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【マーケットセンサー】

■日経平均下げ寄与率上位銘柄が今度は上げ寄与率上位に返り咲く日米の中央銀行プレーの先取りに早道妙味

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 FRB(米連邦準備制度理事会)のイエレン議長も、それなりにサプライズ好きに見受けられた。市場関係者の懸念を良い意味で裏切ってくれたもので、日銀の黒田東彦総裁とは真逆の一面をみせてくれた。前週末26日に米アリゾナ州ジャクソンホールで開催された経済シンポジウムで「追加の利上げに向けた根拠はここ数カ月で強まっている」と講演したからだ。しかも、これに続いてフィッシャー副議長が、テレビ番組で年内2回の政策金利引き上げを否定しなかったとも伝えられたのである。

 市場では、同シンポジウムで同議長は利上げに言及しないとするのが多数意見となっていた。実際に為替相場も、1ドル=100円台を出没し、追加利上げの見送り観測が強まるたびに99円台を試す円高・ドル安場面を繰り返していた。それが、講演での同議長の利上げへの前向き講演とともに一時、1ドル=101.94円と今年8月12日以来の円安・ドル高へと振れた。また前週の日経平均株価は、日々の東証1部売買代金が2兆円割れが続く薄商いのなかで小動きを続け、週末にはイエレン議長の講演内容に警戒感を強めて、ドスンと25日移動平均線を大きく下抜いて引けていた。

 こうなるときょうから実質月替わりする9月相場は、まず為替相場の動向がポイントとなり、このまま円安・ドル高推移となるかにかかってくる。イエレン議長が強調した「政策判断は今後の経済データ次第」通りとすれば、今週末9月2日に発表される米国の雇用統計の動向によっては、9月20日〜21日に開催されるFOMC(米連邦市場委員会)で早期の追加利上げが決定されることになる。

 問題はわが日本銀行の動向で、黒田総裁は、同じく9月20日〜21日に開催される金融政策決定会合で現行の「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」政策の「総括的な検証」を行うと表明していた。この「総括的な検証」が何を指すかが憶測を呼ぶところで、黒田総裁のサプライズ好きでマイナス金利の撤廃か、あるいはマイナス金利の深掘り(金利引き下げ)かなど両極端の見方に分かれている。

 FRBが、9年半ぶりに政策金利を引き上げた昨年12月16日は、直後の17日〜18日開催の日銀の金融政策決定会合で、3000億円の新たなETF(上場型投資信託)の買入れ枠を設定するなどの「補完的な諸措置」が決定され、これが失望を呼んで折角、1ドル=122円台後半まで円安・ドル高となった為替相場は、翌年2月には110円台まで円高が進み、1万9800円台まで買い上げられた日経平均株価も、同じく1万5000円台割れまで大きく調整した。

 これは日米の中央銀行プレーには予断をもって対処することの危うさを示唆しており、9月以降さらに年内あと2回開催される日米の金融政策決定会合の動向を巡って、円安・円高、株高・株安のどちらに振れるかはなはだ見通し難いということになる。となれば、足元の円安進行か円高反転かに一喜一憂して機敏に反応する投資スタンスが不可欠となる。「突っ込み買い・噴き値売り」の逆張りパターンであり、前週は円高懸念で突っ込んだあとだから、今週は円安進行を先取り、逆張りの究極形の下げた株ほど良く戻すとする投資セーリーの「リターン・リバーサル」に徹するのが手っ取り早い早道となるはずだ。この投資スタンスからテクニカル的にマークしたいのが、前週末26日に日経平均株価が195円安と急続落するなかで下げ寄与率の上位に入った銘柄で、今度は上げ寄与率の上位銘柄に返り咲き、先陣を切ることを期待したい。

■輸出主力株は強弱感の対立で信用取組は拮抗し売り方の買い戻しが先行思惑も

 前週末26日に日経平均株価の下げ寄与率の上位銘柄は、日経平均を17円強押し下げたワーストワンのファナック<6954>(東1)以下、テルモ<4543>(東1)、日東電工<6988>(東1)、トヨタ自動車<7203>(東1)、ソフトバンクグループ<9984>(東1)、塩野義製薬<4507>(東1)、TDK<6762>(東1)、アステラス製薬<4503>(東1)、中外製薬<4519>(東1)、ホンダ<7267>(東1)となった。輸出主力株が中心で、指数構成ウエートの大きい銘柄が大半である。

 このうちトヨタは、今年8月4日の今3月期第1四半期(2016年4月〜6月期、1Q)決算発表時に、今3月期業績を下方修正したが、この下方修正が、為替の想定レートを期初の1ドル=105円から102円に円高方向に見直したことを要因としており、発表時点の為替相場が、すでに101円台後半とやや円安方向に振れていたことから織り込み済みとして株価は逆行高、6000円台を回復した。今回も、このときに並ぶ円安水準となっているだけに、再現期待を強めよう。またフアナックは、1Q決算発表時に今3月期業績の上方修正を発表したが、前週末の株価はこのときの水準以下で、25日移動平均線も下回っており、下げ過ぎを示唆している。

 信用取組も、外資系証券などの投資判断・目標株価引き上げなども響いて強弱感が対立して拮抗、逆日歩がつく銘柄も含まれ、売り方の買い戻しも先行しそうだ。もちろん為替相場の動向は、今週末2日発表の米国の雇用統計次第で、円安・円高のいずれにも振れることになるか予断を許さないだけに、仮に噴き値があったとしても長居は無用で、ちょっと忙しくなるがヒット・アンド・ウエーを心掛けることが本筋となりそうだ。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media−IR 編集長・浅妻昭治)


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【相場展望】


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イエレン米FRB議長の発言でドル高・円安、日本株は意外高の可能性も

8月29日〜9月2日の日本株は堅調な動きが想定される。前週末の米国市場でのドル高・円安が追い風となり、日経平均株価は意外高となって1万7000円台を試す可能性もありそうだ。

 前週末26日のジャクソンホールにおける講演の中で、イエレン米FRB議長は「米経済は緩やかな拡大が続き、追加利上げの条件が整ってきた」と述べた。この発言を受けて年内12月の利上げ観測、さらに9月利上げ観測も高まり、ニューヨーク外国為替市場では1ドル=101円台後半までドル高・円安方向に傾いた。

 この流れを受けて週初8月29日の日本株は買い優勢のスタートとなりそうだ。そして週末9月2日には米8月雇用統計の発表を控えている。重要イベントを控えて積極的な買いは手控えられることになるが、一方では、米8月雇用統計の結果次第で9月利上げ観測が急速に高まる可能性があるだけに、外国為替市場では円買いポジションの巻き戻し、株式市場では売り方の買い戻しがフライング気味に強まることも考えられる。ポジション調整の動きが日本株の意外高を演出する可能性もありそうだ。

■円安メリット関連物色、買い安心感で新興市場にも資金流入

 セクター・銘柄としては、ドル高・円安を好感して自動車セクターを中心とする輸出関連・円安メリット関連セクター・銘柄が物色されそうだ。また買い安心感が広がり、売買高が低調な新興市場にも資金が流入するかが注目点となる。8月31日〜9月2日開催のZMPフォーラムに合わせて自動運転関連も注目されそうだ。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media−IR)

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《Eimei「みちしるべ」》

(8月29日から9月2日の週)

「まんじゅう怖い」ならぬ「ジャクソンホール怖い」で固まった展開。
解きほぐすにはそれなりの好材料が必要になるのだろう。
ただ利上げ=株安という安易な図式は実は時間軸を数か月眺めにすれば過去該当していないのも事実。
今回だってQE3の終了で米国の株価は上昇。
そして昨年の利上げ以降、半年ほどで3指数揃って史上最高値を更新した。
マーケットの常識は世間の非常識みたいなもの。
蟷螂の斧みたいな観測に見えてくるのも致しかたなかろう。
何かを待って閑散かつ動意に乏しい展開はいつもの事と割り切った方が良い。
シカゴ225先物終値は大証日中比変わらずの16540円。
大証夜間取引終値は20円高の16560円。
NYが下げても東京市場は歯牙にもかけていない様相。
空売り比率はまだ42%台。
しかし先週の裁定買い残はわずか611億円とはいえ3週ぶりに増加し5345億円。
日経朝刊では「TOPIX先物の残高が2013年1月以来の低水準。
中長期投資家による日本株先高感の後退」との解釈。
むしろマイナス金利の影響での残高減少と見たい。
減ったものはいつかは増えるのがゼロサム世界のマーケットの定理でもある。

「東証1部企業の4社に1社。公的マネー、筆頭株主に」の日経1面トップ記事。
GPIFと日銀を合わせた公的マネーが東証1部上場企業の4社の1社で実質的筆頭株主。
運用金額130兆円のGPIF。
日本株運用比率は25%。
日銀は年間6兆円の日本株を買う方針。
TDKが17%、アドバンテストが16.5%、トレンドマイクロが15%。
横河14.2%、日東電工14.2%、コムシス13.1%、
クレセゾン12.9%、ファナック12.6%、コナミ12.3%、テルモ12.2%、
日水12.1%、セコム12%、住友重機11.9%。
「市場機能低下も」という懸念も小賢しげに登場しているが、需給はかなり良くなる。
一言でいえばストックショートの時代。
20年前にこの事態を予言した先輩がいた。
何のことやら理解できなかった今にしてみれば公的機関化現象とも言える。
機関化現象とは・・・。
証券市場において、個人投資家が市場への直接参加の度合いが低下。
生命保険会社や投資信託会社などの機関投資家の比率が高まる現象のこと。
個人投資家の比率低下は悩ましいところだが、国内投資家の比率の上昇は悪くない。
全体の7割の売買を海外投資家が行っているのが現実。
だから、為替に注意し、株価材料は海外要因ばかりがクローズアップされる。
国内投資家比率が高まれば年に一度ジャクソンホールで踊ったり、月に一度の雇用統計祭りもなくなろう。
経済指標とイベントスケジュールしか材料のないFXの世界の呪縛からも解き放たれよう。
その時に初めて日本株の主役はこの国に戻ってくるに違いない。

もうひとつ日経1面の内閣支持率にあった小賢しげな解釈。
日銀マイナス金利を「評価する」は33%。
「評価しない」は47%。
物価が「上がると思う」は60%。
「思わない」は33%。
これはこれで健全な数値。
違っているのはその解釈。
「マイナス金利は投資や消費を活発にすることで物価の上昇を促す」。
本当にそうなのだろうか。
マイナス金利で投資が拡大しただろうか。
むしろ導入以来株価は下落基調。
消費も同様だろう。
物価は決して上がっていない。
そもそも・・・。
明日の方が今日より物が高くないのがマイナス金利。
それで物価が上がると思うのが間違っているのは子供でも分かるだろう。
立派な経歴の大人が「マイナス金利は物価上昇の杖」なんて考えているとしたら少し変だろう。
明日の方がモノの値段が高いから人は物を買う。
これが増えれば仮儒の増大につながる。
今はこの仮儒は全くない。
しかも買い控え。
インフレを恐れるばかりにオッカナびっくりのハンドリングでは見間違えようか。


日経平均想定レンジ

下限16635円(8月月足陽線基準)〜上限17109円(200日線)



【9月】11勝15敗(9位)

1日(木) 4〜6月期の法人企業統計、金環日食(日本不可視)、変化日
4日(日) G20首脳会議(中国、杭州〜5日)
5日(月) レイバーデーでNY休場
8日(木) ECB理事会・記者会見
9日(金) メジャーSQ、ポイントの日
11日(日)G7保険相会議(神戸〜12日)
15日(木)ゲーム見本市東京ゲームショー(幕張〜18日)、上げの特異日
16日(金)変化日
17日(土)満月
18日(日)上げの特異日
19日(月)敬老の日で休場
20日(火)米FOMC(記者会見あり〜21日)、世界最大の鉄道技術見本市イノトランス(ベルリン〜23日)、世界最大の写真・映像機器見本市フォトキナ(ケルン〜25日)
21日(水)日銀金融政策決定会合(〜22日)
22日(木)秋分の日で休場、ハノーバー国際自動車ショー(〜29日)、水星順行開始
24日(土)G7交通相会合(軽井沢〜25日)
26日(月)米大統領選第1回テレビ討論会
28日(水)変化日
29日(木)パリ国際自動車ショー(〜10月16日)

【10月】

上旬ノーベル賞の発表

1日(土) 中国・国慶節(〜7日)、新月
3日(月) 日銀短観、変化日、ヒジュラ暦の新年
4日(火) 投資の日、上げの特異日、米大統領選副大統領候補テレビ討論会
7日(金) IMF・世銀総会(ワシントン、〜9日)
10日(月)体育の日で休場、コロンブスデーでNY為替休場
11日(火)ポイントの日、大幅高の特異日
14日(金)大幅高の特異日
16日(日)満月、上げの特異日
17日(月)IAEA核融合エネルギー会議(京都〜22日)
19日(水)文部科学省が「スポーツ・文化・ワールドフォーラム」開催、米大統領選テレビ会議
20日(木)ECB理事会・記者会見、EU首脳会議(〜21日)、上げの特異日
21日(金)変化日
27日(木)変化日
28日(金)大幅高の特異日
30日(日)EUがサマータイム終了
31日(月)日銀金融政策決定会合(〜1日)、展望リポート、新月
30日(日)EUがサマータイム終了
31日(月)日銀金融政策決定会合(〜1日)、展望リポート、新月

因みに昨年のヒジュラ暦の新年は10月14日が正月。
昨年までその後10日は7連勝だった。
昨年の10月14日。
日経平均17891円→10月27日18777円。
NYダウ16924ドル→10月27日17581ドル。
これで7連勝となった。
新年度はムラッサムというがまさにムラッサムアノマリー成立だった。
毎年買い戻し中心という解釈だがどうなのだろうか。
というか、ヒジュラの新年で上がるなら9月は買い場という解釈もできようか。


(兜町カタリスト 櫻井英明)
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