剤・外皮用剤・治験薬の受託製造)、ニッチトップ戦略(外皮用剤ジェネリック医薬品=国内塗り薬ジェネリック医薬品市場NO.1、ハイエンド表面処理薬品=エレクトロニクスに特化した表面処理薬品)、ソーシャルインパクト戦略(シニア・アクティベイト=化粧品・機能性食品の提供を通じてシニア総アクティブ化推進)としている。

 ファインケミカル事業は、CMC・CDMO事業および調達プラットフォーム事業を2本柱として、原材料調達からCMC研究、原薬商用生産までの医薬品開発・製造の幅広いサービスを提供する。21年3月には、岩城製薬(スペラネクサスに承継)が、オンコリスバイオファーマ<4588>が開発中の新型コロナウイルス感染症治療薬OBP―2011の、臨床試験開始に必要な治験薬原薬の製造法開発とGMP製造を受託することで基本合意した。21年7月にはスペラファーマがオンコロスバイオファーマからOBP―2011の治験薬製剤のGMP製造を受託することで基本合意した。

 医薬事業は、皮膚科領域をベースとして外皮用剤品目数および生産キャパシティでトップ、グローバル要求水準に対応して高活性注射剤CDMOのトップを目指す。また外皮用剤、注射剤導入、新薬共同開発、M&A・アライアンスで事業基盤強化・拡大を目指す。21年4月には岩城製薬がインタープロテインとCOVID―19治療薬の共同研究契約を締結した。

 化学品事業は、エレクトロニクス実装市場のトレンドを捉えたニッチトップ商品の継続的開発、ハイエンドパッケージ基板での地位確立、チップ部品用途の台湾・中国大手での採用、半導体パワー・センサー系薬品の差別化を推進する。またグローバル企業との共同開発も推進して成長を目指す。

 HBC・食品事業は、原料ビジネスのDX化による顧客の開発・調達プロセスの課題解決プラットフォームの提供、独自性を高めた商品・サービスの提供による市場価値増大を推進する。またダイレクトマーケティング領域への投資を実行して、領域特化型ネットワークを構築する。

 その他では既存事業との親和性、将来に亘る成長性、グループ全体への波及効果なども勘案して、SDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進することを目標とする。

■21年11月期3Q累計大幅営業・経常増益で通期上振れの可能性

 21年11月期の連結業績予想は売上高が20年11月期比11.7%増の730億円、営業利益が27.8%増の26億円、経常利益が37.2%増の27億円、親会社株主帰属当期純利益が0.8%増の20億円としている。配当予想は2円増配の18円(第2四半期末9円、期末9円)である。5期連続増配となる。

 第3四半期累計は売上高が前年同期比13.0%増の537億27百万円、営業利益が39.0%増の19億54百万円、経常利益が43.7%増の20億41百万円だった。新規受注や需要回復などで大幅営業・経常増益だった。親会社株主帰属四半期純利益は26.7%減の11億30百万円だった。前期計上の負ののれん発生益6億20百万円が剥落した。

 ファインケミカル事業は売上高が10.5%増の169億50百万円で営業利益が19.4%増の10億15百万円だった。医薬品原料分野では風邪薬関連等のOTC用原薬や国内ジェネリック用原料が低調だったが、ジェネリック新規品採用などでカバーした。CDMO分野の安定的稼働も寄与して大幅増収増益だった。

 医薬事業は売上高が30.7%増の96億91百万円で営業利益が49.6%増の11億09百万円だった。医療用医薬品分野で主力の副腎皮質ホルモン剤をはじめとする外皮用剤、男性型脱毛治療薬、アトピー性皮膚炎治療薬などが好調に推移し、岩城製薬佐倉工場における新規受託や増産要請対応も寄与して大幅増収増益だった。

 HBC・食品事業は売上高が7.0%増の208億49百万円だが、営業利益が4億42百万円の赤字(前年同期は4億01百万円の赤字)だった。食品原料および機能性食品原料分野は堅調だったが、一般医薬品を主体とする卸売、化粧品原料分野、通販化粧品分野が低調だった。

 化学品事業は売上高が17.1%増の62億35百万円で営業利益が45.7%増の3億10百万円だった。表面処理薬品分野の需要が半導体・電子部品向けに拡大した。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高169億75百万円で営業利益6億63百万円、第2四半期は売上高192億74百万円で営業利益8億32百万円、第3四半期は売上高174億78百万円で営業利益4億59百万円だった。

 通期は純利益が特別利益の剥落で横ばいだが、需要拡大、利益率改善、M&A効果などで大幅営業・経常増益予想としている。新型コロナウイルス感染再拡大で医薬事業やHBC・食品事業を中心に不透明な状況が続くが、化学品事業では5G関連やパワーデバイス半導体分野の表面処理薬品の需要が拡大基調である。また全社的に積極的な営業展開による案件獲得、不採算品目や活動費の見直しなどによる利益率改善に取り組むとしている。

 通期予想を据え置いたが、第3四半期累計の進捗率は売上高73.6%、営業利益75.2%、経常利益75.6%と順調だった。需要が回復基調であり、通期予想は上振れの可能性が高いだろう。積極的な事業展開で収益拡大基調を期待したい。

■株主優待制度は毎年11月末時点で1年以上保有株主対象

 株主優待制度は毎年11月末時点で100株(1単元)以上を継続して1年以上保有する株主を対象として、グループ化粧品詰め合わせセットなどを贈呈(詳細は会社HP参照)する。

■株価は調整一巡

 22年4月4日移行予定の新市場区分については、新市場区分における上場維持基準への適合状況に関する一次判定結果でプライム市場適合を確認し、21年9月17日開催の取締役会でプライム市場選択・申請を決議した。所定のスケジュールに基づいて手続を進める。

 株価は戻り高値圏から反落して上値を切り下げる形となったが、調整一巡して出直りを期待したい。10月22日の終値は554円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS60円65銭で算出)は約9倍、今期予想配当利回り(会社予想の18円で算出)は約3.2%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS656円54銭で算出)は約0.8倍、時価総額は約225億円である。(情報提供:日 本インタビュ新聞社=Media−IR
[10月06日更新]

アステナホールディングスは戻り試す、21年11月期は上振れの可能性

 アステナホールディングス<8095 旧イワキ>(東1)はヘルスケア・ファインケミカル企業集団を目指し、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。21年11月期は需要拡大、利益率改善、M&A効果などで大幅営業・経常増益予想としている。さらに上振れの可能性が高いだろう。収益拡大基調を期待したい。株価は8月の直近安値圏から徐々に下値を切り上げている。戻りを試す展開を期待したい。

■ヘルスケア・ファインケミカル企業集団

 旧イワキが21年6月1日付で持株会社体制に移行して商号をアステナホールディングスに変更した。アステナは「明日(未来)+サステナブル(持続可能)」の造語である。ヘルスケア・ファインケミカル企業集団を目指し、M&Aも活用して、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。

 20年11月期セグメント別売上高構成比はファインケミカル事業(CMC研究開発、医薬品原料)が33%、医薬事業(医薬品、医療機器)が16%、HBC・食品事業(化粧品、食品原料、ファルマネット)が40%、化学品事業(表面処理薬品、スペシャリティマテリアル、表面処理設備)が11%、営業利益構成比はファインケミカル事業が59%、医薬事業が49%、HBC・食品事業が▲24%、化学品事業が16%だった。

 また営業利益構成比を製造・非製造で分類すると、15年11月期は製造業分野が35%で非製造業分野が65%だったが、20年11月期は製造業分野が92%、非製造業分野が8%となり、専門商社からメーカーへの変貌を鮮明にしている。M&Aを活用して、4つの新しい戦略的ビジネスモデル(調達プラットフォーム事業、インキュベーション事業、注射剤CDMO事業、塗り薬CDM事業)が誕生した。

■グループ組織再編や新規事業を推進

 ファインケミカル事業は、20年3月に子会社化した医薬品CMC研究・製造受託のスペラファーマと、スペラファーマの子会社として20年7月に設立したスペラネクサスが展開している。岩城製薬のファインケミカル事業はスペラネクサスに承継され、医薬品原薬のCMC研究開発から製造・販売まで一貫体制を構築している。また20年6月にはスペラファーマが創薬ベンチャーのジェイファーマに出資、21年4月にはスペラファーマがペプチド合成技術を保有するJITSUBOを子会社化している。

 医薬事業は岩城製薬と、20年7月に鳥居薬品佐倉工場を継承した岩城製薬佐倉工場が展開している。20年1月には医療用後発医薬品・一般用医薬品開発の前田薬品工業に出資、21年1月には岩城製薬が医薬品開発のキノファーマに出資して業務提携している。

 HBC・食品事業はイワキ(イワキ分割準備会社が21年6月商号変更)とアプロスが展開している。20年12月には健康食品・化粧品販売のマルマンH&Bを子会社化した。21年7月にはイワキが、スカイネットから薬事サポート事業、自社開発事業および輸入製販事業を譲り受けた。21年9月にはイワキが、住建情報センターのヘルスケア事業を譲り受けた。

 化学品事業はメルテックス、東京化工機、および海外子会社等が展開している。

 持株会社体制への移行に伴って、グループ各社の組織再編とともに、人的リソースの適正配置、働き方改革などにも取り組んでいる。グループ全体のBCP(事業継続計画)対策および従業員の働き方・生き方の選択肢多様化を目的として、21年6月に本社機能の一部を石川県珠洲市に移転した。石川県珠洲市が地方創生に向けた人材育成事業の一環として行っている能登SDGsラボと協業し、30年までにSDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進することを目標とする。

 また21年6月には新規事業のインキュベーションを担う専任部署として新規事業推進室を設置した。SDGs推進に向けて、化粧品原料・製品(グループ会社JITSUBOのペプチド合成法Molecular Hivingによる高品質で環境に優しい、コスト優位性のある化粧品原料・製品)事業、地方創生に繋がるハイブリッド型ふるさと納税プラットフォーム事業、健康食品原料事業(国産の安心・安全な健康食品原料・製品の第6次産業化を目的として、石川県珠洲市で健康食品の原料となる植物等の栽培を行う事業)などを推進する。

 21年7月には、奥能登地域のSDGS達成支援を目的とするファンド「奥能登SDGs投資事業有限責任組合(奥能登SDGsファンド)」への出資を発表した。特定子会社となる。21年8月には、グループの業務サポートやファシリティーサービスを提供するアステナハートフル(21年6月設立)が、障害者の雇用の促進等に関する法律に基づく特例子会社の認定を取得した。

 さらに資本効率向上に向けた拠点見直しの一環として、21年6月に名古屋オフィスおよび福岡オフィスの不動産を譲渡すると発表した。譲渡時期は未定だが、譲渡後も賃借で継続利用する。

■中長期ビジョンの目標は売上高1300億円以上、ROE13%以上

 2030年を目標とした中長期ビジョン「Astena2030」では、定量的ターゲットとして30年11月期連結売上高1300億円以上、ROE13%以上を掲げ、中期連結数値計画は23年11月期売上高820億円、営業利益42億円、ROE9.7%としている。

 セグメント別30年11月期目標値は、ファインケミカル事業が売上高400億円で営業利益率9%、医薬事業が売上高228億円で営業利益率13%、化学品事業が売上高130億円で営業利益率10%、HBC・食品事業が売上高450億円で営業利益率3%とした。

 基本戦略は、プラットフォーマー戦略(CMC=医療用医薬品研究開発の国内トップレベルでの受託、ヘルスケア調達プラットフォーム=医薬品・化粧品・機能性食品製造会社の全ニーズをカバー、創薬インキュベーション=CMC提供を通じて新薬開発の成功確率を高める、CDMO=注射剤・外皮用剤・治験薬の受託製造)、ニッチトップ戦略(外皮用剤ジェネリック医薬品=国内塗り薬ジェネリック医薬品市場NO.1、ハイエンド表面処理薬品=エレクトロニクスに特化した表面処理薬品)、ソーシャルインパクト戦略(シニア・アクティベイト=化粧品・機能性食品の提供を通じてシニア総アクティブ化推進)としている。

 ファインケミカル事業は、CMC・CDMO事業および調達プラットフォーム事業を2本柱として、原材料調達からCMC研究、原薬商用生産までの医薬品開発・製造の幅広いサービスを提供する。21年3月には、岩城製薬(スペラネクサスに承継)が、オンコリスバイオファーマ<4588>が開発中の新型コロナウイルス感染症治療薬OBP―2011の、臨床試験開始に必要な治験薬原薬の製造法開発とGMP製造を受託することで基本合意した。21年7月にはスペラファーマがオンコロスバイオファーマからOBP―2011の治験薬製剤のGMP製造を受託することで基本合意した。

 医薬事業は、皮膚科領域をベースとして外皮用剤品目数および生産キャパシティでトップ、グローバル要求水準に対応して高活性注射剤CDMOのトップを目指す。また外皮用剤、注射剤導入、新薬共同開発、M&A・アライアンスで事業基盤強化・拡大を目指す。21年4月には岩城製薬がインタープロテインとCOVID―19治療薬の共同研究契約を締結した。

 化学品事業は、エレクトロニクス実装市場のトレンドを捉えたニッチトップ商品の継続的開発、ハイエンドパッケージ基板での地位確立、チップ部品用途の台湾・中国大手での採用、半導体パワー・センサー系薬品の差別化を推進する。またグローバル企業との共同開発も推進して成長を目指す。

 HBC・食品事業は、原料ビジネスのDX化による顧客の開発・調達プロセスの課題解決プラットフォームの提供、独自性を高めた商品・サービスの提供による市場価値増大を推進する。またダイレクトマーケティング領域への投資を実行して、領域特化型ネットワークを構築する。

 その他では既存事業との親和性、将来に亘る成長性、グループ全体への波及効果なども勘案して、SDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進することを目標とする。

■21年11月期大幅営業・経常増益予想、さらに上振れの可能性

 21年11月期の連結業績予想は売上高が20年11月期比11.7%増の730億円、営業利益が27.8%増の26億円、経常利益が37.2%増の27億円、親会社株主帰属当期純利益が0.8%増の20億円としている。配当予想は2円増配の18円(第2四半期末9円、期末9円)である。5期連続増配となる。

 第2四半期累計は、売上高が前年同期比17.6%増の362億49百万円、営業利益が88.5%増の14億95百万円、経常利益が94.1%増の15億74百万円、親会社株主帰属四半期純利益が80.8%増の9億75百万円だった。M&A効果も寄与して計画超の大幅増収増益だった。

 ファインケミカル事業は18.1%増収で54.5%増益だった。ジェネリック新規品採用、胃腸薬関連原料の好調、CDMO分野の寄与で大幅増収増益だった。医薬事業は53.2%増収で2.5倍増益だった。M&A効果も寄与して大幅伸長した。HBC・食品事業は6.3%増収だが赤字拡大した。食品原料分野は巣ごもり消費などで好調だったが、通販化粧品分野が伸び悩み、一般医薬品を主体とした卸売が低調だった。化学品事業は15.4%増収で51.2%増益だった。表面処理薬品の主力製品が好調だった。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高169億75百万円で営業利益6億63百万円、第2四半期は売上高192億74百万円で営業利益8億32百万円だった。

 通期は純利益が特別利益の剥落で横ばいだが、需要拡大、利益率改善、M&A効果などで大幅営業・経常増益予想としている。新型コロナウイルス感染再拡大で医薬事業やHBC・食品事業を中心に不透明な状況が続くが、化学品事業では5G関連やパワーデバイス半導体分野の表面処理薬品の需要が拡大基調である。また全社的に積極的な営業展開による案件獲得、不採算品目や活動費の見直しなどによる利益率改善に取り組むとしている。

 通期予想を据え置いたが、第2四半期累計の進捗率は売上高が49.7%、営業利益が57.5%と順調だった。通期予想は上振れの可能性が高いだろう。収益拡大基調を期待したい。

■株主優待制度は毎年11月末時点で1年以上保有株主対象

 株主優待制度は毎年11月末時点で100株(1単元)以上を継続して1年以上保有する株主を対象として、グループ化粧品詰め合わせセットなどを贈呈(詳細は会社HP参照、20年8月に株主優待制度のページを新設)する。

■株価は戻り試す

 22年4月4日に移行予定の新市場区分については、新市場区分における上場維持基準への適合状況に関する一次判定結果としてプライム市場の上場維持基準に適合していることを確認しており、9月17日開催の取締役会でプライム市場選択・申請を決議した。

 株価は8月の直近安値圏から徐々に下値を切り上げている。戻りを試す展開を期待したい。10月5日の終値は617円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS60円65銭で算出)は約10倍、今期予想配当利回り(会社予想の18円で算出)は約2.9%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS656円54銭で算出)は約0.9倍、時価総額は約251億円である。(情報提供:日 本インタビュ新聞社=Media−IR
[09月21日更新]

アステナホールディングスは戻り試す、21年11月期は上振れの可能性

 アステナホールディングス<8095 旧イワキ>(東1)はヘルスケア・ファインケミカル企業集団を目指し、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。9月17日には新市場区分でプライム市場を選択・申請する取締役会決議を発表した。21年11月期は需要拡大、利益率改善、M&A効果などで大幅営業・経常増益予想としている。さらに上振れの可能性が高いだろう。収益拡大基調を期待したい。株価は8月の直近安値圏から切り返して反発の動きを強めている。戻りを試す展開を期待したい。

■ヘルスケア・ファインケミカル企業集団

 旧イワキが21年6月1日付で持株会社体制に移行して商号をアステナホールディングスに変更した。アステナは「明日(未来)+サステナブル(持続可能)」の造語である。ヘルスケア・ファインケミカル企業集団を目指し、M&Aも活用して、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。

 20年11月期セグメント別売上高構成比はファインケミカル事業(CMC研究開発、医薬品原料)が33%、医薬事業(医薬品、医療機器)が16%、HBC・食品事業(化粧品、食品原料、ファルマネット)が40%、化学品事業(表面処理薬品、スペシャリティマテリアル、表面処理設備)が11%、営業利益構成比はファインケミカル事業が59%、医薬事業が49%、HBC・食品事業が▲24%、化学品事業が16%だった。

 また営業利益構成比を製造・非製造で分類すると、15年11月期は製造業分野が35%で非製造業分野が65%だったが、20年11月期は製造業分野が92%、非製造業分野が8%となり、専門商社からメーカーへの変貌を鮮明にしている。M&Aを活用して、4つの新しい戦略的ビジネスモデル(調達プラットフォーム事業、インキュベーション事業、注射剤CDMO事業、塗り薬CDM事業)が誕生した。

■グループ組織再編や人的リソース適正配置を推進

 事業会社の構成は以下のとおりである。ファインケミカル事業は20年3月に子会社化した医薬品CMC研究・製造受託のスペラファーマと、スペラファーマの子会社として20年7月に設立したスペラネクサスが展開する。なお岩城製薬のファインケミカル事業はスペラネクサスに承継され、ファインケミカル事業として医薬品原薬のCMC研究開発から製造・販売まで一貫体制を構築する。

 医薬事業は岩城製薬と、20年7月に鳥居薬品佐倉工場を継承した岩城製薬佐倉工場が展開する。HBC・食品事業はイワキ(イワキ分割準備会社が21年6月商号変更)とアプロス、化学品事業はメルテックス、東京化工機、および海外子会社等が展開する。なお21年4月にはスペラファーマが、ペプチド合成技術を保有するJITSUBOを子会社化した。21年7月にはイワキが、スカイネットから薬事サポート事業、自社開発事業および輸入製販事業を譲り受けた。

 この他、20年1月には医療用後発医薬品・一般用医薬品開発の前田薬品工業に出資、20年6月にはスペラファーマが創薬ベンチャーのジェイファーマに出資、20年12月には健康食品・化粧品販売のマルマンH&Bを子会社化、21年1月には岩城製薬が医薬品開発のキノファーマに出資して業務提携している。

 持株会社体制への移行に伴って、グループ各社の組織再編、人的リソースの適正配置、働き方改革などにも取り組んでいる。グループ全体のBCP(事業継続計画)対策および従業員の働き方・生き方の選択肢多様化を目的として、21年6月に本社機能の一部を石川県珠洲市に移転した。石川県珠洲市が地方創生に向けた人材育成事業の一環として行っている能登SDGsラボと協業し、30年までにSDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進することを目標とする。

 また21年6月には新規事業のインキュベーションを担う専任部署として新規事業推進室を設置している。SDGs推進に向けて、化粧品原料・製品(グループ会社JITSUBOのペプチド合成法Molecular Hivingによる高品質で環境に優しい、コスト優位性のある化粧品原料・製品)事業、地方創生に繋がるハイブリッド型ふるさと納税プラットフォーム事業、健康食品原料事業(国産の安心・安全な健康食品原料・製品の第6次産業化を目的として、石川県珠洲市で健康食品の原料となる植物等の栽培を行う事業)などを推進する。

 21年7月には、奥能登地域のSDGS達成支援を目的とするファンド「奥能登SDGs投資事業有限責任組合(奥能登SDGsファンド)」への出資を発表した。特定子会社となる。9月6日には、グループの業務サポートやファシリティーサービスを提供するアステナハートフル(21年6月設立)が、8月25日に障害者の雇用の促進等に関する法律に基づく特例子会社の認定を取得したと発表している。

 さらに資本効率向上に向けた拠点見直しの一環として、21年6月に名古屋オフィスおよび福岡オフィスの不動産を譲渡すると発表した。譲渡時期は未定だが、譲渡後も賃借で継続利用する。

■中長期ビジョンの目標は売上高1300億円以上、ROE13%以上

 2030年を目標とした中長期ビジョン「Astena2030」では、定量的ターゲットとして30年11月期連結売上高1300億円以上、ROE13%以上を掲げ、中期連結数値計画は23年11月期売上高820億円、営業利益42億円、ROE9.7%としている。

 セグメント別30年11月期目標値は、ファインケミカル事業が売上高400億円で営業利益率9%、医薬事業が売上高228億円で営業利益率13%、化学品事業が売上高130億円で営業利益率10%、HBC・食品事業が売上高450億円で営業利益率3%とした。

 基本戦略は、プラットフォーマー戦略(CMC=医療用医薬品研究開発の国内トップレベルでの受託、ヘルスケア調達プラットフォーム=医薬品・化粧品・機能性食品製造会社の全ニーズをカバー、創薬インキュベーション=CMC提供を通じて新薬開発の成功確率を高める、CDMO=注射剤・外皮用剤・治験薬の受託製造)、ニッチトップ戦略(外皮用剤ジェネリック医薬品=国内塗り薬ジェネリック医薬品市場NO.1、ハイエンド表面処理薬品=エレクトロニクスに特化した表面処理薬品)、ソーシャルインパクト戦略(シニア・アクティベイト=化粧品・機能性食品の提供を通じてシニア総アクティブ化推進)としている。

 ファインケミカル事業は、CMC・CDMO事業および調達プラットフォーム事業を2本柱として、原材料調達からCMC研究、原薬商用生産までの医薬品開発・製造の幅広いサービスを提供する。21年3月には、岩城製薬(スペラネクサスに承継)が、オンコリスバイオファーマ<4588>が開発中の新型コロナウイルス感染症治療薬OBP―2011の、臨床試験開始に必要な治験薬原薬の製造法開発とGMP製造を受託することで基本合意した。21年7月にはスペラファーマがオンコロスバイオファーマからOBP―2011の治験薬製剤のGMP製造を受託することで基本合意した。

 医薬事業は、皮膚科領域をベースとして外皮用剤品目数および生産キャパシティでトップ、グローバル要求水準に対応して高活性注射剤CDMOのトップを目指す。また外皮用剤、注射剤導入、新薬共同開発、M&A・アライアンスで事業基盤強化・拡大を目指す。21年4月には岩城製薬がインタープロテインとCOVID―19治療薬の共同研究契約を締結した。

 化学品事業は、エレクトロニクス実装市場のトレンドを捉えたニッチトップ商品の継続的開発、ハイエンドパッケージ基板での地位確立、チップ部品用途の台湾・中国大手での採用、半導体パワー・センサー系薬品の差別化を推進する。またグローバル企業との共同開発も推進して成長を目指す。

 HBC・食品事業は、原料ビジネスのDX化による顧客の開発・調達プロセスの課題解決プラットフォームの提供、独自性を高めた商品・サービスの提供による市場価値増大を推進する。またダイレクトマーケティング領域への投資を実行して、領域特化型ネットワークを構築する。

 その他では既存事業との親和性、将来に亘る成長性、グループ全体への波及効果なども勘案して、SDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進することを目標とする。

■21年11月期大幅営業・経常増益予想、さらに上振れの可能性

 21年11月期の連結業績予想は売上高が20年11月期比11.7%増の730億円、営業利益が27.8%増の26億円、経常利益が37.2%増の27億円、親会社株主帰属当期純利益が0.8%増の20億円としている。配当予想は2円増配の18円(第2四半期末9円、期末9円)である。5期連続増配となる。

 第2四半期累計は、売上高が前年同期比17.6%増の362億49百万円、営業利益が88.5%増の14億95百万円、経常利益が94.1%増の15億74百万円、親会社株主帰属四半期純利益が80.8%増の9億75百万円だった。M&A効果も寄与して計画超の大幅増収増益だった。

 ファインケミカル事業は18.1%増収で54.5%増益だった。ジェネリック新規品採用、胃腸薬関連原料の好調、CDMO分野の寄与で大幅増収増益だった。医薬事業は53.2%増収で2.5倍増益だった。M&A効果も寄与して大幅伸長した。HBC・食品事業は6.3%増収だが赤字拡大した。食品原料分野は巣ごもり消費などで好調だったが、通販化粧品分野が伸び悩み、一般医薬品を主体とした卸売が低調だった。化学品事業は15.4%増収で51.2%増益だった。表面処理薬品の主力製品が好調だった。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高169億75百万円で営業利益6億63百万円、第2四半期は売上高192億74百万円で営業利益8億32百万円だった。

 通期は純利益が特別利益の剥落で横ばいだが、需要拡大、利益率改善、M&A効果などで大幅営業・経常増益予想としている。新型コロナウイルス感染再拡大で医薬事業やHBC・食品事業を中心に不透明な状況が続くが、化学品事業では5G関連やパワーデバイス半導体分野の表面処理薬品の需要が拡大基調である。また全社的に積極的な営業展開による案件獲得、不採算品目や活動費の見直しなどによる利益率改善に取り組むとしている。

 通期予想を据え置いたが、第2四半期累計の進捗率は売上高が49.7%、営業利益が57.5%と順調だった。通期予想は上振れの可能性が高いだろう。収益拡大基調を期待したい。

■株主優待制度は毎年11月末時点で1年以上保有株主対象

 株主優待制度は毎年11月末時点で100株(1単元)以上を継続して1年以上保有する株主を対象として、グループ化粧品詰め合わせセットなどを贈呈(詳細は会社HP参照、20年8月に株主優待制度のページを新設)する。

■株価は戻り試す

 22年4月4日に移行予定の新市場区分については、新市場区分における上場維持基準への適合状況に関する一次判定結果としてプライム市場の上場維持基準に適合との通知を受けている。そして9月17日開催の取締役会において、新市場区分プライム市場の選択・申請を行うことを決議した。

 株価は8月の直近安値圏から切り返して反発の動きを強めている。戻りを試す展開を期待したい。9月17日の終値は638円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS60円65銭で算出)は約11倍、今期予想配当利回り(会社予想の18円で算出)は約2.8%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS656円54銭で算出)は約1.0倍、時価総額は約259億円である。(情報提供:日 本インタビュ新聞社=Media−IR
[08月27日更新]

アステナホールディングスは反発の動き、21年11月期大幅営業・経常増益予想、さらに上振れの可能性

 アステナホールディングス<8095 旧イワキ>(東1)はヘルスケア・ファインケミカル企業集団を目指し、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。21年11月期は需要拡大、利益率改善、M&A効果などで大幅営業・経常増益予想としている。第2四半期累計は順調だった。通期予想は上振れの可能性が高いだろう。収益拡大基調を期待したい。株価は調整一巡して反発の動きを強めている。出直りを期待したい。

■ヘルスケア・ファインケミカル企業集団

 旧イワキが21年6月1日付で持株会社体制に移行して商号をアステナホールディングスに変更した。アステナは「明日(未来)+サステナブル(持続可能)」の造語である。ヘルスケア・ファインケミカル企業集団を目指し、M&Aも活用して、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。

 20年11月期セグメント別売上高構成比はファインケミカル事業(CMC研究開発、医薬品原料)が33%、医薬事業(医薬品、医療機器)が16%、HBC・食品事業(化粧品、食品原料、ファルマネット)が40%、化学品事業(表面処理薬品、スペシャリティマテリアル、表面処理設備)が11%、営業利益構成比はファインケミカル事業が59%、医薬事業が49%、HBC・食品事業が▲24%、化学品事業が16%だった。

 また営業利益構成比を製造・非製造で分類すると、15年11月期は製造業分野が35%で非製造業分野が65%だったが、20年11月期は製造業分野が92%、非製造業分野が8%となり、専門商社からメーカーへの変貌を鮮明にしている。M&Aを活用して、4つの新しい戦略的ビジネスモデル(調達プラットフォーム事業、インキュベーション事業、注射剤CDMO事業、塗り薬CDM事業)が誕生した。

■持株会社体制に移行

 事業会社の構成は以下のとおりである。ファインケミカル事業は20年3月に子会社化した医薬品CMC研究・製造受託のスペラファーマと、スペラファーマの子会社として20年7月に設立したスペラネクサスが展開する。なお岩城製薬のファインケミカル事業はスペラネクサスに承継され、ファインケミカル事業として医薬品原薬のCMC研究開発から製造・販売まで一貫体制を構築する。

 医薬事業は岩城製薬と、20年7月に鳥居薬品佐倉工場を継承した岩城製薬佐倉工場が展開する。HBC・食品事業はイワキ(イワキ分割準備会社が21年6月商号変更)とアプロス、化学品事業はメルテックス、東京化工機、および海外子会社等が展開する。なお21年4月にはスペラファーマが、ペプチド合成技術を保有するJITSUBOを子会社化した。21年7月にはイワキが、スカイネットから薬事サポート事業、自社開発事業および輸入製販事業を譲り受けた。

 この他、20年1月には医療用後発医薬品・一般用医薬品開発の前田薬品工業に出資、20年6月にはスペラファーマが創薬ベンチャーのジェイファーマに出資、20年12月には健康食品・化粧品販売のマルマンH&Bを子会社化、21年1月には岩城製薬が医薬品開発のキノファーマに出資して業務提携している。

 持株会社体制への移行に伴って、グループ各社の組織再編、人的リソースの適正配置、働き方改革などにも取り組んでいる。グループ全体のBCP(事業継続計画)対策および従業員の働き方・生き方の選択肢多様化を目的として、21年6月に本社機能の一部を石川県珠洲市に移転した。石川県珠洲市が地方創生に向けた人材育成事業の一環として行っている能登SDGsラボと協業し、30年までにSDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進することを目標とする。

 なお21年7月に、奥能登地域のSDGS達成支援を目的とするファンド「奥能登SDGs投資事業有限責任組合(奥能登SDGsファンド)」への出資を発表した。特定子会社となる。

 また21年6月には新規事業のインキュベーションを担う専任部署として新規事業推進室を設置した。SDGs推進に向けて、化粧品原料・製品(グループ会社JITSUBOのペプチド合成法Molecular Hivingによる高品質で環境に優しい、コスト優位性のある化粧品原料・製品)事業、地方創生に繋がるハイブリッド型ふるさと納税プラットフォーム事業、健康食品原料事業(国産の安心・安全な健康食品原料・製品の第6次産業化を目的として、石川県珠洲市で健康食品の原料となる植物等の栽培を行う事業)などを推進する。

 さらに資本効率向上に向けた拠点見直しの一環として、21年6月に名古屋オフィスおよび福岡オフィスの不動産を譲渡すると発表した。譲渡時期は未定だが、譲渡後も賃借で継続利用する。

■中長期ビジョンの目標は売上高1300億円以上、ROE13%以上

 2030年を目標とした中長期ビジョン「Astena2030」では、定量的ターゲットとして30年11月期連結売上高1300億円以上、ROE13%以上を掲げ、中期連結数値計画は23年11月期売上高820億円、営業利益42億円、ROE9.7%としている。

 セグメント別30年11月期目標値は、ファインケミカル事業が売上高400億円で営業利益率9%、医薬事業が売上高228億円で営業利益率13%、化学品事業が売上高130億円で営業利益率10%、HBC・食品事業が売上高450億円で営業利益率3%とした。

 基本戦略は、プラットフォーマー戦略(CMC=医療用医薬品研究開発の国内トップレベルでの受託、ヘルスケア調達プラットフォーム=医薬品・化粧品・機能性食品製造会社の全ニーズをカバー、創薬インキュベーション=CMC提供を通じて新薬開発の成功確率を高める、CDMO=注射剤・外皮用剤・治験薬の受託製造)、ニッチトップ戦略(外皮用剤ジェネリック医薬品=国内塗り薬ジェネリック医薬品市場NO.1、ハイエンド表面処理薬品=エレクトロニクスに特化した表面処理薬品)、ソーシャルインパクト戦略(シニア・アクティベイト=化粧品・機能性食品の提供を通じてシニア総アクティブ化推進)としている。

 ファインケミカル事業は、CMC・CDMO事業および調達プラットフォーム事業を2本柱として、原材料調達からCMC研究、原薬商用生産までの医薬品開発・製造の幅広いサービスを提供する。21年3月には、岩城製薬(スペラネクサスに承継)が、オンコリスバイオファーマ<4588>が開発中の新型コロナウイルス感染症治療薬OBP―2011の、臨床試験開始に必要な治験薬原薬の製造法開発とGMP製造を受託することで基本合意した。21年7月にはスペラファーマがオンコロスバイオファーマからOBP―2011の治験薬製剤のGMP製造を受託することで基本合意した。

 医薬事業は、皮膚科領域をベースとして外皮用剤品目数および生産キャパシティでトップ、グローバル要求水準に対応して高活性注射剤CDMOのトップを目指す。また外皮用剤、注射剤導入、新薬共同開発、M&A・アライアンスで事業基盤強化・拡大を目指す。21年4月には岩城製薬がインタープロテインとCOVID―19治療薬の共同研究契約を締結した。

 化学品事業は、エレクトロニクス実装市場のトレンドを捉えたニッチトップ商品の継続的開発、ハイエンドパッケージ基板での地位確立、チップ部品用途の台湾・中国大手での採用、半導体パワー・センサー系薬品の差別化を推進する。またグローバル企業との共同開発も推進して成長を目指す。

 HBC・食品事業は、原料ビジネスのDX化による顧客の開発・調達プロセスの課題解決プラットフォームの提供、独自性を高めた商品・サービスの提供による市場価値増大を推進する。またダイレクトマーケティング領域への投資を実行して、領域特化型ネットワークを構築する。

 その他では既存事業との親和性、将来に亘る成長性、グループ全体への波及効果なども勘案して、SDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進することを目標とする。

■21年11月期大幅営業・経常増益予想、さらに上振れの可能

 21年11月期の連結業績予想は売上高が20年11月期比11.7%増の730億円、営業利益が27.8%増の26億円、経常利益が37.2%増の27億円、親会社株主帰属当期純利益が0.8%増の20億円としている。配当予想は2円増配の18円(第2四半期末9円、期末9円)である。5期連続増配となる。

 第2四半期累計は、売上高が前年同期比17.6%増の362億49百万円、営業利益が88.5%増の14億95百万円、経常利益が94.1%増の15億74百万円、親会社株主帰属四半期純利益が80.8%増の9億75百万円だった。M&A効果も寄与して計画超の大幅増収増益だった。

 ファインケミカル事業は18.1%増収で54.5%増益だった。ジェネリック新規品採用、胃腸薬関連原料の好調、CDMO分野の寄与で大幅増収増益だった。医薬事業は53.2%増収で2.5倍増益だった。M&A効果も寄与して大幅伸長した。HBC・食品事業は6.3%増収だが赤字拡大した。食品原料分野は巣ごもり消費などで好調だったが、通販化粧品分野が伸び悩み、一般医薬品を主体とした卸売が低調だった。化学品事業は15.4%増収で51.2%増益だった。表面処理薬品の主力製品が好調だった。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高169億75百万円で営業利益6億63百万円、第2四半期は売上高192億74百万円で営業利益8億32百万円だった。

 通期は純利益が特別利益の剥落で横ばいだが、需要拡大、利益率改善、M&A効果などで大幅営業・経常増益予想としている。新型コロナウイルス感染再拡大で医薬事業やHBC・食品事業を中心に不透明な状況が続くが、化学品事業では5G関連やパワーデバイス半導体分野の表面処理薬品の需要が拡大基調である。また全社的に積極的な営業展開による案件獲得、不採算品目や活動費の見直しなどによる利益率改善に取り組むとしている。

 通期予想を据え置いたが、第2四半期累計の進捗率は売上高が49.7%、営業利益が57.5%と順調だった。通期予想は上振れの可能性が高いだろう。収益拡大基調を期待したい。

■株主優待制度は毎年11月末時点で1年以上保有株主対象

 株主優待制度は毎年11月末時点で100株(1単元)以上を継続して1年以上保有する株主を対象として、グループ化粧品詰め合わせセットなどを贈呈(詳細は会社HP参照、20年8月に株主優待制度のページを新設)する。

■株価は反発の動き

 なお22年4月実施予定の新市場区分について、東京証券取引所からプライム市場に適合との通知を受けている。

 株価はほぼ一本調子に水準を切り下げて軟調展開だったが、調整一巡して反発の動きを強めている。出直りを期待したい。8月26日の終値は579円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS60円65銭で算出)は約10倍、今期予想配当利回り(会社予想の18円で算出)は約3.1%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS656円54銭で算出)は約0.9倍、時価総額は約230億円である。(情報提供:日 本インタビュ新聞社=Media−IR
[07月30日更新]

アステナホールディングスは調整一巡、21年11月期2Q累計大幅増益で通期上振れの可能性

 アステナホールディングス<8095 旧イワキ>(東1)はヘルスケア・ファインケミカル企業集団を目指し、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。21年11月期は需要拡大、利益率改善、M&A効果などで大幅営業・経常増益予想としている。第2四半期累計はM&A効果も寄与して大幅増収増益だった。通期予想を据え置いたが上振れの可能性が高いだろう。収益拡大基調を期待したい。株価は4月の高値圏から反落して水準を切り下げたが、調整一巡して出直りを期待したい。

■ヘルスケア・ファインケミカル企業集団

 旧イワキが21年6月1日付で持株会社体制に移行して商号をアステナホールディングスに変更した。アステナは「明日(未来)+サステナブル(持続可能)」の造語である。ヘルスケア・ファインケミカル企業集団を目指し、M&Aも活用して、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品を主力とする専門商社からメーカーへと変貌している。

 20年11月期セグメント別売上高構成比はファインケミカル事業(CMC研究開発、医薬品原料)が33%、医薬事業(医薬品、医療機器)が16%、HBC・食品事業(化粧品、食品原料、ファルマネット)が40%、化学品事業(表面処理薬品、スペシャリティマテリアル、表面処理設備)が11%、営業利益構成比はファインケミカル事業が59%、医薬事業が49%、HBC・食品事業が▲24%、化学品事業が16%だった。

 また営業利益構成比を製造・非製造で分類すると、15年11月期は製造業分野が35%で非製造業分野が65%だったが、20年11月期は製造業分野が92%、非製造業分野が8%となり、専門商社からメーカーへの変貌を鮮明にしている。M&Aを活用して、4つの新しい戦略的ビジネスモデル(調達プラットフォーム事業、インキュベーション事業、注射剤CDMO事業、塗り薬CDM事業)が誕生した。

■持株会社体制に移行

 事業会社の構成は以下のとおりである。ファインケミカル事業は20年3月に子会社化した医薬品CMC研究・製造受託のスペラファーマと、スペラファーマの子会社として20年7月に設立したスペラネクサスが展開する。なお岩城製薬のファインケミカル事業はスペラネクサスに承継され、ファインケミカル事業として医薬品原薬のCMC研究開発から製造・販売まで一貫体制を構築する。

 医薬事業は岩城製薬と、20年7月に鳥居薬品佐倉工場を継承した岩城製薬佐倉工場が展開する。HBC・食品事業はイワキ(イワキ分割準備会社が21年6月商号変更)とアプロス、化学品事業はメルテックス、東京化工機、および海外子会社等が展開する。なお21年4月にはスペラファーマが、ペプチド合成技術を保有するJITSUBOを子会社化した。21年7月にはイワキが、スカイネットから薬事サポート事業、自社開発事業および輸入製販事業を譲り受けた。

 この他、20年1月には医療用後発医薬品・一般用医薬品開発の前田薬品工業に出資、20年6月にはスペラファーマが創薬ベンチャーのジェイファーマに出資、20年12月には健康食品・化粧品販売のマルマンH&Bを子会社化、21年1月には岩城製薬が医薬品開発のキノファーマに出資して業務提携している。

 持株会社体制への移行に伴って、グループ各社の組織再編、人的リソースの適正配置、働き方改革などにも取り組んでいる。グループ全体のBCP(事業継続計画)対策および従業員の働き方・生き方の選択肢多様化を目的として、21年6月に本社機能の一部を石川県珠洲市に移転した。石川県珠洲市が地方創生に向けた人材育成事業の一環として行っている能登SDGsラボと協業し、30年までにSDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進することを目標とする。

 なお7月26日に、奥能登地域のSDGS達成支援を目的とするファンド「奥能登SDGs投資事業有限責任組合(奥能登SDGsファンド)」への出資を発表した。特定子会社となる。

 また21年6月には新規事業のインキュベーションを担う専任部署として新規事業推進室を設置した。SDGs推進に向けて、化粧品原料・製品(グループ会社JITSUBOのペプチド合成法Molecular Hivingによる高品質で環境に優しい、コスト優位性のある化粧品原料・製品)事業、地方創生に繋がるハイブリッド型ふるさと納税プラットフォーム事業、健康食品原料事業(国産の安心・安全な健康食品原料・製品の第6次産業化を目的として、石川県珠洲市で健康食品の原料となる植物等の栽培を行う事業)などを推進する。

 さらに資本効率向上に向けた拠点見直しの一環として、21年6月に名古屋オフィスおよび福岡オフィスの不動産を譲渡すると発表した。譲渡時期は未定だが、譲渡後も賃借で継続利用する。

■中長期ビジョンの目標は売上高1300億円以上、ROE13%以上

 2030年を目標とした中長期ビジョン「Astena2030」では、定量的ターゲットとして30年11月期連結売上高1300億円以上、ROE13%以上を掲げ、中期連結数値計画は23年11月期売上高820億円、営業利益42億円、ROE9.7%としている。

 セグメント別30年11月期目標値は、ファインケミカル事業が売上高400億円で営業利益率9%、医薬事業が売上高228億円で営業利益率13%、化学品事業が売上高130億円で営業利益率10%、HBC・食品事業が売上高450億円で営業利益率3%とした。

 基本戦略は、プラットフォーマー戦略(CMC=医療用医薬品研究開発の国内トップレベルでの受託、ヘルスケア調達プラットフォーム=医薬品・化粧品・機能性食品製造会社の全ニーズをカバー、創薬インキュベーション=CMC提供を通じて新薬開発の成功確率を高める、CDMO=注射剤・外皮用剤・治験薬の受託製造)、ニッチトップ戦略(外皮用剤ジェネリック医薬品=国内塗り薬ジェネリック医薬品市場NO.1、ハイエンド表面処理薬品=エレクトロニクスに特化した表面処理薬品)、ソーシャルインパクト戦略(シニア・アクティベイト=化粧品・機能性食品の提供を通じてシニア総アクティブ化推進)としている。

 ファインケミカル事業は、CMC・CDMO事業および調達プラットフォーム事業を2本柱として、原材料調達からCMC研究、原薬商用生産までの医薬品開発・製造の幅広いサービスを提供する。21年3月には、岩城製薬(スペラネクサスに承継)が、オンコリスバイオファーマ<4588>が開発中の新型コロナウイルス感染症治療薬OBP―2011の、臨床試験開始に必要な治験薬原薬の製造法開発とGMP製造を受託することで基本合意した。21年7月にはスペラファーマがオンコロスバイオファーマからOBP―2011の治験薬製剤のGMP製造を受託することで基本合意した。

 医薬事業は、皮膚科領域をベースとして外皮用剤品目数および生産キャパシティでトップ、グローバル要求水準に対応して高活性注射剤CDMOのトップを目指す。また外皮用剤、注射剤導入、新薬共同開発、M&A・アライアンスで事業基盤強化・拡大を目指す。21年4月には岩城製薬がインタープロテインとCOVID―19治療薬の共同研究契約を締結した。

 化学品事業は、エレクトロニクス実装市場のトレンドを捉えたニッチトップ商品の継続的開発、ハイエンドパッケージ基板での地位確立、チップ部品用途の台湾・中国大手での採用、半導体パワー・センサー系薬品の差別化を推進する。またグローバル企業との共同開発も推進して成長を目指す。

 HBC・食品事業は、原料ビジネスのDX化による顧客の開発・調達プロセスの課題解決プラットフォームの提供、独自性を高めた商品・サービスの提供による市場価値増大を推進する。またダイレクトマーケティング領域への投資を実行して、領域特化型ネットワークを構築する。

 その他では既存事業との親和性、将来に亘る成長性、グループ全体への波及効果なども勘案して、SDGsの達成と社会変革の実現を目的とする売上100億円規模の新規事業を推進することを目標とする。

 なお20年12月に第三者割当による第1回新株予約権(行使価額修正条項付)を発行し、岩城製薬佐倉工場における注射剤製造ラインなど成長に向けた設備投資資金を調達した。発行新株予約権は21年7月7日に行使完了した。

■21年11月期2Q累計大幅増益、通期上振れの可能性

 21年11月期の連結業績予想は売上高が20年11月期比11.7%増の730億円、営業利益が27.8%増の26億円、経常利益が37.2%増の27億円、親会社株主帰属当期純利益が0.8%増の20億円としている。配当予想は2円増配の18円(第2四半期末9円、期末9円)である。5期連続増配となる。

 第2四半期累計は、売上高が前年同期比17.6%増の362億49百万円、営業利益が88.5%増の14億95百万円、経常利益が94.1%増の15億74百万円、親会社株主帰属四半期純利益が80.8%増の9億75百万円だった。M&A効果も寄与して計画超の大幅増収増益だった。

 ファインケミカル事業は18.1%増収で54.5%増益だった。ジェネリック新規品採用、胃腸薬関連原料の好調、CDMO分野の寄与で大幅増収増益だった。医薬事業は53.2%増収で2.5倍増益だった。M&A効果も寄与して大幅伸長した。HBC・食品事業は6.3%増収だが赤字拡大した。食品原料分野は巣ごもり消費などで好調だったが、通販化粧品分野が伸び悩み、一般医薬品を主体とした卸売が低調だった。化学品事業は15.4%増収で51.2%増益だった。表面処理薬品の主力製品が好調だった。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高169億75百万円で営業利益6億63百万円、第2四半期は売上高192億74百万円で営業利益8億32百万円だった。

 通期は純利益が特別利益の剥落で横ばいだが、M&Aも寄与して大幅営業・経常増益予想としている。新型コロナウイルス感染再拡大で医薬事業やHBC・食品事業を中心に不透明な状況が続くが、化学品事業では5G関連やパワーデバイス半導体分野の表面処理薬品の需要が拡大基調である。また全社的に積極的な営業展開による案件獲得、不採算品目や活動費の見直しなどによる利益率改善に取り組むとしている。

 通期予想を据え置いたが、第2四半期累計の進捗率は売上高が49.7%、営業利益が57.5%と順調だった。通期上振れの可能性が高いだろう。収益拡大基調を期待したい。

■株主優待制度は毎年11月末時点で1年以上保有株主対象

 株主優待制度は毎年11月末時点で100株(1単元)以上を継続して1年以上保有する株主を対象として、グループ化粧品詰め合わせセットなどを贈呈(詳細は会社HP参照、20年8月に株主優待制度のページを新設)する。

■株価は調整一巡

 なお22年4月実施予定の市場区分見直しに関して、東京証券取引所からプライム市場に適合との通知を受けている。

 株価は4月の高値圏から反落して水準を切り下げたが、調整一巡して出直りを期待したい。7月29日の終値は565円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS60円65銭で算出)は約9倍、今期予想配当利回り(会社予想の18円で算出)は約3.2%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS656円54銭で算出)は約0.9倍、時価総額は約225億円である。
(情報提供:日 本インタビュ新聞社=Media−IR)
http://media-ir.com/news/

株式投資は全て自己責任でお願いします。このサイトの情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。当サイトの掲載事項において損失をされた場合も当方は一切の責任を負いかねます。